【文はやりたし】中谷美紀 | 【Mink 。本のにおいがスキである。】

【文はやりたし】中谷美紀

■タイトル:文はやりたし

■著者:中谷美紀

■発行:令和5年10月5日

■発行所:株式会社幻冬舎

■定価:カバーなしの為、不明


残したい箇所を抜粋します。


15%、17%、20%と3段階で明記されるチップのうち、心地よい接客には20%を支払うことも決して惜しくはないけれど、自ら20%の支払いを要求する態度にはさすがに私たちも閉口した。心付けとは、受け取る側ではなく、渡す側が気持ちで行うものだとばかり思っていたものの、どうやら違うらしい……。


はじめの1ヶ月は身体が糖質に依存していたため、涙が出るほど辛かった。それでも健康な身体と美しい肌を手に入れるため、糖質を断ち、玄米に全粒粉、そば以外の炭水化物断ちを心がけた。お陰で数年経った今では、糖質を欲することもなくなり、何もせず、自宅でゴロゴロしているだけでも疲れやすかった身体が、何時間でも歩き回れるようになり、偏頭痛や花粉症はいつの間にやら鳴りを潜め、しつこい大人ニキビにも久しくお目にかかっていない。


ドラマの撮影をしていた4ヶ月の間、一日たりとも休むことなく働き続け、ようやく夏休みを迎えた。ワークライフバランスが叫ばれるこの頃において、一日も休みがないなんて冗談のようだが、辛うじて訪れる撮影のない日には、コマーシャルの撮影や取材が入っており、運良く何も入っていないとしても、次々と渡される台本を血眼で読む日なのである。


友人知人には、「ノーギャラで結婚式の主役を演じることは割に合わない」と言って煙に巻いた。


物語を解体したような実験的な作品や、何度観ても理解できぬ難解な作品や冗長な作品を眠い目をこすりながら無理して観ることがステイタスでもあった。


所有するのではなく、たった一度きりの幻の瞬間を追い求めて、今夜もまたコンサートホールへ向かおうではないか。