■チベットのモーツァルト (講談社学術文庫) | 中沢 新一

 

少しばかり付け加えておきたくなったのですが、中沢新一さんの、あちこち跳び回る変幻自在な語り口というのは、コラージュ作品のように例えられるのではないかなと思いました。

 

あちこちから拾い集めてきた様々な質感・色調を持った素材を好き放題に貼り合わせて、全体として絶妙なパランスを保っているような、そんなコラージュ作品。

 

一つ一つの素材に対して著者が込めた想いを深く理解しようとするのは難しくても、ひとまずは全体として、作品から生まれる、うねりや迫力や凄みといったものを感じ取ってみたり、あるいは個々の素材の中から、自分にとって響き合うものを探してみたり、自分なりに驚きをそこに発見したり、素材の源泉 を糸口として他の作品とのつながりを辿ってみたり、そんな楽しみ方もありかなと。