2023年 4月 4日&5日。1泊2日で茨城県の神社を5社ほど巡ってきました。

 巡拝のメイン・テーマは《国津神VS天津神》。すなわち、「(政権に)まつろわない」星神=カガセオ。そして、それを討ったタケハヅチ。この両者を祀る神社にお参りすることが目的でした。

 今回は、タケハヅチを祀る神社です。

 

 

式内社

 静神社 (しず神社)

 

『延喜式』神名帳に記された社号

久慈郡 7座(大1座・小6座)

→名神大社「静神社」

 しつのかみのやしろ

 

当社は、常陸國の二之宮でもあります。

◇鎮座地:茨城県那珂市静2

◇最寄駅:JR水郡線・静駅~1.6km

◇主祭神:建葉槌命(たけはづちのみこと)

 →別名:倭文神(しどりのかみ)

◇相殿神1:手力男命(たぢからお)

◇相殿神2:高皇産霊命(たかみむすび)

◇相殿神3:思兼命(おもいかね)

 

 

 

建葉槌命

『古語拾遺』において、天羽槌雄神(あまのはづちおのかみ)と同神。

『日本書紀』では別名として、倭文神(しとりのかみ、しずのかみ)。

 

 いずれの名であっても、織物の神、機織の神 として信仰され、全国の倭文神社、静神社、服部神社などで祀られている。

byウイキペディア

 

 

 

 建葉槌命については、女性神的側面と男性神的側面、両面を持つ神さま。的なイメージが流通しているように見受けられます。

 

 

①機織の神=女神的側面

『神道大辞典』臨川書店(1986年)
p.52「天羽槌雄命」の項

「倭文氏の遠祖。天照大神天岩屋に隠り給ひし時、倭文布(しどりorしづり)を造った機織神で、倭文神建葉槌命も同神か。」

by国会図書館~レファレンス協同データベース

 

 ◇機織りの神

 ほかにいないか調べてみました。

  →栲幡千々姫命(たくはちぢひめ)

  →天棚機姫命(あめたなばたひめ)

が見つかりました。

いずれも女神です。となると・・・

 

 建葉槌命もまた女神

 

と、考えるのが自然でしょうか。

 

 

②武門の神=男神的側面

『神道史大辞典』吉川弘文館(2004年)
p.457「倭文神」の項

『日本書紀』神代天孫降臨章では、倭文神建葉槌命が天神に最後まで服従しなかった星神香香背男をたちまち従わせた。

by国会図書館~レファレンス協同データベース

 

 星神香香背男は、タケミカヅチ&フツヌシ(=最強の武神)が唯一、倒せなかった相手です。これを倒したとなると勇猛な武神と考えられます。

したがって、常識的に見て・・・

 

 建葉槌命は男神

 

と、考えるのが自然でしょうか。

 

つまり、男神or女神、どちらでもありえます。

 

 

 

【参道】

◆一之鳥居

 目にも鮮やかな純白の大鳥居が青空に映えます。

この鳥居、安房国・一之宮「安房坐神社」を想起します。

 

 

流水ではありませんが、きれいな感じの水が溜められていました。

 

 

当社は、帝青山(ていせいざん)という名の小山の頂に鎮座します。

これは、亀甲山(かめがせやま)に鎮座する香取神宮を想起します。

 

 

◆石段

 拝殿まで緩やかな石段が続きます。直線距離にして250mほどです。

 

短めの石段が5~6ブロックあって、結果的にそこそこの高さまで登っていきます。

 

 

 

◆神門

 この付近は植栽が整備されていて、庭園のような様相を呈しています。

 

神門の両翼は壁ですが、内側は絵馬殿になっています。

 

 

◆神門から拝殿を遠望

 拝殿の屋根装飾は、千鳥破風と唐破風の組み合わせ。

先端が上向きに反っているのが特徴的です。

 

 

 神門の内側神域は、拝殿への石畳を除き、細かい玉砂利が敷きつめられていました。

 

 見た目の整った感じ&踏みしめたときの心地よい音、これらで清浄感を味わいつつ、気持ち良く歩き回れました。

 

 

【社殿】

◆拝殿

 Googleマップで見ると、社殿は南東を向いているのが分かります。

南東向き。その視線の先に鹿島神宮を見ているのでしょうか。

 

 

◆神紋は桜

 境内に山桜があり、「ご神木」として扱われている感じでした。

 

 

 

 

 

 

 

◆巨大なクスノキ

 

 

 

◆本殿と瑞垣

 

この千木の形状は、神明造のそれではなく、出雲大社のように屋根に乗せる形です。

 

 

 

◎男神or女神

どちらなのか

 

建葉槌命VS天津甕星

 繰り返しますが、タケハヅチは、天津甕星=カガセオを征討しました。

カガセオ、この星神は強すぎました。

 

 常陸の「悪神」を討つため、高天原はタケミカヅチとフツヌシを派遣しました。このコンビは、出雲でオオクニヌシを、諏訪でタケミナタを撃破しています。しかし、天津神の最強コンビはカガセオを倒せずにいました。そんな中、タケハヅチを投入したところ、この機織神はなんなく征討してしまいました。←不思議です。

 

 タケハヅチを武神とする説があります。すなわち、建葉槌の「タケ」を「武」、「ハ」を「刃」と読み替える考え方です。タケミカヅチやフツヌシが倒せなかった星神を武神=タケハヅチが(武力で)倒した。ここに、三諸は違和感を感じます。タケミカヅチやフツヌシより強い武神が高天原に存在するのでしょうか。はなはだ疑問です。

 

 もしかしたら、武力でなく霊力を使ったのではないでしょうか。霊力が強大な女神が呪詛なども含めて、祈り倒したのでは、とそんな気がしていました。比喩として考えるなら、「女の武器」を用いて篭絡した、ということかもしれません。

いずれにせよ、カガセオは落ちました。

 

 以上を踏まえて、以下の写真をご覧ください。

屋根装飾の仕様に注目です。

 

 千木=内削

 鰹木=偶数

 

 なんと!

