シャッター街

シャッター街

思い思いに交錯する言葉とリズム

白寂、鉄塊、そして遁走する魂。
そうあれは、シャッター街に降った雪。
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新宿駅前の喫煙所で早朝
乞食が傘を振り回している
俺は煙草に火を点ける
スーツのリーマンが2、3人
皆好奇の目を向けている
俺はというと同じく見ている
ただ見ている
目が合うと目を逸らす
また見ている
乞食は傘を振り回し
しきりにゴミを一か所に集める
俺はそれをただ見ている
煙草は減るだけ
東京は眼クラが煙草をよく吸う
ここにゴミを捨てるなと書いてあるじゃないか
ゴミであふれる喫煙所
ゴミを集める乞食
乞食に言わせるとみんな眼クラ
みんなゴミ
ゴミがゴミを捨て集めゴミがそれをあざ笑う
それを見ているただの俺は
眼クラのくせに煙草をよく吸う
煙草を灰皿でひねりつぶす
消す
逃げるんじゃないよ
乞食が追う
俺は逃げた
小田急の階段を全力で駆け降りた
一度も振り返らなかった
狂っているのは


どこかの街に朝日が昇って 白い夜は溶けてった
誰かの思いは知らないままで 空はいつもどおりで


海の底みたいなこの部屋 溜息の温度で溢れて
指先つないだ僕らの鼓動は 昨日の夢にぶら下がったまま


きっと雨の音がすべて流してくれる
揺蕩うリズムの中 君の手を取るよ



どこかの街に朝日は昇って 白い夜は溶けてった
誰かの思いは知らないままで 空はいつもどおりで


湿った空気に乾いた肌が 震えてる静かに
この部屋に確かに君はいた そして僕はまた生まれた


きっと風の音がやさしく包んでくれる
揺蕩うリズムの中 君と踊るのさ



ああ 言葉にできない 僕の心を彩ってくれる



どこかの街に朝日は昇って 白い夜は溶けてった
誰かの思いは知らないままで 空は高く晴れた



ああ 言葉にできない 僕の心を彩ってくれる

いつも通り 何事もなく
自動改札に吐き出されて
雑踏に溺れていく

「 」

時間を気にする余裕もなく
華やかに着色された街を
ただ無言で歩く帰り道

一周忌は

仕事と託けて帰らなかった

陸橋の下の露天商の前で
私は珍しく立ち止まった
老婆が形の悪い馬鈴薯を売っていた

ああ ああ

私はこの街で

抗い難い快楽を知った

添加された甘みを

知ってしまった!


夕刻を告げるベルが鳴り
わたしの背中は俄に粟立つ

雲間から差す黄昏が
道往く子等を赤に照らしていた

遠く山の向こうから
母の呼ぶ声がした

暗くなる前に帰って来い と

私を呼んでいた

私は知っていた


舞えば観衆は見惚れ
打てば血が沸き立つ


幼少の頃からそうだった
足元では金貨が撥ねていた


長い長い旅路の中で
数多の失われつつある物語に触れた
硬い結び目を解いていくように
またひとつ理解した


風雲雷雨の音楽が背後に迫っていたから


新たな一歩を踏み出す前に
大きく深呼吸をしよう
魂は原始のリズムと共にある


霞がかった橋の向こう
歩みを止める生温い風


足元の深い谷は
私を飲み込もうとする
苔生した古いロープを掴んで見下ろすと


か細い流れの川が見えた


(悪魔の棲む谷よ)
銀色の魚が跳ねた


(魔の谷よ)

彼女はこの橋を渡った


(悪魔の棲む谷よ)
私は汗の滲む手を堅く握りしめ
川の流ればかり見つめていた

(私を飲み込もうとした)


川の流ればかりを見つめていた

俺は弱い人間だから、人に何かを与えてもらってようやく息を吸うことができるんだ。


依存を糧にして前進できる人もいるだろう、でも俺の場合は確実にダメになっていった気がする。


それでも何かを書いている間は、人に何かを与える存在になれる。


それは感動だったり、


たとえ退屈や嫌悪感であったとしても。



いくら考えても、結局書く理由なんて見当たらなかった。


今はこれで十分だ。

自分に正直に書こう。

「何のために書いていますか?」



この質問に答えることが出来ませんでした。


「何のために書いていますか」

「何を伝えたくて書いていますか」



何のために書いていますか。

わかりません。


書くことが好きですか。

はい。


どうして好きなのですか。

わかりません。



普段何を考えていますか。

特に何も考えていません。



俺は、ただ何となく生きてきました。

今まで、目の前に用意された「社会」というレールに沿って、

逸れないように、

ただひたすらに真っ直ぐに。



考えることを放棄して生きてきました。

だから

本を読んでも、音楽を聞いても、

「どうして好きなのですか」

この質問に答えられません。



今まで、そのことをひたすら外に漏らさないように生きてきました。

隠して、偽って、頑なに見せることを拒んで生きてきました。

嘘で塗り固めた顔で、周りと同じように振舞って生きてきました。

それだけならまだしも、俺は何か違うものを持っているんだと、

何か秀でたものを持っているんだと、

自分さえも騙そうと必死になって生きてきました。



でも、全て見抜かれていました。

ある人は静かに、それでいて暴力的に、

俺の嘘で固めた仮面を、引き剥がしていきました。

爛れた醜い素顔が顕わになり、

俺はどこかに隠れてしまいたい衝動に駆られました。



俺には、俺が分かりません。

俺は何なのか分かりません。

俺は何をしたいのか、何が好きなのか、何が嫌いなのか、どうなりたいのか。

何が幸せで、何が不幸で、何が楽しくて、何が悲しいのか。

俺には何も分かりません。



今まで気付かなかった訳ではなく、

認めようとしなかった自分の本性を

どう扱って生きていけばいいのでしょう。


生きていると変わることもあるのでしょうか。

変えることができるのでしょうか。

うちのサークルのライブが近づいてきた。

今回、僕は無謀にもうたいます。


ピアノの旋律と太鼓のリズムに

へったくそな僕のギターとうたが絡み合い

えもいわれぬ絶妙な不協和音となって

あなたの三半規管を破壊するでしょう。



お客さんがかわいそうだ(´・ω・`)

瞬きと共に零れた涙の向こう側で崩落していく色彩が音を立てる


僕が思い描いた世界の終わりは
太平洋があっけなく飲み込んだんだ


ああ このまま
砂浜に埋まった木箱の中でこのまま
乾いた筆先を無為に撫で付ける行為を繰り返すのか


それならいっそのこと
あの日に描いた終末を抱いて死んでしまいたいと思うがどうだろう

銀座にて珈琲を飲す
酷く苦い珈琲である

或る人は9割の無個性の前で1割の有個性を恥じた

――皆豪奢な洋服を身に纏って貧相な心を隠しているのだ あなただってそうは違わない筈だ ああやめてくれ そんな達観したような眼で私を見るのはやめてくれ


私は無言で席を立った
苦々しいエスプレッソの残り香だけが
私がそこに存在した事実を補完していた


駅へと続く階段ですれ違ったのは私自身だったろうか
発情期のように着飾っては
結局は自らを巨大な絵画の一部へと置換している

あれは 私自身ではなかったろうか


ホームに立って次発を待つ
ここは妙に閑散としていて
つい先ほどまできらびやかな街中にいた私は
何故だか可笑しくなってしまった

こみ上げてくる笑いを誤魔化そうと俯いたその視線の先
枕木と枕木の間
レールの途切れた部分に


鼠がいた