「それ」に最初に気づいたのは同僚の I さんであった。
人間に限らずウーパーに限らず生物に五感が備わるのは、食べ物を見つける目的の他に、身に迫る危険を素早く察知するためである。
その聴覚は獰猛な生物の足音をいち早く捉え、
その視覚は危険な天敵や場所をいち早く見つけ、
その味覚は食物の異常な成分をいち早く知覚し、
その触覚は暑さや寒さ、痛みにいち早く対応し、
そして、その嗅覚は有害な物質の存在をいち早く嗅ぎ分ける。
ことほど左様に、この世に生きる全てのものは五感をフルに活用し、危険に対処、あるいは危険にそもそも遭遇しないよう血道をあげている。
それは文明にすっかり慣れてしまい生物としての本能が薄まったとされる我々人類も例外ではなく、車の運転だったり夜道の女性の過剰反応だったり、文明に溺れてるなら溺れてるなりに僕たちは五感をバリバリに使い、それはそれは愉快に人生を楽しんでいるのです。
そんなセンシティブな五感をフルマックスに操る猛者が集う僕の職場で、小さな事件は起こった。
同僚の I さんが顔をしかめ
『クサイ』
と呟くではないか。
それも、僕の瞳を真っ直ぐ見据えながら、ありったけの侮蔑を含んだ視線を浴びせかけてくるではないか。
べべべべべべべべ別に僕はそんな臭くないしお風呂だって入ってるし洗濯だってしてるしそんなに臭かったらとっくに自分で対処してるしそもそも今まで臭いって言われたことないしでもでも自分の匂いは自分では気付かないっていうし今までは周りが気を遣って指摘されなかっただけで本日とうとうピシャリと指摘される日がきてしまって年貢の納め時で諸行無常の響きありであばばばばばばばばばばばばばばばb
などという狼狽をゴクリと飲み干し、精いっぱい動揺を隠し『クサイ』の真意について尋ねると、どうやら職場のケータイ売り場に謎の悪臭が漂っており、僕が匂いの発信源というワケではないそうだ。
いや、すっげえクサイの。
なんか夏場の三角ゴミコーナーみたいな繁華街の路地裏みたいな、とにかく酸っぱい匂いが職場のバックヤードに充満してるの。
おせっかい焼きのスピードワゴンさんがいたら間違いなく『ゲロ以下のにおいがプンプンするぜッ』と評してくれそうなそのバッドスメルは、成分こそ人間由来の汗の匂いなのですが、その濃密な匂いは汗にして汗を超えたキングオブ汗の香りそのものだったの。
良く出来たカレーが幾層にも重なったスパイスのオーケストラだとすると、そのフィールドに展開された匂いはまさに汗どもの八重奏(オクテット)。
新しい汗、古い汗、白い汗、黒い汗、激しい汗、優しい汗、やんちゃな汗、ちょっぴり恥ずかしがり屋な汗、それらが綯い交ぜになった香りは、我々人類が誇る嗅覚が白旗を揚げるには十分すぎた。
あまりの香りの多重奏に目眩を起こしていると、その匂いの発信源の方が『どうしたのでありますか!?』みたいな感じで絡んできました。
うん、本人はたぶん己のポテンシャルに気づいていないみたい。
『大丈夫だ、問題ない』
みたいな返答でその場を去りましたが、匂いのせいで呂律が回らなくてモゴモゴとしか言えませんでした。
これ以上書くと特定に繋がるし自分で書いててあんまり感じも良くないからそろそろ切り上げますが、僕が一番ゾッとしたのは、この方が「自分の匂いに無頓着でいる」という点です。
これほどの匂いがイオナズン級の威力で炸裂しているのだから本人とて被爆しているはずなのですが、我が身がとんでもない匂いを発散しているなどとは毛ほども想像していないという顔で、この世の春を謳歌しているのです。
その事実はつまり、
「人様の匂いをクサクサ言っといて、自分も実は臭かった」
なんて事態が充分に考えられるのです!
あの匂いを!自分が!!バラまいている!!!
そんな考えるだけで恐ろしい事態も、件のお方のキョトン顔からして、決して考えすぎではないのです。
一事が万事、匂いに限らず自分では気づいていない不愉快を他人に振りまいているかもしれない。
加害妄想に陥るのは問題ですが、常に自分も他人を不快にする振る舞いをしていないか、自分をコッソリ疑いながら生きていたいものです。
失言王である僕であればなおさらです。
臭さについて言及したもう一つの記事
ワキの臭さは異常

ウーパーは静かに暮らしたい
前置きとの関連性は無いただのサムネ要員
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皆さんは、ケータイに付いてるワンセグ(テレビ)って使ってますか?
