船橋大神宮
『延喜式』に記された正式な社号
→意冨比神社(おおひ)
『完全ガイド』Vol.2
《総ての境内社》
昔は、こちらが表参道だったかもしれません。延喜式「神名帳」に記載される古社の場合、社殿はおおむね参道の突き当りにありません。当社の現・表参道は一直線の参道突き当りが社殿です。一方、こちらは曲折して拝殿に着きます。*写真は西・大鳥居と二之鳥居
◇鎮座地:千葉県船橋市宮本5-2-1
◇最寄駅:2か所
→大鳥居=京成線・大神宮下駅~170m
→西鳥居=JR総武線・船橋駅~1.0km
◇主祭神:天照皇大御神
◇御朱印:あり
【境内社】
当社には、素晴らしい境内社がたくさんあります。
◆4つのエリア
①西エリア、②東エリア、③常磐神社エリア、④北エリア
以上4区域に分布します。
①【西エリア】
◆西・二之鳥居と浮世絵
~広重『諸国名所百景』の「下総舟橋大神宮」と同じ構図で撮影してみました。
常夜燈と鳥居の位置関係が令和時代と江戸時代とで異なっています。また、鳥居「貫」の形状が異なります。
◆船玉神社(末社)
御祭神:天鳥船命、住吉命
元々は、船魂(ふなだま)を祀っていたらしいです。船魂or船霊とは海の民が航海の安全を願う神さまで、女神のようです。
玉垣正面が舟の舳先を模して造られています。船に女性が同乗したり、女性1人で乗船したりすると、船魂が怒って、悪天候にするという伝承があるようです。女神だからでしょうか?
◆寄せ宮(Ⅰ)
船玉神社の右手に鎮座しています。2社が1セットで5ブロック。合計10社の寄せ宮となっています。左から順に、粟嶋神社&根神社、祈年穀神社&岩長姫神社、阿夫利神社&大山祇神社、事代主神社&大國主神社、水神社&産霊神社が鎮座します。
◆猨田比古神社と三峯神社
御祭神:猿田彦大神、日本武尊
寄せ宮の並び、その右手に鎮座しています。ともに末社です。
◆寄せ宮(Ⅱ)
5ブロックづつに分けられた寄せ宮が2棟並んでいます。
左社殿:①八幡神社、②竈神社、③龍神社、④道祖神社、⑤客人神社&多賀神社
右社殿は、ペアリングに意味を持たせています。
→①岩島(厳島)神社&住吉神社=水運関係
②祓戸神社&春日神社=中臣氏関係
③香取神社&鹿島神社=国譲り神話関係
④玉前神社&安房神社=千葉(上総國と安房國)セット
⑤天満宮&天神社=菅原道真関係
◆中臣氏に関わる神社
◇祓所神社の御祭神:祓戸四神=瀬織津姫、速開都比売神、気吹戸主、速佐須良比売
◇春日神社の御祭神:武甕槌命(=鹿島)、経津主命(=香取)、天児屋根命、比売神
祓には「中臣 大祓詞」を奏上します。春日神は、中臣氏(=藤原氏)の守護神&氏神です。
◆オール・スター
下総國、常陸國、上総國、安房國の一之宮の分霊です。茨城と千葉のオール・スター!
