2023年 4月13日、山手線・駒込駅近くの神社、2社を訪ねました。
今回は、3月の田子山富士に続き、富士塚に鎮座する神社のご紹介です。
駒込富士神社
一之鳥居は、笠木からはみ出る、大きな社号額が目をひきます。
◇鎮座地:東京都文京区5-7-20
◇最寄駅1:東京メトロ南北線・本駒込駅~650m
◇最寄駅2:JR山手線&南北線・駒込駅~750m
◇主祭神:木花咲耶姫
◇御朱印:あり
→当社近くの駒込天祖神社でもらえます。
◆神龍
一之鳥居・右柱の台座付近に設えてありました。
「麦藁蛇」とも呼ばれますが、案内板は「神龍」です。
「山開き」のとき、社務所にて疫病除けとして頒布されます。江戸時代(宝永年間)に、ある農夫によって作られたのだそうです。
【参道】
◆手水舎
屋根の下、水盤が2つ見えます。
◆なぜ2つある?
いくつかの氏子町会の中で、ある2つの町会が対抗意識が強すぎた結果、このようになった、とのことです。
両者とも「同じ水盤を使いたくない」ということだったのでしょう。
水盤が2つなら、水の供給も2か所です。
◆下浅間社
下浅間社(通称=赤堂)の扉は常に閉ざされています。開くのは年に1回。『山開祭』の時だけです。中に安置されているのは、社殿ではありません。厨子です。
◆ご神木
カヤの古木です。
◆遥拝所
石段の下、二之鳥居が遠望できる場所にバリア・フリーな施設。
石段の下に遥拝所を用意する神社は、そんなに多くありません。
◆社号碑
形状が石碑なので、呼称は社号標より社号碑とするほうが適切でしょうか。
石段下に遥拝所を作る気配りの神社です。
当たり前に、手摺りが設えてありました。
境内由緒板を要約
1573年:本郷村(現在の東京大学の場所)の名主が駿河の富士浅間社を勧請
1628年:駒込の地(現在地)にある富士塚に浅間社を遷座
社伝では
当富士塚は、1300年代から既に当地に存在していた、と。
ところで
江戸の富士塚・第1号は1780年に造成された高田富士です。
となると
当社富士塚は造成でなく、古墳を生かしたもの、ということになります。*前方後円の形状だそうです。
◆二之鳥居
◆二之鳥居から下界を眺望
◆二之鳥居から拝殿を遠望
【社殿】
◆拝殿
御祭神:木花咲耶姫命
氏子を持たない神社だった
当社は氏子を持たず、富士講組織で成り立っていました。そして、ホンモノの富士山「山開き」には、講の代参人を送り、他の人々は当富士塚に詣でました。
講の人々は6月朔日の富士登拝の祈祷をするため、当番の家に集まり、そこで祭事を行いました。
by境内の案内板
木花開耶姫命にご挨拶を終え
本殿に向かいます
◆竹のカーテン
本殿西側。青竹が御簾のように社殿を隠しています。
◆本殿と幣殿
本殿東側。こちらサイドは遮蔽物がなく、全体像がよく見えます。
◆本殿
一富士・二鷹・三茄子
これは、初夢に見ると縁起が良いとされるものを列挙した句として有名です。
当社では、一般的理解と少々異なる解釈をしているようです。
一富士=駒込富士神社(=当社)
二鷹=駒込鷹匠屋敷(=徳川吉宗が当地に設置)
三茄子=駒込茄子(=良質なナスと評判でした)
と、このようにホーム&アウエイでいうところのホーム丸出しな解釈です。
でも、それで良いと思います。
こちらの短い石段を降りて、境内社に向かいます
◆小御嶽神社
御祭神:磐長姫命
◆曽我霊社
鎌倉時代、仇討ちで有名な曽我兄弟を祀った石祠。歌舞伎役者らが宝永8年(1711年)に建立しました。
◆庚申塔
◆伊弉諾尊&伊弉冉尊
◆富士講の数は多かった
「江戸は広くて八百八町、講は多くて八百八講、江戸に旗本八万旗、江戸に講中八万人」
と、江戸には町の数ほどの講があった、と唄われていたようです。
富士詣りは江戸で始まり、全国に広がりました。そして、伊勢詣り、金毘羅詣りとともに「三大詣り」として江戸町民に深く根付いていきました。
【富士塚 点描】
◆封鎖された登山道
◆北麓
◆石碑
斜面には富士山から運んだ黒ボク(溶岩)が敷かれ、鳶職が建てた石碑がみえます。
※当社は今の東大構内の地に鎮座していました。そこが加賀藩の屋敷用地となった経緯があります。
写真にある加州とは、加賀のことと思われます。信濃を信州、相模を相州と呼ぶのと同じ要領かも。よって、この石碑は加賀の鳶職による建立ということでしょう。
【祭事・神事】
当社には、富士塚に関する重要な神事が2つあります。
①お山開き(大祭)
毎年6月30日から7月2日にかけて山開きの大祭が行われます。
初日は「万灯まつり」として、朝から「万灯回り」が行われます。万灯を掲げた富士講の講員が地域を練り歩きます。
2日目は例大祭の式典、3日目(=最終日)は「納め」となります。
また、期間中は縁起物である麦藁蛇や限定で販売される麦らくがんを購入することができます。麦らくがんは富士山の形をしたお菓子です。
②鎮火祭
鎮火祭は、8月28日の夕刻に開催される「山じまい」の祭です。
北口本宮冨士浅間神社と諏訪神社で斎行される「吉田の火祭り」を模して、昭和初期に始まりました。式典の後、井桁に積まれた松明を燃やします。
「山じまい」は東京周辺では珍しく、東京都清瀬市の中里富士や埼玉県川越市の雀ノ森氷川神社など、数えるほどしか行われておりません。
※【祭事・神事】の写真2枚は、webサイト『伝統の日本紀行』から拝借。
【御朱印】
初穂料500円
【参拝ルート】
2023年 4月13日
START=東京メトロ南北線・本駒込駅~650m~①駒込天祖神社~270m~②駒込富士神社~750m~JR山手線・駒込駅=GOAL
【編集後記】
◆元宮
現在、本郷には元宮に相当する元富士神社が鎮座します。旧町名の本郷元富士町は当社に由来します。(現在は本富士警察署に名が残ります)→東京都文京区本郷7-2-5
by伝統の日本紀行
◆富士塚
2023年の前半は、なぜか富士塚に縁がありました。
1月 足立区:千住・大川町氷川神社
3月 志木市:敷島神社・田子山富士
4月 文京区:駒込・富士神社
年内後半もどこかの富士塚に登れたらなあ、と思っています。さしあたりは、7/1前後の「山開き」に合せて、でしょうか。(了)