担当:かゆ

 

Q&A

 

Q1. 3-4 原材料の高騰で紹介されていた食材の加工国などは日本のマクドナルド限定の話ですか。たとえばアメリカでは他の国で加工がおこなわれていますか

A1.原産国や加工国の情報は出ていなく、公式公開情報としては確認できませんでした。アメリカのマクドナルド公式のビックマックのサイトを見ると、「材料として何が含まれているか」は掲載されていましたが、「材料の原産国」は公開されていません。ここから考えられることは日本では食品表示法に基づき、外食産業でも原産国表示が任意で行われていますが、米国では義務化されておらず、マクドナルドUSAも詳細な原産国一覧は公開していないということです。

 

Q2. 3-5-1の小麦の工業用途とはどのようなものですか。

A2. 小麦は糊化温度が低く、冷却時の年度が高く、加熱温度、時間に対する比較的均一な粘土を保持するという特徴から水産錬製品、繊維用糊として用いられます。水産錬製品は魚の切り身などによってで作られる練り物であり、工業用途はロゴを印刷してイベント会場などで用いるスタッフパス、ゲストパス、入場パス、ワッペンシール、名札シールなどの製造に用いられます。

 

Q3. 3-6-3の付加価値メニューとはどのようなものですか。

A3. 付加価値メニューとは過去の発表で説明した通り、食材やサービスの質、SNS向けの「映えるメニュー」など、食事に付加価値を与えるメニューのことを指します。例を挙げると、マクドナルドのサムライマックです。サムライマックは厚みのあるビーフパティ、和風ソース、食べ応え重視が特徴です。他の低価格路線とは異なり、ボリュームや味の個性を重視した付加価値型商品ということが分かります。

 

Q4. 3-5でほとんどの食材が輸入主体であることで為替相場の変動に影響を受け入れ高騰の要因となりやすいと考察されていますが、これに対して対策を行っている企業はありますか?

A4.はい。例えば、マクドナルドなどの規模の大きい企業は大量調達ができることで調達単価の安定性を高めています。それによって大量仕入れにより為替変動によるコスト変動リスクを小さくしています。供給元を多くすることで為替変動が大きい場合でも、比較的に安い国の調達を増やすことでコストをコントロールし、リスクを分散し、為替変動に対する短期的影響を抑えるということです。

他にも、モスバーガーは国産野菜・国産素材を使用する商品が多く、為替変動による輸入原料コストの影響を減らす一助となるとも考えられます。

 

担当:いあ

 

Q.1 今後ディズニーがリメイク作品を生み出していくにあたって、具体的にどういった観点が重視されていくと考えられていますか。

A.1 まず第一に、多様性と包摂性(ダイバーシティ&インクルージョン)の深化がこれまで以上に重要視されると考えられます。近年の『美女と野獣』(2017)や『アラジン』(2019)では、女性の自立や人種的多様性への配慮が明確に示されましたが、今後はさらにその枠組みが広がり、ジェンダーや人種だけでなく、障がい、宗教、性的指向、さらには社会的格差などを含めた「多様な生き方の尊重」がテーマとして描かれる可能性があります。ディズニーは世界的ブランドであるがゆえに、作品を通じて国際社会が共有する価値観を提示する文化的責任を担っており、その意味で「誰もが共感できる物語」を構築する姿勢が一層求められるでしょう。

第二に、グローバル化への対応と地域文化の尊重という観点も欠かせません。これまでのリメイク作品では、アジア・中東・アフリカなど多様な文化圏を舞台とする物語を、ハリウッド的視点から再解釈する傾向が見られました。しかし今後は、より現地の文化的リアリティを反映した制作体制が重視されると考えられます。具体的には、現地出身の俳優・脚本家・監督の起用や、文化監修を徹底することによって、「西洋中心的な表現」から「多文化共創的な表現」への転換が期待されます。

そして第三に、テクノロジーを活用した新しい物語表現の追求が進むでしょう。AIやCG、VRといった最新技術の発展は、映画のリアリティや没入感を飛躍的に高めています。ディズニーはもともと技術革新を物語表現に結びつけてきた企業であり、今後のリメイクでは単なる「過去の名作の再現」ではなく、「観客が物語世界に参加できる体験型リメイク」など、新しい鑑賞体験の創出が試みられる可能性があります。

 

Q.2 今後まだまだ多様性に対する考え方や社会情勢は大きく変化していくと思いますが、すでにリメイクされた作品がまたその時代の変化とともにリメイクされる可能性はあるのでしょうか。

A.2 今後、社会における多様性への理解や価値観はさらに変化していくと考えられます。そのため、すでにリメイクされたディズニー作品が、再び新しい時代の価値観に合わせてリメイクされる可能性は十分にあるといえます。

ディズニー作品は、単に物語を映像化するだけでなく、「その時代における理想的な価値観」を反映する文化的メッセージの役割を担ってきました。たとえば、『美女と野獣』(1991)は「内面の美」という普遍的テーマを描いた作品でしたが、2017年の実写版では「知的で自立した女性像」や「LGBTQ+の存在への言及」など、現代的な視点が新たに加えられています。つまり、同じ作品であっても、その時代の社会的背景や倫理観に応じて、登場人物の描かれ方や物語の解釈は変化してきたのです。

このように、ディズニーは時代ごとの変化を積極的に取り入れる企業であり、「リメイク」は過去を再現する手段ではなく、「時代を語り直すための装置」として機能しています。したがって、今後、ジェンダー観、人種、宗教、環境問題、テクノロジーと人間の関係など、新しい社会的テーマが浮上するたびに、それらを反映した“次世代リメイク”が制作される可能性は高いでしょう。

言い換えれば、ディズニーのリメイクは一度完結するものではなく、「時代が変わるたびに新しい問いを投げかける文化的プロジェクト」として続いていくと考えられます。リメイクの再リメイクが実現することは、過去の名作が時代を超えて生き続けると同時に、社会がどのように変化してきたかを映し出す“文化的記録”となるのです。

 

Q.3 ディズニーの実写版(リメイク)で失敗したケースはありますか。

映画オリジナル版と、ミュージカル版、映画リメイク版の関係はどのようになっていますか。

A.3 ディズニーの実写版(リメイク)作品の中には、必ずしも成功したとは言えない例も存在します。代表的なものとして、『ムーラン』(2020)、『ダンボ』(2019)、『ピノキオ』(2022)などが挙げられます。これらの作品は高い制作費と技術力を投入しながらも、批評的・商業的に期待された成果を十分に上げることができませんでした。

まず、『ムーラン』(2020)は、アニメ版の人気を受けて制作された大規模リメイクであったが、政治的・文化的な側面から多くの批判を受けた。ロケ地の一部が新疆ウイグル自治区であったことが人権問題と関連づけられ、国際的なボイコット運動が起こるなど、作品外での論争が注目を集めた。また、中国文化を重視したはずの内容が、現地では「表面的な西洋的解釈にとどまっている」と受け止められ、文化的リアリティの欠如が指摘された。結果的に、映画は興行面・評価面の双方で振るわず、ディズニーのグローバル戦略の難しさを象徴する例となりました。

次に、『ダンボ』(2019)はティム・バートン監督によるリメイクとして期待されたが、物語の焦点が人間ドラマに移りすぎたことで、観客が最も感情移入すべき「ダンボ」そのものの描写が弱まり、オリジナル作品の持つ純粋な感動が損なわれたと評価されました。また、『ピノキオ』(2022)も、トム・ハンクス主演、ロバート・ゼメキス監督という豪華な制作陣にもかかわらず、アニメ版をほぼそのまま再現した内容に新鮮さがなく、批評家からは「技術的には精巧だが、物語に魂が感じられない」と指摘されました。

これらの例から浮かび上がるのは、ディズニーがリメイクを行う際に直面する「ノスタルジーと現代性のジレンマ」であります。すなわち、原作への忠実さを重視しすぎると新しい価値を提示できず、逆に現代的価値観を強調しすぎると、長年のファンからの共感を失う危険があるという点です。また、技術的進化に重点を置いた結果、物語の感情的深みが薄れ、「視覚的には美しいが心に残らない」作品になってしまうことも課題として挙げられます。

このように、ディズニーのリメイクにおける失敗例は、単なる制作上の問題ではなく、時代の価値観をどのように再構築するかという文化的挑戦の難しさを示していると考えられます。今後ディズニーがリメイクを制作していくうえでは、映像技術や社会的メッセージの更新だけでなく、オリジナルが持っていた「普遍的な感情」と「物語の核心」をどのように保ちながら再構築できるかが、最も重要な課題となると考えられます。

担当:いあ

 

1. ディズニーとその他のリメイク作品の違い

 

1-1   ブランド戦略・企業的背景の違い

1-1-1ディズニーのリメイク:IP戦略とメディア横断型展開を軸にした総合ブランド戦略

1-1-2 IP(知的財産)戦略

a ディズニーは自社のクラシックアニメを再ブランド化することで、既存IPの価値を現代に再生

1-1-3 メディア横断型展開

a 映画上映

b キャラクターグッズ(ベルのドレス、ぬいぐるみなど)

c テーマパークのショー・アトラクション

d サウンドトラック・音楽配信

e SNSや公式アプリでの情報発信やファンコミュニティの活用

1-1-4 目的は単なる収益化ではなく、ブランド再生・拡張a クラシックアニメIPの再生、ブランド拡張

b グローバルでの文化的影響力を強化

c 長期的なファン層の獲得と、メディアミックスによる収益の最大化

1-1-5 ディズニーのリメイクは 「映画という単体商品」ではなく「IP全体を活用した総合戦略」 の一部として位置づけられる

1-1-6 その他のリメイク:映画単体の興行・映像刷新が中心

1-1-7 企業的戦略の中心

a 作品単体の興行収益や技術的刷新が主目的

b ブランド拡張やメディア横断型展開は限定的

c 映画の完成度、スターキャスト、演出の現代化が中心

1-1-8具体例①:『チャーリーズ・エンジェル』(2019/エリザベス・バンクス)

a 『チャーリーズ・エンジェル』(2019)のオリジナル版

→テレビドラマ(1976年–1981年)

b 女性版として設定やアクションを刷新

c映画公開に伴うグッズ・テーマパーク展開・SNSキャンペーンは限定的

1-1-9 具体例②:『オーシャンズ11』(2001/スティーブン・ソダーバーグ)

a 『オーシャンズ11』(2001)のオリジナル版

→映画(1960/ルイス・マイルストン)

b 観客ターゲットは映画ファン中心

c 社会的・文化的影響も映画内部で完結

d IP活用の多角展開やグッズ展開はほとんどなし

1-1-9 その他のリメイクの特徴

a 映画単体のリメイクとして完成度を重視

b ブランド価値拡張やメディア横断戦略は副次的で限定的

1-1-10 その他のリメイクは「映画作品そのものの魅力」で勝負する戦略であり、IP全体を活用した長期的・多角的戦略はほぼ行われない

 

1-2 リメイクの目的・意図の違い

1-2-1 ディズニーのリメイク:時代の価値観を反映した再語り

a ディズニーのリメイクは社会的・文化的メッセージを伴った「現代の価値観に合わせた再解釈」

←ディズニーが「グローバルブランド」として常に時代に寄り添い、価値観を更新し続けることを使命としているため

1-2-2 社会的意図の明確化

a ディズニーはリメイクを通じて、「現代社会にふさわしい理想像」を提示

b 現代のジェンダー平等やリーダーシップ像を反映

Ex)『美女と野獣』(2017)

→ベルを「読書好きで自立した知的女性」として描き直し、1990年代の“ロマンティックな恋愛”中心から、“自分の人生を選ぶ女性像”へとアップデート

Ex)『アラジン』(2019)

→ジャスミンが“政治的リーダーとしての主体性”を持つようになり、「王子との結婚」よりも「自らの意志で国を導く」ことを選ぶ

1-2-3 グローバルメッセージとしての普遍性

a ディズニーは世界市場を意識

b インクルージョン(多様性の尊重)や自己表現の自由といった普遍的価値を作品に織り込む傾向が強い

Ex)『リトル・マーメイド』(2023)

→黒人俳優ハリー・ベイリーをアリエルに起用し、
「多様な美の基準」を提示する試み

1-2-4 「ブランド継承」としての再解釈

a ディズニーは過去作を自社の“文化資産”として再生させる戦略

b 単なる懐古ではなく、「現代の親子が共に楽しみ、共感できるように」リブランディング

c リメイクには“企業的使命”と“文化的再教育”の側面が共存

1-2-5 その他のリメイク:「娯楽刷新・現代化」が中心

a 多くの場合「ヒット作の再利用」や「新世代への訴求」を目的

b 社会的メッセージよりも、エンタメ性・視覚的インパクト・市場拡大が重視

1-2-6 娯楽性のアップデート

a 視覚表現・テンポ感・音楽などの“表層的な現代化”が中心

b 深い社会批評や文化的意図は薄い

1-2-7 具体例①:『ロミオとジュリエット』(1996/バズ・ラーマン監督)

a 『ロミオとジュリエット』のオリジナル版

→シェイクスピアの戯曲で初演はおおむね1595年前後

b 舞台を現代のアメリカ都市に移し、銃を「剣」として扱うなどスタイリッシュな演出で若者にアピール

c 「若者に古典を楽しませる」ことが目的

1-2-8 話題性としての「リメイク」

a 「多様性」よりも「話題性」を狙ったリブートとしての性格が強い

1-2-9『ゴーストバスターズ』(2016/ポール・フェイグ)a 『ゴーストバスターズ』のオリジナル版

→映画(1984/アイヴァン・ライトマン)

b オール女性キャストでジェンダーを刷新

c 社会的メッセージが明確でなく、「政治的メッセージなのか、単なる話題作りなのか」が曖昧になり、批評的には賛否

d 批評的意図よりも、「コメディとアクションの楽しさ」に重点が置かれた

1-2-10 文化的メッセージの一貫性が弱い

a 監督や制作会社ごとの意図に依存

b ブランドとしての一貫した「価値観提示」は存在しない

→作品ごとにメッセージ性にバラつきが出やすく、時代的・社会的テーマが明確でない

1-2-11 「見た目や構成を現代的に刷新」することで新しい観客を獲得する狙い

a 社会的価値観や文化的批評の更新までは踏み込まない“娯楽志向型リメイク”

