2024年 1月25日、千葉県成田市を訪問。成田山新勝寺の北西部から利根川にかけての地域に鎮座するいくつかの神社を巡りました。
成田 六所神社
六所神社・六社神社を名乗る神社は日本全国に存在します。
この社名は、六柱の神を祭神とすることによります。
①創建当初から六柱を祀っていた。
②合祀を重ねた結果、六柱となった。
現在、この2通りがあるようです。
当社はどちらにも該当しません。
当社の御祭神は1柱です。
◇鎮座地:千葉県成田市竜台118
◇御祭神:塩土老翁命 しおつちおじ
by千葉県神社庁HP
◇最寄駅:JR成田線安食駅~6.2km
◇バス便:竜台車庫バス停~400m
→京成成田駅からコミュ・バス<豊住ルート>
◇御朱印:あり
熊野神社から当社への道
2.3kmの道のりは、小さな森、竹林、田園など、バラエティに富んだ歩きを楽しめました。里に入ると、素朴で真摯な信仰の痕跡なども見ることができます。
◆豊かな自然
◆素朴な信仰の痕跡
路傍の道祖神
◆現在進行形な信仰
古樹の根元に「紙垂つきの護符」が捧げられていました。
◆社頭
樹叢が続く中、鳥居を発見できました。
◆まるで一之鳥居
杉と椎の大樹が鳥居のような雰囲気です。
左サイドの小石碑は「指定村社 六所神社」と彫られていました。
※指定村社→地方長官の指定により、市町村などが祈年・新嘗・例祭の三大祭に神饌幣帛料を供進するものを指定村社。その他は俗に従来村社。by阿蘇ペディア
参道の途中にも注連柱のような格好の古樹。
参道を2/3ほど進んでから振り返りました。
常夜燈と狛犬が1対づつ。シンプルです。
拝殿もシンプル
向拝の間口が屋根と同サイズ。
見た目は、寺院の「〇重の塔」を連想させる意匠です。
シオツチ
【記】塩椎神
【紀】塩土老翁・塩筒老翁
《知恵や情報で天孫を導く》
塩土老翁は『天孫神話』に登場します。
・「海幸山幸神話」では、山幸彦を海神の宮に導きます。
・「神武東征神話」では、即位前の神武を大和に誘います。
→「東方に都にふさわしい土地がある」と。
シオツチの「チ」
語尾が「チ」で終わる神名の類型は、日本における最も古い精霊観に属するものとされ、シホツチは「潮つ霊」と解釈される。
もしくは「潮つ路」や、「潮槌」と解する説もある。槌状の棒は潮流に乗って移動する棹、櫓、檝(かじ)の類であり、航海神の呪術の象徴の棒とされ、更には、母なる船に活を与える陽根の矛に通ずるという。
「チ」=霊、路、槌、いずれにおいても潮流をつかさどる神と理解される。
by國學院大學「神名データベース」
◆本殿
同一神もしくは同一視
塩土老翁と猿田彦神
この説は、昔からあるようです。
筆者もまた、共通点を強引に書いてみます。
◇猿田彦命
a.八衢でニニギを迎え、日向に誘う。→書記第九段・本文
b.その後、「伊勢の狭長田(さなだ)に行く」と発言。→書記第九段・一書(一)
c.武甕槌神と経津主神の「全国平定を先導」した岐神。→ウイキペディア
※岐神=猿田彦神
◇塩土老翁
a.日向でニニギを迎え、自分の国を奉った。→書記第九段・本文
b.塩土老翁の別名が事勝国勝長狭。→書記第九段本文・一書(四)
c.武甕槌神と経津主神の「東北平定を先導」した。→鹽竈神社由緒
などを挙げることができました。
◇参考
鹽竈明神とは、塩土老翁、猿田彦命、事勝国勝命、岐神、興玉命、太田命。以上6柱は同体異名。
→鹽竈社縁起、祭神記(玄松子)
【境内社】
◆八坂神社
御祭神:素戔嗚尊
◆不明社1
◆不明社2
◆不明社3~5
◆石碑1
浅間神社
御祭神:此花開耶姫命
もしくは 浅間大神
◆石碑2
御嶽大神(おんたけ)
・御嶽を「おんたけ」と読み
・御嶽大神とは
→以下の三柱を一体化した神
国常立尊、大己貴命、少彦名命
上記の要件を満たす教団が2つあります。
①木曽御嶽本教(おんたけ)
霊峰・御嶽山を信仰する御嶽信仰の教団
本部は長野県木曽町
②御嶽教(おんたけ)
祭神構成は「木曽御嶽本教」と同じですが、別法人。
本部は奈良県奈良市
当社石碑は、どちらなのか不明です。
ほかにも紛らわしい御嶽があります。
読みは「みたけ」
③御嶽神社(みたけ)
祭神は蔵王権現。御嶽とは金峰山を指します。
本社は奈良県吉野町
帰路は逆光となりイイ感じ
塩土老翁と住吉大神
音韻上、「ツチ」は「ツツ」に容易に転訛することから、塩「筒」老翁は塩「土」老翁の転であり、住吉の神である筒男命と同一視する説も古くからある。
by國學院大學「神名データベース」
(参考)
住吉大社
神事「埴使」はにつかい
住吉大社は、毎年2月上旬&11月上旬に「畝傍山口神社」に使者を遣わし、畝傍山の埴土をもらい受けています。その埴土で平瓮(ひらか)を制作し、祈年祭・新嘗祭で使用します。
◇住吉大社公式サイト
『祭りと年中行事』の中に「神事・行事」を月別に紹介するページがあります。しかし、埴使神事は載っていません。
『特別な祭』の紹介文でわずかに触れられる程度です。
→「住吉大社では、五穀豊穣に関わる神聖な行事が、現在でも厳格に伝承されています。特に、埴使や御田植神事は、歴史的にみても重要な儀式のひとつです。」
と、この一文だけ。説明文や写真など一切ありません。
これは、住吉神社がこの神事を広く知らせたくないため、ということかもしれません。
当社祭神=塩土老翁= or ≒ 住吉大神
住吉大社=埴使神事=埴土=埴生神社
成田において六所神社と埴生神社が卑近の地に鎮座する。この状況は意味ありげ、なのかも。
【御朱印】
初穂料500円
南羽鳥の豊住熊野神社にて拝受
【参拝ルート】
2024年 1月25日
START=9:22京成線 京成成田駅~1.3km~①埴生神社~180m~郷部南バス停10:38→成田市コミュニティバス→10:56宮下バス停~150m~②豊住熊野神社~1.1km~③北羽鳥 香取神社~2.3km~④竜台 六所神社~400m~竜台車庫バス停14:58→成田市コミュニティバス→15:26京成成田駅=GOAL
※この日、成田山で行事があったため①→②のバス路線が運休。よって、この区間はTAXI移動しました。
【編集後記】
◆塩土老翁と猿田彦大神
東京 神田明神の境内社
籠祖神社
祭神:塩土老翁と猿田彦大神
キーワード「導き」で両神を括ったのか。あるいは、同一神としているのか。
写真:2019年 3月 筆者撮影
社名由来は「籠」?
塩土老翁が山幸彦に授与した舟とは、竹で編んだ目無籠(隙間のない籠)でした。それだからか、この神社、江戸は小伝馬町の籠作り職人たちによって祀られました。(了)