近年、「美術館の裏側見せます」的映画が増えてきた気がします。『ナショナルギャラリー 英国の至宝』とか『グレート・ミュージアム ハプスブルク家からの招待状』とか。私は美術にはごくごくうっすらとながら接点はあるのでこういうドキュメンタリーはついつい見たくなってしまいます。
美術館ものとはちょっと違うのですが、『アートのお値段』というドキュメンタリー映画が面白かったです。
アーティスト、オークショニア、コレクターなど様々な視点から、芸術やその商業的価値について語られるドキュメンタリー映画です。
作品の価値は値段で決まるのか、なぜそんな高値をつけられるのか、人はアートの何に魅せられるのか、何がきっかけで市場価値が見出されるのか、売れる作品とつくりたい作品が違ったらどうしたらいいのか…
私は素人ながら、はるか遠くから、たまーに、ごくごくうっすらと、こんなことを疑問に思っています。こうして書いて見ると興味の視点がバラバラですね(笑)。自分自身は製作者でも仲介者でも購入者でもないから、なんかごちゃごちゃっと、よくわかんないな(でもちょっと楽しそう…)と思っている。だから、製作者や仲介者や購入者が思い思いに話すこの映画が面白かったのです。
美術館なんて墓場だ(展示されなければ地下に所蔵されたままだから)とうオークショニアもいれば、あらゆる人に見てもらうために美術館にこそ展示されたいというアーティストもいる。現代アートのなれの果てが高級ブランドという批評家がいれば、ルイ・ヴィトンとコラボするアーティストもいる。
異なる思いや意見が交錯し、時に対峙しているように見えたり、片方を批判してるように聞こえることもあるのですが、映画全体では客観性を保とうとしていたと思います。どの方の話にも(方向性はそれぞれ違えど)情熱のようなものを感じて聞き入ってしまいましたが、特に、今を生きるアーティスト、芸術活動とビジネスの狭間にいる彼らの言葉が印象的でした。
どれが正しい、間違っている、と白黒つけられる問題でもないので最後まで明確な答えは出ませんが、見た人が自分の中に落とし込んで思考を巡らすことのできる映画だと思います。
原題はThe Price of Everything。著名なコレクターがこの映画の中で発した言葉で、ああここから引用したのかなと思っていましたが、元をたどればオスカー・ワイルドの「ウィンダミア卿夫人の扇」の登場人物の台詞だそうです。What is a cynic? A man who knows the price of everything and the value of nothing. 「皮肉屋ってなんだろう」「あらゆる物の値段を知っているが、そのいずれの価値も知らない人間のことさ」
価値も知らずに、値段をつけていく・釣りあげていくことへの皮肉ともとれます。
この映画で度々登場したアメリカの現代美術家ジェフ・クーンズ。映画では落ち着いた紳士、会社を率いるビジネスマンっぽく見えたけどキッチュでポップな作品は賛否両論、度々物議を醸しだす。「売れっ子」であることは確かなようですけどね。
私は「こんなのがアートと言えるのかッ!」っていう境界線がわりと遠くの方にあるというかぼやぼやしててよく見えない人間なのでクーンズ作品にも特に抵抗ありませんが、好きかと言われるとそんなこともないというか、それほど強い感情は覚えないというのが正直なところです。
とはいえそこそこミーハーなので、映画の途中で、あっそういえば、昔初めて行ったフランス旅行で見たアレ、クーンズだった!と思い出しひとりニヤニヤしました(笑)
2008年、ヴェルサイユ宮殿にて。
たまたまなのです!クーンズの展示があるなんて全然知らなかった。当時、思い切った試みだなーでもフランスではこういうの普通なのかな?くらいに考えていましたがこれがヴェルサイユ宮殿における第一回目の現代アート展覧会だったそうで、で、こういう展示にはフランスでも賛否両論はあるそうで。
偶然にも貴重な機会に居合わせることができたんだなあと、11年後の今、気づきました(遅!)


