観た人の1日を豊かにし続ける。

それが名作というものだ。

 

原田マハさんの常設展示室を読みました。

 

 

常設展示室―Permanent Collection―(新潮文庫)

 

絵画に興味はあるけど

詳しくない私でもとても楽しめました。

 

原田マハさんは、かつて

キュレーターとして働いていたこともあり、

美術史や絵画に関する知識が豊富。

 

その豊富な知識と、

原田さんの美しい文章が合わさってできる

「アート小説」と呼ばれる物語には

毎回、感動させられてばかり。

 

それぞれの章のあらすじと、

取り上げられた絵画のちょっとした話をご紹介。

 

 

青の時代

 

作風がめまぐるしく変化した画家、ピカソ。

それぞれの時期が○○の時代と呼ばれている。

その中でも最も人気が高いのが「青の時代」。

作品の1つが「盲人の食事」

 

ピカソの「盲人の食事」の前で

美青は何を思うのか。

 

 

デルフトの眺望

 

 

寝たきりの父がいながら

仕事で忙しくしているなづきが見た

フェルメールの「デルフトの眺望」

 

描いたのは、オランダの画家、フェルメール。

彼が生涯暮らした街がオランダのデルフト。

街の4分の1が吹き飛ぶ大事故

死傷者は1000人。

その中には、フェルメールの師匠である画家もいた。

 

フェルメールが風景がを描くことは珍しく、

「デルフトの眺望」と「小路」のみ。

 

 

大公の聖母

 

聖母マリアと幼いイエス・キリストが描かれた

ラファエロの作品。

 

いっそう聖母信仰や強まった中世以降、

礼拝のための聖母子像が数多く描かれた。

 

女手ひとつで兄とあおいを育ててくれた

母が飾る「大公の聖母」

 

 

薔薇

 

 

ゴッホが療養所で暮らしたサン=レミ時代に描かれた作品。

退院直前に描かれた「ばら」という作品には

回復のよろこびがあふれている。

 

元はピンク色で描かれたバラは、

年月とともに色が変化し

今では白色に見える。

 

ばら色の人生とは?について

考えさせられるゴッホの「ばら」

 

 

豪奢

 

 

フランスの画家、アンリ・マティスによる油彩画。

筆触分割という手法が使われている。

 

絵具を混ぜると、濁って暗くなってしまう。

その問題を解決するために生まれた手法。

カンヴァスの上で絵具を隣り合わせにして置く。

 

この世でもっともぜいたくなことは?

マティスによる「豪奢(ごうしゃ)」

 

 

無名の画家による「道」

 

幼い頃に生き別れた兄はどこに?

 

6つの絵画と、それを取り巻く6つの物語は

きっとあなたの心も動かすことでしょう。

 

巻末の上白石萌香さんの解説も面白かった。

 

知識と愛情。

その絶妙なバランスによって、

わたしたちはごく自然に

アートの世界へと誘われていく。