尾張國 一之宮
真清田神社
(ますみだ)
『延喜式』に記された正式社号
→眞墨田神社
《龍神伝説を持つ神社》
当社には、龍神降臨伝説や昇龍伝説などが伝わっております。
◇鎮座地:愛知県一宮市清田1-2-1
◇最寄駅:名鉄・一宮駅、JR東海道本線・尾張一宮駅~徒歩8分
◇御祭神:天火明命
(あめのほあかりのみこと)
→尾張氏の祖神
※別名=天照国照彦天火明命
すなわち、ニギハヤヒ
◇御朱印:あり
◇社格等:延喜式=名神大社、旧社格=国幣中社、神階=正四位上、尾張國一之宮
◎龍神伝説◎
~当社は2つの伝説を持っています。
①降臨伝説
→八頭八尾の龍神伝説
②昇龍伝説
→茅草作りの竜神伝説
本文にて、あらためてご紹介します。
【参道】
当社の創建年は不詳。公式記録上の初出は、847年の神階昇叙です。
◆大鳥居
~鳥居から楼門までのスペースは、町で見かける「屋根なし駐車場」のような雰囲気でした。
◆太鼓橋
~今は、渡ることができません。橋の下が石畳になっていたので、暗渠かもしれません。
◆楼門
~楼門には、翼廊が続きます。その先、途中から石塀に変わります。
◆大扉
~神紋は「九枚笹(くまいざさ)」
社号は、神社の周辺環境に由来します。→木曽川の清流を引き入れた水田が広がっていたことから、「真清田」と呼ばれるようになりました。
◆祭神のこと
~現在、祭神は天火明命です。
しかし、歴史的には中世末期から江戸時代までは、国常立尊・祭神説が主流でした。
明治の時点での祭神は、国常立尊のほか、天照大神・月夜見神・大己貴神・大竜王神の5柱であった、とのことです。 byウイキ
◆手水舎
~石の土台に4本ひと束にした柱。重厚な手水舎です。
◆水盤には吐水龍
【社殿】
◆拝殿
「降臨伝説」
~天火明命が真清田神社の森に鎮座の際、八つの頭と八つの尾を持つ大龍に乗って降臨した、との伝承があります。
◆向背
~横から見ると、正面に見えたのは、拝殿に付いた「向背」だったことが分かります。
◆祭文殿(さいもんでん)
~こちらから左右に翼廊が伸び、そのまま瑞垣を構成します。この社殿のイメージは、第2拝殿といったところでしょうか。
◆神饌所と祭具所
~祭文殿から続く翼廊の両角に相似形の建物があります。東=祭具所、西=神饌所です。
◆本殿
~祭神のこと
天火明命は、記紀に登場する、太陽を神格化した神です。
※ニギハヤヒとの関係
①『先代旧事本紀』
天火明命とニギハヤヒは同一神
天火明命の別名に、天照國照彦天火明櫛玉饒速日尊(あまてるくにてる ひこあまのほのあかり くしたまにぎはやひのみこと)があります。
②『新撰姓氏録』
天火明命とニギハヤヒは別神
天火明命は天孫(天照大神の系=皇統)。一方、ニギハヤヒは、天孫でなく天神。すなわち、天の出身であって、高天原出身でなく、よって皇統ではない。
◆荒魂
~本殿真裏、瑞垣外側の社叢には、「三明(さんみょう)神社」が鎮座。
御祭神は、天火明命の荒魂です。
◆社殿の位置関係
~拝殿→祭文殿→渡殿(わたどの)→本殿。そして、最奥は社叢の中に⑦=主祭神の荒魂。各社殿は、妻入り・平入りが交互に並び、均整がとれています。
①拝殿・本殿、②服織神社、③三光稲荷社、④楼門、⑤宝物館、⑥参集殿、⑦三明神社(=祭神の荒魂)、⑧神水舎、⑨神明社、⑩神池、⑪桃丘亭(=茶室)、⑫東神門&手水舎、⑬須佐之男社、愛宕社、秋葉社、⑭三末社、⑮厳島神社、⑯八龍神社、⑰神楽殿・斎館、⑱授与所・社務所、⑲手水舎、⑳歌碑、㉑宝蔵庫、㉒車祓所、㉓社号標、㉔神輿庫
→ゴシックは本文にて紹介。
次は、
《龍や水に関する施設》
をご紹介します。
①八龍神社
御祭神:高龗神
~真清田神社には、「八頭八尾の大龍神に乗って、御祭神が当地に鎮座した」という伝承があります。おそらく、その伝承が当社号の由来かと想像できます。
元は、厳島社内に奉祀されていた、 《御神体・龍神石》 です。それが、神仏分離により名古屋の日泰寺に流出。近年、当社に還ってきました。
◆中之島
左:八龍神社=高龗神
右:厳島神社=市杵島姫命
◆神池と神橋
②神水舎
~拝殿と授与所の中間地点に建てられています。当舎の御神水は、白河天皇の病気を治癒した「霊水」なのだそうです。
◆井館
