親知らず | Get up-joe. Stand up-joe!

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How many ways do you know to free yourself ?

保険書を提示し待合室で待っている間、例の歯を削る音がひっきりなしに響きわたっていた。

「up-joeさん親知らずが虫歯になってますねー、抜きましょう。」

その言葉はまるで悪夢から醒めた後のような曖昧さですぐに認知する事が出来なかった。

「up-joeさん30分ほどお時間いいですか?」

数年前親知らずを抜いた時の痛みを鮮明に思い出していた。

「えぇ、大丈夫です。」

かすれた声で返事をした。

メリメリと骨と骨を引き裂くような音をさせながら親知らずは抜けていった。

前に妹からビジュアル系のアイドルはみんな親知らずを抜き小顔にすると聞いた事があるが、鏡に写る私の顔は片方の頬がはれあがりホラーに近いものがあった。

痛み止めは飲んだもののその日もあまり眠れなかった。


翌日、眠い目を擦りながら歯医者に消毒に行った。

「明日も消毒に着て下さいね。」

早く歯医者に行かなくてもいい日々の訪れを心から願った。


多少痛みはあるものの昨日よりは寝れたような気がした。

2日目の消毒の日まさに想像を絶すると言っても過言ではないような言葉を歯科医の口から聞かされた。

「up-joeさん親知らずもう1本残ってますが、抜きますか?」

しばし呆然としていたがおそらく苦悩の表情をうかべていたに違いない、すぐに歯科医は笑顔になり

「男性は痛みに弱いですから、また今度にしましょう。」

振り向き私のカルテを歯科助手に渡そうとしていた。


「抜いてくれ」


歯科医は私に向き直り黙って私を見つめていた。

私は目を閉じゆっくり口を開けた。

1本残しておいても噛み合わせが悪くなるとか歯科医が説明していたような気がしたが、すでに歯科医の声は私には届いてこなかった・・・