 

1-3 文化的・象徴的立場の違い

1-3-1 ディズニーのリメイク:アメリカ文化の象徴としての役割

a ディズニーはアメリカ文化そのものを象徴する「文化ブランド」として世界的影響力を持つ

b ディズニーのリメイク作品は、時代の価値観を世界に提示する文化的メッセージの発信手段

←「映画の更新」にとどまらない

1-3-2 文化資本としての性格

a ディズニー作品は世代や国境を超えて共有される文化的資本

←「子ども時代の記憶」や「夢」「愛」「正義」など普遍的テーマを通じて

b リメイクによって、その資本を現代的価値観に再翻訳

1-3-3 社会的・文化的課題への対応

a 現代社会で重視される「多様性」「ジェンダー平等」「インクルージョン」といった価値を物語やキャラクターに反映

b 映画を通して時代の倫理的・社会的変化を世界に発信する装置となる

Ex)『アラジン』(2019)

→キャストを中東・南アジア系俳優に変更し、ハリウッドにおける多文化共生と表象の公平性を示す

→ジャスミンの「王位継承権」などの設定変更を通じて、女性の自立とリーダーシップを描く

Ex)『美女と野獣』(2017)
→ル・フウをゲイキャラクターとして描くなど、LGBTQ+の可視化を試みた

1-3-4 ディズニーのリメイクは「娯楽+社会的メッセージの発信装置」という二重構造を持つ

1-3-5 その他のリメイク:映画内部の更新・ファン層中心の再生産

a 映画ファンや特定ジャンルの愛好者がターゲット

b その文化的影響は基本的に「映画内部」で完結

1-3-6 目的は技術的・表現的アップデート

a 現代的映像技術や演出で、過去作品を新しい形で楽しませる

b ノスタルジーと娯楽性の再生が中心

←社会的課題や価値観の刷新よりも

1-3-7 文化的象徴性の限定性

a 作品自体が社会的・政治的象徴として機能することは少ない

b ファン文化(リメイク元へのリスペクトや考察)に留まる

1-3-8 具体例①:『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(2017/アンディ・ムスキエティ)

a 『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』のオリジナル版

→テレビミニシリーズ版(1990)

b 映像技術・演出の向上により恐怖演出を刷新

c 物語は原作に忠実

d 社会的メッセージ性よりもホラー体験のアップデートに重点

1-3-9 具体例②:『ジュラシック・ワールド』(2015〜/コリン・トレボロウ)

a 『ジュラシック・ワールド』のオリジナル版

→映画(1993/スティーブン・スピルバーグ)

b 恐竜のCG技術やアクション性を強化し、シリーズのブランド価値を継続

c 科学技術への批判や倫理のテーマは描かれる

d しかし社会的価値観の改革や文化的象徴性は副次的

1-3-10 これらのリメイクは「映画文化の内部更新」に留まり、社会的メッセージの発信力は限定的

 

2. ディズニーリメイクのこれから

 

2-1 社会的視点からの考察・展望:多様性とインクルージョンの深化

2-1-1 多様性とインクルージョンの深化

a 現代社会では「多様性を認めること」が大事な価値

b いろんな違いを尊重し合う社会を作ろうという流れ

←人種や性別だけでなく、LGBTQ+、宗教、文化的背景など

2-1-2 ディズニーは“夢”や“理想”を描く企業

a 社会の価値観の変化を作品の中に反映させてきた

2-1-3 具体例①『リトル・マーメイド(2023)』

a 主人公アリエルに黒人女優のハリー・ベイリーを起用

b 「誰でもプリンセスになれる」「外見に関係なく夢を追える」というメッセージ

2-1-4 具体例②『美女と野獣(2017)』

a リメイク版ではベルをより知的で自立した女性として描く

b 原作では“恋愛中心”の物語

c リメイクでは“自分の意思で行動する女性”としての側面が強調

2-1-5 具体例③『アラジン(2019)』

a ジャスミンが“王女として国を導く”存在に変化

b 女性のリーダーシップを象徴するキャラクターになった

2-1-6 ディズニーはリメイクを通じて現代社会が理想とする人物像や価値観を反映

2-1-7 今後の展望

a 考え方・生き方・価値観の多様性がより重視されていくと考えられる

←「見た目の多様性」だけでなく

Ex)「どう生きたいか」「どんな幸せを選ぶか」といった、個人の生き方の違いを認めるようなストーリー

b “多様な人が共に生きる社会”という理想を映す文化的メディアへと進化していくという見方ができる

 

2-2 社会的視点からの考察・展望:観客参加型・共感型の映画制作へ

2-2-1 観客参加型・共感型の映画制作へ

a 昔の映画は「作り手が作って、観客が見る」という一方向の関係

b 現在はSNSの普及で、観客が感想や意見をすぐに世界中に発信

c 観客と一緒に作品を作っていくような時代になってきた

←映画会社も観客の声を無視できないため

d ディズニーも、こうした社会の変化に合わせて方針を変化

2-2-2 具体例①:『美女と野獣(2017)』

a 初めてゲイのキャラクターを描いた

b 賛否があったが、その反応を「社会との対話」として受け止めた

c 多様性を尊重する姿勢を示した

2-2-3 具体例②:『リトル・マーメイド(2023)』

a SNSでキャスティングに関する議論が大きく広がった

b ディズニーは「なぜ多様な表現が必要なのか」をメッセージとして発信

c 議論に対して一方的に否定しなかった

2-2-4 ディズニーは社会の反応を積極的に受け取り、作品に反映

a リメイク映画は企業が一方的に「これが正しい」と伝えるものではない

b 観客とのコミュニケーションを通じて“時代の価値観”を形にしていく場

 

2-3 文化的視点からの考察・展望;“懐かしさ”と“再解釈”の共存

2-3-1 ディズニーのリメイク

a 「懐かしさ」と「再解釈」を両立させている

←「過去の名作をもう一度見せる」だけではない

b 観客はアニメ版を通じてその作品に思い出や感情を持っている

c この“懐かしさ”がリメイクを見る動機の一つとなる

d 同時に現代の観客は、過去の価値観をそのまま受け入れない批判的視点も持つ

e ただ昔のものを再現するだけでは、現代の観客には“古い価値観”に見えてしまう

→ディズニーは、「オリジナルの魅力を尊重しつつ、現代社会の価値観に合わせて再構築する」手法

→同じ物語を新しい時代の文脈に“翻訳し直す”ことで、社会の変化を映し出す

2-3-2 具体例①『美女と野獣(2017)』

a リメイク版ではガストンの仲間・ル・フウが“同性に恋心を抱くキャラクター”として描かれる

b オリジナル版では全く触れられなかった設定

c 現代社会で進む性的多様性の尊重を反映

d 「ディズニー初のゲイキャラクター」として注目

e LGBTQ+への理解を広めるきっかけ

f 現代の“自分らしさを大切にする文化”を反映

g 「他人と違うことを誇りに思う」というメッセージ

2-3-3 具体例②『アラジン(2019)』

a ジーニーの描写と人間味の強調

b リメイク版ではジーニーは単なる“魔法の精”ではなく、感情や友情を持つ存在として描かれる

c 最後には人間になるという展開

→「自由とは何か」「自分の人生を自分で選ぶ」というテーマにつながる

d 現代社会で重視される“自己決定”や“他者との共感”の価値を象徴

e ジーニーは“自由を求める人間の姿”のメタファーとして機能

2-3-4 ディズニーリメイクは「古い物語を現代の価値観で語り直す文化的な営み」

→同じ物語でも「時代が違えば見え方が変わる」という文化の動きを確認できる

2-3-5 ディズニーリメイクは、時代の社会的価値観を映す鏡として機能

a 1990年代のオリジナル=家族・愛・夢の普遍的テーマ

b 2010年代のリメイク=多様性・主体性・自分らしさ

2-3-6 ディズニーリメイクを見ることで、「時代がどんな価値を重んじていたか」を知ることができる

a ディズニーは、作品を通じて社会の“理想像”を提示する文化的記録媒体として進化していくと考えられる

 

2-4 文化的視点からの考察・展望;グローバル化とローカル文化の融合

2-4-1 ディズニー映画

a 世界中で上映されるグローバルな文化商品

→異なる文化圏の観客が“自分ごと”として共感できるようにする必要がある

b 過去のディズニー作品には「西洋中心的視点」から他文化を描く傾向があった

2-4-2『アラジン(1992)』

a 「中東=砂漠・異国・暴力的」といったステレオタイプが問題視

→“オリエンタリズム”批判

2-4-3 具体例①『アラジン(2019)』

a 主演に中東・南アジア系の俳優を起用

Ex)メナ・マスード、ナオミ・スコット

b 音楽にはアラビア音楽のリズムを取り入れつつ、現代的なポップ要素を融合

c 衣装・建築・風習も、中東文化をリスペクトしたデザインに変更

2-4-4 リメイクによって“リアルで尊重された文化”として描き直している

a アメリカが作る「他者の物語」から、“多文化が協力して創る物語”へと変化

→ディズニーが文化の支配者から、文化の共創者へと転換した象徴的な作品

2-4-5 具体例②『美女と野獣(2017)』

a 原作がフランスの物語であることを意識し、衣装・建築・音楽にフランス文化の要素を再現

b セクシュアリティの多様性を世界的な文脈で提示

Ex)ル・フウがゲイとして描かれたこと

e フランス文化の伝統を尊重しながら、現代の多様性を組み込む

→“ローカル文化の継承”と“グローバル価値の共有”を両立させた作品

2-4-6 これからのディズニーは、「多文化が共に新しい物語を作る場」へと変化

←「アメリカが世界に文化を発信する企業」から

2-4-7 グローバル化とは

a 異なる文化が交わり、互いを尊重して新しい形を生み出すこと

b 文化を均一にすることではない

c その意味で、ディズニーリメイクは現代社会の“文化的多様性の実験場”になりつつある

←単なる娯楽ではなく

 

3. まとめ

 

3-1 ディズニーリメイクの特徴

3-1-1 IP戦略とメディア横断型展開を軸にした総合ブランド戦略

3-1-2 時代の価値観を反映した再語り

3-1-3 アメリカ文化の象徴としての役割

 

3-2 ディズニーリメイクのこれから

3-2-1 多様性とインクルージョンの深化

a “多様な人が共に生きる社会”という理想を映す文化的メディアへと進化していくという見方ができる

3-2-2 観客参加型・共感型の映画制作へ

a 観客とのコミュニケーションを通じて“時代の価値観”を形にしていく場となる

3-2-3 “懐かしさ”と“再解釈”の共存

a ディズニーは、作品を通じて社会の“理想像”を提示する文化的記録媒体として進化していくと考えられる

3-2-4 グローバル化とローカル文化の融合

a ディズニーリメイクは現代社会の“文化的多様性の実験場”になっていくと考えられる

担当:いあ

 

Q.1 アニメ版にはなかった新しい衣装やキャラクターデザインのグッズの再販が可能とありましたが、実写版の映画に関してグッズが販売されているイメージが正直あまりないです。実際にどのようなものが新しいグッズとして販売されているのでしょうか。

A.1 実写版の人がモチーフになったグッズは多くありませんが、実写版のロゴがデザインされたクリアファイルやマグカップ、タオルなどが販売されています。また、ステッカーや付箋などは、実写版のアラジンやジャスミンなどが印刷されたデザインのものが販売されています。

さらに、実写版ならではの“役者が着ているもの”“撮影・映画内で使われている質感”を再現した衣装・アクセサリーが出ています。例えば、『美女と野獣』の仮装コスチュームでは「ダンスシーンのベル」ドレスを再現されており、実際に着てなりきることができます。

 

Q.2 マーベルやピクサー、スター・ウォーズなどでアニメからアニメへのリメイクやアニメから実写へのリメイクはありますか。

A.2 マーベルでは、過去のアニメシリーズをリバイバルする例があります。たとえば1992~1997年に放送された『X‑Men: The Animated Series』は、2023年に『X‑Men ’97』として続編・リメイクされ、アニメの世界観やキャラクターを現代的に更新しています。ただし、マーベル作品においてアニメ映画を丸ごと実写映画にリメイクする例は現状ほとんどありません。

