バロック その6です。
ドイツのバロック音楽です。
「バロック音楽史の見取り図をややこしくしているのは、バッハという「時代の最も偉大な作曲家」が、必ずしも文句なしに「時代の最も典型的な作曲家」とはいえない点にある。」(参考書1-P. 85)
「ドイツのバロック音楽」と言えば何と言ってもヨハン・セバスティアンバッハ(1685-1750)です。
バロック時代の他の作曲家の音楽とバッハの音楽はあまりに違い過ぎます。
バロック音楽と言えば、宮廷などでの華やかな音楽をイメージします。
ところが、バッハの音楽には深い精神性があり、同じ範疇に括ることはできません。
バッハの音楽が無ければ、バロックの音楽は「宮廷や貴族のための華麗な娯楽音楽」ということで括ることができたのに・・。
でも、いきなりバッハの音楽がこの世に現れたはずありません。
バッハは先輩方から多くのものを受けついでいると思います。それを探りましょう。
という訳で、ハルモニア・ムンディ箱から下記CDを、B級オーディオBセットで聴きます。
①(28)J.S.バッハ以前の聖トーマス教会のカントールの作品集
セバスティアン・クニュプファー(1633-1676) 2曲
ヨハン・シェッレ(1648-1701) 4曲
ヨハン・クーナウ(1660-1722) 2曲
コンラート・ユングヘーネル/カントゥス・ケルン 1992年デジタル録音
クニュプファーは、J.S.バッハが生まれる以前、フランスのリュリと同時代の人ですね。やはり、この時代からドイツのバロック音楽は独特の重厚さを持っていたことが分かります。
シェッレの音楽は、フーガが特徴的です。主題が次々と追いかけ模倣し発展していきます。J.S.バッハの音楽に影響を与えていることは間違いありません。
クーナウの後任がJ.S.バッハでした。音が上昇・下降を繰り返すフレーズがJ.S.バッハの音楽を彷彿とさせます。特にトラックNO.8の「おお神聖なる時」はJ.S.バッハのカンタータのようです。
②(33)パッヘルベルとJ.S.バッハ以前のモテット集
ヨハン・パッヘルベル(1642-1706) 4曲
ヨハン・クリストフ・バッハ(1642-1703) 2曲
ヨハン・ミヒャエル・バッハ(1648-1694) 1曲
コンラート・ユングヘーネル/カントゥス・ケルン 1992年デジタル録音
パッヘルベルは有名なカノンの作曲者ですね。カノン以外の曲を初めて聴きます。
明るい曲調です。まるでイタリアのバロック音楽のようです。これはこれで好印象の音楽です。
でも、J.S.バッハとは異質な音楽のようです。
ヨハン・クリストフ・バッハは、J.S.バッハの先妻マリア・バルバラの祖父です。
非常に地味で素朴な音楽の印象です。宮廷で華やかに歌われる音楽というより教会で静かに聴く音楽です。所々にJ.S.バッハの片鱗を聴きとれます。
ヨハン・ミヒャエル・バッハは、ヨハン・クリストフ・バッハの弟です。
この人の曲も素朴な音楽です。クリストフ・バッハとの違いはよく分からないくらい似ています。
③(15)ディートリヒ・ブクステフーデ(1637-1707)ソナタ集
スキップ・センべ/ カプリッチョ・ストラヴァガンテ 1992年デジタル録音
「ドイツ独自のオルガン音楽芸術を受け継いだのがブクステフーデである。」(参考書2-P.65)
「オルガン音楽の伝統は、やがてバッハらに受け継がれる」(参考書2-P.66)
なるほど、トラックNO.1「パッサカリア」や、NO.5「チャコーナ」は、チェンバロの独奏ですが、バッハの鍵盤曲と本当にそっくりです。その他の音楽も渋く内省的で、J.S.バッハに多くの影響を与えたのがド素人の私にも分かります。
しかし、参考書1のP.89-90に記載のように、J.S.バッハの音楽には、作曲の心得がある人間だけが理解できる複雑さと、神学上の背景があります。キリスト教の理解がどうしても必要になります。
バロック音楽の次は「古典」です。古典の時代の中心地はウィーンです。
オーストリア・ウィーンといえばハプスブルグ帝国の知識が不可欠です。
という訳で、少し回り道をして、次回はハプスブルクに関わる音楽を聴きます。
その次は、西洋音楽の根底流れるキリスト教に深入りしてみたいと思います。
ほとんど空中分解寸前ですね。