《香取神宮の歩き方~祭典》
『祈年祭』
(きねんさい)
~祈年祭とは、春の耕作始めにあたり、五穀豊穣を祈る祭典。毎年、2月17日斎行です。
◆香取神宮の祭典
年間80以上の祭典があります。
重要な祭典を中祭(=12回)
とくに重要な祭典を大祭(=6回)
と位置づけています。
【祭典の始まり】
ほとんどの祭典は、 修祓(しゅばつ) から始まります。
◆修祓
神事において、神様をお招きする前に心身の罪・穢を祓います。これを修祓といいます。
今回、遅刻したため修祓を見逃しました。
なので、祓戸と修祓の写真を過去記事から流用します。
◆祓所(はらえど)
~言わば、修祓のための式場。
玉砂利を整え、四方に忌竹を立てて結界。清浄な空間を創り上げます。
祝詞を奏上し、玉串を捧げる。これにより神様への恭順の心を表し、つながりを確認します。
「二礼二拍手一拝」して、祓の儀式を終えます。
急ぎ、拝殿に向かいましたが、式典は既に始まっておりました。
◆拝殿
通常と異なる装いの拝殿。錦旗や四神霊獣の旗がたなびいていました。
◆四神霊獣の錦旗①
青龍と朱雀
◆四神霊獣の錦旗②
白虎と玄武
【祈年祭】式典
この日は、宮中の賢所(かしこどころ)においても五穀豊穣祈願の祭典が行われ、天皇陛下が御親拝になられます。
※賢所=三種の神器のひとつである八咫鏡を祀る場所。
◆香取神宮・大祭
大祭は以下の6つ。
④⑤以外、すべて農業神事です。
①祈年祭(2月17日)
②御田植祭・耕田式(4月 第1土曜)
③御田植祭・田植式(4月 第1日曜)
④例祭(4月14日)
⑤神幸祭(4月15日)
⑥新嘗祭(11月23日)
※五穀豊穣と国家国民の平安を願うのが伊勢神宮祭祀の原点。よって、お祭の多くは農作とリンクします。香取神宮の祭典もこれに準じます。
◆衣冠束帯
祭典の格によって、神職の装束が変わります。大祭では、正装となります。
例えば、頭に被るのは冠。烏帽子では正装になりません。
◆祈年祭の別名
祈年祭は 「としごいのまつり」 とも呼ばれます。
「とし(=歳)」は、稲の美称。
「こい」は、祈り・願いを表わす言葉。
◆農業神事
香取神宮の農業神事は、祈年祭と新嘗祭のほか、御田植祭があります。これは、当宮の斎田において、早乙女が田植歌を唄いながら苗を植える神事、など2日間行われます。
◆斎田
五穀豊穣をもたらす神様は・・・
春、山から降りてきて農作業を見守り
秋、収穫が終わると山に帰っていきます。
『香取神宮 斎田(=神田)』は、赤鳥居から500mほど。
◆五穀豊穣祈祷神璽
春・祈年祭=実りへの祈願
秋・新嘗祭=収穫への感謝
2つの祭典は、天皇をはじめとして、日本人が稲作を大切にしている証です。
再び境内です
◆神職を出待ちする仕丁
仕丁(してい)とは、お供のこと。朱傘(しゅさん)を抱えて待機しています。
◆社務所
式典を終えた神職は、こちらに向かいます。
◆拝殿をあとにする
神職が拝殿から出てきました。道開きの後ろに宮司。仕丁が朱傘をさしかけます。伝統的な所作とはかくも美しいものなのです。
◆ご神木
~神職の隊列が御神木の前を通過します。
◆祈祷殿
正面に祈祷殿。この社殿、大正時代まで拝殿でした。
◆社務所
整列して、解散式。
これにて、『祈年祭』は無事に終了しました。
【聖なるもの=森と水】
神職が祈ることで、聖なる儀式となるのが祭典なら、
次は、存在そのものが聖性に満ちている森と水です。
◆杜への進入口
回廊や玉垣で防護される香取神宮・神域の森。ここは、その「開口部」です。
マウンドの向こう側は立ち入り禁止でした。
◆マウンドから遠望
童話「赤頭巾」のオオカミ、「お菓子の家」の魔女。キリスト教文化圏では、これらをはじめとして、森は悪魔などが棲む禍々(まがまが)しい世界です。
一方、自然界の「命の営み」に神性を見出す日本人にとって、森は聖なる場所です。
香取神宮の神域は亀甲山と呼ばれ、その面積は123,000㎡(=約3万7千坪)あります。
森の次は水です
旧参道方面から「要石道」に入り、湧水スポットに向かいます。
◆湧き水地点から神池を望む
二十四節気では、本日(=2/17)まで「立春」。2/18から3/4までは「雨水(うすい)」です。
雨水とは、雪はもう降らず、降るなら雨。冬場の雪や氷が溶けて水となる。要するに、春の訪れです。ゆえに、雨水の前日に「祈年祭」が行われます。
◆湧き水
この水が落下して、神池にそそぎ、さらには表参道の水路へと流れていきます。
◆水1
天と地が分かれた当初、地には水しかありませんでした。神々が天から矛をさし降ろしてかき混ぜ、島を造ることが日本国創造の第一歩でした。水は世界の基盤であり生命の母胎です。
◆水2
私たちの罪や穢れを祓ってくれるのは、神と水です。生命維持という観点からも、水は私たちにとって神のような存在です。そうした、水の世界とは神が支配する世界です。
【御朱印】
【参拝ルート】2021年 2月17日
START=JR成田線・佐原駅~駅前バス停→循環バス→香取神宮停留所~①香取神宮「祈年祭」見学~神域逍遥(=聖なる森と水) ~②神域逍遥「御神井道」(=璽社・狐坐山神社)~香取神宮駐車場→TAXI→佐原観光案内所(=レンタサイクル利用)→自転車→③御嶽神社→自転車→④香取家氏神 神社→自転車→観光案内所~佐原駅=GOAL
※情報:土曜&日曜の循環バスは、今年から運行休止しています。
【編集後記】
◆祈年祭
~稲作への思い
稲作の始まり=天照大御神が斎庭の稲穂を瓊瓊杵尊に授けました。(日本書記)
図版:神宮徴古館より
「斎庭の稲穂」 以降、日本人は稲作を中心とした営みを2000年以上繰り返して来ました。神社における農業神事を通して、日本人の稲作への強い思い入れを再確認できます。 (了)