ピクサーでは、アニメ映画から実写へのリメイクは原則として行われていません。ピクサーの制作陣は、作品のキャラクターや世界観がアニメーション特有の表現に依存していることから、「実写化は適さない」と明言しており、アニメからアニメのリメイクも限定的です。ピクサーは主にオリジナル作品や続編の形でアニメーションを展開しています。

スター・ウォーズの場合は少し事情が異なります。2008年の『クローン・ウォーズ』や2014~2018年の『反乱者たち』などのアニメシリーズで登場したキャラクターや設定が、後の実写ドラマシリーズ(『マンダロリアン』『アソーカ』など)に導入される例が増えています。アソーカ・タノやサビーヌ・レン、ヘラ・シンドゥーラなどは、アニメで人気を得たキャラクターがそのまま実写に登場するケースです。ただし、スター・ウォーズでも「アニメ映画を丸ごと実写映画にリメイクした」例は少なく、基本的にはアニメで築かれた世界観やキャラクターを実写で拡張・立体化する形が中心です。

総じて、これらのブランドでは「アニメ→アニメのリメイク」は存在しますが、アニメ→実写のリメイクはディズニーの実写版アラジンや美女と野獣のように大規模に行われることは少なく、実写化はあくまでキャラクターや世界観の拡張やシリーズ化のための戦略として行われています。

 

Q.3 映画オリジナル版と、ミュージカル版、映画リメイク版の関係はどのようになっていますか。

A.3 『アラジン』を例に挙げて回答します。まず、オリジナルのアニメ映画(1992年)は、原作「アラビアンナイト」をベースにした軽快な冒険物語として制作されました。ジャスミンは王女として登場しますが、やや受動的で、物語の主体はアラジンに置かれています。ジーニーのコミカルな描写や魔法の冒険など、娯楽性や音楽性が重視されており、1990年代当時のアメリカでは、女性像は比較的受動的で、異文化描写も欧米視点による誇張やステレオタイプが目立ちました。映画は主に家族向け娯楽と関連商品の収益化を目的としていました。

2014年に初演されたミュージカル版は、オリジナルのストーリーを基盤にしつつ、舞台演出向けにキャラクターや物語を拡張しました。ジャスミンの自立心や政治的意識が強調され、アラジンの心理描写も深められています。魔法の絨毯やジーニーの魔法など、舞台技術を駆使した演出により、観客は物語により没入できるようになりました。社会的背景としては、2010年代に高まった多様性や主体性への意識が反映され、女性キャラクターの主体性や観客参加型の演出が導入されています。

そして、2019年の実写映画リメイク版は、オリジナル映画とミュージカル版の要素を融合させつつ、現代的な社会意識を反映しています。ジャスミンは単なる恋愛の対象ではなく、国の未来を自らの意思で切り開こうとする主体的なキャラクターとして描かれ、ル・フウの性的指向がほのめかされるなど、多様性表現も導入されています。実写化により、衣装や舞台美術の質感、VFXによる魔法表現がリアルに再現され、観客に臨場感を提供しています。背景には、SNS時代の観客が声を発信し、多様性や文化的インクルージョンへの配慮が求められる社会的状況や、グローバル市場に向けたブランド戦略の意図も存在します。

このミュージカル版の影響は、2019年の実写映画リメイク版にも色濃く反映されています。

まず、キャラクター描写の面では、ミュージカル版で強調されたジャスミンの主体性や政治的意識が、実写版でも取り入れられています。ジャスミンは単に恋愛の対象として描かれるのではなく、自らの意思で国の未来を切り開こうとする主体的なキャラクターとして描写され、物語の中心的存在としての役割が強化されました。また、アラジンの内面の葛藤や成長もミュージカル版で丁寧に描かれた要素が反映され、実写版では王子としての立場や自分の正体への迷いなどがより明確に描かれています。

さらに、音楽や演出面でもミュージカル版の影響が見られます。舞台用に追加された楽曲やアレンジの一部が実写版に取り入れられ、物語の感情表現やキャラクターの内面描写を補強しています。加えて、舞台での魔法の表現や絨毯の演出などが実写映画ではVFXやCG技術を用いて映像化され、観客により立体的でリアルな体験を提供しています。

担当:いあ

 

1. ディズニーにおける映画『アラジン』と映画『美女と野獣』

1-1    オリジナル版

←アニメーション版

→両作品1990年代に制作

1-1-1  映画『アラジン』

a 公開:1992年

b 製作国:アメリカ

c 監督:ジョン・マスカー、ロン・クレメンツ

d 製作費:約2,800万ドル(約28億円)

e 世界興行収入:約5億4,050万ドル

1-1-2 映画『美女と野獣』

a 公開:1991年

b 製作国:アメリカ

c 監督:ゲーリー・トゥルースデイル、カーク・ワイ

d 製作費:約2,000万ドル(約20億円)

e 世界興行収入:約4億2,000万ドル

1-2 リメイク版

←実写版

→両作品2010年代に制作

1-2-1 映画『アラジン』

a 公開:2019年

b 製作国:アメリカ

c 監督:ガイ・リッチー

d 製作費:約1億8,300万ドル(約183億円)

e 世界興行収入:約10億5,069万ドル

1-2-2 映画『美女と野獣』

a 公開:2017年

b 製作国:アメリカ

c 監督:ビル・コンドン

d 製作費:約1億6,000万ドル(約160億円)

e 世界興行収入:約12億6,000万ドル

←大ヒットを記録し、ディズニーの実写リメイク作品の中でも高い収益性

 

2. ディズニーでアニメーションから実写化した背景

2-1 背景

2-1-1 経済的理由:確実なヒットの見込み

2-1-2 技術的理由:VFXとCGの進化

2-1-3 文化的・社会的理由:多様性・インクルージョンの反映

2-1-4 マーケティング戦略・ブランド再活性化

2-2 経済的理由:確実なヒットの見込み

2-2-1 ①ブランド力の活用とリスクの低減

a ディズニーにとって、アニメ版はすでに“世界的に認知されたブランド資産”

2-2-2 すでに人気と信頼を得ている作品を実写化するメリット

←投資リスクの低減効果

a 興行収入の見通しを立てやすい

b 広告宣伝のコストが比較的少なくて済む

c ファン層の支持を確実に得られる

2-2-3 ディズニーにおける2000年代後半以降の「ブランド再活性化戦略」

←過去の名作を再び現在の市場価値に変える方法として「実写化」を活用

a 2010年の『アリス・イン・ワンダーランド』(ティム・バートン監督)が世界興行収入10億ドル超を記録

←実写・リメイク版

→この作品以降、実写化がビジネスモデルとして確立

b 『アリス・イン・ワンダーランド』のオリジナル版

c アニメーション

d 公開:1865年

2-2-4 ②興行的成功の実績

a アニメ版をベースにした実写映画は高い収益を上げる

b ディズニーにとって確実に利益を生む“安全投資”

2-2-5 「過去の名作の実写化」=新しい作品群を支える資金源としても機能

a マーベルやスター・ウォーズ、ピクサーといった他ブランドの新作開発にも再投資

b マーベルやスター・ウォーズ、ピクサー:ディズニー傘下(=ディズニーが所有している)有名ブランド/スタジオ

2-2-5 ③関連商品の二次収益(メディア・ミックス)

2-2-6 ディズニーの収益は映画チケットだけでなく、二次・三次的ビジネスに広がる

a 玩具・ぬいぐるみ・コスチュームなどのキャラクター商品

b サウンドトラックや主題歌

Ex)『美女と野獣』のセリーヌ・ディオン版、『アラジン』の「A Whole New World」リメイク

c 東京ディズニーリゾートなどのテーマパークでのショーやイベント

d Disney+での配信による長期的収益

e 舞台化(ブロードウェイ・ミュージカル)

2-2-7 実写化は「懐かしさによる再ブーム」と「新しい商品展開」を同時に生み出す

a アニメ版にはなかった新しい衣装やキャラクターデザインを導入することで、グッズの再販が可能

b 極めて効率的な商業戦略

2-2-8 ④世代を超えたマーケティング

a アニメ版を子ども時代に観た世代が、現在は親や社会人

←ノスタルジー効果

b この効果を利用して、親世代が自分の子どもと一緒に観る“家族向けイベント映画”としてマーケティング

c 「親子二世代での観客層拡大」が実現

d チケット販売・関連グッズ消費が増加

2-3 技術的理由:VFXとCGの進化

2-3-1 ①1990年代当時の限界

a 実写とコンピューター技術を組み合わせる手法(VFX:視覚効果)はまだ発展途上

←『美女と野獣』(1991)や『アラジン』(1992)の制作当時

b 1991年の『ターミネーター2』や1993年の『ジュラシック・パーク』でようやく本格的なCG表現が登場

c 1990年代前半では、人間と完全なCGキャラクターを自然に同一画面に登場させることはほぼ不可能

→『アラジン』の「ジーニー」や「魔法の絨毯」、『美女と野獣』の「野獣」や「喋る家具たち」をリアルに表現することは技術的にできなかった

2-3-2 ②2010年代のVFXとCG技術の進化

a ディズニーはピクサーやマーベル、ルーカスフィルムなど最新CG技術を持つスタジオを傘下に収める

←2000年代後半から2010年代

2-3-3 ディズニーは世界最高レベルの映像制作環境を手に入れた

a フォトリアルCG(実写のように見えるCG)

←現実の質感や光の反射、動物の毛並みなどを本物のように再現できる技術

b 『美女と野獣』(2017)の「野獣」の顔の筋肉や表情

→実写俳優の動きをモーションキャプチャで取り込み、CGでリアルな毛並みや光沢を再現

c 実写とCGの融合

←背景や小道具の多くがCGで作られていても、違和感なく実写映像に溶け込ませることが可能

←照明やカメラワークを工夫することで

Ex)『アラジン』(2019)の「魔法の絨毯」「ジーニー」「洞窟」「アグラバーの街並み」などがCG合成によって作られている

d キャラクターの感情表現の向上

←CGによる表情の細やかな動きにより、アニメ以上に「生きているようなリアリティ」を演出可能に

←(eye trackingやface rigging技術)

e eye tracking技術:人の「視線の動き」や「注視している場所」を検出・記録する技術

f face rigging技術:キャラクターの顔を動かすための“骨組み”を作る技術

Ex)「ジーニー」(ウィル・スミス)の俳優本人の表情をベースにCG化

→アニメのコミカルさと実写の人間味を融合

2-3-4 ③“アニメではできなかったリアルな体験”の創出

a アニメでは不可能だった「リアルな質感と臨場感」を提供可能に

→実写化は単なる「リメイク」ではなく、「技術によって体験の質を再構築する“再創造”」でもある

2-3-5 リアルな質感と臨場感の具体例

a 魔法

←アニメ版:カラフルな2Dエフェクト

→リメイク版:光の反射・煙・粒子まで再現されたリアルな魔法

b キャラクター

←アニメ版:デフォルメされた表情

→リメイク版:実写俳優+CGでリアルな感情や存在感

c 空間

←アニメ版:平面的な背景

→リメイク版:カメラが360度動く立体的な世界

d 音楽シーン

←アニメ版:絵本のような美しさ

→リメイク版:ミュージカル映画のようなスケール感

2-3-6 ④ディズニーにとっての意義

a ディズニーは「魔法を現実に見せる」というブランド理念を持つ

b 観客は「本当に魔法の世界にいる」ような感覚を味わえる

←最新VFXやCGを駆使することで

c ディズニーの“夢と魔法の王国”という企業イメージを強化することにもつながる

2-4 文化的・社会的理由:多様性・インクルージョンの反映

2-4-1 ①背景:1990年代ディズニーアニメへの批判

a 1990年代はディズニー・ルネサンスと呼ばれる黄金期

b 同時に作品中の文化的ステレオタイプやジェンダー観へ批判

2-4-2 ②実写版による「現代的アップデート」

a 実写化によって現代的な価値観に沿うように物語やキャラクターを再構築

←ディズニーは上記のような批判を踏まえて

2-4-3 ③グローバル化と文化的感受性

a 世界中で市場を拡大する中で、「文化的多様性」を尊重する姿勢が欠かせなくなった

←アメリカだけでなく、中東・アジア・ヨーロッパなど多文化市場に向けた発信を行うため

2-4-3 グローバル時代のリメイク戦略

a 文化的誤解を避ける描写

b 登場人物の背景に多様な文化的ルーツを持たせる

2-4-4 ④ディズニーの社会的メッセージ

a 実写化作品は、「ディズニー自身の価値観の進化」を示す試み

2-4-5 過去の“夢とロマンスの物語”を、“多様性・自立・平等を肯定する物語”へとアップデートする

a 若い世代(Z世代など)の価値観に共感されるブランドイメージを強化

b 社会的に責任ある企業としての立場を確立

2-5 マーケティング戦略・ブランド再活性化

2-5-1 ①新旧ファンを同時に取り込む「二層マーケティング」

a 実写化によって、ディズニーは2つの世代を同時に狙うマーケティング効果を得る

b 実写化は「親がかつて観た名作を、今度は子どもと一緒に楽しむ」という世代を超えたブランド体験を生み出す仕掛け

2-5-2 かつてのアニメ世代(30〜40代)

a アプローチ:子どもの頃に観た名作を「実写で再体験」できるノスタルジー要素

b 効果:家族連れで映画館へ(=親子消費)