使ってないですか。
そうですか。
僕は仕事柄ケータイ選びに迷っている人を、時には優しく、時にはやらしく手助けしてあげており、そのお駄賃でご飯を食べております。
ドンピシャリに好みのケータイがある方は迷わずその機種を選ぶので問題ないのですが、たいていの方は『そろそろ今のケータイは2年経つから機種変しなきゃなの!』という謎の義務感でケータイを選びにきますから、どのケータイを買えばいいか自分でも解らない事が多いです。
そんな方には、ケータイ屋店員としてはまずお客様に「どんな機能が必要か、どんな場面でケータイを使うか」のヒアリングをかけていきます。
この部分はケータイに限らず、ほとんどの店舗型の販売業では当たり前ですよね。
そんなこんなで日々お客様のニーズを聞き込む生活なのですが、どのお客様に『ワンセグって要りますか?』って聞いても、『ワンセグ?ハッ!要りません!!』って言われるんですよね。
『はは、そうですよね(^^』
なんて風に僕もサラリと流して次の話題に移るんですが、なんか最近、ワンセグ先輩が不憫に思えてならないのです。
誰も彼もが『ワンセグ要らぬ』と断言して憚りませんが、本当に皆さんはワンセグ先輩のことをよく知った上で要らない宣言をしているのでしょうか?
なんかお金掛かりそうだから....。
もともとテレビ番組は見ないから....。
小さい画面でテレビなんて見ないし....。
そもそも『ワンセグ』って呼び名がキモいから....。
こんな声が聞こえてくるようですが、僕からしたら笑止千万、片腹痛いというもんです。
まずワンセグは、こんな方式で垂れ流している電波のおこぼれを勝手に頂戴しているので、料金はビタイチかかりません。NHKに受信料支払い義務の可能性があるくらいです。
タダなんだからモリモリ使えばいいのです。
もともとテレビ番組は見ないという方は、最近のテレビがつまらんという気持ちもあるんでしょうが、場合によっては、番組の好み云々なんて次元では済まない時もあるのです。
たとえば2011年の大地震の際には、通話やメールの通信インフラが完全にパッパラパーになり、災害情報が一部のSNS、ラジオ、ワンセグでしか得られないといった時もありました。
僕も仕事中に地震に遭遇したのですが、家のウーパー達(あと家族)が心配で車で実家に帰る際も、車内でケータイワンセグで被害状況を確認しながら向かったものです。
緊急時なんだからモリモリ使えばいいのです。
小さい画面でテレビを見たくないという意見にも一理ありますが、使いどころによってはその「コンパクト」という点が据え置きテレビには真似できない役割を果たすのです。
汚い話ですが、ゲリ腹抱えて『よーしパパ今からトイレに立て籠っちゃうゾ』という場面では便座で考える人の体勢でいる時にワンセグがあったら最高の暇つぶしになります。
狭いトイレにテレビなんか置けません。せいぜいが読みすぎてヨレヨレになった大長編ドラエもんのコミックを置いとくのが関の山でしょう。
そう考えると、狭い空間へのテレビの持ち込みというのは、ワンセグ受信端末ならではの使い途といえるでしょう。
据え置きテレビでそんなマネができる者がいるだろうか。いや、ない。
腹が痛いんだからモリモリ使えばいいのです。
『ワンセグ』という響きがなんかキモい。これも一理ある。何故なら、なんかキモいからな。
だがコイツ↓を見てくれ。コイツ↓をどう思う?

どうだろうか。コイツ↑のキモさに比べれば、『ワンセグ』のキモさなど児戯に等しくはないだろうか。
このようにワンセグ先輩にはまだまだ捨てるには惜しい使い所がある。
風呂場に持ち込んでもいいし、入院している家族がテレビカードを買う代わりに持ってもいい。
あるいは電波の良い所にワンセグ録画モードで数時間放置し、年末のガキ使スペシャルをまるっと保存してもよい。
なに?年末スペシャルでワンセグケータイを外に出してたら、あけおメールも大晦日ツイートもできないって?
逆に考えるんだ。『大晦日はどうせメールも電話も繋がらないや』と考えるんだ。
そんなワケでワンセグ先輩を生かすも殺すも、使う我々次第。
せっかく高いお金で買ったケータイと共にやってきたワンセグ先輩、要らないと断ずるには早計すぎます。
おわコンと切り捨てるのは簡単ですが、自分の生活サイクルを考えればワンセグ先輩との楽しいお付き合いができるかもしれませんよ。
いくらキモいといっても、陸棲に変態した哀れで醜い可愛いウーパーよりはマシだと思うウパがお送りいたしました。



























