大神神社・境内摂社
①磐座神社(いわくら)
御祭神:少彦名神(すくなひこなのかみ)
当社には社殿がありません。
神さまの鎮まる岩をご神座として、少彦名神を祀っています。後背地は、三輪山の山林。
◇鎮座地:大神神社境内 字大黒谷
◇御祭神:少彦名神
◇御朱印:ありません
◎三輪山の磐座群
当山に鎮まる神の御座は3か所です。
①奥津磐座(=山頂):大物主神
②中津磐座(=中腹):大己貴命
③辺津磐座(=山麓):少彦名命
登拝者が直接見ることができるのは、①だけです。
◇奥津磐座
①の様子を三島由紀夫が書いています。彼は、実際に登拝しました。
→『奔馬』(豊穣の海・第二巻)
奥津磐座は崖道の上に突然あらわれた。
難破した巨船の残骸のような、不定形の、あるいは尖り、あるいは裂けた巨石の群が、張りめぐらした七五三縄のなかに蟠(わだかま)っていた。太古から、この何かあるべき姿に反した石の一群が、並みの事物の秩序のうちには決して組み込まれない形で、怖ろしいような純潔な乱雑さで放り出されていたのである。
by「奔馬」(新潮文庫)p.40~41
◇自然か人工か
人の手が加えられています。メインの自然石の周囲に人が運び込んだ石が並びます。
これは、 中津磐座において顕著 です。
→4組の磐座群があり、1つのグループは、7つか8つの巨岩で構成。奥津磐座から尾根づたいに二上山に向かったような格好で4組が並びます。きちんと並ぶさまは、神々しいものです。
by『神郷 三輪山-神々の秘郷をひらく-』
監修 大神神社宮司・藤田勝重(同友館)
◆くすり道
大神神社境内から「くすり道」を上って山辺の道に入ります。
◆人目に触れる磐座
磐座の多くは、三輪山の山中です。その一方、山麓にもまたいくつか存在します。
山麓の西側、常に人目にふれる磐座がそれです。代表例は以下の3座。
①当社(磐座神社)=1個の磐座
②志貴御県坐神社=4個の磐座
③大神神社・夫婦岩=2個の磐座
◆少彦名命
三輪山・山麓近くの辺津磐座は少彦名命を祀っています。
そして、山麓の磐座神社もまた、少彦名命を祀っています。
このことから
当社は「辺津磐座」の一部、と考えてよいのかもしれません。
◆古代祭祀
磐座の周囲には祭祀の場であったことを伝える磐境(いわさか)がめぐらされています。当社には、こうした古代祭祀の伝統が息づいています。
◆写真撮影について
三輪山の磐座群は、撮影禁止です。
一方、当社には特に規制がありません。
とはいえ、磐座そのものを撮影することは畏れ多いと感じたので自粛しました。
(注)大神神社の夫婦岩は撮影してしまいました。
夫婦岩と当社とでは、磐座としての聖性が明らかに異なっていました。
さて、磐座神社を出発し、山辺の道をさらに北上します。
地図では次が狭井神社ですが、こちらは別途、単独記事にしました。
したがって
次は貴船神社です。
◆山辺の道
大神神社・境内末社
②貴船神社
貴船神社といえば、京都・賀茂川上流の貴船神社です。
当社の御祭神は京都と同じくオカミノカミ。雨を司る神さまです。
◇鎮座地:大神神社境内 字尾尻
◇御祭神:淤加美神
◇御朱印:ありません
◆参道
《石段を上る=三輪山に登る》 ということ。
たとえほんの少しであっても、三諸山に登るのは感動です。
◆社号板
ご本社の「大神祭」の時には、必ずこの神社にもお供えを上げて祝詞を奏上。丁重に祀られてきました。と、書かれています。
◆淤加美神
この神は記紀に登場する龍神です。
古事記・日本書記ともイザナギがカグツチを切ったときに生まれたと記します。
表記は、前者=淤加美神、後者=龗神。
◆高龗と闇龗
「高」=山岳、「闇」=谷間を指しています。
2神は高・闇として、対の信仰です。また、両神は同一神という説もあります。
本社殿の右手、数メートルの場所に磐座が祀られていることをあとで知りました。参拝当日は、先を急ぐあまり、視界に入ってきませんでした。痛恨のミスでした。
【御朱印】
両社ともありません。
大神神社の摂社・末社なので、大神神社の御朱印を掲載します。
【参拝ルート】
2019年 3月19日
「山辺の道」の古社を歩く
START:JR万葉まほろば線・三輪駅~950m~①志貴御県坐神社~300m~②神坐日向神社~250m~③成願稲荷神社~20m~④天皇社~裏参道(200m)~⑤御炊社~200m~大神神社・二之鳥居~表参道~祓戸神社~⑥大和国一之宮・大神神社~⑦神宝神社~くすり道~ ⑧磐座神社 ~⑨狭井神社~ ⑩貴船神社 ~⑪檜原神社~2.2km~JR巻向駅→万葉まほろば線→天理駅→TAXI(2.5km)→⑫石上神宮~2.5km~⑬夜都伎神社~2.3km~JR長柄駅→万葉まほろば線→JR奈良駅=GOAL
【編集後記】
◆磐座での祭祀
万葉の時代の歌にまつりが描写されています。
・忌串(いぐし)立て酒瓮(みわ)据えまつる ~
・三諸の神奈備山に五百枝(いおえ)刺し ~
とあり、神職が斎串をたくさん立てて、その前に酒壺を据えて祭祀する風景が見えます。
大神神社宮司が語るように、三輪山における祭祀とは、何を置いても《磐座祭祀》なんだということ。磐座神社に参拝し、その聖性をあらためて感じ入りました。(了)