2-5-3 新しい世代(Z世代・子ども)

a アプローチ:現代的な価値観・映像技術・音楽を通して「初めてのアラジン/美女と野獣」を楽しむ

b 効果:若年層へのブランド継承

2-5-4 ②ブランド再活性化

a ディズニーは90年以上の歴史を持つ老舗ブランド

b 「古い企業」ではなく“常に進化するブランド”としての印象を保つことが重要

c 実写リメイクは、そのための「ブランド再活性化」戦略の一環

2-5-5 目的

a 過去の資産(人気キャラクター・名曲・物語)を“現代仕様”で再解釈

b 時代の変化に合わせた価値観(多様性・自立・共生)を取り込み、ブランドを時代とともに成長させる

c 「ディズニー=常に新しい魔法を生み出す存在」という企業イメージを強化

2-5-6 結果

a “過去のアニメ版人気”と“新しい実写の魅力”の相乗効果による大成功

Ex)『美女と野獣』(2017)は全世界で12億ドル超の興行収入を記録

2-5-7 ③マルチメディア展開による“シナジー効果”

a シナジー効果:2つ以上のものを組み合わせたときに、単独よりも大きな効果が生まれること

b ディズニーの強みは総合エンターテインメント企業としての広がり

2-5-8 他事業と連動した収益源

a 音楽(サウンドトラック・ライブ)

b テーマパーク・ミュージカル

c 商品・ファッション

2-5-9 ④リメイクの“低リスク・高リターン”構造

a 既存の物語・音楽・キャラクターを再利用できるため、脚本開発リスクが低い

b すでに世界的知名度があるため、宣伝コストを抑えても観客動員が期待できる

c 成功すれば、次作への需要を喚起

2-5-10 ⑤「体験型エンターテインメント」への進化

a 21世紀のディズニーは、「映画を観るだけでなく“世界観を体験する”」ことを重視

b 実写化作品は、映像のリアルさによって観客が“作品世界に入り込んだ感覚”を得やすい

c テーマパーク・配信・グッズと連動して、「ディズニー体験」を拡張する役割を果たす

 

3. リメイク版制作時のキャラクターの内面描写とリアリズム志向による対応

3-1 アラジン(『アラジン』)の内面描写

3-1-1 オリジナル版

a 「陽気で勇敢な青年」というイメージが中心

3-1-2 リメイク版

a “貧困から抜け出したいが、自分を偽りたくない”という道徳的ジレンマを描く

→現代の若者が感じる「自分らしさ」と「成功」の間の葛藤に通じる

b ジャスミンとの関係性でも、「王女の自由を尊重したい」という思いが強調

←キャラクターの心理的深みが増加

3-2 ジャスミン(『アラジン』)の内面描写

3-2-1 オリジナル版

a 「反抗的で自由を求める王女」という側面が中心

3-2-2 リメイク版

a 政治的な意思とリーダーとしての自覚も描写

Ex)国の政策や女性の権利について語る場面が追加

→現代社会の「女性のエンパワーメント」への意識の反映

3-3 ベル(『美女と野獣』)の内面描写

3-3-1 オリジナル版

a 知的で好奇心旺盛

3-3-2 リメイク版

a 学問への情熱や家族への思いなど心理描写が強化

b 村の人々との関わりを通して、孤独感や理解されない悩みも描かれる

3-4 野獣(『美女と野獣』)の内面描写

3-4-1 オリジナル版

a 怒りっぽく誇り高い王子

3-4-2 リメイク版

a キャラクターの成長や変化がよりリアルに描かれる

b 過去の傲慢さを悔い、愛を学ぶ人間的成長が描かれる

→「人は変われる」というテーマがリアルな心理過程として表現

3-5 『アラジン』におけるエアリズム

3-5-1 魔法の絨毯に乗るシーン

aアラジンとジャスミンの表情が細かく変化

b 驚き、喜び、緊張

3-5-2 ジャスミンの独白シーン

a 国を良くしたいという内面の葛藤が視覚的・台詞で表現

3-6 『美女と野獣』におけるエアリズム

3-6-1 野獣がベルに本を手渡すシーン

a 指先の微妙な震えや視線の動きで内面の緊張を表現

3-6-2 ダンスシーン

a 衣装の布の重みや光の反射をリアルに描き、感情の説得力を増幅

 

4.キャラクターの内面描写とリアリズム志向の背景

4-1 勧善懲悪から心理的リアリズムへ

4-1-1 1990年代までのディズニー作品

a 明快な価値観と物語構造

Ex)善(正義・勇気・愛)と悪(欲望・傲慢・支配)
という二項対立的構造で物語が展開

b 観客はその単純明快さに安心感やカタルシスを感じる

c カタルシス:心の中に溜まっていた澱(おり)のような感情が解放され、気持ちが浄化されること

4-1-2 21世紀からの社会の価値観が多様化・複雑化

a 観客の関心も、心理的リアリズム(現実味のある心の描写)へと移行

Ex)「正しいか間違っているか」から、なぜそのように行動したのか、どのような背景があるのか

4-1-3 SNSが普及した現在

a 人々は他者の感情や意見を直接目にする

b 「善悪では割り切れない人間の多面性」への理解や共感が深まる

4-2 SNS時代における「共感」と「自己投影」

4-2-1 Z世代やミレニアル世代は自分を重ね合わせる(自己投影)傾向が強い

a SNS上での「共感」や「同調」が社会的価値を持つようになったため

b キャラクターにも「現実の自分と通じるリアリティ」を求める

4-2-2 重要視されるようになったこと

a 感情表現の細やかさ

b 矛盾や迷いを含んだ人間らしさ

c 社会問題やジェンダー意識との関わり

4-3 社会的リアリズムとの接続

4-3-1 社会的エアリズムを重視

a 社会的リアリズム:現実社会の状況や問題を反映すること

b 現代社会の価値観に即したリアルさを与える

→現代社会を生きる人間と地続きの存在として観客に受け止められるようになる

 

5. リメイク版制作時のSNS時代の価値観による対応

5-1 『アラジン』(2019)のジャスミン

5-1-1 社会的責任やリーダーシップを担う女性像に変化

5-1-2 ジャスミンのソロ曲「Speechless」

a “私は沈黙しない(I won’t be silenced)”という歌詞

b SNS時代の「声を上げる勇気」「自己表現の自由」を象徴

c SNS世代の女性たちが感じる「黙って従うのではなく、自分の考えを社会に示すべきだ」という意識と強く共鳴

5-2 『美女と野獣』(2017)のベル

5-2-1 村社会の常識にとらわれない自立した女性に変化

5-2-2 社会の偏見に抗いながら「自分の生き方を選ぶ」ことの意義を体現

→SNS時代の「自己表現」や「個の尊重」という価値観を象徴するキャラクター変化

 

6. SNS時代の価値観の背景

6-1 21世紀のTwitter(現X)やInstagram、TikTokなどのSNSの普及

6-1-1 個人が自分の意見・感情・価値観を誰でも世界に向けて発信できる時代

6-1-2 若年層の間での高まり

a 「#MeToo」や「#BlackLivesMatter」などの社会運動への共感

b ジェンダー平等、文化的多様性、人権意識などへの関心

→“自分の声で社会を変える”という意識が広く共有

6-2 映画や物語にも「自分の意見を持ち、行動するキャラクター」が求められる

←自分の信念で社会に関わる人物像が現代の観客に共感

担当:いあ

 

Q.1 ル・フウがゲイキャラクターとして描かれたときの、反応はどのようなものでしたか。

A.1 実写版『美女と野獣』(2017年)の「ル・フウ」がゲイキャラクターとして描かれることについては、アメリカと日本でかなり異なる反応が起きました。

まず、アメリカの反応について、若い世代やLGBTQ+コミュニティからは、「初めてディズニー・メジャー作品で明確ではないにせよゲイのキャラクターを配置した意義がある」と評価されることが多くありました。少しの描写(ル・フウが別の男性と踊るシーンなど)を“ステップ”または“象徴的なジェスチャー”と捉える声がありました。映画批評家の中にも、「これは完全なカミングアウト・ストーリーではないが、マイノリティ表現として進歩だ」と見られる声がありました。このような肯定的な意見がある一方で、保守派や宗教団体からは、「子ども映画に不適切」などの批判があり、一部の国(または地域)では上映が規制されたり、ピーク時に宣伝でその描写を隠そうとする動きもありました。また、LGBTQ+支持者の中でも「表現が曖昧で物足りない」「キャラクターのセリフや動きだけでゲイとするのは不十分」という声が出ました。ジョシュ・ギャッド(ル・フウ役)自身も後に「ル・フウを“完全なゲイキャラクター”として描くには描写が足りなかった」と後悔を示した発言があります。

一方で日本の反応は、「ディズニーに初めてLGBT要素が入った」ということで注目は集まったが、反発は比較的少なく、議論も“どこまで描写されているか”“それが子ども向け映画にふさわしいか”という観点が中心となりました。映画レビューや映画ファンからは、「ル・フウがゲイと断定するような明確な描写はない」「その扱いは抑制的で象徴的なものだ」という見方が多くありました。また、「単なる映画の娯楽」「キャラクターとしての面白さを損なわない範囲での表現」という意見もありました。特に、ディズニー作品に慣れている観客からは、“いつものコミカルあるいはサイドキャラクター”として受け止められていることが多かったです。一部メディアあるいは保守派の立場からは、「子どもにふさわしくない」「宣伝になるのでは」という懸念が示されましたが、日本ではそれが社会的な大問題になるほど広がりませんでした。また、描写の少なさを指摘する声があり、「もう少し明確にしてほしかった」「ほのめかしだけでは物足りない」という意見もありました。

 

Q.2 時代の風潮によりリメイク映画に影響がある事が分かりましたが、原作のキャラやストーリーをどこまで保ち、どこから変えていくのか基準はあるのでしょうか。

A.2 ディズニーは作品を映像化する際、時代や社会の価値観に合わせて大胆に再構築を行います。その中で、何を残し、何を変えるかには一定の方針が存在しています。

まず、ディズニーが最も重視しているのは「物語の核」を保つことです。たとえば、アラジンが貧しい青年から王女と出会い、成長していく過程や、魔法のランプとジーニーの存在、そして「自由」や「身分を超えた愛」といった普遍的なテーマは、どの時代の観客にも共感を呼ぶ要素として残されています。これらは、物語の象徴であり、ディズニーらしい夢と希望の物語の根幹を支える部分です。

一方で、時代の変化とともに、文化的・社会的に問題視される要素は積極的に修正されています。1992年版アニメでは、アラビア文化のステレオタイプな描写や、女性を受け身的に描く傾向が批判されました。2019年の実写版では、こうした課題を踏まえ、ジャスミンを政治的にも自立した女性として描き直し、多文化的でリスペクトを意識した衣装や舞台設定が採用されました。つまり、ディズニーは原作をそのまま再現するのではなく、「現代社会にふさわしい価値観」に沿って物語を再構築しています。

また、ディズニーは単に文化的正確さを追求するのではなく、誰もが共感できる「象徴的な世界観」を作ることを目指しています。実写版の監督ガイ・リッチーも「特定の文化を再現することよりも、世界中の観客が楽しめるファンタジー世界を描くことを重視した」と語っているように、ディズニーは現実と空想の中間にある“文化的にリスペクトのあるファンタジー”を目指しています。

このように、ディズニーにとって原作の扱い方には明確な基準があります。それは、物語の核となるテーマや感情の流れを守りながら、社会的・文化的な背景を時代に合わせて更新することです。原作を尊重しつつも、単なる再現ではなく、現代の観客に向けた「新しいアラジン」を提示することにこそ、ディズニーのリメイク作品が持つ意義と魅力があると言えます。

 

Q.3 『アラジン』・『美女と野獣』のオリジナル版とリメイク版のそれぞれの製作費を教えてください。

A.3 オリジナル版『アラジン』の製作費は約2,800万ドル、日本円で約28億円となり、世界興行収入は約5億4,050万ドルとなりました。リメイク版『アラジン』は、製作費約1億8,300万ドル、日本円で約183億円となり、世界興行収入は約10億5,069万ドルで、大ヒットを記録し、ディズニーの実写リメイク作品の中でも高い収益性を示しました。

一方、オリジナル版『美女や野獣』は、製作費約2,000万ドル、日本円で約20億円となり、世界興行収入は約4億2,000万ドルとなりました。リメイク版『美女と野獣』は、製作費約1億6,000万ドル、日本円で約160億円となり、世界興行収入は約12億6,000万ドルとなっています。これらの作品は、ディズニーのアニメーション映画から実写リメイクへの成功した移行を示す例となっており、製作費と興行収入のバランスも非常に良好と考えられています。

 質問にあった、アニメーションから実写へ変更になった理由・背景については、次回の発表で回答させていただきます。

担当:いあ

 

