2023年 3月31日、桜が美しい富士塚に登ってきました。今年は開花が早く、見ごろのピークを過ぎていました。でも、その余韻を楽しむには、十分な開花状況でした。

 

 武州志木宿

 田子山富士塚 

 正式名は「塚」がつきます。

 

 富士塚とは

 富士山に似せて造ったプチ富士です。

 江戸時代は安永8年(1779年)、早稲田に作られた「高田富士」が第1号。以降、江戸を中心に大流行し、さまざまな富士塚が残っています。(その多くは、東京&埼玉)

 

◇有形文化財としての富士塚

 田子山富士は「国指定」文化財です。

 これは、あまたある富士塚の中にあって、わずか5基だけが持つ”称号”です。例えば、千駄ケ谷・鳩森神社のそれは「都指定」、品川神社のそれは「区指定」です。どちらも素晴らしい富士塚ですが、「格付け」は田子山富士が勝ります。

*田子山の全貌を撮り忘れたので、konohanaさんから拝借しました。

◇鎮座地:埼玉県志木市本町2-9

◇最寄駅:東武東上線 志木駅~1.8km

◇バス便:国際興業バス・志木駅東口→[志01] 浦和駅西口行→富士道入口バス停~300m

◇主祭神:木花開耶姫命

◇御朱印:あり

 

 

【美しい御朱印】

 田子山富士は、浅間神社を祀っているので御朱印があります。

それは、浅間神社と墨書される御朱印ではありません。

 なんと!

 

    木花開耶姫命

 

と、大きく墨書してくれるのです。

 御神名の墨書は『富士山本宮浅間大社』であってもありえません。

もしかしたら、日本全国を探しても、唯一無二かもしれません。

 

 この御神名を眺めるだけで

 「かたじけなさに 涙あふるる」

的な心情になります。

 

 

◆道しるべ

  明治5年(1872年)に建てられました。「是より田子山ふじ道」と刻まれています。

今でこそ、この場所(敷島神社参道入口)にありますが、元は志木街道からこちらに入る路地の入口に立っていたそうです。

 

 

◆鳥居から田子山富士を遠望

 

 

◆手水舎 水盤

 富士講の1つである『丸吉講』の意匠が見えます。読みは「まるきち」

※丸吉講

 江戸時代後期から明治時代に、現在の埼玉県新座市周辺で隆盛した富士講社の1つ。

 敷島神社の丸吉講は、富士太々講→扶桑教会志木駅社と変遷し、昭和16年の3人の代参を以って終了した、とされています。byウイキ

 

 

◆参道入口

 頂上を眺めつつ、石段を上ります。

まずは、「下社」へ。

 

◆獅子山

 唐獅子は、今にも飛びついてきそうな、躍動感あふれる造形です。

 

◆石燈籠

ハイブリッドな組み合わせです。

 竿石=龍=水神

 火袋=羽団扇=修験道

 

 

 

【下社】

◆浅間神社

御祭神:木花開耶姫命

 

◆社殿は石祠

 木製扉を開けると、御神体である「逆修の板碑」。

 

◆門柱の獅子頭

 取付ではありません。掘り出しです!

 

 

◆逆修の板碑

 富士塚を作るキッカケとなった青色塔婆です。

ある僧侶が「自分はこれから富士山に行って成仏する」的なことを書いた石板です。これを高須庄吉という方が発見し、文面に感動。富士塚を作ることを決心しました。

 

◆赤子を抱く木花開耶姫命

 石祠の右側面の彫刻です。

 

 

「下社」を守護するかのような配置で境内社が2社

 

◆「下社」の東側

琴刀比羅神社

御祭神:金比羅大権現(≒大物主大神)

新河岸川の水運関係者が水上安全を祈って祀ったらしいです。

 

◆屋根に羽団扇

 金比羅大権現は修験道の山でもあるため、でしょうか。羽団扇は天狗の必需品です。

 

 

「下社」の西側

金山大権現

 金属および鉱山とその関連業(鍛冶、鉱業ほか)の人々から信仰されています。

 一般的には、維新以降に金山神社と改称。権現を廃して、記紀神話から金山彦神・金山毘売神などを持ってきました。当社は今も「大権現」のままです。

 

このように、「下社」は、権現社により東西から守護されています。

 

 

富士塚登山を始めます

◆親子猿と御嶽山石碑

 猿は富士山の神使 

登山者の無事を祈ってくれます。

 ちなみに、筆者の地元・松戸の浅間神社では、5合目あたりにピーナツを噛る猿の石像がいて、登山者を見護っています。

 

【一合目】

 

 

◆鈴原神社

 本物の富士山・一合目に「鈴原神社」があります。

御祭神:大日如来(=天照大神)

 

「下社」のみならず、ここでもまた神仏習合です。しかも、本地垂迹してます。

 

 ◇御座石祠:富士山では四合目です。

 こちらが一合目にあるのは、落下の結果と推測されています。

 

登山道は、形状が多種多様です。

 

 

