今回はファゴットの大津敦がコントラファゴットについてコメントを寄せてくれました。
$セントラル愛知交響楽団「悠久の第九」合唱団のブログ
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 今回は第九のコントラファゴットについて書きたいと思います。
 コントラ(ファゴット以下省略)はベートーヴェンが初めて交響曲で使用した楽器でファゴットの倍の長さ(大きさも比例して大きい)の楽器です。
この楽器は交響曲5番「運命」の4楽章に初めて使用されました。コントラバスのパートに音量とソリスティックな音色をプラスする為に書いたと思います。5番のコントラも十分テクニカルに難しく、オーケストラスタディ(難しいオーケストラのパッセージが集められた教本)に載る程の楽譜なのですが、第九のコントラの楽譜はそれの比ではなく難しいのです、というか演奏不能な場所が多々、、。
その頃のキーの少ない楽器でこの超絶技巧な楽譜が演奏出来たと思えないのですが、なにせベートーヴェンが書いたのですから吹かなければならない、でも吹けない、の葛藤です。
 それはさておき、もう一つ第九のコントラといえば4楽章のマーチの部分でファゴット二本と共にB♭の音をブッ、、、ブッ、、、ブッ、ブッ、ブッ、ブッっとソリ(ソロの複数)で演奏する部分があります。
前にライブラリアンの鷲尾がこのブログで触れていましたが、第九にはいろいろな版の楽譜があります。旧ブライトコプフ版はこのB♭がコントラの最低音(音色が最低という意味でなく音程が低いという意味ですが両方とも言えます、、。)より1オクターブ上のB♭なのですが、ベーレンライター版で何故か最低音で書かれ、新ブライトコプフ版も同じく最低音に書き換えられました。
 まぁそれが何だと言われれば何でもない事かも知れませんが、世界一第九を演奏する機会の多い日本のオーケストラのコントラ奏者にとって一番目立つソリが、今までと変わって最低音になった事は、やはり大きな出来事なのです。
奏者によっては最低音の方が吹きやすいという方もいるみたいですが、戸惑う奏者の方が多いはずです。しかし研究が進みそれが当たり前になる世の中、今までの常識がずっと常識とは限らない一例でした。 悠久の第九では最低音の楽譜の方です。
 皆様是非注目して聴いてみて下さい。

ファゴット 大津 敦