午後の日射しがビルとアスファルトを照らしている。
冬の光と違って直視できない為、いつもの街並みが違って見えた。

今日は打ち合わせの日。
大阪の中心部辺りに住んでいるので、外で打ち合わせをする時は大抵、いつもの行動範囲内のお店になる。



独立してもうじき三年になる。
新しい服なんか全然買わず、全て運転資金に回してきた。
けれどこの季節は新しい服が欲しくなる。


ああ、あの服いいな
あたらしいカバンが欲しいな

お店を横切りながらそんなことを考えて満たされないものを満たそうとしていく。

「化粧品は何を使ってるの?」
とよく聞かれるけど、化粧品も安物ばかり。
上司からは化粧品系は良いもの買っても良いよと言われているが、結局買わないでいる。

こないだお母さんにもらった化粧品を使ったら超良かった。今はコロナの影響でみんなお金に余裕がないし、私もそろそろ良い化粧品くらいは買いたいなと思っていたけど、またお預けになりそうだ。


だけど、今日は新しい取引先との打ち合わせ。
良い感じの内容だと良いな。
それは金額よりも楽しそうかどうかが重要だけど











「いらっしゃいませー!何名様ですか?」



LINEを確認すると先方はまだ到着していないようだ。
私は注文せずに待つことにした。









「いらっしゃいませー!何名様ですか?」





どうやらきたようだ。
私の方に向かって右腕をブンブン振っている。





右腕をブンブン振っている。

















右腕を………………………ブンブン?








え、まって。
初対面のビジネス相手に向かって右腕をブンブン振るなんてこと………………ある?










まさか………








ヤバイお相手……?









村越「どうも初めまして!」

くうか「初めまして」

村越「村越と申します」

くうか「くうかと申します」

村越「へんぴな村に引っ越すと書いて村越です」


………村に引っ越すで良くない?


くうか「あ、平仮名で くうか です」







店員「ご注文はお決まりでしょうか?」

くうか「アイスミルクで」

村越「バナナジュース2つで」


2つ!?!? 


店員「かしこまりましたー」







 





村越「くうかさんの事務所はこの辺なんですか?」

くうか「そうですね。ここから自転車で行ける距離になります」

村越「僕は自動車でいけます」


自動車で行けない距離とは……?







暫しの雑談後


村越「で、くうかさん!」

くうか「はい」

村越「既にTwitterのDMでもお話させていただいていたのですが、明日から始まるボートレースオールスターで勝ってほしいんです」

くうか「一応確認したいんですけど、本当にそんな依頼で良いんですか?」

村越「はい」

くうか「軍資金10万円で、明日から31日の日曜日まで毎日1レース以上予想して賭けて、優勝戦終了時に10万円以上になっていたら全ていただけると?」

村越「100円でもマイナスに終われば報酬はゼロになります」

くうか「で、何のPRもしなくて良いと?」

村越「はい」

くうか「それ、村越さん側に得あります?」

村越「その辺は大丈夫ですよ」


何が大丈夫なのだろう?



だけど、思い返せば過去にウチから依頼した案件は全て同じようなことを言われていた。

「マジでそんなんで良いんですか?」


やしろあずき先生とストフェスで共演する

やしろあずき先生とフットゴルフをする

しのけんさんに大阪までケツバットをしにきてもらう

ガリぞうさんとバブルサッカーで遊んでもらう







……他人のこと言えたもんじゃないな


くうか「なるほど。それなら良いんですが…」

村越「その結果を見させていただいて、その後はまた良い関係性を築いていけたらとも思っております」

くうか「第2波、第3波も有り得ると…?」

村越「そういうことです」



今のところ断る要素はない。
変わった依頼は好きだし
ギャラも自力感があって良い。

ただ一つ気になることがあるとすれば
右腕をブンブン振っていたことくらいだ。



その事を聞きたかったけど、人見知りの激しい私からしたら初日で聞くのはまぁ無理があった。






村越「YouTubeも拝見させていただきました」

くうか「あ、ありがとうございます」

村越「仮チャンネルと書いてありましたが?」

くうか「企画案はかなりあるんですが、なにぶん編集に関しては素人でして、まずは緩くやって編集の練習をしながら的な…」

村越「ああ、なるほど」

くうか「こだわりのないものに関しては大体適当なんですが、あるものに関しては中途半端にしたくはないなという思いがありまして」

村越「実は完璧主義なところありますよね」



この人………




村越「過去の活動の方を見ていたらわかります。傍目から見たら損なやり方を敢えてしていたりしませんか?」



ただの右腕ブンブン丸ではないな………?






ここから少し警戒モードに入る。
相手が誰もが知るような大きな会社ならそんなに警戒はしないが、今回のお相手は全く聞いたことがない会社で、なんなら会社かどうかすらわからないからだ。



目の前のこの人に何の得がある………?








はっ!!




もしや……












ワタスのファン!??????







なるほど…。それなら合点がいく。
仕事と称して私に近づこうとしてるんだな?
「ン~フ~~~ン?」

村越「ン~フ~~~ン?」


はっ!自惚れ声が漏れてしまったようだ。


私は姿勢を正して真面目な顔をして言った。



くうか「サインとか……いります?」

村越「?いりませんけど」



ガッビーーーン
違った。
大いに違った。



くうか「あ、いや、その…契約書的なものにってことですよ!?」

村越「ああ…なんだ。失礼しました」




何とか誤魔化せた。



だけど
なら何が目的なのだろう?
私はアイスミルクを飲みながら相手の思惑の推理を始めた。










と、すぐにその思考は止められた。




村越「一つだけお願いがあるんです」

くうか「あ、はい…」










村越「このやり取りの様子をブログに書いてほしいんです」

くうか「え」

村越「お願いします」

くうか「あ、逆に良いんですね?わけわからんこと書きますよ?」

村越「どうぞどうぞ」









以上、右腕ブンブン丸との打ち合わせでした





明日からボートレース配信!
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初心者にもわかる解説をしますので⸜( ´ ꒳ ` )⸝