され、きそ、いあ
第13章 サービス・マーケティングの基礎
13-1 サービス・マーケティング(G-Dロジック)
13-1-1 サービス・マーケティングの成り立ち
a 前提は価値が製品(あるいはサービス)に埋め込まれていること
b モノとサービスの差異を捉え、両者を区別し、理解
←有形か無形か、特性の差異、マーケティング・ミックスの差異
13-1-2 有形財と無形財のマーケティング(図表13-1)
a パソコンと航空サービスにおける無形財と有形財の位置づけ
b どちらも有形財と無形財を組み合わせて販売されている財
c 製品の核となる部分(中心円)により対象が変わる
→有形財がくる場合は「物財」
→無形財がくる場合は「サービス財」
d パソコンの「配送」や「保証」はサービス・マーケティングの対象外
←有形財に付属した「補足的サービス」だから
e 航空サービスの「食事」や「イヤホン」はサービス・マーケティングの対象
←無形財に付属した「補足的サービス」だから
13-1-3 モノとサービスの違いに基づくサービス特性
a ①無形性
←無形であるがゆえに顧客に製品を見せることや特許による保護ができず、価格設定が難しいという特性
b ②生産と消費の同時性
→顧客はサービスの生産に積極的に参加しなければならない
c ③非均質性
←サービスの提供者や日時や時間帯によってサービスの品質が異なる
→標準化と品質管理が困難
d ④消滅性
←生産と消費の同時性により、生産と同時にサービスが消滅
13-1-4 サービス・マーケティングの7P
a ①Product(サービス財)
←企業は核となるサービスを提供できているか、周辺的サービスとの組み合わせは適切か、考慮する必要がある
b ②Price(価格)
←同じサービスでも価格を変化させることで需給のバランスを取る
c ③Promotion(広告・プロモーション)
←期待と提供可能なサービスとのバランス、クチコミの管理が課題
d ④Place(流通)
←流通チャネルを必要としないかわりに、利便性を考えた店舗の立地を考慮しなければならない
e ⑤Physical Evidence(物的証拠)
←目に見える形で「製品の品質を示す手がかり」を顧客に提供
f ⑥Process(プロセス)
←サービスの提供開始から終了までの過程が重要視
g ⑦People(人)
←サービスは「人(サービス提供者)」が提供するものであり「人(顧客)」の協力や参加が必要
13-2 サービス・ドミナント・ロジック(S-Dロジック)
13-2-1 サービス・ドミナント・ロジックの基本的な考え方
a Vargo and Luschによって提唱された概念
b 無形財にのみ適用されるものではない
c アクターと他のアクターとの間でサービスを交換するプロセス
←従来のサービスを消費者が貨幣と交換することを前提とするサービス・マーケティングとは異なる
13-2-2 サービス・ドミナント・ロジックに基づく財の捉え方
a オペランド資源:効果を生み出すには操作が必要な資源
←有形、静的、有限(グッズ、機械設備、原材料、貨幣など)
Ex)(美容院の場合)顧客の髪、はさみ、シャンプー)
b オペラント資源:効果を生み出すためにオペランド資源に操作を施す資源
←無形、動的、無限(知識、スキル、技術など)
Ex)(美容院の場合)髪のくせや顧客の顔の形を踏まえて髪を切るということ
c 売り手と買い手による価値共創のプロセス
d 価値は顧客から一方的に提示されるものではない
第14章 グローバル・マーケティングの基礎
14-1 グローバル・マーケティングとは
14-1-1 マーケティングとグローバル・マーケティング
a グローバル・マーケティングの最も大きな特徴
→対象となる消費者が海外市場の消費者
Ex 日本の企業がアメリカでマーケティング活動
b グローバル・マーケティング
→ある企業にとっての本社の所在する市場以外の市場に進出した際に行うマーケティング
c グローバル・マーケティングの具体例
d 日本でチョコレートを1個200円で販売する企業がアメリカ市場に進出する場合
e その市場にはその市場の競争相手となる企業が存在
→それら企業が販売する商品とその価格から比較検討し、自社商品の価格を設定する必要性
f 対象となるのはアメリカ市場の消費者のため、嗜好が異なる可能性
→その市場に合わせた商品企画
g 対象となる消費者の嗜好や習慣、特徴などに合わせた対応
14-1-2 グローバル・マーケティングタスク
a グローバル・マーケティングを行うために、マーケティングプログラムの策定が必要
→対象となる市場のビジネス環境、消費者の嗜好性を含めた文化などを加味