1. ディズニーにおける映画『アラジン』と映画『美女と野獣』

1-1    オリジナル版

←アニメーション版

→オリジナル版は両作品1990年代に制作

1-1-1  映画『アラジン』

a 公開:1992年

b 製作国:アメリカ

c 監督:ジョン・マスカー、ロン・クレメンツ

1-1-2 映画『美女と野獣』

a 公開:1991年

b 製作国:アメリカ

c 監督:ゲーリー・トゥルースデイル、カーク・ワイ

1-2    リメイク版

←実写版

→リメイク版は両作品2010年代に制作

1-2-1 映画『アラジン』

a 公開:2019年

b 製作国:アメリカ

c 監督:ガイ・リッチー

1-2-2 映画『美女と野獣』

a 公開:2017年

b 製作国:アメリカ

c 監督:ビル・コンドン

 

2. リメイク版制作時のフェミニズムの再興と女性の社会進出による影響

←(第三波〜第四波フェミニズム)

2-1 『美女と野獣』(2017)のベルの人物像

←オリジナル版(1991)では、ベルは知的で読書家だったが、村人には「変わり者」と扱われ、やや受動的

2-1-1 知的で好奇心旺盛な女性

a 村で唯一の読書好きな女性として描かれる

b 知識や教養を重視する姿勢が強調

c 読書を通して自分の世界を広げようとする

d 「自分の住む世界に閉じ込められたくない」「もっと広い世界を見たい」という探究心・向上心

2-1-2 発明家としての描写

a ベルが発明家として描かれている

Ex)洗濯機のような道具を作る

←オリジナル版(1991)ではベルの父モーリスが発明家として描かれている

b 単なる読書好きにとどまらず、「手を動かす」「考える」実践的知性も持つ

2-1-3 主体性と自立性

a 村人からの圧力(ガストンの求婚や村の価値観)に屈せず、自分の意志で選択し、行動する女性像

b 父を助けるために自らビーストの城に向かい、囚われの身となることを選ぶという自主的な判断

2-1-4 対等な関係から始まる恋愛

a 野獣との関係は、対話と共通の価値観(読書や孤独)を通じた相互理解から育まれる

b ベルは野獣を変える存在ではなく、お互いに成長する関係として描かれている

2-2 『アラジン』(2019)のジャスミンの人物像

←オリジナル版(1992)では、ジャスミンは「自由に恋愛や結婚を選びたい」という主張が中心

2-2-1 王位継承者としてのリーダーシップと政治的意識

a 政治的発言をする場面もあり、「この国の未来を決める立場になりたい」と明言

←オリジナル版(1992)では、「王女としての地位」に違和感を抱いている程度

b 父や周囲の「女性は王になれない」という固定観念に対して、毅然とした態度で反発し、「民の声を聞けるリーダーになりたい」と語る姿

c 黙らず、自らの声で不正に立ち向かう

←ジャファーから「王女は口を閉じていろ」と軽視された場面

2-2-2 自立心と主体性の強調の強調

a 自由を求めるだけでなく、自ら行動を起こし、現実を変えようとする

Ex)民の暮らしに関心を持ち、市場に出て直接人々と接する

Ex)国の外交や貧困についても強い関心を持っており、「見世物」や「嫁入り」の対象として扱われることに強く反発

Ex)恋愛においても、「自分の価値は誰と結婚するかでは決まらない」という自覚を持っている

2-2-3 「Speechless」の歌が象徴する女性のエンパワーメント

←「女性は黙って従うもの」という社会的抑圧への強い抵抗を表現した楽曲

a リメイク版のために新たに追加されたもの

b ジャスミンの心情と社会的抑圧への抵抗を象徴

Ex)I won’t be silenced, you can’t keep me quiet.

(私は沈黙しない。あなたたちは私を黙らせられない。)

c 女性が「声を奪われること」への抵抗を表す

d 彼女がこの歌を歌った直後に権力者に反論

e 自ら国王になる決意を示すという重要な転換点となる

f 物語終盤、衛兵に捕らえられそうになる場面:「Speechless」を歌い、自らの声で周囲の意識を変え、行動を起こす展開は、女性の自己主張とリーダーシップの象徴

2-2-4 恋愛と自己実現のバランス

a ジャスミンにとって恋愛は「目的」ではなく、「対等な関係」の中で生まれるものとして描かれる

b 女性の夢や目標が恋愛によって損なわれない姿勢を反映

←最終的に王国を統治するのはジャスミンで、アラジンはそれを支える存在

 

3. フェミニズムの再興と女性の社会進出の背景

3-1 SNSの普及

←TwitterやInstagram、Facebook

3-1-1 SNSの普及以前

a 性差別や性暴力は、被害者が声を上げにくい

b 「恥ずかしい」「周囲から非難されるかも」という不安

c 権力関係(加害者が職場の上司や有名人など)によって沈黙を強いられる

3-1-2 SNSにより性差別・性暴力に対する声が世界的に可視化

←個人の体験が、社会全体で共有・議論されるべき課題であると認識されるようになったことを指す

a 個人が直接、自分の体験や意見を匿名・実名で発信可能に

b 共感した人が「いいね」や「シェア」で拡散

c 同じ経験を持つ人の声が集まり、社会的な問題として認識

d テレビや新聞よりも早く社会的議論を巻き起こすケースが増加

e 女性の権利が「個人の問題」から「社会の問題」へと変化

f 「守られる存在」ではなく、「リーダーシップを発揮する主体」としての女性像が社会的に求められる

3-1-3 例:「#MeToo運動」(2017)

a ハリウッド女優のアリッサ・ミラノが性的嫌がらせや性的虐待を受けた女性たちにその実態を告発することを求めたもの

b 世界中の女性が性被害を告発するムーブメントへと発展

3-2 グローバル化と社会の変化

3-2-1 グローバル化で社会発展に女性の力が不可欠になった

a 経済・政治の国際化の中で、女性が教育やキャリアを通して社会参加することが可能

b 国連や国際機関も 「女性のエンパワーメント」=社会発展の鍵と位置づけ

3-3 映画・メディアの影響

3-3-1 大衆文化が「自立した女性像」を提示

a ハリウッドやディズニーをはじめとする大衆文化

b 時代の変化を反映して「自立した女性ヒロイン像」を描く

c これにより、若い世代に「女性もリーダーになれる」というモデルが提示

3-4 #MeToo運動以降の社会的圧力

3-4-1 #MeToo 運動を契機に、リーダーシップを持つ女性像が求められる

a企業や政治の場で、女性の権利やリーダーシップを軽視すると批判

b 教育やリーダー育成の場で「女性の自立支援」が優先的に語られる

 

4. リメイク版制作時のLGBTQ+の可視化とインクルーシブ表現による影響

4-1 『美女と野獣』(2017)のル・フウ

4-1-1 ル・フウ

a ガストン(悪役キャラクター)を崇拝し、ご機嫌を取っているお調子者の子分

b 時には、ガストンの突発的な怒りを鎮める役割を果たす

4-1-2 ディズニー初の公式なゲイ・キャラクター

←オリジナル版では、ル・フウはガストンの腰巾着のような描かれ方

a ガストンに対して憧れや好意を抱いているような言動

b 「ディズニー映画初のゲイ・モーメント」と話題

←クライマックスのダンスシーンの男性同士で踊る瞬間

c ガストンに片想いする描写

d ゲイのカップルがハッピーエンドを迎えたことがわかる描写

e 性の多様性を“さりげなく”表現

4-1-2 「ディズニー作品における初のゲイ・キャラクターを描きたかった」と語る

←ビル・コンドン監督

4-2キャスティングの再構築

←中東・南アジア・アフリカ系の多様な人種背景が共存するキャスティング

4-2-1 アラジン

a 俳優:メナ・マスード

b 出身・背景:エジプト系カナダ人

c 中東のルーツを持つ俳優

d 文化的リアリティを確保

4-2-2 ジャスミン

a 俳優:ナオミ・スコット

b 出身・背景:イギリス出身・母がインド系

c 南アジア的要素を取り入れ

d より多文化的なプリンセス像

4-2-3 ジーニー

a 俳優:ウィル・スミス

b 出身・背景:アフリカ系アメリカ人

c 白人ではないスターを配置

d 多様性の象徴としての存在感を発揮

 

5. LGBTQ+の可視化とインクルーシブ表現の背景

5-1 LGBTQ+運動

5-1-1 LGBTQ+とは

a  L:Lesbian(レズビアン/女性同性愛者)

b  G:Gay(ゲイ/男性同性愛者)

c  B:Bisexual(バイセクシュアル/両性愛者)

d  T:Transgender(トランスジェンダー/性自認が出生時の性と異なる人)

e  Q:Queer(既存の性の枠にとらわれない人)または Questioning(自分の性を模索中の人)

f  +:上記以外の性的多様性(アセクシュアル、パンセクシュアルなど)を包括する記号

5-1-2 LGBTQ+運動とは

a 性的少数者の人々が、差別や偏見のない社会を目指して行ってきた社会運動

5-1-3 LGBTQ+運動の目的

a 性的指向や性自認を理由とした差別・暴力の撤廃

b 同性婚やパートナーシップ制度の法的承認

c 教育・職場・メディアなどでの多様性の理解促進

d 自己表現の自由(カミングアウト・プライドイベントなど)の保障

5-2 LGBTQ+運動の歴史的背景

5-2-1 1969年:ストーンウォールの反乱

a アメリカ・ニューヨーク

b ゲイバー「ストーンウォール・イン」に対する警察の不当な弾圧に抗議したことがきっかけ

→世界的なLGBTQ+解放運動が始まる

c この出来事を記念し、「プライド・パレード」が毎年開催されるようになる

5-2-2 1970〜90年代:法制度と社会運動の拡大

a 各国で同性間性行為の非犯罪化、雇用差別の禁止などが進む

b イギリス

c 1967年に同性愛行為がイングランドとウェールズで非犯罪化

d オランダ

e 1970年代にヨーロッパでいち早く同性愛者の権利を保障

f 1980〜90年代に教育現場・職場での差別禁止を法制化

g スウェーデン

h  1972年に世界で初めてトランスジェンダーの性別変更を法的に認める

i カナダ

j 1980〜90年代に人権憲章に基づく差別禁止法が整備

5-2-3 2000年代以降:法的承認とメディアでの可視化

a 同性婚が認められる国が増加

b オランダが2001年に世界初の同性婚合法化国家となる

c 映画・ドラマ・アニメなどで多様な性の描写が増える

Ex)『グリー』(2009〜2015)

d 高校の合唱部を舞台

e ゲイ・レズビアン・トランスジェンダーの登場人物を積極的に描く作品

f 若者文化の中でLGBTQ+を肯定的に扱う代表作

Es)『美少女戦士セーラームーン』(1990年代)

g ウラヌスとネプチューンが女性同士のパートナーとして描かれる

5-2-4 2010年代:SNSによる可視化の拡大

a #LoveIsLove や #PrideMonth などのハッシュタグ運動が広がる

←SNSを通して当事者が声を上げやすくなったため

b #LoveIsLove:「誰が誰を愛そうと、その愛に価値や正当性の違いはない」 という考え

c #PrideMonth:LGBTQ+コミュニティの権利や文化を称え、性的指向や性自認の多様性を祝う月間(毎年6月)

←「プライド・パレード」

d #MeToo運動とも重なり、性に関する社会構造の見直しが進む

5-3 多様性と人種的包摂への転換

5-3-1 ハリウッドにおける変化

a 2010年代後半にハリウッドで「#OscarsSoWhite」運動

←アカデミー賞が白人ばかりだという批判

b キャスティングや物語の多様性を重視する方向へ転換

5-3-2 ホワイトウォッシングとは

a 映画やドラマで、本来非白人であるキャラクターや役割に白人俳優を起用すること

Ex)アジア系、アフリカ系、中東系の役を白人が演じる

b 問題点

c 非白人俳優の出演機会を奪う

d 文化的背景や多様性を正確に描かない

e 観客に「白人中心」の価値観を刷り込む

5-4 「#OscarsSoWhite」運動の歴史的背景

5-4-1 1920〜50年代:初期ハリウッド

a 黒人・アジア人俳優は主に脇役やステレオタイプ的役に限定

b 黒人は「召使い」「娼婦」「悪役」に限定されることが多かった

5-4-2 1960〜80年代:抗議運動の萌芽

a 黒人・アジア系俳優の権利向上が徐々に叫ばれる

←公民権運動の影響

b 商業的理由で「有名な白人スターを起用する」慣行は依然として継続

5-4-3 1990年代:国際市場の拡大と再批判

a 「白人中心のキャスティング」への批判が国際的に高まる

←ディズニー・アニメーションや大作映画がグローバル市場で成功するにつれて

b 『アラジン』(1992)や『ムーラン』(1998)のキャスティングは、白人声優・俳優中心であった

c 文化表象の誤り(オリエンタリズム)も指摘されはじめる

5-4-4 2000年代〜2010年代:#OscarsSoWhite運動

a ハリウッド大手スタジオに「キャスティングの多様化」が求められる

b 『ブラックパンサー』(2018)や『クレイジー・リッチ!』(2018)など、非白人中心作品が高評価

 

6. リメイク版制作時の文化的表象への批判による影響

6-1 『アラジン』への影響

6-1-1 オリジナル版

a アグラバーは“アラブ風”だが不明確

b 東洋を神秘・危険として描く

c 「アラビアン・ナイト」

←物語の冒頭、船で海を渡る商人が2人の子どもに語り出す際に流れる

b 「"Where they cut off your ear if they don't like your face."」

(奴らはお前の顔が気に入らなければ耳を切り落とす)

