2023年 4月 4日&5日。1泊2日で茨城県の神社を5社ほど巡りました。
今回は、2日目に訪れた「森と泉」の地に女神を祀った標記神社です。
式内社(論社)
泉神社 いずみ
当社は、『延喜式』神名帳に記載される論社です。
常陸国 久慈郡7座(大1座・小6座)
天速玉姫命神社
あめのはやたまひめの かみのやしろ
※論社は2社。もう1社は常陸太田市の鹿島神社です。
◇鎮座地:茨城県日立市水木町2-22-1
◇最寄駅:JR常磐線・大甕駅東口~1.0km
◇御祭神:天速玉姫命
(あまのはやたまひめのみこと)
・別名=天之速玉神
(あまのはやたまのかみ)
・「天」の訓み
→当社は「あま」、延喜式は「あめ」
◇御朱印:あり
生い茂る常緑樹
こんこんと湧き出る清水
当社は《森と泉》の社です
JR常磐線 大甕駅東口を出て1kmほど北上。
右手に石とヒノキで作られた荒垣が見えてきます。その先の駐車場から境内に入れます。でも、一之鳥居から歩きたいので、もう少し回り込みます。
◇社記◇
大昔、
天から霊玉が降りてきて
霊水が湧き泉をなした
この霊玉を神格化
=天速玉姫命
この神をお祀りしたことが泉神社の創立である。
by当社パンフレット
【参道】
◆一之鳥居
鳥居の先は社叢によって陽光が遮られていて「昼なお暗い」参道です。
◆参道
参道左手が小高くなっていて、右手は低地です。
途中、境内社などがあります。左手の斜面に鎮座するため石段を上ります。
天速玉姫神命の名は初見でした。
社記では「天から降った霊玉を神格化」と言っております。
調べてみたところ、資料が少なくイマイチよく分からない神様です。
天速玉姫命
◆神格
①霊玉の女神とする説(=当社パンフ)
②速玉男命と同神とする説
③「速」を美称として、豊玉姫とする説
④「玉」=「瀧」の意から、速い滝の神とする説
などがあります。
※② 熊野速玉神社の速玉大神(はやたまのおおかみ)とは別神のようです。
※④「玉」を広義に解釈して「玉=瀧=水」とするなら・・・、
「速い」と「水」から連想して、速秋津姫や瀬織津姫などの祓戸大神と同一、と考えることもできそうです。
◇系譜
天棚機姫命(=機織り神)の娘
天太玉命の妃神(=天比理刀咩命)
by『玄松子の記憶』~祭神記
→天太玉命
「天岩戸開き」で活躍した神であり、忌部氏の祖神。
安房国 一之宮『安房神社』の祭神です。
◆参道終点
鬱蒼とした参道を抜け、陽が差す場所にでました。
◆手水舎
細々ではありますが、浄水は止めどなく流れています。素晴らしい!