b 企業を取り巻く環境には、企業がコントロール不可能な要因が多数存在(図表14-1)
c 国内市場にも海外市場にも共通のコントロール不可能な要因
←経済状況、法律・政策、他者との競争環境
d 企業がコントロールできる要素
←4Pおよび企業の有する資産や調査
e コントロールできる要素を利用して、グローバル戦略を練り、プログラムを策定
e 企業は、どの市場でどのような要素をコントロールすれば消費者に受容されるか検討し、実行
14-1-3 グローバル・マーケティングと文化
a グローバル・マーケティングタスクにおいてコントロール不可能な要因の1つが文化
b グローバル・マーケティングは国境を超える文化、超えない文化に関わらず、多文化への対応が求められる
→マーケティングは消費者にアプローチするものであり、その消費者は文化的な集団のメンバーであるため
c 文化には、言語や社会生活における慣習、美的感覚、教育レベルなどが含まれる
d グローバル・マーケティング活動において、文化についてどのような考慮が求められるか
e 言語の多様性
→一つの言葉が多くの国で話される、一つの国で多くの言葉が話される
14-2 グローバル・マーケティング戦略
14-2-1 グローバル市場とマルチナショナル戦略
a グローバルに事業を展開する代表的な企業には、「グローバル企業」と「マルチナショナル企業」がある
→前者は世界の市場を1つとして捉え、後者は世界の市場を1つ1つの国が集まったものと捉える
b 前者が捉える市場をグローバル市場、後者が捉える市場をマルチナショナル市場
14-2-2 標準化と適応化
a 標準化戦略:企業の個々のマーケティングプログラムやマーケティング戦略を全世界的に一様に適用
→グローバル企業が採用しやすい
b 標準化戦略のメリット
←「コストの節減」「組織の簡素化」「規格の統一化」
c 標準化戦略のデメリット
←各市場が有する事情やニーズに対応することが難しい
d 適応化戦略:参入した市場独自の特性、文化や商習慣などの差異をもとに自社のマーケティングプログラムを合わせていく
→マルチナショナル企業が採用しやすい
e 適応化戦略のメリット
←「市場のニーズに対応」「現地市場の流通チャネルに対応」
f 適応化戦略のデメリット
←各市場に合わせることからコストがかかり、組織は複雑化し、規格は統一化が難しくなる
14-2-3 適切な戦略の選択基準
a 企業が市場で提供する製品やサービスの特徴による選択基準には、一定の傾向
b Ratchfordの指摘
←製品が思考型と感情型の別によって消費者の購買行動が異なる
←適切なマーケティング戦略も異なる
c 思考型:自動車やパソコン、医薬品など論理的・分析的に購買される商品
Ex 車であれば燃費率、パソコンであればハードディスク容量
d 数値で優劣を測ることができる客観的判断基準を有する
←ほとんどの場合において国や文化習慣を問わず共通
e 感情型:食品や衣料品など直感的・イメージ的に購買される商品
Ex食品の味、衣料品であればデザイン、色
←客観的判断基準がない
f 感情型の商品を海外市場で販売する際は、適応戦略をとる必要がでてくる
14-2-4 標準化と適応化の部分的な運用
a 企業は標準化戦略と適応化戦略のどちらかしかとらないというわけではない
b 思考型の製品は標準化戦略を取っているが、流通やプロモーションもそうであるとは限らない
c Apple社のiPhoneの場合
→製品は基本的に標準化戦略を取っているが、流通やプロモーションは適応化戦略
d マクドナルド社の場合
→商品ごとに標準化と適応化の戦略を使い分けている
e 企業はどの部分で標準化戦略をとるのか、どの部分で適応化戦略をとるのが有効かを決定していく必要性
14-3 グローバル・ブランドとマーケティング
14-3-1 グローバル・ブランドとは
a グローバル・ブランド
→「他の売り手のそれと異なるものと認識するための特徴」が、世界的に統一されているもの
b Aaker「ブランドの価値は、製品やサービスの価値を増大させるブランド名やシンボルと結びついた資産」
c 世界最大のブランディング会社インターブランドの「Best Global Brands」での対象企業について
→主要基盤地域以外の売上高が30%以上であること、世界の主要な国々で広く認知されていることなど
d 海外市場での売上高規模や広範囲への市場への進出など、具体的な売上高規模をもとにした消費者の認知
→グローバル・ブランドには必要
14-3-2 ランキングから見るグローバル・ブランドの変遷
a インターブランド社が発表するグローバル・ブランド価値評価ランキング「Best Global Brands」(図表14-2)