【五合目】

◆経ヶ嶽

 富士山五合目にあり、日蓮が法華経を埋納したと言われています。

よって、田子山富士でも五合目です。

 

 

◆小御嶽神社

 富士山・田子山富士、ともに五合目に鎮座です。

御祭神:磐長姫命(=木花開耶姫命の姉)

 

 

【六合目~九合目】

◆不二森稲荷神社

 富士山では「富士守稲荷神社」という名称です。

 

 

◆中宮の石祠

 富士山の「中宮」は、入山料(=山役銭)の徴収所です。

 

 

◆烏帽子岩

 こちらは七合目~八合目あたりです。

 

 

 

【山頂】

 山頂は狭く、収容人数は5名程度かと思われます。

◆浅間神社・奥宮

御祭神:木花開耶姫命

 頂上から、南西の方角にホンモノの富士山を見ることができます。

 

 

 

◆陰陽石

 北麓の「お胎内」と雌雄一対です。

 

 

 

【南斜面】

◆御中道と寶永山

 富士山六合目付近を鉢巻状に回る道を「御中道(おちゅうどう)と呼びます。途中、大沢崩れなど危険個所がいくつもあります。

 寶永山は宝永4年の大噴火によってできました。富士山の「肩口」にあるアレです。

 

◆日本徤命碑

 タケルの文字は、「ニンベン」でなく「行ニンベン」

 ヤマトタケルは東征の帰路、大塚山に登り富士山を遥拝したと伝わります。

手前=大塚山碑、奥=日本徤命碑

 

◆太子講社

 聖徳太子が降臨し、唐から技術者を招き、奈良の大伽藍を建築したとのことで、日本の職人たちがそのご神徳をたたえて建立。

 

 右手の神像は、大工道具(墨壺と墨刺し)を持っています。

 石碑の下段は、中央に聖徳太子、両サイドに「忌部氏系の神名」が見えます。

 

 

 

【西斜面】

◆登山道・村山口

 富士登山の「そもそも」は、富士山本宮浅間大社近くの村山口から始まりました。

田子山富士では、ここからの登山はできないようです。

 

 

◆松尾大社

 京都の本宮から勧請された酒造の神。

 

 

 

◆石祠社殿

 御祭神:大山咋神

 

 

【北斜面】

◆お胎内

 洞窟入口の上に「丸藤講」の石碑。

田子山富士は「丸吉講」が手がけていて、手水舎の水盤に講社紋が刻まれています。なぜ、ご胎内だけ他の富士講の講社紋があるのでしょう。

 

言わずもがなですが

 山麓の「お胎内」=女

 山頂の「陰陽石」=男

 

さらに、北麓では

 

  男女交合の姿を見せる

 《美しい陰陽樹》

 

 の御神木を見ることができます。

 

 檜と椋木が寄り添っていて「ラブ・ラブ・ツリー」という名称がつけられています。

 ただ、国指定・有形文化財の構成パーツとして考えるなら、フツーに「陰陽樹」とするほうが、よりピッタリくるように思いました。余計なお世話ですね。

※この写真は5年前に撮影しました。

今回の訪問時、驚いたことに男樹がなくなっていました。残念。

 

◆黒ボク群

 北麓から見上げて撮影しました。

 

 

【西北斜面】

 

 

【石像】

石像の名称と写真だけのご紹介は、主として修験道関係の石像です。

◆天狗座像

 

◆烏天狗 2体

 左:秋葉山御神体立像

 右:高尾山御神体立像

 

 

◆衿羯羅童子立像(こんがらどうじ)

 

◆制託迦童子立像(せいたかどうじ)

 

 

◎参考文献

『田子山富士のナゾーお宝編ー』

深瀬 克(田子山富士保存会)

大いに参考にさせていただきました。

ありがとうございます。

 

 

【御朱印】

冒頭に2023年3月に拝受した分を載せたので、こちらでは2018年のもの。

 

 

【参拝ルート】

2023年 3月31日

START東武東上線・志木駅~バス乗り場→国際興業バス・浦和駅西口行→富士道入口バス停~300m~大鳥居~①敷島神社~ ②田子山富士 ~1.8km~志木駅GOAL

 

 

【編集後記】

◆写真について

 2018年に訪れた際、写真を大量に撮りました。今回は、撮影ばかりしている場合ではなかったため、撮れ高が少なくなりました。よって、本記事に使用した写真の多くは5年前のものとなりました。

 

◆美しい富士塚

 筆者は、これまで20基以上の富士塚に登り、あるいは遥拝してきました。その中で、こちらが最も好きな富士塚です。今回は「保存会」のメンバーであり、「ブログとも」であるkonohanaさんの案内ボランティア当番日に訪れました。konohanaさん、ご案内ありがとうございました。

 また、ブロとも=杏奈さんには、お土産までいただきました。この場をお借りして、あらためてお礼申し上げます。ありがとうございました。

 

 この日、春まっ盛りの田子山富士にて素敵なひとときを過ごすことができました。

皆さん、ありがとう。(了)