←「アラビアン・ナイト」内の歌詞

→差別的表現と批判を受け、1994年に変更

6-1-2 リメイク版

a アグラバーの世界観は、中東だけでなく、インド・東南アジア・アフリカ要素も取り入れた多文化的で抽象的な空間に再構築

b "Where you wander among every culture and tongue; It's chaotic, but hey, it's home."
(いろんな文化と言語が行き交う場所。混沌としているけど、ここが自分の故郷だ)

←オリジナル版で批判された歌詞

6-2 『美女と野獣』への影響

6-2-1 オリジナル版

a 村人たちは「単純で愚かな田舎者」というステレオタイプ

6-2-2 リメイク版

a 村人たちにも個性や役割が与えられる

b 能動的な表現が増加

Ex)パン屋や鍛冶屋など、職業ごとの描写が丁寧になり、町全体が生き生きとしたコミュニティとして表現

Ex)子どもや女性キャラクターも町の中で積極的に行動し、物語に関わる場面が増加

 

7. 文化的表象への批判の背景

7-1 背景

7-1-1 エドワード・サイードの『オリエンタリズム』以降、西洋による“東洋”の描き方(誇張・異)が批判対象となる

a エドワード・サイードの『オリエンタリズム』:1987年に発表された、中東・アジアなどの「東洋(オリエント)」をどのように作り上げ、表象してきたかを批判的に分析した書籍

b サイードの指摘は、映画や広告など大衆文化における異文化表象の問題意識を広めた

7-1-2 1990年代のディズニー作品は「文化的ステレオタイプ」が多く、映画研究者や批評家、教育現場で再評価の声が強まる

←サイードの批判以降

a 21世紀のディズニー実写リメイクや新作アニメで、文化的多様性やステレオタイプ回避を意識する契機となった

 

7. まとめと次回

7-1 まとめ

7-1-1 リメイクされた社会背景

a SNSにより性差別・性暴力に対する声が世界的に可視化されたこと

b グローバル化で社会発展に女性の力が不可欠になったこと

c LGBTQ+運動の高まり

d #OscarsSoWhite運動による多様性と人種的包摂への転換

e エドワード・サイードの『オリエンタリズム』による、映画研究者や批評家、教育現場で再評価

7-2 次回について

7-2-1 キャラクターの内面描写とリアリズム志向

7-2-2 SNS時代の価値観

a 自己表現

b 社会参

担当:いあ

 

Q.1 3-2-1 cの多様性について、多様性にまだなっていないということですか?

A.1 この部分で述べている「多様性」についてですが、冷戦後のアメリカにおいて、実際にどの程度多様性が浸透していたのかという点に触れたものでした。しかしながら、当時の社会は決して多様性が十分に広まっていたわけではなく、依然として白人中心・異性愛を前提とした価値観が主流でした。表現の仕方が不適切で、誤解を招くような記載となってしまい、申し訳ありません。

 

Q.2 3-3-1の主人公ベルは何の作品の主人公ですか。

A.2 ベルは、ディズニー映画『美女と野獣』に登場する主人公であり、知性や自主性を持ったキャラクターとして描かれています。

 

Q.3 3-3-3の主人公ジャスミンは何の作品の主人公ですか。

A.3 ジャスミンは、ディズニー映画『アラジン』に登場するヒロインで、自由を求め、自らの意思で生きようとする強い意志を持ったキャラクターです。

 

Q4.5-2-2 c 「第2波フェミニズム的でありながらも限界がある」のはもともとの物語の拘束力があるからですか。

A.4 リメイク版のディズニー映画が「第2波フェミニズム的でありながらも限界がある」とされるのは、オリジナルの物語構造や価値観に強く縛られているためです。第2波フェミニズムとは、1970年代以降に広がった、女性の教育や職業、社会的地位の向上を目指す運動のことであり、リメイク作品にはその影響が見られます。たとえば、ジャスミンが王子との結婚ではなく「国を治めたい」という意思を語ったり、ベルが読書を好む知的で自立した女性として描かれたりしている点がその一例です。

しかしながら、これらのキャラクターは、もともと白人中心主義や異性愛を前提とした価値観の中で作られた物語の登場人物です。そのため、いくら現代的な視点が加えられていても、最終的には恋愛や結婚を物語のゴールとする構造から完全には抜け出すことができません。結果として、女性の主体性を描こうとする一方で、従来の価値観に回収されてしまう場面も見られます。

このように、リメイク作品には第2波フェミニズム的な要素が取り入れられているものの、オリジナルの物語が持つ文化的・構造的な拘束力によって、その表現には限界があると言えます。

 

Q.5 クラシック・プリンセスとニュー・プリンセスの次は何プリンセスですか。

A.5 「クラシック・プリンセス」が、受動的で男性に救われることを運命づけられた伝統的な女性像を体現していたのに対し、「ニュー・プリンセス」は第2波フェミニズムの影響を受け、自立性や知性を備えた能動的な存在として描かれるようになりました。そして、近年ではその先に位置づけられる「ポスト・プリンセス」とも呼ばれる新たなカテゴリーが注目されています。

「ポスト・プリンセス」は、恋愛や結婚といった従来の物語的ゴールから解放され、より個人の成長や共同体との関係性、多様な価値観の尊重に重きが置かれている点が特徴です。たとえば、『モアナと伝説の海』(2016)のモアナは、恋愛要素を持たず、自らの意思と使命感によって航海に出るリーダーとして描かれています。また、『ミラベルと魔法だらけの家』(2021)のミラベルは、超自然的な力を持たないという「欠如」を抱えながらも、家族の再生を導く存在として物語の中心に立っています。

このような表現は、第3波フェミニズムやポストフェミニズムの文脈とも接続され、個人の多様な生き方や「完璧でなくても価値がある」存在の肯定といった現代的テーマを反映しています。ディズニープリンセスは、単なる娯楽の象徴にとどまらず、その時代ごとのジェンダー観・社会的価値観を反映する文化的テクストとして機能しており、「ポスト・プリンセス」の登場は、ポピュラーカルチャーにおける女性表象のさらなる進化を示すものと考えられます。

 

Q.6 「6.オリジナル版制作時のアメリカの人種表象」のオリジナル版とはいつどこのですか。

A.6 ここで言及している「オリジナル版」とは、1991年に公開されたアメリカのディズニー映画『美女と野獣』および、1992年に公開された同じくディズニー映画『アラジン』を指しています。

 

Q.7 7-1-1 c の「西洋人の目」 とはいつのですか。

A.7 ディズニーの長編アニメーションは制作期間が長いため、脚本も企画開始後すぐに執筆が始まり、公開の2〜3年前にはほぼ完成していることが多いです。
そのため、1992年に公開された『アラジン』の場合、脚本の制作はおおむね1989年から1991年頃に集中していた可能性が高いです。一方で、企画段階や初期の構想は1980年代後半から始まっていたと考えられます。
このため、作品には1980年代の社会的・文化的背景や価値観が反映されていると推察されます。

 

Q.8 7-1-2 a の『美女と野獣』における登場人物 とはいつのですか。

A.8 これは、1991年に公開されたオリジナル版『美女と野獣』の時代にあたります。

担当:いあ

 

1. ディズニーにおける映画『アラジン』と映画『美女と野獣』 
1-1 オリジナル版 
←アニメーション版 
→オリジナル版は両作品1990年代に制作 
1-1-1  映画『アラジン』 
a 公開:1992年 
b 製作国:アメリカ 
c 監督:ジョン・マスカー、ロン・クレメンツ 
1-1-2 映画『美女と野獣』 
a 公開:1991年 
b 製作国:アメリカ 
c 監督:ゲーリー・トゥルースデイル、カーク・ワイ 
1-2 リメイク版 
←実写版 
→リメイク版は両作品2010年代に制作 
1-2-1 映画『アラジン』 
a 公開:2019年 
b 製作国:アメリカ 
c 監督:ガイ・リッチー 
1-2-2 映画『美女と野獣』 
a 公開:2014年 
b 製作国:アメリカ 
c 監督:ビル・コンドン 
2. オリジナル版制作時のアメリカの政治・国際関係 
2-1 冷戦終結とアメリカ的価値観の誇張 
2-1-1 背景 
a 1989年:ベルリンの壁崩壊 
b 1991年:ソビエト連邦解体 
2-1-2 ベルリンの壁崩壊 
←西ベルリンの周りを取り囲む3メートルの高さの壁 
a 第2次世界大戦後:ドイツは4つの地域に分割され、
アメリカ、ソ連、イギリス、フランスが統治 
←ソ連が統治するエリアは東ベルリン 
→東ベルリンは東ドイツの首都 
b 1961 年8 月13 日:東ドイツ政府が東ドイツの人々が逃げられないようにするために作成 
←1950 年から1960 年にかけて東ドイツの経済状況が悪化 
→西ドイツと西ベルリンは経済成長 
c 1989 年10月から:東ドイツの人々が路上で反政府デモ 
d 1989年11月9日:ベルリンの壁崩壊 
←「只今をもって東ドイツの国民は自分の好きな所へ旅
行しても良くなった」と発表 
2-1-3 ソビエト連邦解体 
a 1917年のロシア革命でソビエト連邦成立 
←複数の共和国の集まりであり、ソビエト政府が各国を
まとめる 
b 1991 年12 月25日:ゴルバチョフ大統領が辞任 
←1990年に大統領に就任 
c 1991 年12月26日:ソビエト連邦最高会議が連邦の解体を宣言 
←ソビエト連邦解体 
→ソビエト政府が統率するのではなく、各共和国が協力する体制が目指された 
2-1-4 冷戦終結 
a 冷戦:ソビエト連邦が率いる社会主義陣営(東)とアメリカが率いる自由主義・資本主義陣営(西)の政治的・軍事的対立 
a ベルリンの壁は東西ドイツを分断し、冷戦を象徴 
b ベルリンの壁崩壊後、東ヨーロッパの民主化が加速 
←東ヨーロッパの社会主義政権不安定化をまねいた 
c ソビエト連邦崩壊後、冷戦は完全に終焉 
→アメリカの国際的な影響力が大きくなる 
2-1-5 冷戦終結後のアメリカ 
a 経済政策 
b ①北米自由貿易協定 (North American Free Trade Agreement)(以下 NAFTA) 
c 北米自由貿易協定(NAFTA):アメリカ、カナダ、メキシコの3ヵ国間で結ばれた、商品やサービスの貿易障壁を撤廃する経済協定 
←1992 年12 月17 日に署名され、1994年1月1日に発効 
d目的 
国境を越えた移動を促進すること 
公正な競争条件を促進すること 
投資の機会を拡大すること 
知的財産権の保護や執行を行うこと 
e ②ハイテク産業の振興 
f インターネットがオフィスや一般家庭にまで普及 
→商業ビジネスの可能性 
g ③富裕層中心に増税 
→中間所得層中心に減税

h 外交政策 
i ①アメリカ・ベトナム国交回復 
j 1995 年7月11日発表 
←ベトナム戦争(1955~1975)から20年 
k ベトナム戦争:アメリカと南ベトナム/北ベトナムと
南ベトナム解放民族戦線が対立 
l 背景 
アメリカ:産業でベトナムに進出したい 
ベトナム:アメリカ企業の誘致を望む 
3. ディズニー映画へのアメリカの政治・国際関係の影響 
3-1 冷戦締結後のアメリカ 
←世界がようやく安定を取り戻しつつあるタイミング 
3-2 アメリカ国内では「保守的な安定志向」があり、家族
や愛、伝統的価値観が重視 
a 民主主義・自由・個人主義・資本主義 
3-2-1 伝統的価値観 
a 恋愛観:ロマンティック・ラブ至上主義 
←「王子様と結ばれること=幸せ」という価値観が基本 
b 女性像:自立心はありつつも、まだ「優しさ」や「家
庭性」が重視 
←知的でも、“変わり者”として描かれる 
c 多様性:白人中心・異性愛前提 
d 善悪:キャラクターは善か悪かに明確に分類 
(例:ベル=善、ガストン=悪) 
e ストーリー:シンプルで感情に訴える構造 
←深い背景よりも感動やユーモア重視 
3-2-2 ディズニー映画では「自由vs抑圧」「善悪の二項
対立」「自己実現」が強調 
3-3 具体例 
3-3-1 例①主人公ベルの描き方 
a 自立的で読書好き、村の価値観に従わない「変わり者」 
←個人の自由と知性の尊重(自由主義的価値) 
3-3-2 例②ヴィランの描写(ジャファー) 
a 権力欲と支配欲に満ちた宰相 
←権威主義・独裁の象徴(旧ソ連的権力像の批判) 
3-3-3 例③主人公ジャスミンの描き方 
a 「決められた結婚」から逃れ、愛を選ぼうとする女性」 
←個人の選択と自由の肯定(封建的権威の否定) 
4. オリジナル版制作時のアメリカの社会運動・文化的潮流 
4-1 フェミニズム第2波・第3波への移行 
a 労働・家庭・教育における女性の権利拡大 
←多様な女性像の模索が始まる 
4-2 フェミニズム 
a あらゆる性差別からの解放を目的とした運動 
b フェミニズムの萌芽は18世紀フランス 
4-2-1 第1波:リベラル・フェミニズム 
←市民権獲得のための闘争 
a 19 世紀末から20世紀初頭 
b 女性の参政権、財産権、相続権などの公的な権利保護
c 女性に対しても高等教育への門戸を開くことを要求 
4-2-2 第2波:ウーマン・リブ 
←女性による権利解放運動 
a 第2次世界大戦後の1960年代以降 
b 女性のために、女性が男性と平等な権利を求め、男性と対等の地位や自分自身で職業や生き方を選べる自由を獲得しようとする社会運動 
c 固定的なジェンダー観を作り出す社会的抑圧や経済的格差の是正 
4-2-3 第2波:ブラック・フェミニズム 
a それまで白人の中産階級の女性がフェミニズムの牽引役であったために見過ごされてきた、人種差別に光を当てるもの 
b 「インターセクショナリティー」への認知 
←マイノリティーなど焦点の当たりづらい差別を受けている当事者の課題を認知し解決しようとする動き 
4-2-4 第 3 波:ダイバーシティーとジェンダーからの解放 
a 1992 年:アメリカ人フェミニストのレベッカ・ウォーカーの「第3波になる」という記事の寄稿がきっかけ 
←セクシュアルハラスメントを止めることができておらず、男女間の平等も実現されていないと喝破 
b ジェンダーに関する議論が活発化 
c ミレニアム開発目標 (Millennium Development Goals)(以下 MDGs) 
←MDGsはSDGs(Sustainable Development Goals)の前身 
→8つの目標の3番目に「ジェンダー平等推進と女性の地位向上」が掲げられており、2015年までに達成すべきものと規定 
←現在に至るまで実現されていない 
4-2-5 第4波:オンラインフェミニズム 
a 現在オンラインフェミニズムの渦中 
b ソーシャルメディア、オンラインでの情報発信や議論が活発 
c 「#Bring Back Our Girls運動」 
←ナイジェリアでテロ組織が女子生徒276人を拉致した事件(2014) 
→ハッシュタグによって拡散されることで世界中に事件が認知 
d 「#MeToo運動」(2017) 
←ハリウッド女優のアリッサ・ミラノが性的嫌がらせや性的虐待を受けた女性たちにその実態を告発することを求めたもの

