2023年 9月20日、JR中央線・武蔵小金井駅と京王線・東府中駅を結ぶ路線バスに乗り、沿線の神社を巡ってきました。

 今回は、浅間(せんげん)山公園内に鎮座する2つの神社のご紹介です。

 

 人見浅間神社 

 神社というより石祠。拝殿もなければ本殿もなく、授与所もありませんし、神職も常駐しません。あるのは、豊かな緑と少しの湧き水。そして、絶滅危惧種=ムサシノキスゲの群生地です。

 

山頂の富士塚に鎮座

◇鎮座地:東京都府中市若松町5-20-18

◇最寄駅:多磨駅~1.5km

 西武多摩川線

◇バス便:浅間山公園バス停~400m

 京王バス[府75]武蔵小金井~東府中

◇御祭神:木花開耶姫命

◇御朱印:なし

 

 

『浅間山公園』は、前山、中山、堂山の3つの山から成り立っています。

当社は、堂山(標高80m)の山頂に鎮座します。

 

 堂山の名称由来は、かつて、ここに観音堂があったことによります。

 中山の清泉から観音像(5cm弱の銅製の仏像)が出現。それを安置するために観音堂を建てました。のちに浅間神社と入れ替わりますが、神社の創建年代不詳です。

 

 

 堂山に登る主なルート

①男坂ルート(南から)=

②女坂ルート(西から)=

③キスゲ橋ルート(東から)=

※上図は公園のパンフレットを撮影

 

①男坂ルート

堂山の南麓から石段を使って直線的に登っていきます。

 

◆男坂

 

◆一之鳥居

 

 

◆石段終点から富士塚を遠望

 

◆二之鳥居

 

祭神

木花開耶姫命

 

 

 

 

②女坂ルート

前山と中山の「すその道」を通り、堂山の西麓へ。そこからなだらかな登りです。

 

◆前山「すその道」入り口

 

◆中山「すその道」

 

途中、「御手洗神社」を通過します。

この神社については、後ほど。

 

◆女坂の案内板

 ここから(=堂山の西麓)登っていきます。

 

◆女坂

 

 

◆女坂からの山頂

「浅間山せんげんやま 堂山(標高79.6m)」とペイントされていました。

 

③キスゲ橋ルート

 多磨霊園から続く道を経て、キスゲ橋から堂山の「すその道」に入ります。

 

 

 

 

◆キスゲ橋からの山頂

 

◆三角点

 三角点は、山の頂上や見晴らしの良いところ、公共施設の敷地内などに設置され、緯度・経度が正確に求められています。

 明治時代に地図作成のために設置したことが始まりで、その後も、道路の建設等の公共事業に必要な位置の基準として利用されてきました。

 

 

人見村の地名由来

①人見山

 街道の北側にある浅間山の別名が人見山であり、その麓にできた村落が山にちなんで人見村となった。

 人見山の由来→浅間山が敵勢の動向を見張るのに適した山という意味で人見山。

 

②人見一族

 昔、武蔵七党の人見氏一族が来住したことにちなんで人見村となった。

(注)人見氏の本拠は現在の埼玉県深谷市人見(昔の武蔵国榛沢郡人見郷)とされ、その地にも浅間神社が鎮座する人見山があります。

 こうしたことから『武蔵府中物語』では府中の人見村と人見氏の関係を疑問視。深谷市の人見と混同したものとしています。

 

 

 御手洗神社 (おみたらし)

フツーに読んで「みたらし」ですが、さらに「お」が加わっています。

◇鎮座地:東京都府中市若松町5-5

◇最寄駅:京王線東府中駅~1.7km

◇バス便:浅間山公園バス停~240m

 京王バス[府75]武蔵小金井~東府中

◇御祭神:彌都波能売神

 (みずはのめのかみ)

◇御朱印:なし

 

◆前山から御手洗神社へ

 浅間山公園バス停の目の前です。

 こちらから入ると、すぐにムサシノキスゲ群生地です。

 

◆ムサシノキスゲ

 ムサシノキスゲは、府中市・浅間山にのみ自生する植物です。かつては、多摩丘陵に広く生育していましたが、開発により消滅しました。高原に育つ「ニッコウキスゲ」が温暖な低地に適応した変種です。

 生育数が少なく、「東京都レッドリスト(保護上重要な野生生物種)2020」で、北多摩地区の「絶滅危惧II類」に指定されています。

by調布経済新聞

写真:東京都「レッドデータブック」より

 

◆中山 山頂への道

 筆者はこの道を右に眺めつつ、中山・山麓を進みました。

 

中山・北麓「すその道」を進むと、右手に鳥居が見えてきます。

 

◆鳥居

府中市 人見稲荷神社と小金井市 貫井神社、両社に関係ある水神社です。

◎参考資料

十方庵敬順『遊歴雑記』朝倉治彦 編訂

 小金井と名付る事は、当処はるか南の方に人見山といふあり、此山より清潔の水湧出して、一村の人三拾戸余を養ふ~(中略)~天の扶助によりて自然と清水を得たるは、黄金を拾ひ得しに似たり、故に居村と成て小金井と名付ぬ。

 

→敬順が文化10年(1813)に小金井観桜に訪れ、当地の古老から聞き取りした際の記録です。

 黄金のように貴重な湧水なので「小金井」の名がついたこと、その水は人見山の湧水であることなどが語られています。人見山は、現在の府中市・浅間山。

 

 

◆石碑

 おみたらし

「浅間神」このところより出現すと傳う

 水神社 祭神 彌都波能賣神

平成元年吉日建立 人見稲荷神社

と刻まれています。

 

◆湧水ポイントに石祠

 筆者が訪れた日の湧水量は微々たるものでした。

 

 (おみたらしの水は)浅間山に湧出していて「おみたらし神社」として祀られ、神事に使用される。近年湧出量が減少している。市民団体が除草や清掃等を実施している。

by環境省HP「東京都の代表的湧水」

御祭神

彌都波能賣神

 

 自然と一体化 

  この山は「信仰の山」としての歴史はないようです。今は、2つの神社が鎮座しますが、”ご神域”と呼べるような聖性も残念ながら感じることができませんでした。

 

 それでも、石祠とその周辺は、山に溶け込んでいました。自然と一体化したかのような雰囲気は、都会の神社では得ることができない種類の美しさを放っていました。筆者好みの「神社」です

 

 

【御朱印】

人見浅間神社・おみたらし神社

どちらも御朱印はありません。

 

 

【参拝ルート】

2023年 9月20日

START京王線 東府中駅→「ちゅうバス」→若松防災センターバス停~3m~①人見稲荷神社 一之鳥居~120m~二之鳥居~40m~人見稲荷神社~550m~②人見浅間神社 一之鳥居~浅間神社~200m~③おみたらし神社 ~200m~京王バス・浅間山公園バス停→[府75]武蔵小金井駅行→貫井トンネル下バス停~500m~④貫井神社~貫井トンネル下バス停→[府75]武蔵小金井駅行→武蔵小金井駅GOAL

 

 

【編集後記】

 ◆浅間山

  浅間山は、全体が雑木林で覆われ、野生の草花が自生します。また、多数の野鳥も生息しています。

 昔は、近隣農家の農用林、戦時中は陸軍の弾薬庫、と実用的な山林でした。今は、貴重な自然資源と親しむための緑地公園となっています。(了)