佐原八坂神社

 

《表参道が毎年変わる!?》

 当社には、南側参道と西側参道を、1年おきに表参道の役割交代するという、おもしろい掟があります。

 

【八坂神社の顔】

本殿・覆い殿は、まるで列車砲のよう。その威容は、見る者を圧倒します。

~荒ぶる神=スサノオが祀られていることを腑に落とす、奇異な造形です。千木や鰹木でさえ、武器に見えてくるのでした。

◇鎮座地:千葉県香取市佐原イ3360

◇最寄駅:JR成田線・佐原駅~1.1km

◇御祭神:素戔嗚尊

◇御朱印:書置き→境内の山車会館

◇御朱印:直書き→側高神社(本務社)

◇社格等:村社、佐原・本宿の総鎮守

 

 

 

【表参道】

  表参道が固定されない

なんと!南側参道と西側参道の間で、1年おきに表参道の役割を交代させています!何のために、このような措置をとっているのでしょう!?

 

①浜宿口参道

◆鳥居

 西側の参道です。

落ち着いた雰囲気です。江戸時代は、こちらの参道しかありませんでした。

 

 

 

②八日市場口参道

◆鳥居

 南側の参道です。

明治初年の社殿改造の際に増設されました。こちらは、県道(通称・香取街道)に面しています。

鳥居の下にバス停があります。実質的にはこちらが表参道として定着している、と言えそうです。

 

◆手水舎

 背後の白っぽい建物は「山車会館」。例祭で使われる巨大山車などが展示されています。

 水盤の文字は、「かんそう」と読み、《すすぐ・そそぐ・洗う》という意味です。

「盥」は、「皿」の「水」を「両手」ですくっている形からできた文字です。船橋市「二宮神社」、浦安市「清瀧神社」も盥漱と刻まれた水盤です。

 

 

◆拝殿を遠望

 

 

◆拝殿

 江戸時代(1637年)、諏訪神社の近く、天王台に鎮座していた 牛頭天王を当地に遷宮 しました。よって、当社は幕末まで牛頭天王を祀っていました。

牛頭天王とは、釈迦の生誕地に関係する祇園精舎の守護神です。つまり、仏教関連神です。

江戸時代、八坂神社は、社号を祇園精舎に因んだ「祇園社」と称しました。仏教色が勝った”神仏習合の神社”として存在していました。

しかし、明治・新政府が誕生して、宗教界に激震が走ります。

政府は、神道を欧米列強のキリスト教のように仕立て上げ、神道を以って国民を統合しようと考えました。そして、神仏分離令が発令されます。

 

 

◆拝殿・本殿

 仏教色が強すぎた京都・祇園社は、神仏分離の通達で名指しされます。国家により、祭神&社号の変更が強制されました。

こうして、祭神=素戔嗚尊の八坂神社が誕生しました。

全国各地の祇園社&天王社もまた、スサノオを祭神とする八坂神社への改称が強制されました。当社もこの流れで「八坂神社」になったものと思われます。

 

 

◆本殿

 八坂神社が素戔嗚尊を祭神としているのは、こうした背景でした。したがって、同じく素戔嗚尊を祀る氷川神社とは出自がまったく異なってきます。

 

 

スサノオ

八坂神社と氷川神社

 同じ祭神を戴く両社ですが、その違いは

 八坂神社が国家によって《強制的》に祀らされたのは、皇祖・天照大神の弟神としての素戔嗚尊。

 つまり、天津神・スサノオ。

 

一方、氷川神社が《自主的》に祀るのは、大国主神の祖先神としての素戔嗚尊。

 つまり、国津神・スサノオ。

 

 

 

※素戔嗚尊について

 天界と地上界で、この神の性格は大きく異なります。

高天原:皮を剥いだ馬を放り投げ、母親を思慕し泣き叫び、畔を放つ危険な神。

地上界:八岐の狂暴な蛇を退治し、夫婦仲睦まじく、和歌をたしなむ平和な神。

 

この豹変ぶりが、不思議でなりません。

 

しかし、「元は別々の二神を強引に同一神としている。」 

by 松前 健『日本の神々』(講談社学術文庫) 

 

と考えれば、納得できそうです。

 

 

 

【境内点描】

◆社務所

 キホン不在のようです。御朱印は、手水舎裏手の「山車会館」に用意されています。

 

 

◆神木

 幹の苔が存在感を誇示します。背後の建物は神輿庫。

 

 

 

【境内社①】

◆水天宮

御祭神:天御中主神、安徳天皇、高倉平中宮(=建礼門院平徳子)、二位の尼(平時子)

 水天宮だけが、拝殿右の「好立地」に単独で鎮座しています。これには、何か理由があるのかもしれません。

 

瑞垣の御門から遥拝する形式です。

 

一見、ごく普通の社殿に見えます。しかし、横に廻ると・・・。

 

水天宮の社殿にも八坂・本殿のような覆いがありました。

 

 造形は特異ですが、本殿・瑞垣・衝立、これらの建材の質感&経年変化には、統一的な「美」を感じます。

 

 

 

【境内社②】

その他、いくつかの境内社が本殿裏手のスペースに集中鎮座していました。

◆三峯神社

御祭神:伊弉諾尊、伊弉冉尊

 

 

◆琴平神社

御祭神:大物主神

 

 

◆豊川稲荷

 豊川稲荷は、神社ではありません。寺院です。

したがって、祭神はおりません。

 祀られているのは、秘仏・豊川吒枳尼真天(だきにしんてん)。稲穂を担いだ狐の姿から、「稲荷」と呼ばれるようになりました。現在は、どこの豊川稲荷でも鳥居が見られます。

*個人的に、妖しさを感じます。一般の稲荷社以上に近寄りがたいものがあります。

 

 

◆大山阿夫利神社

御祭神:大山祇神

 神奈川の総本社では、本社に大山祇大神、奥社に大雷神(オオイカツチ)、前社に高龗神(タカオカミ)を祀っています。

 

 

 

【御朱印】

境内の「山車会館」で書置きを拝受しました。

 

 

 

【参拝ルート】

2019年10月17日

START=JR成田線・佐原駅~70m~①自転車調達=佐原観光協会→1.2km→ ②佐原八坂神社 2.2km→③香取神宮→3.5km→④佐原諏訪神社→350m→⑤佐原観光協会=自転車返却~100m~⑥JR成田線・佐原駅=GOAL

 

 

 

【編集後記】

◆佐原の鎮守社

 佐原には、鎮守が2社あります。町を南北に流れる小野川を境に2地区に分かれます。

→小野川の東側=新宿地区:八坂神社

→小野川の西側=本宿地区:諏訪神社

 

◆佐原の大祭

 年2回、夏と秋に開催されます。巨大山車が繰り出し、江戸時代の面影を残す伝統行事です。川越氷川祭・常陸國總社宮大祭とともに、関東三大祭りの1つと言われています。

 佐原の大祭「夏祭り」

山車10台出動=八坂神社・例祭「祇園祭」

 

 佐原の大祭「秋祭り」

山車14台出動=諏訪神社・例祭

※こちらの写真は、ネットから拝借しました。

 

◆八坂と諏訪

 佐原では、本宿を鎮守する諏訪神社、そして新宿を鎮守する八坂神社。両社とも、駅から近く、美しい神社です。佐原にお出かけになられたら、立ち寄られてはいかがでしょう。(了)