『ボトルネック』にも『インシテミル』にも響かなかったのに『儚い羊たちの饗宴』でずどんと撃ち抜かれたのだから、この結末、予想できていた。そして本当に、嬉しすぎる予定調和だった。

気持ち良く言い切ります。
米澤穂信は、短編がいい!

『儚い~』ではどこか懐古主義的韻律で物語を括りつつ、少女目線の濃いサイクルで短編をまとめた米澤穂信が、今回は、土俗的、古典的、伝統的な正当の手法で、小さく堅実に、物語を横串につないでみせてくれる。
小市民シリーズなどの作家の顔とはまた違って、リアリティたっぷりに様々な違う犯罪者たちが描かれるが、驚くのはそれぞれの描き込みかた。

中学生の繊細な心の機微はいいだろう。しかしそれと横並びに駐在員の巻き込まれる東南アジアの利権にからむ賄賂文化、江戸川乱歩の薫り漂う下宿などをぴしりと書き込まれると、この人、やるなあっておもう。

難を言うなら、それがあたしがこの人の長編が読めない理由なのだが、とにかく犯人がわかりやすい。犯行理由も、ものによってはわりとらあからさま。素直といえば素直だし、短編だから仕方ない?でもすこし、勿体無い気もするのだなあ。地の文が丁寧なだけに、も少ししなやかにしまっても?

なんて贅沢ですが、いやもう、あともういっぽ。関守はそれを差っ引いても、しん、と、沈むような恐怖があって、よかったもの。