ザ・プリンス パークタワー東京(東京都港区)で開催中の「ad:tech Tokyo」。9月2日の2つ目の基調講演では、米マイクロソフト副社長でマイクロソフトアドバタイジングAdvertiser and Publisher Solutions(APS)グループ担当のスコット・ハウ氏が登壇した。

 「変化する経済環境におけるデジタル広告の役割」と題して始まった講演で、ハウ氏は広告業界のある統計を例に挙げた。それは1970年においてユーザーは1週間に300の広告を見ていたが、現在は1日当たり3000以上の広告と接点を持っているというもの。

 企業は大きな声を上げなければユーザーに見てもらえないが、一方でユーザーはその声をなるべく濾過(ろか)しようとし、あたかもそこに広告が無いかのように無視する行為が広がっている。

 こうした状況が広がる中、ハウ氏は広告配信技術の進化がようやく追いついてきた状況だと主張。広告はただ単に声を大きく上げて量を打てばいいものではなく、ターゲットを絞らなければならないとし、ユーザーが閲覧するコンテンツや検索するクエリーを基に、どのような広告を見たいのかを予測する必要があるとした。

 一方、ハウ氏はこうした進化はクリエーティブの世界でも広がっていると主張。「クリエーティブは長年“刑務所”に入っていた」と表現し、例えばテレビCMであれば30秒、60秒というスポットの枠に縛られ、ネット広告も枠に制約を受け続けてきたとした。

 ただ、現在はリッチメディアの進化によって広告枠を越えて非常に目立つクリエーティブ制作が可能になり、制限から解放されているという。こうした素地が出来上がった今、クリエーティブを制作する代理店は型破りの考え方が必要になり、魅力的なクリエーティブを制作していかなければならないとした。ハウ氏はこうした状況について「我々の時代は広告の楽園に突入しようとしている」と説明した。

 ハウ氏は2009年7月末に調印したヤフーとの提携についても触れた。「我々の業界は競争によって繁栄し、競争によって革新が生まれる」とし、Bingの技術を用いることでクエリーと広告のマッチングの精度をより高めていけるとした。

 講演の最後に、ハウ氏はネットマーケティング業界の未来図について持論を展開した。

 まず、人材面で必要なのはアナリスト。コンサルティング企業や投資銀行などのアナリストをもっとこの業界に誘致する必要があるとした。さらに、クリエーティブのあり方も従来の決定的な1つのアイデアではなく、まるで散弾銃のようにすべてのクリエーティブが大事になっていくとした。それはスターバックスが店舗内の木材のパネルからコーヒーカップの色まですべてが同社のブランディングにとって必要な要素と考えているのと同じようなものだと解説した。

 そして、「マーケティング担当者はただ単に素晴らしい組織を作るだけでなく、(他企業も含めた)チームを作る必要がある」(ハウ氏)とし、広告代理店も自分たちがスキルを持つだけでなく、パートナーのツールをうまく使って成功を収めていくようになるだろうと将来の予測を述べて講演を締めくくった。

(原 隆=日経ネットマーケティング)