飯給 白山神社
(いたぶ しらやま)
当社の祭神は大友皇子です。
「しらやま」ですが、白山比咩大神=菊理姫命は祀られておりません。
大友皇子は、壬申の乱で大海人皇子(のちの天武天皇)に敗れ、近江・山崎で自害したとされています。
ところが、上総には「大友皇子 落人伝説」があります。
→「自害は影武者。大友皇子は当地に逃れた。」と。
◇鎮座地:千葉県市原市飯給937
◇最寄駅:小湊鉄道線・飯給駅~100m
◇御祭神:大友皇子(弘文天皇)
◇御朱印:なし
※大友皇子(おおとものみこ)
・皇子の即位を伝える記録や史料はない。
・日本書記にも、「弘文天皇の巻」はない。
しかし、明治3年、明治天皇は大友皇子に弘文天皇・諡号を贈り、歴代天皇に加えた。
その根拠は、「懐風藻」など、平安時代以降の文献の記述でした。
by『歴代天皇事典』高森昭勅(PHP文庫)~要約
◆飯給駅(いたぶ駅)
JR五井駅から小湊鉄道に乗り換えて1時間ほど。里山の無人駅です。
◆ホームにて
当社鳥居がホームから見えます。線路と田んぼを隔てた向こう側。正面の山に鎮座します。
◆踏切を迂回
ホームを降り、線路を横切りたいところですが、それはできません。踏切を迂回します。
当社は、この山林の中です。
◆田舎道
左の土手は小湊鉄道、右手は田んぼ。
この季節、草いきれ&圧倒的な緑には目がくらむようです。
◆御所塚山
山麓には、大鳥居が建てられています。
【参道】
◆大鳥居
2020年秋の台風は狂暴でした。上総の神社は、多くが社叢に打撃を受けました。当社も例外ではないと思います。けれど、台風被害など感じさせない「緑の参道」が出迎えてくれました。
◆ハイブリッド鳥居
柱は金属製、笠木と貫は木製、土台はセメント。異色な鳥居です。
◆社殿を遠く見晴るかす
杉木立ちの彼方に社殿。社殿自体が光を放っているかのように遠望できます。
◆浄化
清澄な空気に包まれた大杉参道。ここに立つだけで癒されていくかのようです。
◆邪気を祓う参道
香取神宮や明治神宮などは、玉砂利をザクザクと踏みしめながら参道を進みます。
この音が邪気を祓うと言われています。
つまり、耳を使います。
一方、当社のような「山の神社」は、大杉を眺め、清澄な空気を吸いながら進みます。
つまり、目と鼻を使うことで、邪気が祓われるような気がします。
◆気分は爽快
拝殿はまだ先ですが、既に浄められた感があります。
たとえ、ここから引き返しても納得できてしまうであろうほど気分良いです。
◆光り輝く拝殿
拝殿が半分ほど視界に入ってきました。
陽光が差しこみ、光り輝いています。
まさに、神さまに向き合うにあたって、象徴的な景色が広がります。
◆自然との一体感
自然との一体感を得ることで、心身はどんどん澄んでいきます。
【社殿】
◆拝殿
朱色は邪気を祓う色と言われているため、塗装する神社が多いです。しかし、当社のような環境に建つ社殿は、素木が良いです。
◆祭神
大友皇子の1座です。相殿や配祀神、あるいは境内社はありません。
◆新しい紙垂
もしかしたら、本日の参拝者は筆者だけだったかもしれません。人がめったに来ない神社でしょうが、紙垂を新しいものに替えている。これは、素敵なことです。
社殿は山の中腹。斜面を削って平坦な部分を一定の広さで確保しています。これは、大変な土木工事だったと思います。
◆本殿覆い屋
拝殿に連続して建てられています。拝殿の「次の間」みたいな感じです。
◆崖
本殿の真後ろ、後背地は崖になっています。貧弱な腰板でせき止めていて、土砂崩れが心配になります。
◆下界を見下ろす
手すりを取り付けてない石段を下るのは緊張します。
でも、風景としては、手すりがないほうが美しい。
◆大友皇子伝説
大友皇子は、壬申の乱に敗れ、当地に落ちのびてきました。
村人は、皇子一行にご飯を差し上げました。飯を給うたので、当地を飯給と呼ぶようになったとのこと。
一行には、皇子の息子3人もいました。一行は、村人に子を預け、奥地へと進軍しました。こののち、子らは捕らえられ、飯給白山神社で打ち首となりました。翌日から、白い鳩が3羽舞うようになったので、村人達がお宮を建て祀ったところ、白鳩は姿を見せなくなったそうです。
白山神社を「白鳩の宮」と呼ぶのも、これに由来する、とのことです。
【小湊鉄道】
◆鳥居から駅を遠望
田んぼ越しに駅舎を遠望しました。長閑(のどか)です。
◆駅舎
あまりにも素朴な駅舎。感動的でさえあります。
ちなみに、「当駅の平均乗客数は、ここ数年《1日=4名》で推移しています。」byウイキ
◆線路
森の中に消えていく線路にも感動でした。
◆森から出現する列車
列車は1両編成。架線が通っておりません。電車ではなく、軽油+ディーゼル・エンジンで走る気動車です。要は、「線路を走るバス」的イメージです。架線がないと景色を損ねませんね。
◆里山をトコトコ走るローカル線
筆者が乗車した際、車内の乗客は2名でした。
当駅発・上り列車は、10:57、12:04、14:24、15:31あたりが、現実的です。乗り遅れると、えらいことになってしまうダイヤです。
※あとになって知りましたが、この駅舎はNHKBS1の名品『沁みる夜汽車』のタイトルバックに出てくる駅舎でした。
【御朱印】
ないと思います。
【参拝ルート】
2021年 5月10日
START=JR五井駅~小湊鉄道・五井駅10:05発→上総中野行き→高滝駅10:46着~650m~高瀧神社・一之鳥居~①高瀧神社~850m~高滝湖の鳥居&昼食~高瀧神社・境内社=賀茂護国神社~550m~高滝駅13:06発→上総中野行き→ 飯給駅13:27着~100m~②飯給白山神社 ~飯給駅14:24発→五井行き→五井駅15:15着=GOAL
※五井⇔高滝(周遊券・1,420円)途中下車有効
高滝→飯給(片道170円)
【編集後記】
◆参考文献
・房総弘文天皇伝説の研究(千葉大教育学部研究紀要第52巻171~178頁)井上孝夫
・飯給白山神社(路上日記 神社仏閣 Blog)
◆飯給白山神社
当社のような小さな山(=森)に鎮座する神社が大好きです。
木々に囲まれ、神聖な空気が社地を包みます。こうした場所には、もはや社殿の有無なんかどうでもよく、鳥居と森さえあればそれでいい!と思えるような気持になります。
清澄な空気と清浄な土地。
すなわち、神社の原初的な姿に触れることができるからこその気分なんだろうと思います。(了)