→現在もまだ女性に対する性的な要求が横行している現実を多くの人が認識 
4-3 マルチカルチュラリズム(多文化主義) 
a 教育や表象でも他文化理解が重視 
4-3-1 「人種のるつぼ」から「モザイク社会」へ 
a 「人種のるつぼ」:アメリカのように多種多様な人種が混在して暮らしている都市、またはその状態 
→新しい社会や文化を形成 
←イズレイル・ザングウィルの戯曲が由来 
b 「モザイク社会」:カナダのように多様な民族や文化がそれぞれ独自の特性を持ちながら、全体として調和のとれた社会 
→お互いの出身地域の文化を尊重し、それを保持したまま 
5. ディズニー映画へのアメリカの社会運動・文化的潮流の影響 
5-1 社会運動・文化的潮流 
←フェミニズム第2波やマルチカルチュラリズム 
5-1-1 映画表象において「受動的な女性像」への批判が強まる 
←フェミニズム第2波(ウーマン・リブ) 
5-1-2 表象で他文化理解が重視 
←マルチカルチュラリズム 
→しかし作品と社会運動は比較的独立 
5-2 具体例 
5-2-1 例①主人公ベル 
a 読書好きで知的 
→結婚よりも知的好奇心と自己実現を求める 
b 村人たちから「変わり者」とされる 
←女性が従来の役割からはみ出すことの葛藤 
c 恋愛において、相手を「外見で判断しない」「内面を
見抜く」 
←価値観の転換 
d 第2波フェミニズム的要素 
e 性役割に縛られない女性像 
f 男性からの救済ではなく、対等なパートナーシップ 
5-2-2 例②主人公ジャスミン 
a 王女でありながら、政略結婚を拒否 
←自分の愛を選びたいという欲望 
b ジャスミンは主人公の“獲得対象”としての側面 
←物語の中心はアラジン 
c 第2波フェミニズム的要素 
←第2波フェミニズム的でありながらも限界がある 
d 女性の主体性はあるが、物語の中心ではない 
e 結婚への意志表示が中心テーマであり、社会的変革へ
の言及は少ない 
5-3 クラシックプリンセス 
←初期のディズニープリンセス 
a 主に受け身的な存在 
b 王子や男性によって「救済」される 
c 家事・美徳・献身といった伝統的な女性役割を体現 
d 外見の美しさが物語の中心的要素 
5-3-1 『白雪姫』(1937年) 
a プリンセス:白雪姫 
b 受動的な存在 
c 優しく従順 
d 王子のキスで目覚める 
5-3-2 『シンデレラ』(1950年) 
a プリンセス:シンデレラ 
b 苦難に耐え、夢を信じ続ける 
c 王子との結婚が「救い」 
5-3-3 『眠れる森の美女』(1959年) 
a プリンセス:オーロラ姫 
b 美しさと優雅さの象徴 
c 物語の大半を眠って過ごす 
5-4 ニュープリンセス 
←オーロラ姫(1959年)以降のディズニープリンセス 
a 自己決定の欲求 
←恋愛や結婚よりも、自分の選択を優先 
b 男性に救われるのではなく、対等なパートナー関係 
c 教育・自由・知性への関心が強調される 
d プリンセス自身が物語の「主導権」を持つようになる 
5-4-1 『リトル・マーメイド』(1989年) 
a プリンセス:アリエル 
b 自由と人間世界への憧れを持つ16歳の人魚 
c 父の反対を押し切って人間になる決意 
←声と引き換えに足を手に入れる 
d エリック王子との出会いという恋愛が強い動機となる 
5-4-2 『ポカホンタス』(1995年) 
a プリンセス:ポカホンタス 
b「戦争を避ける知恵」「土地と仲間を守る責任感」が強い 
c 最後はジョン・スミスと別れ、部族に残ることを選ぶ 
d 初の非白人系プリンセス 
6. オリジナル版制作時のアメリカの人種表象 
6-1 西洋中心的(ユーロセントリズム) 
←西洋(とくに白人・キリスト教的価値観)を世界の基準・中心とみなし、それ以外の文化を「他者」として捉える思想や表現傾向 
6-1-1 背景要因 
a ①ディズニーの市場構造 
b 主にアメリカの子どもと家族をターゲットにしている 
c 海外マーケットは重要でも、「アメリカ的価値」が基準になりやすい 

d ②ハリウッド文化の影響 
e ハリウッドの映画産業全体が、長年西洋中心的な価値観を標準と見なしてきた 
f ③教育や歴史観の偏り 
g 米国教育でも、アメリカ史や西洋史が中心 
h 他地域の文化や歴史は「背景」や「装飾」として使われる 
6-1-2 特徴 
a 歴史・文化・道徳の「正しさ」は西洋にあるという前提 
b 非西洋の文化は「未開」「遅れている」「神秘的」などのイメージで描かれる 
c 「普遍的な人間像」や「美の基準」が白人基準 
6-2 ステレオタイプ的 
←特定の集団に対して過度に単純化されたイメージ・固定観念 
6-2-1 背景要因 
a ①ハリウッド映画産業の構造 
b ディズニーは大量生産・大量消費型の娯楽文化を代表する存在 
←ハリウッド映画の中核を担ってきた企業 
c グローバル市場で「誰にでもわかりやすい」キャラクターや文化表現が求められるため 
d ②西洋中心的(ユーロセントリズム) 
e ③視聴者の「期待」に応える市場原理 
f 直感的で記憶に残りやすいため 
←子どもと家族向けの映画 
g 市場調査に基づき、「こういう国・文化ならこう見えるだろう」と視聴者がイメージしやすい記号が採用 
h ④アメリカ的価値観の普遍化 
i ディズニーはアメリカの「自由」「民主主義」「自己実現」といった価値観を文化輸出として広めた 
←冷戦後 
j ⑤研究・表現者の多様性の欠如 
k 制作側(脚本家、演出家、デザイナー)の多くが白人男性中心 
←異文化を「自分たちの枠組み」で解釈し、他者の語りを置き換えてしまう 
7. ディズニー映画へのアメリカの人種表象の影響 
7-1 具体例 
7-1-1 例①『アラジン』におけるアグラバー 
← オリエンタリズム的(東洋を神秘・危険として描く)な表現 
a 「アラビアン・ナイト」 
←物語の冒頭、船で海を渡る商人が2人の子どもに語り出す際に流れる 
b 「"Where they cut off your ear if they don't like your face."」 (奴らはお前の顔が気に入らなければ耳を切り落とす) 
←「アラビアン・ナイト」内の歌詞 
→差別的表現と批判を受け、1994年に変更 
c エキゾチック(異国的)な舞台は用いられるが、あくまで「西洋人の目」で語られる 
7-1-2 例①『美女と野獣』における登場人物 
a 主人公も脇役もすべて白人 
8. オリジナル版制作時のアメリカのメディア環境 
8-1 メディア環境の技術的特徴 
8-1-1 テレビとVHSの全盛期 
a 映画の二次利用としてVHS(ビデオテープ)販売・レンタルが一般化 
b マスメディア(テレビ・映画館)が情報の主流 
8-1-2 ケーブルテレビとメディア多様化の始まり 
a 専門チャンネルによるメディアの断片化の始まり 
←MTV(音楽専門チャンネル)やCNN(ニュース専門チャンネル)など 
8-2 インターネット以前の時代 
8-2-1 情報の発信は一方向的 
←インターネットの商用化は1993年以降 
a メディア批判や市民の声は新聞やテレビの報道に依存 
b 世論の即時的な反発が起きにくい環境 
9. オリジナル制作当時のアメリカ(まとめ) 
9-1 政治・国際関係 
←冷戦終結とアメリカ的価値観の誇張 
9-1-1「保守的な安定志向」があり、家族や愛、伝統的価値観が重視 
9-1-2「自由vs抑圧」「善悪の二項対立」「自己実現」が強調 
9-2 社会運動・文化的潮流 
←フェミニズム第2波、マルチカルチュラリズム 
9-2-1 映画表象において「受動的な女性像」への批判が強まる 
9-2-2 表象で他文化理解が重視 
9-3 人種表象 
←西洋中心的(ユーロセントリズム)、ステレオタイプ的 
9-3-1 歴史・文化・道徳の「正しさ」は西洋にあるという前提 
9-3-2 非西洋の文化は「未開」「遅れている」「神秘的」などのイメージで描かれる 
9-3-3「普遍的な人間像」や「美の基準」が白人基準 
9-4 メディア環境 
←情報の発信は一方向的 
9-4-1 世論の即時的な反発が起きにくい環境

担当:かゆ

 

1今回の目的

 

1-1はじめに

1-1-1これまで日本のハンバーガー市場の以下の項目などを取り扱ってきた

aハンバーガーの歴史や主要チェーン店の日本進出経緯

←主要チェーン店:ハンバーガーチェーン市場上位のマクドナルド、モスバーガーに、近年店舗数が増加しているバーガーキングを加えた3社など

b近年のハンバーガー市場やコロナウイルス流行当時の市場規模

c主要チェーン店の戦略比較

Ex)プロモーション戦略、フランチャイズ、DX戦略

 

1-2今回の目的

1-2-1日本のハンバーガー市場を対象として、競争環境の変化と今後の展望について検討

1-2-2日本のハンバーガー市場はこれまで成長産業として拡大し続けている

a 2025年のファストフード市場規模(見込)

→市場規模見込みは4兆3,425億円であり、2024年は4兆1,271 億円のため前年に比べ、増加傾向

b 2025年のハンバーガー市場規模(見込)

→市場規模見込みは1兆1,072億円であり、2024年は1兆444 億円で前年に比べ、増加傾向

1-2-3近年は制約を抱える市場という側面もある

a少子高齢化による人口減少

b外食産業全体における人材不足

c原材料価格および物価の高騰

dデジタル化の定着による競争環境の変化

1-2-4今後の市場展望を考察することを目的とする

→上記の要因が日本のハンバーガー市場にどのような影響を与えているのかを3つの章に分けて整理

a 人口動態および労働力構造の変化

Ex)人材不足や外国人雇用を含めた労働力問題
b コスト構造の変化

Ex)原材料価格や物価高騰
c デジタル化が定着した後の競争環境

1-2-5成長戦略ではなく持続可能性の観点を重視

→よりマクロな市場環境の変化に焦点を当てる

 

2人口動態と労働力構造の変化が市場に与える影響

 

2-1人口減少と外食産業の人手不足

2-1-1人口構造の変化は外食産業の労働供給を縮小させる

 

2-2日本の少子高齢化による就業者数減少

2-2-1少子高齢化の進行により、生産年齢人口の減少が長期的に続いている

a 2040年の日本の就業者数は2022年より956万人少なくなる試算

→JILPT(独立行政法人労働政策研究・研修機構: The Japan Institute for Labour Policy and Training)が公表した「労働力需給の推計」(2023年度版)

