僕の音楽の耳はフリッパーズに、生き方は電気グルーヴに教わった
今年のサマソニは、suedeと電気グルーヴで参加を決めた。
もちろん他にも観たいアーティストはいる。でも、チケットを買う決定打になったのはこの二組だった。
考えてみれば、50代になった今もこうしてフェスへ行こうと思わせてくれる音楽があるというのは、なかなか幸せなことだと思う。
そして最近、小沢健二の話をしていて、ふと自分の音楽人生について気づいたことがある。
僕の音楽のセンスを作ったのは、間違いなくフリッパーズ・ギターだった。
80年代末から90年代初頭。
当時はバンドブームの真っ只中で、BOØWY以降の流れを汲むようなロックバンドがたくさんいた。
もちろん格好いいバンドもいた。
でも、その中でフリッパーズ・ギターは明らかに異質だった。
音楽だけじゃない。
服装、ジャケット、言葉遣い、雑誌での発言。
全部が妙に洒落ていた。
そして何より、小沢健二と小山田圭吾は恐ろしいほどの音楽マニアだった。
僕はフリッパーズを聴きながら、こんなことをするようになった。
「この音、元ネタは何だ?」
調べる。
知らない海外のバンドに辿り着く。
そのバンドを聴く。
今度は、そのバンドが影響を受けた音楽が気になる。
さらに遡る。
また知らない音楽が出てくる。
今なら検索して、その場ですぐ聴ける。
でも当時は違った。
音楽雑誌を読み、レコード屋へ行き、輸入盤を探す。
ライナーノーツに知らない名前が出てくれば、また調べる。
そうやって一枚のレコードから枝が伸びていった。
気がつけば僕は、「好きなバンドを聴く人」ではなく、「好きな音楽の後ろ側まで覗きに行く人」になっていた。
これは完全にフリッパーズの影響だと思う。
だから僕の音楽趣味は、ジャンルで説明しようとすると滅茶苦茶だ。
Pink Floydを深く聴く。
New Orderを聴く。
The Stone Rosesに憧れる。
KLFや808 Stateの電子音に惹かれる。
suedeを追い続ける。
TOOLの巨大な音世界にハマる。
METALLICAのヘヴィネスに浸かる。
Talking HeadsやDavid Byrneを掘る。
Arctic Monkeysを聴けば、アレックス・ターナーが何を聴いてきたのかまで気になる。
一見すると全部バラバラだ。
でも自分の中ではつながっている。
「この音はどこから来たんだ?」
その好奇心がずっと続いているだけなのだ。
フリッパーズ・ギターは、僕に好きな音楽を教えてくれたというより、音楽の聴き方そのものを教えてくれた。
では、電気グルーヴは何だったのか。
こちらはもっと大きい。
生き方、物事の考え方、そしてお笑い。
僕は電気グルーヴから、そういうものをかなり教わった気がする。
石野卓球とピエール瀧。
とにかくくだらない。
ラジオを聴けば、いい大人が何を喋っているんだと思う。
でも、そのくだらなさを徹底的にやる。
世の中の権威や常識を茶化す。
格好つけている人間がいれば笑う。
しかし、単なる冷笑ではない。
自分たち自身も平気で笑いものにする。
ここが大きかった。
「世の中なんて大したもんじゃない」
で終わらない。
「まあ、俺たちも大したもんじゃないけどな」
まで行く。
僕はこの感覚が好きだった。
人生、何でも真正面から受け止めていたら疲れてしまう。
真面目にやるべきところでは真面目にやる。
でも、どうでもいいところでは笑ってしまえばいい。
くだらないことを楽しめる余白を残しておく。
それを電気グルーヴから学んだ気がする。
ただし彼らは、音楽については全然いい加減じゃない。
むしろ異常なほど真剣だ。
テクノという音楽を僕に教えてくれたのも電気グルーヴだった。
笑いと電子音。
悪ふざけと職人気質。
その両方が同居しているから格好いい。
だから僕の中には二本の太い柱がある。
フリッパーズ・ギターからは、
「知らない音楽をもっと探せ」
と教わった。
電気グルーヴからは、
「そんなに格好つけて生きなくていい」
と教わった。
そして、その二つを抱えたまま歳を取った。
今年、またサマソニへ行く。
目的の一つはsuede。
彼らもまた、僕が長く付き合ってきたバンドだ。
若い頃の思い出だけではない。
今でも新しい音楽を作り続けているから観たい。
そして、もう一つが電気グルーヴ。
青春だった。
ラジオを聴いて笑った。
テクノを知った。
物事を少し斜めから見る面白さを知った。
いい加減でいることの大切さも教わった。
そんな二人を、50代になった自分がフェスでまた観る。
考えてみれば不思議なものだ。
若い頃に聴いた音楽は、思い出になるだけではない。
その後の音楽の聴き方を作り、考え方を作り、ときには生き方まで作ってしまう。
フリッパーズ・ギターがいなかったら、僕はこれほど音楽を掘る人間にはならなかったかもしれない。
電気グルーヴがいなかったら、今よりもう少し肩肘張った人間になっていたかもしれない。
音楽の耳は、フリッパーズ・ギター。
生き方と笑いは、電気グルーヴ。
そして今もsuedeを聴き、知らない音楽を探している。
今年のサマソニは、その答え合わせをしに行くようなものなのかもしれない。
いや。
電気グルーヴなら、そんな格好いい言い方をした瞬間に笑われそうだ。
だから単純にこう言っておこう。
今年のサマソニ。
suedeと電気グルーヴが出る。
だったら行くしかないでしょ(笑)。
