一言主神社
(ひとことぬし)
正式名:三竹山 一言主神社
当社は、常総鉄道・水海道駅から5.8km。アクセスが悪く、これまで参拝を諦めていました。しかし、東武線・野田市駅からのバス・ルートを発見しました。
当社の神様は、《ひとことの願いなら必ず叶えてくれる神さま》です。
◇鎮座地:茨城県常総市大塚戸町875
◇最寄駅:東武線・野田市駅or愛宕駅
→茨急バス《岩井車庫行き》で「自然博物館入口」下車
◇御祭神:一言主大神
(→記紀に登場する国津神)
◇御朱印:あり
【参道】
◆大鳥居
~当地は茨城県ですが、律令制国では下総國の範囲内です。
◆社頭
~一之鳥居から四之鳥居が建てられています。
◆三之鳥居
~一之鳥居から拝殿まで一直線。右手、狛犬の向こう側に手水舎。
◆水盤
~素晴らしい水勢です。当地が千葉氏の勢力範囲内だったことを九曜紋が示唆します。
◇縁起◇
~ 大同4年(809年)、 今の社殿の辺りに妖しい光が現れました。数日後、雪の中からタケノコが生じ、1本が3つに枝分かれした“三岐(みつまた)の竹”となりました。 村人達がこれをお祓いしたところ、「私は大和国葛城山・東高宮の岡にいる一言主大神である。この国の人々を災いから救うためにやって来た。この竹を私と思って、末永く祀りなさい。」と。by公式HP
→この、社伝を読むかぎり・・・
当社は、葛城・一言主神社から御祭神を勧請したのではない。
一言主大神が、好意で当地に来てくれた。と、そう言いたいようです。
【社殿】
屋根の緑青が緑濃い社叢に溶け込み、荘厳な美しさです。
◆拝殿
~一言主大神は、悪い事も善い事も一言で言い放つ、言霊・託宣の神とされています。このことから、ひとことで言える願いなら何でも叶えてくれる。と、広く信じられてきました。
【一言主神と事代主命】
「ひとことぬし」と「ことしろぬし」、響きが似ていることに由来する混同や同一視がある、と言われています。
→一言主神は、言霊・託宣の神。
同じく託宣の神である事代主神と混同される場合がある。
by『祭神記』玄松子
しかし・・・、当社の立場は
「一言主神=事代主命」です。
by当社リーフレット
◆本殿
~小豆色の社殿は、彫刻が少々「うるさい」ものの、全体的には美しいかと思います。
◆雄略天皇との関係①
「記紀」によるもの
一言主神と雄略天皇が葛城山の山中で遭遇した逸話
①天皇は、一言主神に敬意を表した。(古事記)
②両者は、一緒に狩りを楽しんだ。(日本書紀)
◆雄略天皇との関係②
「続日本紀」によるもの
記紀と異なります。
「両者は、狩りで争った。一言主神が天皇の邪魔をしたため、同神は土佐に流された。」
→この逸話は、一言主神を奉斎した葛城氏の没落を暗示している、とする説があります。そして、土佐配流を裏付けるかのように、土佐神社では一言主神を祀っています。
◆葛城と常総
~当社の本社に当たるのが大和の一言主神社。この神社は葛城に鎮座します。
葛城は、神武に滅ぼされたナガスネヒコの怨霊の地であり、大王家(=皇室)との勢力争いに破れた葛城氏の怨霊の地であることが分かりました。
そこから、想像を広げると・・・
当社鎮座地である常総は、平将門の怨霊がある地、と考えられます。
となると、
そもそも一言主神社とは、畿内でも東国でも怨霊と関りのある神社。と、考えることもできそうです。
◆御神水と御神木
お水取り可能です。
樹齢不明の大杉。神棚を設けて、きちんとお祀りされていました。紙垂も真新しかったです。
◆社務所
【境内社など】
◆右:霊竹殿
~創建ゆかりの「三岐の竹」が納められています。
◆左:大黒社
祭神=大国主神
~一言主大神を事代主神と同一視するなら、こちらの祭神は父神となります。
◆通路
~拝殿と祈祷者待合所をつなぐ屋根の下を潜り抜けます。
◆香取社・稲荷社
祭神:経津主大神・宇迦之御魂大神
~この両社を合祀するなんてこと、あるのですね。
石燈籠は、香取神宮の参道に並んでいるものによく似ています。
◆縁結び社
~御祭神は不明。鰹木の数が奇数なので、男神が祀られている可能性大です。
◆合社(ごうしゃ)
~13社祀られています。三峯社、愛宕社、八幡社、三(山)王社、妙見社、天神社、八坂社、大日霊社、白髭社、厳島社、道祖社、別雷社、浅間社。屋根には苔がビッシリです。
◆庚申塔群
~本殿裏手です。
◆青面金剛