御祭神:彌都波能賣大神
~毎年元旦の零時に「若水祭」を斎行。当舎から汲み上げた若水を神前に供えます。
◆ご神水&井戸
~左の龍から御神水を「お水取り」できます。
右の井戸は、水面に顔が映るまでのぞき込んでください、とのこと。無病息災を祈ります。
③竜と僧・空海の約束
《茅草の龍神伝説》
~その昔、尾張一帯を干ばつが襲ったときのこと。
空海が、茅草で作った竜に命を吹き込み、祈雨しました。
竜いわく、「我々は竜王に封印されている。禁を破って、水を呼ぶことなどできない。」と。
そこで、空海いわく
「あなたが禁を破り、犠牲になってくれたら、龍神として祀りましょう」と。
竜は、真清田に祀ることを条件に、空海の願いを受諾しました。
直後、突如、黒雲が湧き出すと、竜は雲を目指して一気に昇天。
と、同時に雷鳴から豪雨となりました。
雨と共に竜の頭や足などが落ちてきました。
空海は竜の亡骸を集めて供養の上、真清田神社に祀りました。
by『日本の伝説』第16巻(山田書院)を要約
(↑写真は、東神門・手水舎)
◇姫神 オール・スター
~境内社において、《瀬織津姫、速秋津姫、速佐須良姫、木花咲屋姫、菊理姫、市杵島姫、彌都波能賣神》といった、錚々たる姫神が祀られています。
【境内社】
◆摂社・服織神社(はとり神社)
御祭神:萬幡豊秋津師比賣命
(よろずはたとよあきつしひめのみこと)
→記紀に登場する神で、天火明命の母神です。
*神名の解釈
~「萬幡」=多くの布、「豊」=多い、「秋津」=蜻蛉の羽のように薄く上質なもの、「師」=技師。→多くの布で、多くの蜻蛉の羽のように薄く上質なものを作る織女神、と理解できます。
◆東神門近くの小さな丘
~丘の上に末社が3社。中央に須佐之男社、右に秋葉社、左に愛宕社
つまり、スサノオの両サイドに「火の神」を祀る神社が鎮座しています。
◆三末社
◇東社=愛鷹社
祭神:愛鷹神、瀬織津姫命、気吹戸主命、速秋津姫命、速佐須良姫命、木花咲屋姫命
*1912年、愛鷹社に祓戸社・浅間社を合祀
◇中社=犬飼社
祭神:犬飼神、神功皇后、底筒男神、中筒男神、表筒男神、猿田彦神、真清田曽根連、菊理姫命
*1912年、犬飼社に住吉社・三明神社・白山社・古守社を合祀
◇西社=天神社
祭神:天神七代神、伊弉冉命、速玉男神、事解男神、訶遇突智神、市杵島姫命
*1911年から1912年、七代宮に愛宕社・熊野社・厳島社・新愛宕社を合祀
◆稲荷
~三八稲荷神社
【境内点描】
◆東神門
~この神門をくぐると、左手に手水舎。隣に神池。右手には、祓戸神社。となると、こちらから入るほうが、より清浄になれる気がします。
◆授与所
◆石、2点
~「神水舎」に置かれています。手前:おもかる、奥:家庭円満。後者は、明白に陰陽石です。
【御朱印】
~摂社・服織神社の御朱印も用意されています。
【参拝ルート】 2018年 3月22日
START=JR名古屋駅~徒歩6分~「地下鉄名古屋駅」→東山線&名城線→「伝馬町」~徒歩5分~熱田神宮南門~①『熱田神宮』~熱田神宮東門~徒歩3分~「名鉄・神宮前駅」→名鉄・岐阜行→ 「名鉄一宮駅」~徒歩8分~②『真清田神社』 ~徒歩~「名鉄一宮駅」→名鉄線→「名鉄名古屋駅」~徒歩5分~「近鉄名古屋駅」→近鉄特急 95分→「鳥羽駅」~徒歩1分~「鳥羽バスセンター」→きゃんバス→「夫婦岩東口停留所」~徒歩3分~③『二見興玉神社』~徒歩15分~JR「二見浦駅」→参宮線→「伊勢市駅」=GOAL
【ひとこと】
◆当社の印象
~真清田神社は、尾張國一之宮です。実際に足を運んで感じたのは、地味な神社ということ。直前に熱田神宮に参拝したため、なおさらそのように感じたのかもしれません。
◆すぐ近くにも一之宮
~当社から、2.8km離れたところに「尾張国一之宮」がもう1社あります。大神神社です。大和の三輪から移り住んだ人々が大和・大神神社を勧請した、とされています。ただ、現在は神職が常駐しない神社となっているようなので、今回は訪問しませんでした。
◆尾張国三之宮・熱田神宮
~あらためて、熱田神宮は別格だと思います。その社格&雰囲気は、尾張一国のみならず、東京・神奈川・静岡・愛知を包括した地域において、ダントツ神社のひとつです。 (了)