2019年 2月 3日、船橋大神宮の「節分祭」に行きました。

 

 船橋大神宮 『節分祭』

 当社の「節分祭」は、豆を撒くだけではありません。大神宮楽部による雅楽を聴くことができ、無形民俗文化財に指定される神楽を観劇することができます。

 

◆拝殿に向かう隊列

 先頭=道開き、2番手=船橋大神宮楽部(篳篥・笙・龍笛)、3番手=神職

◇鎮座地:千葉県船橋市宮本5-2-1

◇最寄駅:京成線・大神宮下駅

◇御祭神:天照皇大御神

◇御朱印:あり

◇社格等:延喜式=式内社、旧社格=県社、神階=従四位下

 

 

【表参道】

◆二之鳥居

 木製の大鳥居には、温もりが感じられます。鳥居下の常夜燈もまた木製です。

 

 

◆狛犬

 石像に生えた苔、そこに映る木漏れ陽&枝葉の影。

 

 

◆水盤

 周囲の緑と水盤が完全に調和しています。

 

 

◆祓戸神社

御祭神:祓戸四神

→瀬織津比売、速開都比売、気吹戸主、速佐須良比売

 神門に向かって左側の境内社エリアに鎮座しています。こちらをお参りすることで《祓え》も達成されます。春日神社との同殿は、「中臣氏つながり」という意味なのでしょう。

 

 

 禊だけでなく、祓も完了。

心身を清々しく整えることができました。

 

 

◆神門

 静寂な神門付近です。しかし、『節分祭』の開始時刻が迫ると、状況は一変します。

 

 

◆本殿

 本殿の左に写っている、神明造の小さな屋根は「仮殿」です。

仮殿は、境内社「外宮」の社殿として存在していました。伊勢神宮の式年遷宮の際、当社は由貴御倉を拝領。それを「外宮」の社殿としたため、旧社殿は仮殿として運用することになりました。

 

 

 天照皇大御神さまへのご挨拶を済ませ、いよいよ「節分祭」です。

 

 

【節分祭】

 節分とは、各季節の節め(=立春、立夏、立秋、立冬)の前日です。よって、年に4回あります。立春の前日=2月3日が最も有名になりました。

 ①御祭典(拝殿):10時開始

 ②神楽(神楽殿):11時開始

 ③豆撒(神楽殿):11時30分頃開始

※「節分祭」は、午前と午後の2回斎行されます。筆者は、午前に参加しました。

 

 

①祭典

 神職の方々が「天之御柱宮(=護国神社)」と慰霊碑に挟まれたスペースに集合。

 

道開き神職を先頭に、大神宮楽部、神職、年男年女の隊列が拝殿を目指して動き出します。

 笙(しょう)、篳篥(ひちりき)、龍笛(りゅうてき)が雅楽を奏でながら、おごそかに進みます。

 船橋大神宮では、祭典によって神職が身に着ける装束が決まっています。

 節分祭では「浄衣」という白装束を纏うのが慣わしです。神門をくぐり、拝殿にて儀式です。

 

 

 拝殿で号鼓が打ち鳴らされました。

儀式終了の合図です。

 

 

【開始直前】

◆神楽殿

 手前に見える新しめの木材の手摺りは、「やぐら(=桟敷席)」のものです。桟敷席には、儀式に参加した年男&年女が着席します。

 

 

◆神職を待つ御幣

 御幣と舞台突き当りの壁面。まだ御扉が閉じています。

 

 

◆演奏者を待つ雅楽器

 左:楽太鼓、右:締太鼓。中央に解説用マイク。マイクの前に、龍笛(=横笛)が座ります。

 

 

◆楽太鼓

 釣太鼓とも呼ばれており、黒漆塗りの円形木枠に釣るしています。太鼓の革面には、金色の地に色彩豊かな紋様が描かれています。

 バチは、先端に皮が巻かれています。柄には、装飾金具が取り付けてあります。

 

 

 

②神楽

 船橋大神宮では、年に6回ほど神楽を奉納します。

元旦、1月3日、節分祭(=2/3)、水神祭(=4/3)、例祭(=10/20)、二の酉(=12月中)、です。神楽は、全部で8座が伝わっています。

 

◆祝詞

 神職が登場。舞台背面の扉を開き、御幣を手にしました。この日の神楽は、「みこ舞」、「猿田舞」、「恵比寿大黒舞」、「山神(さんじん)舞」の4座です。

 

 

◆みこ舞

 神さまを迎えるため舞台を浄めます。これは、一般的な「修祓(しゅばつ)」という舞と同じ意味かと思われます。

 みこ舞は、面を装着せず、「直面(ひためん=素顔)」による舞です。

左手で御幣を捧げ、右手で神楽鈴を鳴らしながら、舞台を浄めていきます。

 

 

◆猿田舞

 槍を手にした猿田彦。威風堂々の登場です。締太鼓は、棒状のバチを使って演奏します。

 猿田彦と言えば、天狗面。

日本書紀の「鼻の長さ七咫(ななあた)、背の長さ七尺余り ー中略ー 照り輝けること赤酸漿(あかかがち)に似れり」というくだりに由来します。

 

 

◆恵比寿大黒舞

 恵比寿さまは釣り竿、大黒さまは小槌(こづち)を持ち、掛け合いで舞い踊ります。

「恵比寿大黒舞」は、節分のときしか舞われません。

 

 

◆山神舞(さんじんまい)

 青鬼が飛び出してきて暴れ回わります。通常は青鬼だけなのだそうです。この日は、赤鬼も登場しました。

 

 山の神さま=鍾馗が現れて鬼退治を始めます。当初は劣勢です。しかし、福豆を投げ始めると、その霊力に助けられ、鬼たちを圧倒していきます。

 

 苦しい展開となった鬼たちは、桟敷席に逃げ込みます。すると、そこに陣取る年男&年女からも福豆の集中攻撃を浴びます。もはや、降参しかありません。

 

 

 

③豆まき

 季節の変わり目である節分には、邪気が生じると言われています。その象徴である鬼を払うため、古来より豆まきが行われます。福豆を撒いているのは、市井の年男&年女です。

 

 

◆福豆セット

 1つのビニール袋に、この3点がセットされていました。

 

 

◆鬼を確保!

 ひと仕事を終えた赤鬼&青鬼を捕えました。

※「鬼・おに」は、おぬ(隠)が転じたもので、本来、姿の見えないものです。「隠・おぬ」は、陰陽五行の「陰・おん」に同じです。「陽」である春を迎える節分では、「陰」である鬼が退散するのは当然なのです。 

by 『陰陽五行と日本の民俗』 吉野裕子(人文書院)

 

 

 

【境内点描】

◆常磐神社

 常磐神社では、木製・大扉と石製・大鳥居が参拝者を迎えてくれます。

 

 

◆大鳥神社の付近

 真冬であるにもかかわらず、緑が美しい一角です。

 

 

◆富士塚

 山麓には大鳥居。頂上には浅間神社です。

 

 

 

【編集後記】

◆神盃の拝受

 豆まきに先立ち、筆者は幸運を拝受しました。『元旦祭』で配られた「干支神盃」の残部が先着順で配られました。塩やコメを盛り、神棚で使うのだそうです。飾り盃としても可だそうです。

 

◆祭事暦

 筆者の地元・船橋大神宮の2019年は、 『元旦祭』で灯明台の内部を。そして、『節分祭』では伝統の神楽を。それぞれ楽しみました。祭事暦によれば、4月は船橋港で「水神祭」、7月は富士塚で「浅間神社例祭」ほかが控えていて、益々楽しみが募ります。 (了)