ゆかっちの主治医は、研修1年目のI先生、大学院生のM先生(女性)、そして、初診の時に診察していただいた血液専門のK先生(肩書きは助手)。


 I先生は、まだまだ勉強中ですという感じですが、誠実で、とてもよい人でした。でも、ルート入れはへたでした。ゆかっちが出すなぞなぞを真剣に考えてくれて、おちょくりがいのある人でした。

 I先生、いっぱいおちょくって、ごめんなさい。

 

 M先生は、ひょうひょうとした感じのすてきな女性。後で聞いたのですが、武道家だそうです。


 K先生は、キャリアもあり、ドライで、病状説明などは結構淡々とおっしゃいます。独特の雰囲気があり、人によっては好き嫌いがありそうだなと思ったのですが、やはり苦手に思っている患児のおかあさんもおられました。

 でもね、私はK先生、好きなんですよ。

 点滴のルートを入れるときも鉛筆が持てるように考えて入れてくださるし、子どもに対してよく話しかけてくださるし、質問しても的確に答えてくださるし。

 それに、K先生の一言に私が救われたから。


 初診の時、K先生の話を聞きながら、私は、鼻血がいっぱい出たこと、体の青あざ、唇の色が薄いこと、顔色の悪さなどなど、いくつも症状が出ていたのに、こんなに状態が悪くなるまで病院に連れてこないで、なんでもっと早く気づかなかったのか、情けない、情けない…、という気持ちでいっぱいでした。

 たまりかねて、「もっと早く連れてくればよかったですか?」と尋ねました。そう、誰がどう見てももっと早く連れてきたらよかったに決まっています。


でも、K先生はこう言ったのです。

「大人でもこんな風に真っ青な顔でふらふらになって、誰かに連れられて来ることが多いんですよ。いいじゃないですか、今日来たんだから。」


 今でもこの言葉を思い出すと、ありがたくて涙が出てきます。

 もし、このとき、「そうですね。もっと早くに連れてきていたら、こんなにしんどくなかったと思いますよ。」とでも言われていたら、どうだったでしょう。私はこの後も、つらい気持ちを持ったまま過ごすことになり、自分を責め続けたことでしょう。K先生との信頼関係も築けたかどうかもわかりません。

 でも、この一言があったから、「今日来たからいい。これから治療をがんばったらいい。」と思うことができたのです。

 本当に、私はこの言葉で救われたと思います。


 K先生は、現在アメリカに留学中。帰ってきても、ゆかっちを診てくださいね。