■チベットのモーツァルト (講談社学術文庫) | 中沢 新一

 

数年前に本書を読んだときには、そこに何が書かれているのか、ほとんど何もわからずに、まだ最初の方のページで挫折してしまった記憶があります。

 

あれから久しぶりに読み始めて、今では著者が何をしたかったのか、少しだけわかるような気がします。

 

たぶんですが、「僕らが僕らの人生をよりよく生きるためには、どうしたらよいのか」といったようなことを考えていったところに生じる困難を、中沢さんは自分なりのスタイルでテキストとしてアウトプットすることで、乗り越えていこうとしたんじゃないか、などと思ったりします。

 

西洋哲学やら数学やら文学やら仏教やらの(僕にとっては)難解な話があっちへ行ったりこっちへ来たりと自由自在に跳ね回るように展開していく著者の文章は、それはそういうスタイルなのだとあらかじめ心の準備をした上で読み進めていくと、ところどころですが、わかるような気になったり、なるほどと思ったり、著者の想いを感じたりしながら、楽しみながら読めるようになりました。

 

地上楽園は「どんな地図にものっていない」と言われれば、なるほど確かにと思いつつ、それはとても不思議なことのようにも思えたりして、この世のものであってこの世のものでない感じとか、様々なことを連想するように考えてしまうわけですが、そういった思い浮かぶこととか感じることとかを大切にしながら、著者の言葉でいうところの「間」(あわい)をすり抜けていくような感覚で読んでいけたらと思いました。

 

 

そして本日、ついに本書の中に「不二」という単語が登場しました。ぷに。二つに分けられるようで分けられない。それはたぶん、全体主義的に、すべてが一つの塊であるという意味ではなくて、二つに分けられることと分けられないことの間を表している言葉なんじゃないかと思うのですが、最近の僕にとっての気になるワードが登場したことで、より一層、本書に対する興味を強く持つことになりました。

 

ちなみに「不二」はたぶん一般的には「ふじ」とか「ふに」とか読むのだと思うのですが、僕はあえて「ぷに」と読みたい。

 

いやまあ特に深い意味とかはないのですが、なんとなく愛らしい語感で口にしたい言葉なのです。

 

 

ちなみに本筋とは全然関係ないのですが、ヘンリー・ミラーさんという名前が出てきて、どんな人か知らなかったので調べてみたところ、アメリカの小説家で、「愛と笑いの夜」という作品を書かれた方とのことでした。

 

「愛と笑いの夜」といえば、サニーデイ・サービスのアルバム&表題曲として、僕は10代後半くらいの年齢の頃によく聴いていたことを思い出します。曽我部恵一さんもこの本を読んでいたのかなあ、などと思いを巡らせたりしました。