←労働力需給の推計:将来推計人口、これまでの労働力の動向や経済成長の見通しなどに基づき推計

b出生数の減少でさらなる若い労働者の減少

→労働参加が期待される女性や高齢者の就業がすでに進んでいるため

2-2-2 2040年には2022年(6,724万人)より労働者は956万人少ない5,768万人と予想される

→経済がゼロ成長で推移し、女性などの労働参加が現状から進まなかった「ゼロ成長・労働参加現状シナリオ」の場合

2-2-3年齢別では、若い人ほど労働者の減少スピードが速いため15~29歳は193万人減る

a 30~59歳は847万人減

b反対に、60歳以上は84万人増えるとしている

2-2-4産業別で2022年と2040年を比較すると、飲食店・宿泊業も82万人減って297万人になると予想される

2-2-5経済成長率が1%台後半で推移し、「成長実現・労働参加進展シナリオ」の場合、労働者は2030年に6,858万人まで増加

→2040年には労働者は6734万人まで減るが、それでも2022年を10万人上回る

2-2-6人口減少社会において、性別や年齢を問わず、今後の就業者数を増加させることは難しい

 

2-3外食産業の労働者減少による現状

2-3-1非正社員の人手不足を感じている企業のうち、飲食店の割合は65.3%

←帝国データバンクが2025年4月に実施した「人手不足に対する企業の動向調査」による

→非正社員の人手不足割合は全業種平均で30.0%であり、飲食店はその2倍に達する

 

2-4外食産業の労働者減少による原因

2-4-1飲食業界はほかの業界と比べて、平均賃金の低い

a宿泊業・飲食サービス業の平均賃金は約269,500円であり、全産業平均の約330,400円を下回る

←厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」による

b中小規模の飲食店ではパート・アルバイト比率が高く異動が多い

→より良い労働環境の業界へ流れる可能性

2-4-2時間労働と休暇

a飲食業界は、店舗の営業時間にあわせて働く必要があり、必然的に拘束時間が長くなる傾向

→土日や祝日などの繁忙期には、長時間労働がさらに増えることも

bさらなる人手不足の影響で十分な休暇が取れなく、離職率の上昇にもつながる可能性

2-4-3教育・研修制度の不足

a従業員のスキルアップを支援する教育・研修制度が十分に整備されておらず、人が定着しにくい

b日々の業務に追われ、教育・研修に時間を割く余裕がない飲食店も少なくない

cサービスの質の低下や業務効率の悪化を招き、店舗運営に悪影響を及ぼす可能性

→教育・研修制度の欠如は、従業員のモチベーション低下やスキルの伸び悩みにつながる

2-4-4人間関係の問題

a従業員同士のコミュニケーション不足や、上司の部下に対する不適切な言動が問題となり、離職につながる

 

2-5外食産業の労働者減少による影響

2-5-1サービス品質の低下

a従業員一人当たりの業務量が増加すると、接客や調理に十分な時間を確保するのが難しくなる

b従業員の疲労が蓄積することで、接客態度が悪化する可能性

→サービス品質の低下は顧客の満足度を低下させ、リピーターの減少につながる

2-5-2既存スタッフへの負担増加

a人手不足は、現在働いている従業員に大きな負担を強いる

→長時間労働が常態化し、労働環境の悪化

b従業員のワークライフバランスにも悪影響を及ぼす

Ex) シフトの調整、急な欠員の穴埋め

2-5-3売上の減少

a営業時間の短縮や休業が売上機会の損失に直結

bサービス品質の低下により顧客満足度が低下し、リピーターが減少

2-6外国人労働者の受け入れ

2-6-1飲食業界でも外国人労働者の受け入れが拡大

←2018年の入管法改正:「特定技能」という新たな在留資格を新設

→宿泊業・飲食サービス業で働く外国人労働者のうち、特定技能ビザを取得者割合は、2023年の6.1%から2024年には8.9%に増加

a 2024年10月末時点で外国人労働者は230万2,587人に達する

←厚生労働省

→過去最多で前年比12.4%増

b飲食業界では外国人の採用比率が高く、人手不足解消の切り札として注目される

c産業別に見ると宿泊業、飲食サービス業における外国人労働者数は全体の12%を占める

d飲食業界に限ると、外国人労働者数は2024年に大幅に増加しており、前年比15.4%増加

→2020年から2024年にかけて、飲食業の外国人労働者数は28.7%増加

 

2-7非正規雇用中心の日本の外食産業

2-7-1飲食店で働く人の約8割が非正規として雇用

←労働力調査基本集計(2020年)

2-7-2学生中心のアルバイトが46%と半数近くを占め、パートが32%、残りは正規雇用者

→店舗に正社員がわずかしかおらず、学生アルバイトが店の運営の主力

2-7-3未就業者で新規学卒者以外、学生アルバイト(または働いた経験のないパート)の39%、およそ4割が飲食業で働き始めている

 

2-8ハンバーガー市場に与える影響

2-8-1従業員一人当たりの業務量が増加

a接客や調理が不十分になる可能性

b従業員の疲労が蓄積することで、接客態度が悪化する可能性

c長時間労働が常態化

d急な欠員の穴埋め

2-8-2サービス品質の低下

a合間の清掃やマネージャー業務が不十分

→在庫の発注や確認などのマネージャー業務が行なえず、時間外労働を強いられる可能性

b顧客満足度が低下し、リピーターが減少

2-8-3外国人労働者の受け入れ

a言語の違いによるコミュニケーション不足

→コミュニケーション不足により労働マニュアルにおいて認識が異なる可能性

bコミュニケーション不足による繁忙期の円滑な労働が困難

→客との対応が遅れ、よりトラブルになる可能性

c従業員育成にかなりの時間を要する

d文化の違いによるトラブル

→従業員同士で文化の違いを認識する必要

2-8-4ハンバーガーチェーン店は若年層の従業員が多い

2-8-5マクドナルドは若い世代(24歳以下)のクルーが約14万人いる

→全国のクルー人数は約21万人

←クルー人数はいずれも直営店舗、フランチャイズ店舗合計

 

2-9今後の展望

2-9-1日本の人口減少は、今後のハンバーガー市場において需要拡大の制約要因として作用すると考えられる

a 総人口の減少により外食需要全体の母数が縮小する
b 若年層人口の減少が外食利用頻度の低下につながる

→ハンバーガーを食す年齢層は若い傾向にある
c 市場拡大よりも既存需要の維持が重視される段階に移行する

2-9-2労働力人口の減少は、ハンバーガー市場における店舗運営の持続性に直接的な影響を及ぼす

a 店舗運営に必要な人員確保が今後さらに困難となる
b 営業時間短縮や店舗稼働率低下の可能性が高まる
c 人材制約が出店計画や撤退判断に影響を与える

2-9-3ハンバーガー市場が長年依存してきた若年層アルバイト中心の労働構造は、今後見直しを迫られる

a 学生アルバイト人口の減少により従来モデルの維持が困難となる
b 労働力の多様化が不可避となる
c 採用戦略の再構築が経営課題となる

2-9-4外国人労働者の活用は今後も重要な補完策となる

a 若年日本人労働力減少の代替手段となる
b 店舗オペレーション維持に寄与する
c 一方で教育・定着・制度依存といった課題も残る

2-9-5ハンバーガー市場の経営戦略を長期的に

a 短期的な人手確保では問題解決に至らない
b 効率的な店舗運営と人材活用が不可欠となる
c 人口減少を前提とした持続可能な市場適応が求められる

 

3コスト構造の変化とハンバーガー市場の持続可能性

 

3-1物価上昇とハンバーガー市場

3-1-1物価高

a日本ではモノやサービスの値上げが相次ぎ、物価高と呼ばれる状況が続く

b飲食業界であるハンバーガー市場は物価高騰による影響を受ける

c物価高には様々な要因がある

Ex) 円安、世界的な需要増・供給制約、エネルギー・物流・人件費の上昇

 

3-2 物価上昇

3-2-1原材料価格および人件費の上昇という外部環境

aハンバーガー市場は原材料費と人件費の同時上昇という外部環境に直面

→ハンバーガー市場において主な物価高の要因

 

3-3原材料

3-3-1ハンバーガーチェーン店の主要食材(ハンバーガー)

a小麦(バンズ)

b肉(パティ)

Ex)牛肉、豚肉、鶏肉、魚肉

c野菜(レタスやトマトなど)

d卵

dソース

3-3-2ハンバーガーチェーン店の主要食材(サイドメニュー)

aじゃがいも(ポテト)

bたまねぎ(オニオンリング)

cチキン(ナゲット)

d野菜(サラダ)

 

3-4原材料の高騰

3-4-1日本ハンバーガーチェーンで最も店舗数の多いマクドナルドの原産地から高騰の要因を考察

→以下はビックマックの主要原料と最終加工国を示す

a バンズ
主要原料:小麦粉/アメリカ、カナダ、オーストラリア
最終加工国:日本

b ビーフパティ
主要原料:牛肉/オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ、カナダ
最終加工国:日本、アメリカ、オーストラリア、カナダ

c オニオン
主要原料:玉ねぎ/アメリカ、インド
最終加工国:アメリカ、インド

d ピクルス
主要原料:きゅうり/インド、スリランカ、トルコ
最終加工国:日本、スリランカ、トルコ

e レタス
主要原料:レタス/日本、台湾、アメリカ、マレーシア、韓国
最終加工国:日本

f チェダースライスチーズ

主要原料:チーズ/ニュージーランド、オーストラリア、日本、アメリカ
最終加工国:日本、ニュージーランド

 

3-5上記の原材料から考えられる高騰の要因

3-5-1ほとんどの食材が輸入主体であるため為替相場により影響を受ける

a世界人口増加と新興国の食生活変化が原材料需要を押し上げている

→牛肉は世界的に需要が拡大しており、飼料価格や畜産コスト上昇が価格に反映されやすい
→小麦は食料用途に加え飼料用途や工業用途でも需要がある

b野菜類も世界的な需要増と供給制約が重なり、価格変動が起こりやすい状況にある

3-5-2気候変動が農産物の安定供給を困難にしている

→異常気象の頻発が原材料の生産量と品質に影響を与えている

a 干ばつや洪水により小麦の収穫量が減少し、国際価格が上昇する事例が増えている
b 高温や降雨量変動は牛の飼育環境を悪化させ、牛肉生産コストを押し上げている

→ 乾燥による牧草の減収や、過度な降雨による収穫作業の遅れ
c レタスなど葉物野菜は天候の影響を受けやすく、価格変動が特に大きい

 

3-6今後の展望

3-6-1原材料価格の上昇は一時的要因ではなく、今後のハンバーガー市場において収益圧迫要因となる

a 牛肉、小麦、油脂類など主要原材料価格が不安定化している
b 為替変動により輸入原材料コストが上昇しやすい構造にある
c 原価率の上昇が利益確保を困難にしている

3-6-2価格転嫁の限界はハンバーガー市場特有の課題である

→価格転嫁: 企業が原材料費や人件費などのコスト増加分をモノやサービスの価格に反映させること

a 低価格イメージが消費者に強く定着している
b 値上げは来店頻度低下や客離れにつながりやすい
c 価格競争が依然として市場の基調にある

3-6-3経営戦略を見直す必要

aこれまでの単純な販売数量拡大による利益確保が困難となり効率化や付加価値メニューの導入が必要となる

b 原材料高騰下では薄利多売モデルの持続性が低下する

cセット販売や付加価値商品の強化が進展する

3-6-4規模の経済は原材料高騰局面で競争優位性を高める

→規模の経済:企業や製造の規模が大きいほど利益率や価格競争力が向上する経済効果のこと

a原材料価格が高騰する環境下では、規模の経済を活かせる大手チェーンが相対的に有利となる

b大量調達によるコスト抑制が可能である
c原材料価格変動リスクを分散できる
d 中小規模店舗との収益格差が拡大する可能性がある

→参入障壁が高くなる

 

4デジタル化が定着した後の競争環境

 

4-1インバウンド市場

4-1-1インバウンドが加速することでよりデジタル化が進む

a2025年のインバウンド外食市場は拡大傾向

4-1-2 2025年は新型コロナ流行前の2019年と比べて、全ての業態で伸長

a FF(ファストフード)は2019年が約884億円であるのに対し、2025年(予測)は約2,034億円

4-1-3円安を背景に訪日外国人が伸長

a新型コロナ流行前に多かったアジア圏に加え、米国や豪州からの訪日外国人が増加

4-1-4訪日外国人需要の獲得

a注文時のタブレットなどにおける多言語対応

b店頭のデジタルサイネージ

c SNSの活用

→観光客がよく使うSNSなどで多言語による情報発信

 

4-2デジタル化の進展がハンバーガー市場の今後に与える今後の展望

4-2-1ハンバーガーチェーン各社では、デジタル技術の導入が標準的な経営手法となりつつある

a モバイルオーダーやセルフオーダー端末の普及
b キャッシュレス決済の一般化
c デリバリーサービスとの連携強化

4-2-2人材不足が深刻化する中で、デジタル技術は労働力制約を補完する手段として位置づけられている

a 接客人員の最小化
b 新人教育負担の軽減
c 少人数運営モデルへの移行

4-2-3若年層を中心に、デジタル対応の有無が店舗選択に影響を与える傾向が強まっている
aスマートフォン前提の購買行動(モバイルオーダー)
bデジタル非対応店舗の相対的競争力低下

4-2-4デジタル化の進展に伴う新たな課題

a高齢者やデジタル弱者への対応