投稿者 まわ


0.はじめに

 前回は外食産業全体の定義や現状について発表した。今回はその中のファーストフードについて、特に今回はハンバーガー業界、マクドナルドやモスバーガーを事例として取り上げ、まとめていきたい。


1.ファーストフードとは

1-1.定義


来客1人あたりの消費金額が700円未満で、料理提供時間がおおよそ3分未満のもの。

(農林水産省 外食産業に関する基本調査の概要より)


1-2.分類

a.洋風:ハンバーガー、チキン、サンドイッチ、カレーショップ、アイスクリーム、ドーナツなど。

b.和風:牛丼、天丼、たこ焼き・お好み焼き類など。

c.麺類:立ち食いそば・うどん、ラーメンなど。

d.持ち帰り米飯・回転寿司:回転寿司など。

e.その他:上記の4つに分類されないもの。

(日本フードサービス協会 外食産業市場動向調査ファーストフードの区分より筆者作成)


2.ハンバーガー業界

a.ハンバーガー業界とは主力商品として「ハンバーガー」を売る業界のこと。

b.「洋風ファーストフード」に分類される。


2-1歴史

〈世界〉

a.1904年アメリカのセントルイスで開催されたセントルイス万国博覧会で、ハンバーグを丸パンにはさんで販売したのが起源とされる。

b.どこの店でも同じ味、同じサービスを提供できるチェーン店スタイルは1921年 カンザス州で始まる。

c.1948年カリフォルニア州でマクドナルド兄弟が経営するドライブインのレストランでハンバーガーがメニューに加えられ、人気となる。

d.1955年イリノイ州シカゴでレイ・クロックがマクドナルド第1号店をオープンさせ、ハンバーガーが世界に広まっていく。

〈日本〉

a.戦後まもなく佐世保などの米軍基地周辺の飲食店でハンバーガーが作られ、地元で評判となる。

b.1970年ダイエーが「ドムドムバーガー」の1号店を東京の町田市に出店。

→日本最初のハンバーガーショップ

c.1971年東京銀座に日本マクドナルド1号店がオープン。その後ロッテリアやモスバーガーなどハンバーガー業界各社が出店し、ハンバーガーショップが普及していく。




2-2.現状

2-2-1.市場規模




〈市場規模金額〉

5,301億円(96年) 5,732億円(97年) 6,137億円(98年)

6,245億円(99年) 6,504億円('00年) 6,445億円('01年)

6,040億円('02年) 5,953億円('03年) 6,090億円('04年)

5,875億円('05年) 6,205億円('06年) 6,670億円('07年)

6,910億円('08年)

a.2009年見込みは7,130億円

b.2001年から2003年にかけて市場規模が減少

→2001年に日本でもBSE問題が発覚し、その影響を強く受けたため

→BSE問題への安全性が保障され影響が薄れたため、2005年以降、上昇傾向にある。

c.2005年以降停滞する外食産業の中でも、市場規模を伸ばしている産業であるといえる。


2-2-2.利用頻度






a.「ほとんど利用しない」:全体では47.9%(194人)、男性では51.9%(107人)、女性では43.7%(87人)と半数近い。

→ほとんど利用しない理由は食の安全や健康志向の高まりからではないだろうか。

b.「月1~5回程度」は、全体では46.7%(189人)と回答者の半数近い。

c.「月6~10回程度」と答えた人が最も多かったのは20代。

d.この調査では10代が含まれていないため、10代の利用者数を調査していればおそらく利用者数、利用頻度ともに多いものと考えられる。






a.マクドナルドと答えた人は全体の70.6%(149人)、男性では73.7%(73人)、女性では67.9%(76人)

b.モスバーガーと答えた人は全体では13.7%(29人)、男性は13.1%(13人)、女性は14.3%(16人)


2-2-3.市場シェア



a.シェア上位3社は、マクドナルド、モスバーガー、ロッテリアであり、この3社で市場シェアの90%以上を占める。

b.マクドナルドは市場シェアのおよそ70%を占めている。

c.モスバーガーは市場シェアのおよそ15%を占めている。

d.ロッテリアは市場シェアのおよそ5~8%を占めている。


2-3.マクドナルドとモスバーガー

2-3-1概要と沿革

〈マクドナルド〉

会社名:日本マクドナルド株式会社

設立日:1971年05月01日

創業者:藤田田   現代表:原田泳幸

〈沿革〉

1971年 会社設立

1977年 日本で初めての本格的なドライブスルー方式    

     を採用した店舗をオープン(東京都杉並区)