b テクノロジー業種の企業ブランドが常に上位にランクするわけではない(図表14-3)
c 消費者のスマートフォン所有率の上昇
→AppleやGoogle、Instagramなどの企業ブランド価値が急上昇
d 2022年の上位20社には、自動車業種ブランドが複数ランクイン
e 主要自動車ブランドのランキング推移(図表14-4)
f 自社ブランド価値が安定していてもライバルに追い越されることがある
g ブランド価値額はテクノロジー企業に大きく劣るが、長らくそのブランド価値を高く保っている企業
Ex Coca-Cola
h ブランド価値を上げることは大切であり、それを維持していくことはもっと大切
i マーケティングは、消費者に自社製品やサービスを受容され続けるための活動
j ブランドは、消費者に認識され受容されるために構築する資産
14-3-3 グローバル・マーケティングにおけるブランド
a 企業にとってブランドが高いことは、世界の市場でマーケティングを行う上で有利
b 各国の消費者の認識がブランド名やシンボルと結びついている場合
→多少のカスタマイズは必要でも、標準化が可能になることがでてくる
Exキットカット
c キットカットは国や市場で異なるフレーバーを展開しているが、キットカットというブランド名は共通
→企業にとってキットカットという製品のマーケティング管理自体は1つに集約が可能
d グローバル化によりモノや情報だけではなく、ヒトの移動も増えている
e 観光客が日本の店舗でキットカット商品を目にしたら、どこの企業のどのような商品か認識が可能
→新たな宣伝をしなくてもよい
e グローバル・ブランドは、グローバル・マーケティング活動を推し進める中で欠かせない要素の1つ
f 世界規模のスポーツイベントなどに協賛する企業の増加
→世界の消費者に対する企業や製品のブランド認知を上げる目的
第15章 これからのマーケティング
15-1企業の社会貢献活動とエシカル消費
15-1-1本業と関連性の高い社会貢献活動の高まり
aダイドードリンコ
「日本の民俗文化の価値を高めたい」
テレビ番組やウェブサイト、新聞などのメディアを用いて全国各地の伝統的なお祭りを応援
bアサヒビール
スーパードライ1缶につき1円を環境や文化遺産の保護に対する寄付
←地域貢献活動を通してスーパードライの存在感を高める
c良品計画
素材としてオーガニックコットンの使用を表明
←環境に対する配慮をアピール
dキリンホールディングス
農園指導にかかる費用を拠出し、小規模農園の農園指導を現地NGOに委託
←環境保護と安定した原材料の調達
e森永製菓
チョコ1個につき1円をカカオの産地に寄付
←「カカオの国の子どもたち」への支援
fコーズ・リレーテッド・マーケティング:企業が社会問題の解決といった大義をアピールし共感する人々を取り込み、かつ売上の増加を目指すマーケティング
g CSRの実践:本業との関連性が高い社会的な課題に取りくむこと
h CSVの実践:経済的価値の創造とともに社会的価値を両立させること
i熊本市
貿易を通じて発展途上国の自立を支援する活動
j企業や地方公共団体が社会貢献活動に積極的である
→それを支持する消費者が存在
15-1-2エシカル消費
a上述の企業の活動に対して、商品の購入に肯定的である消費者はエシカル(倫理的、道徳的)がある
bエシカル
←エコロジー、貧困の解消、児童労働の解消、伝統や職人芸の再評価、コミュニティの再生
cリッチー・エブリデイ「『エシカル』はかわいくないと意味がない」
←社会貢献を目的として購入する消費者はリピーターになりにくいため
→手頃な価格、個性的なデザイン、使いやすさが重要
dエシカル消費に対する関心の高まりに対応し、流通業者も取り組みを強化
eイオン
f食の安全・安心に配慮にした農業生産管理の国際認証を取得した農場の野菜の販売
g持続可能な漁業に与えられる認証付きの魚の販売
15-1-3持続可能な環境への取り組みの重要性
a気候変動や自然災害へのリスクが強く認識
←世界経済フォーラム『グローバル・リスク報告書2023年度版』より
b自然災害や気候に対する企業の取り組みは重要視
c「事業活動で活用している自然生物多様性を金銭価値として評価する『自然資本』の概念」の広まり
d「自然資源を循環させ持続可能な消費」を目指す
e ESG投資:財務情報に加えて、環境や社会、ガバナンスなどの非財務情報を考慮しつつ、収益を追求する投資手法(責任投資、持続可能な投資)
f世界的に拡大傾向
g欧州で支持が高く、日本でも浸透
h社会的に問題のある企業には投資したくないというサステナブルな投資(社会的責任投資)は拡大傾向