~明治の廃仏毀釈運動があっても、打ち壊されずに残されていました。お隣は、太陽と月が彫られた、大日如来の石碑のようでした。
◆石棺
~近隣の古墳から出土したもの。壁の掲示には、当社との関係が書かれておりません。
【附録:アドベンチャー】
神社への道のりは、想定外でした。言わば、冒険の旅でしたのでご紹介します。
◆バス停から600m地点
~この道を進むと博物館正門。施設内の遊歩道を経て、沼を渡れば「一言主神社」到着。の予定でした。
◆茨城自然博物館
~あろうことか、この日は休館。敷地内を通過できなくなりました。
地元の方に道を尋ねたところ、「まずは、博物館敷地を右に迂回。その次は、沼をどのように越えるか。沼越えのルートは2つ」とのことでした。
来た道を戻り、上写真の右手樹叢に入って、敷地を迂回します。
問題は、大きな沼をどーするか。
①沼を渡る
→道なき道を進んで橋を目指す。
②沼を渡らずに迂回する。
少考して、①を選択
→②は、南北5kmの沼をほぼ1周に等しいので厳しい、と判断しました。
◆敷地を迂回、橋を目指す
~第六天神社裏手の樹叢を進めば、橋のたもとに出られる、とのことでした。
鳥居が見えたときは、ひと安心できました。
道の左手にレンガの水門。
この向こうは博物館の敷地です。周囲はネットが張ってあります。
◆第六天神社
~神社に沿って道は左にカーブします。雰囲気が良さそうなので寄ってみることにしました。
氏子さんが清掃されているのでしょう。境内は清々しくて、良い神社でした。
神社を出て、裏手に広がる樹叢に入りました。
細道の先、突き当りは鉄門が閉まっていました。
門の中は博物館の敷地でした。右手に狭い脇道があったので入りました。
「道なき道を進めば・・・」
とは、このことでした。
道なりに進むと、またしても鉄門。
しかし、そこにも獣道のような脇道がありました。
急な下りに足を滑らせながら進む道中、写真撮影する余裕などありません。
必死でしたが、楽しくもありました。
◆ふれあい橋
~獣道もどきの細道を抜けると、そこは博物館敷地内でした。
しかも、橋が見えました!
これで、沼の南北を迂回する事態の回避が確定しました。
◆沼沢
~沼の名は菅生沼(すがおぬま)
南北5km、東西400mです。橋は東西に架かっています。
◆湿地
~まるで釧路湿原を歩いているかのようで、気持ち良く歩けます。
◆水路
◆緑地
~見渡すかぎり360度の緑。橋以外の人工物は視界に入ってきません。
◆あすなろ橋
~2つめの橋を渡って、左に進みたいのですが、これまた鉄門が閉まっていて行けません。
やむなく右に迂回しました。
※菅生沼周辺の環境は素晴らしいものがありました。徒歩ルートは、整備された博物館の敷地を行くのが正しいのでしょう。しかし、「道なき道」を含む冒険ルートは、余分な距離を歩くことになりますが、悪くないです。今回、帰路で道に迷いましたが、次回は大丈夫。
一言主神社再訪の場合も今回ルートを行くと思います。
◆神社近く
~画面右手は県道からの道。クルマで進入してくる道路です。この合流を道なりに進めば、記事冒頭の大鳥居です。
【御朱印】
~初穂料は300円。8月から500円です。
御朱印帳への書き込み可でしたが、書置きをいただきました。
【参拝ルート】2020年 7月27日
北総台地の神社を歩く
START=東武線・野田市駅~徒歩20m~茨城急行・野田市駅バス停→岩井車庫行き→自然博物館入口バス停~徒歩3km~①一言主神社 ~徒歩~自然博物館入口→茨急バス・野田市駅行き→愛宕神社前バス停~徒歩20m~②愛宕神社~徒歩450m~東武線・愛宕駅→東武線→豊四季駅~徒歩1.3km~③天形星神社~徒歩~豊四季駅=GOAL
※今回は、想定外の事態が発生。体力を消耗したため、③は断念しました。
※野田市駅では「櫻木神社」、豊四季駅では「駒木諏訪神社」などをセットするのも可能です。
【編集後記】
一言主神社は、ずっと気になっていました。HPでアクセスを見ると、常総線・水海道駅からタクシーで15分。これでは、公共交通機関+徒歩の神社ブロガーには厳しい、と、思考停止していました。ところが、偶然にも近くに博物館があることを発見。ならば、博物館行のバスもあるはず。と、調べたところ、東武アーバンパークライン・野田市駅からのバス路線にたどり着き、欣喜雀躍しました。バス便は1時間に1本。余裕で許容範囲です。(了)