八日市場 愛宕神社
明治維新まで、社号は「愛宕山大権現」。明治元年に神仏を分離して愛宕神社となりました。
祭神は異色です。愛宕社であるにもかかわらず、勝軍地蔵orカグツチ神ではありません。
◇鎮座地:千葉県匝瑳市八日市場ロ(ろ)398
◇最寄駅:JR総武線・八日市場駅~1.5km
◇御祭神:「神代七代」(日本書紀)の神々・天照大神
①国之常立神、②国狭土神(くにのさづち)、③豊斟渟尊(とよくむぬ)、④宇比地邇尊(うひじに)&須比智邇尊(すひじに)、⑤大戸道尊(おおとのじ)&大苫辺尊(おおとまべ)、⑥面足尊(おもだる)&惶根尊(あやかしこね)・⑦伊弉諾尊(いざなぎ)・伊弉冉尊(いざなみ)
※古事記の場合、②は「神代七代」に含まれません。「さづち」の「さ」は神稲。当神を祀る神社→熊野速玉神社など
◇御朱印:たぶんなし
(ただし、観光案内所にスタンプがあります。)
宮本熊野神社をあとにして、田舎道を進みました。途中で迷いましたが、なんとか到着。
◆路傍の青面金剛像
なにげない草むらにポツンと建っていました。田舎では珍しくありません。新しめです。
◆当社付近
道に迷ったとは言え、風の音やさえずりを楽しみつつのプチ・ハイキングでした。
【参道】
◆大鳥居
愛宕神社ですが、神明系の鳥居。
御祭神を考えれば、神明系こそふさわしいのかも。
この先に、3ブロックに分けられた石段が待ち受けます。
◆石段途中に手水舎
石段途中の踊り場に設けてあります。次は、ラスト=1ブロックの石段。ここまで80段近くありました。ラストが最も長いので、上がらずにここから遥拝する方がいるのかもしれません。
◆最後の石段
◆頂上にも手水舎
水は水道栓から供給されます。近年、再建した感じです。
【社殿】
◆拝殿
京都の総本社=愛宕神社は、古くから、神仏習合の山岳修験道場として名高く、火伏・防火の霊験あらたかな神社です。
神仏習合の時代は、本殿に本地仏である勝軍地蔵、奥の院に太郎坊、すなわちお地蔵さまと&天狗様が祀る寺院でした。明治時代、寺院を廃して愛宕神社として再出発しました。
◆祭神=たくさんの天津神
当社の御祭神は、神代七代&アマテラスです。
これは、京都・愛宕神社のそれとまったく異なります。
したがって、社号は同じでも当社は別物のような気がしてきます
しかし、当地・当社には勝軍地蔵と火伏にまつわる伝承が残されています。
◆本殿
創建年は不詳。1849年に本殿を再建した記録があるとのこと。それを、昭和59年に改修したものが現在の社殿です。
by境内「大改修記念碑」
【聖なるもの】
①天馬伝説
昔々のある時、福岡村で大火事がありました。風が強かったこと、火元が風上であったこと、などから家々をなめるように広がり、人々は逃げまどうだけでした。
と、その時!
愛宕神社の扉が開かれ、駒にまたがった白髪白衣の神様(注・勝軍地蔵との説あり)が現われて石段を駆けおりました。
駒は、天馬と言われる翼を持った馬でした。
神様は、上から十二段目の石段で止まりました。
そこから燃え広がる福岡村を見渡すと、手に持っていた杖を振り上げ、呪文を唱えました。
すると天馬は、これに合わせるように、「ヒヒヒヒーン」と嘶(いなな)いたのです。
その嘶きが、神社の森から風に乗って天に消えたその時、空は一転して曇が現れ、カミナリがとどろいて雨が降り出しました。
とどまるところを知らなかった火事は、この雨でたちまちに鎮火しました。
神様のおかげで、福岡村の半分は火事から逃れることが出来たのでした。
by匝瑳市HP
原話『そうさの伝説とむかし話』
◆石段に残るヒヅメの跡
長らく別当時に安置されていましたが、当社に移送されました。
②神木=スギ
【境内社】
◆三峯神社
拝殿の右側スペース奥、幣殿の横あたりに鎮座します。
十二所神社にむかいます。
◆十二所神社
日本全国に点在します。祭神は、土地によって異なりますが、主として2系統です。
①古くからの「十二様」と称する土着の山の神を祀った神社。
→射日儀礼(=オビシャ)を含む「十二講」の習俗を伴い、東日本の山間部に分布します。
②熊野神社系列の神社。
→十二所権現社などと呼ばれる熊野三山の神(=熊野権現)を勧請して祀ったもの。例えば、東京・西新宿「熊野十二社神社」
◆当社の場合
上記の2系統のほか、元は①②だけれど、「神仏分離」によって祭神を変えたケースもあります。主に、《天神七代・地神五代》へと変えています。当社は、このパターンかもしれません。
あるいは、筆者が木更津市で参拝した「十二所神社」は、大友皇子の妃と11人の女官を祀っていました。
◆石碑とスダジイ
文字が彫られていましたが解読不能だったか、失念したか。どちらだったか、忘れました。
◆不明小祠
【御朱印】
おそらくありません。
ただし、愛宕神社は『八日市場八社参り』の1社にあたるため、スタンプ・ラリー的な御朱印でしたら用意されています。駅前「観光案内所」にて授与。
【参拝ルート】
2021年 4月19日
START=JR総武線・八日市場駅~350m~①八重垣神社~600m~②田町辯財天~600m~③老尾神社~600m~④宮本熊野神社~650m~ ⑤八日市場愛宕神社 ~130m~⑥星宮神社~30m~⑦甲子神社~1.1km~八日市場駅=GOAL
※千葉駅から約1時間。
【編集後記】
◆八日市場駅付近の神社
この町は、太平洋岸から7kmほど内陸で、後背地は丘陵地帯が続きます。
主たる神社は、ほぼこの丘に鎮座しています。上記ルートでは、①から④までずっと登りでした。④から⑤は、一度かなり下ったのちに石段を登る展開でした。⑥は⑤の石段を下りきった場所と同じ高さ。⑦は⑥に隣接しており、長い石段を上ります。
とまあ、アップ・ダウンを繰り返す参拝でした。
(了)