15-2マーケティング3.0・マーケティング4.0・マーケティング5.0
15-2-1マーケティング3.0における協働マーケティング、文化マーケティング、スピリチュアル・マーケティング
aマーケティング1.0:製品中心の考え方(図表15-1)
bマーケティング2.0:消費者志向の考え方
cマーケティング3.0:価値主導や人間中心の考え方に基づき収益性と企業の社会的責任が両立する段階
d実際、マーケティング2.0、3.0の間でマーケティング諸活動を実践する企業が増加
eこの変化が3つのマクロ経済環境の変化に影響
fソーシャルメディアの台頭
←ブログ、ユーチューブ、ウィキペディア
gグローバル化のパラドックス
←非民主的な国家の存在、不平等な経済、多様な文化の存在
hクリエイティブ社会の時代の到来
←科学、芸術、専門サービスの分野で働く人間が活躍
iこの変化に対応して3つのマーケティングが必要に
j協働マーケティング:似通った価値や欲求を持つ経済主体の協働活動
k文化マーケティング:グローバル市民の関心や欲求に応えるアプローチ
lスピリチュアル・マーケティング:人間の最も重要な欲求として、精神的欲求が生存欲求に変わりつつあることを認識し、企業が人間の幸福にどのように貢献していくのかを明確にする
15-2-2今後のマーケティングにおける企業のミッション、ビジョン、価値(図表5-2)
aミッション:企業創業時という過去に根ざしている
bビジョン:未来を生み出すためのもの
c価値:企業が何を大切にしているか、企業組織としての行動規範
15-2-3マーケティング3.0の10原則
a顧客を愛し、競争相手を敬う
b変化を敏感に捉え、積極的な変化をする
c評判を守り、何者であるかを明確にする
d製品から最も便益を得られる顧客を狙う
e手頃なパッケージの製品を公正価格で提供する
f自社製品をいつでも入手できるようにする
g顧客を獲得し、つなぎとめ、成長させる
h事業はすべて「サービス業」であると考える
iQCD(品質、コスト、納期)のビジネス・プロセスの改善をする
j情報を集め、知恵を使って最終決定する
15-2-4マーケティング4.0
←マーケティング3.0を補完する考え方
a技術の融合がデジタル・マーケティングと伝統的マーケティングの融合につながる
→カスタマー・ジャーニーの変化に対応
bカスタマー・ジャーニー:製品やサービスを知った顧客が購入・推奨に至るまでの道筋(図表15-3)
cマーケターは認知から推奨に至るまで、カスタマー・ジャーニーの間中、顧客の道案内をする
dデジタル化に伴い変化する購買行動への対処
e「接続性」という概念が重要
fアメリカのメガネブランド「ワービーパーカー」
←マーケティング3.0の持続可能性や社会的責任、マーケティング4.0のオンラインとオフラインを実践的に活用
g安価な値段でデザイン性が高いメガネを提供
h自社で一貫したデザイン・製造、オンライン販売を中心としコストを削減
i実店舗(オフライン)でブランド体験の場
j眼鏡1つの売上の一部をNPO団体に寄付し、発展途上国のメガネ販売支援
←メガネを購入すると自動的に社会貢献できる仕組みを構築
15-2-5マーケティング5.0
←人間を模倣した技術を使って、カスタマー・ジャーニーの全工程で価値を生み出し、伝え、提供し、高める
a AI、NLP、センサー、ロボティクス、ブロックチェーンなど技術を活用
b2つの規律と3つのアプリケーションで構成
cデータ・ドリブンマーケティング
←あらゆる決定が十分なデータに基づいて行わなければならない
←企業内外の様々な情報源からビックデータを集めて分析するとともに、マーケティング決定を促進し、最適化するためにデータエコシステムを構築する活動
dアジャイル・マーケティング
←絶えず変化している市場に対処する組織の俊敏性
←分散型・部署横断型のチームを使って、製品やマーケティング・キャンペーンのコンセプトづくり、設計、開発、検証を迅速に行う
e予測マーケティング:機械学習を備えた予測分析ツールを構築、使用するなどして、マーケティング活動の結果を開始前に予測するプロセス
fコンテクスチュアル・マーケティング:顧客を識別し、プロファイリングした上で、顧客にパーソナライズされたインタラクションを提供
g拡張マーケティング:チャットボッドやバーチャル店員など、人間を模倣した技術を利用
h戦略を持続可能な開発目標と整合させる
i企業はSDGsを踏まえたマーケティング活動の実践を求められている
j「人道的視点」と「環境的観点」から富の創出と富の分配の促進(図表15-4)
→サステナビリティな開発の促進が目標