◆二之鳥居
この辺りまで進むと静謐さが増し、神々しい雰囲気になってきます。
由緒~当社パンフより
◇伝承
第十代崇神天皇の御代、宇治49年(紀元前42年)にこの地に鎮祀された。
◇記録
享禄三年(1530年)、佐竹氏が社殿を修造した際の棟札が残っています。
◆拝殿
ヒノキの素木社殿の簡素美。これこそが神社ではないでしょうか。
◆葵の御紋
かつては水戸・徳川家の崇敬が篤かったものと思われます。
◆子持ち龍
塗りは金色の目のみ。目ヂカラを感じます。
水に縁(ゆかり)がある地名&社名には、龍が似合います。
拝殿でのお参りを終え、本殿に向かいます。
本殿はやや高台に鎮座するため、緩い石段を上ります。瑞垣を眺めていると、まるで、京都市中の細い路地を歩いているかのような気分になります。
◆本殿
屋根は流造のようですが、壁のデザインが独特です。こちらは、コンクリートと見受けました。中に、素木の本殿が鎮座するのでしょう。
千木は内削=女神仕様
鰹木は奇数=男神仕様
森
神域は、緑樹の美しい森一帯を「泉が森」と称しています。
泉
当社の傍らに、清水が湧き出る泉があります。常陸国風土記にも「蜜筑(みつき)の里の浄泉」と記されています。by当社パンフ
→常陸国風土記は、奈良時代に編纂された書物。つまり、この泉は、今から1000年以上もの昔から認知されていたということです。
※常陸国風土記
東国で唯一残った風土記。当時の東国の状況を考える上で欠かせない文献。
◆透明さの極致
辺り一帯を清浄と静謐が支配します。
中央の白っぽく見える場所が湧水域。
清水は、水底から青白い砂を舞い上げ、ボコボコと噴き出していました。
これまで、いろいろな湧き水を見てきましたが、こんなにも力強い湧き水は初めて見ました。
【境内社】
◆寄せ宮(4社)
拝殿の横に鎮座します。
①鷺社神社(天玉柱屋姫命)
②富士神社(木花開耶姫命)
③豊稔神社(月讀命、大穴牟遅命)
④稲荷神社(宇迦之御魂大神)
※天玉柱屋姫命
「玉柱屋姫神天照大神分身在郷」と書かれる。同じ箇所に「瀬織津姫神天照大神分身在河」とある。よって、両神は同じ神であると記されている。
by伊雑宮御師=西岡家に伝わる文書
→要するに
玉柱屋姫神=天照大神=瀬織津姫神
瀬織津姫の影
御祭神=天速玉姫神命の神格
境内社=天玉柱屋姫命の神格
など、当社は「水」との関係が強く意識されています。
結果として、瀬織津姫の影が・・・。
◆厳島神社
御祭神:市杵島姫命
◆三峯神社
祭神:伊弉諾尊、伊弉冉尊
参道左手、石段を上り、土の参道を奥へと進みます。
◆慰霊搭
参道の左手に見えます。戦没者を祀っています。
◆馬力神
有名な馬頭観音は仏教系。馬力神は、その神道ヴァージョンです。
【境内点描】
◆目洗いの泉
拝殿左サイドの石垣沿い(=崖沿い)にあります。
山側から流れ出ている水が使われています。
◆泉龍木(せんりゅうぼく)
境内奥地から発掘され、姿が龍に似ていることから命名。
四周を結界していますが、神社は手で触れることを推奨しています。
【御朱印】
上質な和紙が使われています。
印刷・書置きで、墨書は数字のみ。
御朱印はこちらの授与所で授けます。
初穂料は500円
【参拝ルート】
2023年 4月 5日
START=『東横イン 水戸駅南口~500m~水戸駅8:28→JR常磐線→8:33勝田駅~ひたちなか海浜鉄道・勝田駅8:42→阿字ヶ浦行き→9:09磯崎駅~900m~①式内社・酒列磯前神社~磯崎駅10:46→同海浜鉄道→11:12勝田駅11:16→常磐線→11:30大甕駅東口~1km~②式内社・泉神社 ~1.6km~③大甕神社~900m~大甕駅西口=GOAL
【編集後記】
◆水関連の神さま
『常陸国風土記』にも記された古泉を擁する「泉神社」
当社は、水に関連する神様が境内社を含めて三柱も祀られています。
→天速玉姫命、市杵島姫命、天玉柱屋姫命
そして、瀬織津姫の影・・・。
当社の聖泉は、1,000年以上に渡って休むことなく噴き出し続けています。
なんて凄いことでしょう。
◆ただなんとなく・・・
記事を書きつつ、あらためて振り返れば、何かが足りなかったような気がしないでもないです。
泉も良かったし、拝殿に向かったときの感じも良かった。
でも・・・。なのです。
この感慨がなんなのか。よく分かりません。
とはいえ、森と泉に囲まれて優しく鎮座する泉神社。
ピースの1つ1つは、とても素晴らしかったのでした。(了)