「傷心の記憶」
ハラショー





…あれは盛夏の頃の
出来事だった




取るに足らない
言い争いの末に


突然、怒れる相手から
鋭い言葉のナイフでもって


惰弱に脈打つ 心をグサリと
激しく一撃 わたしは刺されて
刹那にその場にくずおれた


嗚呼、これでわたしは


もう二度と
立ち上がることなど出来まい…
ひたすらに そう感じていた


折しもテレビからは
ニュースの声が高らかに響き


苦しい息の下 わたしは
最初はぼんやりと それを聞いて


猛暑に命奪われた
居た堪れぬ人の死を知り
愕然として涙を流した


嗚呼、この世には


乱世の果ての炎熱に煽られ
逃げ果すことすら
いっかな能わず

終焉を迎える人がいる


なのに
わたしときたら…


舌禍の向ける諸刃の剣
心に負った傷に泣いても


この道を選んだのは
紛ごう方なし我が心


因果は巡る
巡れば出会う


出会って泣くも
出会って笑うも


何もかもみな
因果応報
因果応報


そう思いつ 見やる彼方の


かつては 
安らかであった町を
白い陽が焼き尽して


何もかもが悉く
重大な意味でもあるかのように


ぎらりぎらりと
輝いていた


わたしの方を
みつめるように


ぎらりぎらりと
輝いていた