1982年 全店年間売上高702億円を超え、外食産業の頂点にたつ

2003年 創業者、藤田田が代表取締役会長を退任

2004年 原田泳幸が代表取締役に就任




〈モスバーガー〉

会社名:株式会社モスフードサービス 

設立日:1972年07月21日

創業者:櫻田慧  現代表:櫻田厚


〈沿革〉

1972年3月 東武東上線成増に実験店オープン

1972年 株式会社モスフードサービス設立

     創業者、櫻田慧代表取締役社長に就任

1996年 東京証券取引所市場第一部に上場

1998年 代表取締役社長に櫻田厚、就任




2-3-2.店舗推移及び売上高の推移




       2006年 2007年 2008年 2009年 2010年

店舗数(店)   3,828  3,746  3,754 3,715  3,302

売上高(億円)  4,415 4,941 5,183 5,319  5,427

  図5 マクドナルド店舗数及び売上高の推移

(マクドナルドHPより筆者作成)

a. 店舗数は減少傾向にある。

→これはマクドナルドが意図的に店舗数を減らしている。

b.売上高は2006年以降毎年増加している。






       2007年 2008年 2009年 2010年 2011年

店舗数(店)   1,391  1,337  1,282 1,303  1,391

売上高(百万円) 59,890 62,301 6,0641 60,009 63,175 

  図6 モスバーガー店舗数及び売上高の推移

(モスバーガーHPより筆者作成)

c.店舗数は2007年3月期から2009年3月期までは減少しているが、その後は増加傾向にある

d.2010年から2011年にかけて店舗数、売上高ともに上昇している。


2-3-3.経営戦略の違い




図7はマイケル・ポーターが唱えた経営戦略論の3つの基本戦略を図にしたものである。経営において競争に勝ち抜くための「違い」とは基本的には相手よりも「安く作る」か「機能や品質において違いを作る」かのいずれかをとる必要があるというもの。


a.コスト・リーダーシップ戦略:競争相手よりもとにかく「安く」作ることを目的とした戦略。マクドナルドがこれにあたる。

グローバル・パーチェシングシステム:マクドナルドは世界中にチェーン展開しているため、世界中に原材料調達の道をもつ。それを利用し、世界中の原材料価格をリアルタイムで把握し、最も安価なところから購入することのできるシステムのこと。→原材料の点で他社よりコストを削減できるため、マクドナルドのコスト・リーダーシップ戦略において重要な役割を果たす。

b.差別化戦略:製品やサービス面で「違い」を作り出す戦略。モスバーガーがこれにあたり、「おいしさ」「安心・安全」の点に特化し、他社との差別化を図ろうとしている。

ex.)モスの生野菜:できるだけ農薬や化学肥料を使わない方法で育てられた野菜を全国の協力農家から仕入れている。→原材料の産地やこだわるなど、コストより「おいしさ」「安全」などの品質にこだわっている。




a.マクドナルドを利用する理由で最も多いのは、「価格」

で34.9%→マクドナルドで最も支持されているのは「価格」

b.モスバーガーでは「味」が69.0%を占め、「価格」を支持する人はいなかった。→モスバーガーで最も支持されているのは「味」

それぞれ異なる経営戦略をとる結果として、図8・図9が示すように、異なる顧客層を獲得することに成功している。マクドナルドが市場シェアを圧倒的に占める中、

モスバーガーはうまくマクドナルドとの差別化を図り、利益を上げている。


2-3-4.経営戦略の共通点

a.メイド・フォー・ユー(マクドナルド)/アフターオーダー方式(モスバーガー):作り立てを食べてもらうために、注文を受けてから作り始める方式。モスバーガーは創業当初からこの方式であったが、2000年までは「作り置き」を採用していた。2000年よりマクドナルドは「メイド・フォー・ユー」を導入。これにより、作り立てを食べてもらえるとともに、作り置きによる売れ残りがなくなり無駄を省くことに成功。

b.意図的に店舗数を減らす

図4・5から、店舗数が減少しても売り上げへの影響が少ない→立地条件が悪いなど売上が悪い店舗を意図的に閉店させることで無駄な経費を削減することにつながる。


3.今後の展望

今回はハンバーガー業界について売上高や市場規模の推移、経営戦略についてまとめた。次回は外食産業の「フランチャイズ」などの店舗業態についてまとめていきたい。

〈参考文献・URL〉

河野英俊 2010 『マクドナルドに学ぶ「集客→リピート→売上アップ」の法則』 ぱる出版

中山新一郎 2001 『マクドナルド市場独占戦略』 ぱる出版

加護野忠男、吉村典久 2006 『1からの経営学』 碩学舎

加藤勝美 2001 『夢みる雑草たち モスバーガー路地裏経営の解明』 出版文化社

中村真 2009 『モスのひみつ』 エスプレ

農林水産省 外食産業に関する基本調査の概要

http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/gaisyoku_sangyo/gaiyou/


総務省統計局HP

http://www.stat.go.jp/data/chouki/13exp.htm


マクドナルドHP

http://www.mcdonalds.co.jp/


モスバーガーHP

http://www.mos.co.jp/index.php


ファーストフード店の利用頻度

http://www.gamenews.ne.jp/archives/2008/08/1_58.html


マクドナルド・モスバーガーの利用理由

http://blogch.jp/up/2008/08/27120118.html


富士経済HP

https://www.fuji-keizai.co.jp/index.html


ファーストフード業界 業界動向

https://sites.google.com/site/3cdategyoukaijouhou/home/fasuto-fudo-gyoukai-deta


社団法人日本ハンバーグ・ハンバーガー協会HP

http://nhha.lin.gr.jp/
(全て最終閲覧日:2011/12/14)