私がこの曲を諸星和己さんのライブで初めて聞いたのは、昨年夏のW encore(アコースティックライブ)だったと記憶している。この時のライブツアーのテーマは「君のために」だった。

 

ライブで数えきれないほど聞きましたという曲ではないのに、数えきれないほど聞いたかのようにずっと耳に残っている。特に、

愛してるんだ 君を

のフレーズ。

 

 

I'll be there for you (諸星和己)



自分も度々繰り返している言葉とシンクロしているからだと思う。

 

歌い方は、

あーーいしてるんだ君を

と愛情たっぷりに母音を伸ばすのが特徴。

あーーついこの思い My heart

あーーかるい君との My Way 


安定の母音伸ばしが繰り返され、否応なしにとりつかれる。かーくんの音楽は、歌詞も曲も心を絡めとられるリピートパターンが頻発するため、一度とりつかれるとなかなか引き離すことができない。頼むからしばらく頭から出て行ってくれ黙ってくれ気が散ってしょうがないんだ!と懇願しても、歌い続けるのです、私の頭の中でずっと。「愛してるんだ君を」は、こっちのセリフなのに。


2022年のライブで歌われた『I'll be there for you』は、アコースティックながらCD版よりテンポが上がり軽快なアレンジだった。

この曲、初出は2003年なのかな。20年前!かーくんは当時、30代前半。ニューヨークに住んでいた頃でしょうか。20年前だと思って聞くとそういえば声はすこーし若い…?んんん、いや、ほとんど今と変わらない。甘さと切なさが入り混じった低音も高音もストーリーテラーな歌い方も、この頃から確立していたようだ。


CD版はロックバラードの真ん中を、アスファルトを、踏みしめ歩いている感じ。22年のライブ版は、もう少し大人の余裕が出て、時折跳ねている。

かーくん自身は、明るいか暗いかという単純な二択で表現するなら、明るい人柄だと思う。でもかーくんの音楽は、明るいか暗いかという単純な二択で表現するなら、はっきり言って、暗い。この暗さが良い。甘いか苦いかで言うと…ジャムや生クリームの甘さというよりは、ビターチョコレートやカフェラテの甘み。


かーくんの音楽を聴き始めた頃は、幼い頃に仰ぎ見ていたスーパーアイドルのお兄さんとも、近年の世間的イメージともギャップがあって、え!こういう音楽つくるんだ…と良い意味で驚いたものです。

ニューヨークは活気があって刺激的な街だけど、寒々しく陰鬱なところもあるから、そういう環境の影響も受けたのかなあ、と思っていたけど、ハワイに行っても常夏の太陽のように突き抜けて明るい楽曲になるわけでもないのよね。もちろん、コロナ禍でうまれた曲たちだからというのもあると思うけど。

パンデミック以前から、アップテンポな曲調でも歌詞が鬱屈の産物とみられたり、愛を歌ってもどこか哀しげであったり、頻繁に「永遠」と言いながら、人生にはいつか必ず訪れる「終わり」や「別れ」の影がちらつく歌が多いような気がする。

もちろん全部が全部ってわけではないと思う。この『I'll be there for you』は特段「暗い歌」には分類されないだろう。かーくんの世界観の中で何度も何度も繰り返されるメッセージ(君のために、永遠に、そばにいるよ)がぎゅっと詰まっていて、終盤は多彩なセルフコーラスで厚みを持たせ、着地も華やか。

ライブでのアレンジはCD版とはまた違う魅力があって素敵だったから、ライブ版も音源化されたらいいのになあと思っている一曲です。


愛してるんだ 君を
Forever 必ず
I'll be there 
I'll be there for you