橋戸稲荷神社 

 当社「縁起」による創建は926年。記録上の初出は、1490年。室町時代です。

江戸時代、千住が宿場になると当社付近に荒川上流の秩父・飯能・川越方面から物資が陸揚げされ、継場として繁栄しました。

当社は、かつての船着き場のすぐ近くです。

◇鎮座地:東京都足立区千住橋戸町25-1

◇最寄駅:千住大橋駅(京成線)~250m

◇御祭神:倉稲魂命

◇御朱印:なし

 

 

◆大鳥居

 稲荷神社に「神明系」鳥居とは珍しいかもしれません。

古図を見ると、当社の前を横切る道は水路だったようです。小さな橋も描かれていました。

 

 

◆手水舎

 重厚です。

 コロナ対策されていましたが、水は涸れていました。

 

 

 

【社殿】

◆拝殿

 これだけの造りと大きさ、破風の組み合わせが美しい拝殿です。無人社ではもったいない。

 

 

◆天水桶

 江戸前とでも言うか、鉄砲洲稲荷神社や築地波除神社などにも見ることができる様式です。

 

 

◆狐山

 

 

◆本殿

本殿は土蔵造り。1490年の建立。

扉の内側には、漆喰彫刻(=鏝絵・コテ絵)が施されています。

 

 

◆伊豆長八
 正面扉の内側は、伊豆長八による鏝絵です。絵は夫婦の白狐。向かって右扉=父狐、左扉=母狐と子狐。

 小狐を見る母狐の慈愛溢れる眼差し、優美な白狐の姿態、など長八の技量が遺憾なく発揮された名作です。(以上、由緒書きを要約)

 *長八の鏝絵は、品川「寄木神社」でも見ることができます。

(鏝絵写真は、NPO法人「千住文化普及会」より拝借)

 

 

◆鏝絵の一般公開

 ふだんは写真のように、扉が閉ざされています。

本殿扉の公開日は年に3回

→①春の例祭、②秋の例祭、③節分の日

by千住橋戸町Webかわら版

 

 

 

◆社務所

 社務所は橋戸町の「町会会館」も兼ねています。ありがちな形態ですが、当社の場合、少し様相が異なります。ひと昔前、当社を管理する素盞雄神社と橋戸町・町会の間でひと悶着あり、裁判沙汰になっています。

 1階は、社務所。祭具庫を兼ねます。

 2階は、神楽の舞台と町会の集会所。

 

 

 

【境内社】

 当社には、境内社が2社あります。ともに、社号標がないため神社名が不明です。

 

 そんな中、境内社に関する興味深い文章を発見しました。当社の裁判記録です。

 →東京地方裁判所 昭和43年(ワ)13913号 判決文

 

◆「争いのない事実」

 (当社の)周囲は隅田川北岸の湿地帯で、《満潮時や降雨による増水時などには水の中に孤立した祠が浮かび上がり、崇敬者は膝まで水に漬りながら参詣する有様で、浮島金刃比羅様の名があった。》  

(注)《 》は、筆者。

 

 

◆境内社1

 玉垣の外側に鎮座。

本殿より約1メートルほど低くなっています。すなわち、浸水被害を受けやすい環境です。

 このことから、当社が「金刀比羅神社」ではないかと予想できます。

 

 

 

 

 

◆境内社2

 こちらは、玉垣の内側。拝殿に向かって右側奥です。

 

 

 

 

 

【千住大橋】

 千住は、筆者の「ふるさと」。千住大橋や日光街道関連は、写真や文章をつけたくなります。

 

 

◆大橋テラス

 筆者が子どもの頃、コンクリート堤防の内側はフツーに川でした。今は親水テラスが造成され、川沿いを歩けるようになっています。

正面の橋は、東京メトロ・日比谷線と東武スカイツリーラインの鉄道専用橋です。

 

 

◆御上がり場

 隅田川の北岸・千住大橋の東側には、徳川将軍専用の船着き場の史跡がります。

図は、小金原(柏市)で行われた鹿狩りに向かう将軍を乗せた御成船が到着する様子です。

by『小金野鹿狩之日記』国立公文書館

 

 

◆一般の船着き場

 隅田川の北岸・千住大橋の西側には、庶民のための船着き場がありました。

当社はの位置で、船着き場の近くだったことが分かります。

『江戸名所図会』~第六巻「千住川」 

by 国会図書館デジタル・コレクション

 

 

※当時、隅田川の名称は統一されておらず、場所によって呼び名がが異なりました。

当社付近は「千住川」です。ほかに、荒川、大川、浅草川、宮戸川などの呼称がありました。

 

 

 

【御朱印】

 当社の御朱印はありません。

 →素盞雄神社・社務所にて確認済。

 

 

 

【参拝ルート】

2021年 3月23日

START=新交通ゆりかもめ・市場前駅~550m~①魚河岸水神社「豊洲遥拝所」~市場前駅→ゆりかもめ→豊洲駅~乗り換え~東京メトロ・豊洲駅→有楽町線→新富町駅~850m~②波除神社~100m~③魚河岸水神社「築地遥拝所」(閉鎖中)~500m~東京メトロ・築地駅→日比谷線→南千住駅~550m~④素盞雄神社~250m~⑤南千住熊野神社~300m~ ⑥橋戸稲荷神社 ~350m~⑦足立市場(魚)・千潮金刀比羅神社~400m~⑧河原町稲荷神社~450m~⑨仲町氷川神社~550m~東京メトロ・北千住駅=GOAL

 

 

 

【編集後記】

◆東京の神社

 東京の神社は、多摩地区に式内社が分布。

一方、下町は当時、海もしくは湿地帯でした。

よって、下町の神社は埋め立てが盛んに行われた江戸時代に創建されたそれが多いように思います。

 ◇多摩川=奈良・平安・鎌倉時代に創建の神社

 ◇隅田川=江戸時代に創建の神社

と、こんなふうにザックリと図式化できます。

 

 とくに、千住大橋から江戸湾までの隅田川流域は、町民のための神社。とでも言いますか、江戸情緒を感じさせる神社が多いように感じます。

 

 

◆橋戸稲荷神社

 神社としての雰囲気は、無人社でありながら悪い感じはありません。まあ、可もなく不可もなくといった感じでしょうか。(了)