本当に医者は足りていないか? その1 | 知りすぎてしまった男(_´Д`)ノ~~もうひとりの”奴隷”病院勤務医の真実

知りすぎてしまった男(_´Д`)ノ~~もうひとりの”奴隷”病院勤務医の真実

いきなりネガティブな題名ですが、そういうブログです。
日本の医療行政、体制の闇、普通の勤務医の真実をご提供しましょう。

医者が足りない、足りない、だから救急医療でたらい回しがおきてる、とする話がかなり前から巻き起こっているらしい…

東北に医学部新設を、という報道が繰り出されました。同時に、医学部新設に反対という報道があります。どっちがどっち?という状態です。

本当に医学部新設が必要かどうかを考察します。


まず、医者が足りない、足りない、と嘆いている話についてですが…大学病院という場所や、なんとか総合病院やら、なんとか中央病院とかの名前がつく地方地域基幹施設には、研修医を含めて結構な数の常勤医がいます。私も大学病院在籍時代を振り返りますと、相当に忙しかった。具体的には、研修医時代、最若手、いわゆる下級医時代は、ひたすらに、実際に外来で患者を診る、手術室に入り治療する、というよりも、事務的雑用に忙殺されていたのでした。あるいは、患者さんを車イスに乗せてレントゲン室やら、検査室まで誘導したり、レントゲン画像をプリントアウトしたものを搬送したり、看護師さんでも可能な…そう、看護師が法的に許可されている医療行為すら、看護師に換わり、患者の所に赴き、採血とか静脈注射をしたり、と、医者が医者しかできない行為でない業務に手間取り、なんとも運用効率の低い仕事を沢山してました。下級医だけに限らず、下手をすると、一人前になった中堅以上の医者であっても、そんな事をしている病院はまだまだ現存しているのです。まずはこれが病院の昼間の姿です。

さらに、夜間、時間外になれば、当直という名の時間外労働になります。ここでぐっと、医師数は昼の十分の一以下まで兵力減となります。ここで、救急外来に従事する産婦人科やら、小児科やら、脳外科やらに所属する専門医たちは本当に多忙となります。

現在の各臓器専門医へ進むのには選択は自由です。脳外科だろうが、皮膚科だろうが、眼科だろうが、内科だろうが、わが国の医療制度では給料は同じですから、研修医など若者はシビアに各専門医選択をコスパで考えます。ちなみに脳外科専門医になるための修練は長い期間を要し、大変難しく、専門医認定試験も誰しもがサクッと受かるわけではない、他科専門医と比較して、かなりのシビアさです。加えて、かなりのハイリスクを伴う治療手技です。

こういう部分で、訴訟リスク、技術に対する待遇をリスクヘッジすると、外科系統よりも内科、マイナー科目へ、と自分の道を決定していく傾向は昔から顕著です。最近は女医さんも相当に増えてます。彼女たちの傾向はまさにリアルにどちらがお得か?を表してますから、脳外科を第1選択する方は稀です。

さて、仮にそういうハイリスク、ヘビータスク科目を選択し、長年の訓練で専門医になっても歳を重ねると、だんだんメガ病院のブラックさ加減に気がつきます。
私を含めてやってらんねえな、と思うようになりますね。現実に医者が四十代の半以降にメガ大学病院医局に残ってるのは相当に減ります。ちなみに私の医学部入学当時の同期の現在の出身大学病院残留率は1%です。百人入っても、一人しか残らない、ということです。ある意味凄い離職率です。(笑)

で、大学病院辞めた医者は何してるの?となりますが、大抵はクリニック開業するか、民間病院に異動します。

特にクリニックの先生たちが深夜に救命救急活動なんてするわけもなく、基本的に昼間の仕事になり、しっかりと健康的な生活に戻ります。単に病院勤務の待遇に不満で、より年収が高くなることを望んで開業する、というだけでなく、過労死寸前まで働きバーンアウト、ついには必要最低限の"睡眠"を求めて、金の問題ではなく、とにかく健康的生活を取り戻す為に開業医になるしかない、という選択をするわけです。

で、結局この医師のキャリアパスっつうのが長々と続いていたのです。これからもたぶん王道です。


足らないのは医師の全体数ではなく、待遇悪い科目医師が足りないだけなんです。

失業者は存在するのに、生保は増えてますが、介護職が足らない、足らないと言ってるのと同じです。割りに合わないから選ばれない業種だからです。