◆金刀比羅神社(末社)
御祭神:大物主大神
当宮すべての建物の中で、金刀比羅神社は、 オーブ出現率がNO.1 です。ほぼ毎回、映りこみます。三諸山系でなくても、さすが偉大な神=大物主大神。御神威の強さを感じます。
◆八坂神社・八剱神社
→ともに摂社であり、神輿奉安殿
御祭神:ともに須佐之男命
通常、社殿に鎮まってらっしゃる神様。お祭りの際に、神様がお乗りになるのが神輿です。しかし、こちらは神輿が神社そのもの。神様は常にこの神輿にお鎮まりになっています。
◆3つの末社
左:水天宮
中:稲荷神社
右:秋葉神社&古峯神社
◇御祭神
左:天御中主神、安徳天皇、高倉平中宮、二位の尼。
中:宇迦之御魂神
右:秋葉=火之迦具土神、古峯=日本武尊
◆稲荷神社の狐
社殿欄干の内側には、いくつもの「神狐」が奉納されています。
②【東エリア】
◆外宮と八雲神社
早朝、神門が閉ざされたままの姿を撮影しました。
◆開門
門外から社殿を遠望できます。
◆外宮(摂社)
御祭神:豊受姫大神
高床式の神明造である、唯一神明造です。本社殿は、伊勢神宮・内宮の「由貴御倉」を拝領したものです。「由貴」とは、清浄な、穢れのない、という意味です。
豊受大神は、伊勢・豊受大神宮に祀られ、天照皇大御神のお食事を司られる神様。五穀豊穣と衣食住の守り神です。
◆八雲神社(摂社)
御祭神
須佐之男命、大己貴神、稲田姫命
令和の初詣でこちらに来たところ、写真の社殿は取り壊され、新造中でした。屋根は、瓦葺き→銅板葺きへと変貌していました。社務所でお伺いしたところ「7月の例祭には、新社殿でのお参りが可能になる」とのことでした。
◆慰霊碑
日清戦争、日露戦争、大東亜戦争における、船橋市民の戦没者、おひとりおひとりのお名前が刻まれています。白色文字で書かれた歌を以下にご紹介します。
「かぎりなき 世にのこさむと 国のため たふれし人の 名をぞとどむる」
◆天之御柱宮
(あめのみはしらのみや)末社
護国の英霊をお祀りしています。
③【大鳥神社・常磐神社エリア】
◆参道
東門から受付所・神門方面を望んでいます。石畳を右に折れると、摂社・大鳥神社です。
◆大鳥神社(摂社)
御祭神:日本武尊
日本武尊は、意冨比神社の創始神です。
例年、十二月の壱之酉、弍之酉の両日が例祭日で、「船橋のお酉さま」として親しまれています。例祭日は、夜間まで参拝することができ、ご神札とともに熊手が授与されます。弐の酉には、神楽の奉納もあります。
◆常磐神社(摂社)
御祭神:日本武尊、徳川家康公、徳川秀忠公、徳川四天王(井伊、本多、酒井、榊原)
開門前です。
◆門が開きました
◆常磐神社・大鳥居
燈明台へ登る石段から撮影。目線の先に笠木、という斬新な風景も見ることができます。
◆神門&透かし塀
神門は派手です。しかし、静寂と清浄と新緑が視界に落ち着きを与えてくれます。
◆正月・開門前
柔らかな真冬の陽光を浴びる神門。お正月と例祭日は、御垣内に入ることができます。
◆正月・開門後
神門の扉と両サイド透かし塀の引き戸が開放されます。
◆神門から本殿を遠望
本殿前の斎庭には、御白石が敷き詰められています。
◆本殿
装飾金具=屋根の縁に徳川家の家紋、その下は、菊の御紋が2列に連なっています。
④【北のエリア】
◆神池
船橋大神宮に神池があること、ご存知ない方が多いかもしれません。
◆浅間神社・大鳥居
神池だけでなく、富士塚もあるのです。
◆登山道
道幅は広く、勾配もきつくありません。また、足場がしっかりしているので、雨でも、難なく登れます。かなりの数の富士塚に登ってきましたが、登りやすさはトップ・クラスです。
◆浅間神社(末社)
御祭神:木花佐久夜毘賣命
境内北部の高台(≒富士塚)に鎮座しています。黒ボク(=富士山の溶岩)こそありませんが、山麓に池を配し、頂上には、立派な社殿があります。
◆前方後円墳
境外・県道から遠望、すると、高さが良く分かります。菱沼 勇氏は、この高台を前方後円墳であるとしています。「本殿右奥に、清泉の湧き出る池があり、その向こうに、前方後円墳があるのを見つけた。直径30メートルほど、後円部の高さ5メートルほどの古墳だ。」著書『房総の古社』に記しています。
【御朱印】
【編集後記】
◆西大鳥居周辺
西大鳥居に向かって右側は、長い間更地でした。今、少しづつ整備が進められています。最終的には、ある建造物を造営する計画もあるようです。写真は、西大鳥居石段下の右手奥、飛び石の奥にしつらえられた蹲(つくばい)の上に伸びる青モミジです。
◆歯固め石
子どもの「お食い初め」に使う、歯固め石が「外宮」の御垣内に置かれています。石は、自宅に持ち帰り、使い終わったらこの樽に返却することになっています。意外に大きい石です。
以上、2回にわたってご紹介した、船橋市民のPRIDE「船橋大神宮」。
とても素晴らしい神社です。皆さま方におかれましては、是非、1度訪ねてほしいです。ありがとうございました。 (了)