タケハヅチは女神として祀られている

ではありませんか!

 

 

ちなみに

香取神宮・鹿島神宮でも建葉槌命を祀っています。

 

 ◇香取神宮の元・境外摂社

「高房神社」=男神仕様

 

 ◇鹿島神宮の境内摂社

「高房社」=千木・鰹木なし

 

となっており、フツヌシ・タケミカヅチと関係が深いことが分かります。

 

 

 

【境内点描】

◆仮殿

 修繕などで祭神が本殿を一時的に出なければならないとき、こちらに鎮座します。

 

 

◆神楽殿

 

 

◆神輿殿

 

 

◆渡り廊下

 拝殿と社務所を結びます。

 

 

 

【境内社】

 社務所にて取材を敢行。

神職がていねいに回答してくれました。

 

 神社名と神様は以下の通りです。

これらの神社がどの社殿に当たるのか。現在、検証中とのこと。

これら9社は『延喜式』に登場する順に並べている、とのこと。

 

 ①押手神社:天日鷲命=忌部の神

 ②山親子神社:祭神不明

 ③玉取神社(2座):大山祗命・櫛明玉命

 ④富士神社:木花開耶姫命

 ⑤大杉神社:少彦名命

 ⑥鍬神社:大日孁貴(=アマテラス)

 ⑦雷神社:別雷命

 ⑧愛宕神社:軻遇突智命

 ⑨御祖神社:大国主命
 

 

 

《拝殿の右サイド》

こちらサイドは、この社殿のみ。神社名は判明しています。

◆摂社・高房神社

御祭神:建葉槌命

 

 

《拝殿の左サイド》

◆不明社

御祭神:不明

右サイドの「高房社」と同じ様式の社殿。かつ鎮座位置も左右相似形。・・・A

→建葉槌命は、天日鷲命の御子でもある。・・・B

by『神道大辞典』臨川書店

 

 

A・Bより

不明社殿は、①押手神社では?という想像ができそうです。

 

だとすれば・・・

 

 

 ◇右サイド:高房神社

 =建葉槌命(主祭神に同じ)

 

 ◇左サイド:押手神社

 =天日鷲命(主祭神の父神)

 

 

となり・・・

 

 両社は摂社として

美しく整合します。

 

※摂社

 →境内に祀られる社殿を摂社・末社という。とくに、本殿の祭神と関係が深い神を祀っている社を摂社という。

 

 

◆六社寄せ宮

 上記、⑥⑦⑧の社号札を確認できました。

ほか3社は祭神不明

→②③④⑤⑨のどれか。

 

 

◆不明社

 こちらの2社は祭神不明

→②③④⑤⑨のどれか。

 

 

 

 静神社・境外末社

 手接足尾神社 (てつぎあしお)

 荒垣と鳥居を潜って外に出ます。

イイ感じの山道を100mほど下って行きます。

 

 

 

 

 

 

 帝青山・山林の中腹にポツンとたたずんでいます。空気はさわやかでした。

 

 

清澄な空気感、伝わるでしょうか。

 

 

◆御祭神

脚摩乳・手摩乳(あしなづち・てなづち)

ヤマタノオロチ退治の説話に「クシナダヒメの親」として登場する老夫婦です。

 

 

 

御祭神の神名「なつち」を分解

「な」=「無い」

「つ」=「~の」(国津神などに使われる「つ」)

「ち」=「神霊」

 

よって

「足なづち」=足のない神霊

「手なづち」=手のない神霊

 

つまり

 四肢がない神霊

→蛇しか考えられません。

 

ちなみに

 神門の絵馬堂には、蛇を描いた絵馬がたくさん奉納されているそうです。

 

 末社祭神=蛇の神霊

 奉納絵馬=蛇の御姿

 

静神社は、蛇神と何らかの関連があるかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

 

【御朱印】

初穂料:300円

御朱印帳に墨書してくれます。

 

 

 

【参拝ルート】

2023. 4. 4

START=JR水戸駅→JR水郡線→ 静駅~1.6km~①常陸国二之宮 静神社 ~静駅→水郡線→水戸駅~水戸駅北口バス・3番乗り場→県自動車学校行き→吉田神社前下車~70m~②常陸国三之宮 吉田神社~1.2km~『東横イン 水戸駅南口』=GOAL

 

 

 

【あとがき】

◆静溜池

 帰路の石段を降りていたら、一之鳥居の向こう側に池があることに気づきました。対岸にはまだ桜が残っていて良い眺めでした^^

 

 

◆当社の印象

 電車の場合、駅から1.6kmほど歩かなければなりませんが、それを後悔させない神域が待っています。一之鳥居から拝殿まで約250m。緩やかな石段なので登りやすく、二之鳥居~神門と潜る度に聖性が増していく感じでした。境内は広くありませんが、綺麗に整えられています。

 当社に参拝されたら、 ぜひ境外末社「手接足尾神社」にも足を運びたいところです。神域の静謐さは、心身が浄化される感じでした。(了)