うらやましたろう   魚住珊瑚

 

 

ちょっと休憩するだけ、が、

ほんとうに休憩だった試しなんてないから

遠い町から送られてきた速達便を

開封しないまま焼却炉に投げ入れた

ラムネとサイダーの違いは微々たるものだから

あいつの頭をカチ割るついでに

瓶の中からビー玉を取り出してごらん

 

躯をコンクリートで固めてしまえば海面に浮いてこなくて楽だよ

ぼくは先に竜宮城でまっているからね

 

鈍行列車はたんたんと歩んでいる

取り壊しが決まった古ぼけたアパートの鍵を乗せて

薄くなった頭髪も

ミニスカートから伸びる肉付きのいい脚も

冷え切ってしまったから

立ち入り禁止の看板に気がつかないふりをした

 

玉手箱はパンドラの匣だとクラゲに聴かなかったのかい

匣の中に最後まで残った

乙姫の心臓

 

ビー玉が美しいのはあの瓶の中にいるからだよ

4両編成の電車に飛び込んだってわたしたちは死ねない

(喉の奥につっかえた飴玉の方が

(わたしたちを簡単に殺してくれます

 

白濁した液体を無理に飲み込んでわたしたちは大人になります

浦島太郎は亀の頭を飲み込んだから心配ありません

首のない亀も 心臓をなくした乙姫も

竜宮城でまっています