- てのひらの闇 (文春文庫)/藤原 伊織
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私は手帳をとりだした。
それを見ながら、携帯の番号をおした。
最初、電話にでたのはマイクのほうだった。
「姉さんはいるかな」と私はいった。
「なんだ、あんたか。姉貴に、なんか話があるの」
「うん。これからデートを申しこむ」
笑い声が聞こえた。
本気にはしていないのだろう。
ナミちゃんがすぐ電話口にでた。
「なによ、あんた、私を誘惑したいんだって」
「そのとおり」私は閉じられたシャッターのまえで、星のみえない夜空を見あげた。