変な時期に防災熱が高まったもんだ​

16のとき、
学校では禁止のバイトを半年ほど
こっそりしていた。

なぜなら
翌年の交換留学(カナダ)が決まって
英会話のレッスンを受けたいと思ったからだ。


中1から英会話クラブに在籍していたものの
何となく留学となると
もっとバンバン話せなきゃ
いけないのではないか?と不安に思う16歳。

しかし、親にそのために
さらに余分なお金を払ってもらうなんて
できないなぁと思ったから
近所の元スーパーだったコンビニに行って
子供の頃から顔見知りのおばちゃんに
こうこうこうの理由で
学校に内緒の状態にて
アルバイトをしたいと相談してみたら
主任であったおばちゃんは親身になってくれ
即採用してくれた。

このおばちゃん、
とても気の強い女性で
当時(30年前)レジスター選手権なるもので
優勝するような
レジのプロだったが、
近所の噂ではおばちゃんの指導が厳しすぎて
パートがどんどん辞めていくという
逸話があった。

採用が決まった瞬間、
母はこう言う。

『あんな怖そうな人に
相談にまず行くあんたが信じられない。。。
どうせすぐ辞めさせられることになるよ?』

飛んで火に入る夏の虫とは
若い頃のわたしではないかとおもうが
(寧ろ今現在もその性質は変わってないかも?)
怖そうな人を味方につけておけば
かえっていいのではないかと考える私だった。

万が一、
あんたの学校の先生がアルバイトは禁止です!
と怒りに来たら
おばちゃんが働くことは悪いことじゃないって
先生を追い返してあげると
主任おばちゃんは言い放ち
その一言でそこのアルバイトは始まる。

さて、
おばちゃんの厳しい指導は始まったのだが、
英会話教室に行けるのなら
そんな辛さは苦しいとは思えない。

寧ろなんでも言うことを聞いておりさえすれば
わたしの願いが叶うなんて儲けた!と思っていた。

すると不思議に怖いといわれるおばちゃんは
とても優しい人なのであることに気づく。

おやつはくれるし
レジの使い方とお客さんに気に入られる話し方
お釣りの渡し方など教えてくれた。
稼いだお金でカナダ人講師の英会話教室にも
社会人に混じって通えるようになる。

これは全然
今まで知り得なかった幸せを
わたしは手にしたと思った。

おばちゃんの存在にいたく感謝していたのだが、
それを覆すエックスデーは訪れた。

それは1993年に起きた
平成の米騒動である。

1913年以来80年ぶりの冷夏で
市場から一気に日本米が消えたあの夏。

わたしは元スーパーであったコンビニの裏倉庫に
恐ろしいほど米袋が積まれていたのを知っている。

強気おばちゃん、
これは商機と思ったのか
この米を売り場に出さずに
買い占め客がレジカウンターに聞きにくると
今現在欠品中ですと言うんだよ?
とわたしに強く念を押した。

わたしは従っていたが、
翌週になるとこのバックヤードの米を
値段をあげては陳列するおばちゃんと
上司の後ろ姿を見るたび
お、大人の世界って…
えげつないなっ!?
と思いつつ、
逆にコメを隠してないか疑う客もいて
その人たちはわたしが一人きりの時を狙って
米って本当にないの?
って聞いてくるのだ。

商売人も客もせめぎ合いで
こっわ!と正直思うのだが
目を逸らして
はい、申し訳ございません
とだけ答えるわたし。

私の心の声は
こう・・・

申し訳ございません、嘘をついて…である。

結局半年後、
やっぱり学校の先生に見つかり
泣く泣く辞めることになったのだが
おばちゃんは学校に来てくれるとまで言ってくれた。

しかしわたしはそれを断った。
何故ならおばちゃんが米騒動の件から
少し胡散臭く思えてしまったからである。

あれから30年、
今年もその米不足騒動。

今もどこかの商店の裏場に
米は隠してあるのか
今現在スーパー内のベーカリーで勤めるわたしは
チラリとバックヤードを見たりするけども
明らかにそんなものが
積んである光景は目にしない。

市場はこの何十年で
公平になったと信じたい。
だけど報道で煽られる一部の
一般消費者の品性はあの頃のままなのか?


この2024年の米不足
気候の不安定さもあるだろうけど
南海トラフ災害予想の備蓄品で
米をわんさか買い漁る一部の客による
消費者側の問題行動の弊害の方が
色濃い気がするんですけど、
どうなんでしょう?

なぜにしてそう思うかというと、
南海トラフ報道があってから
パート先の売り場から
ミネラルウォーターのPB商品が
ずっと空っぽだなと思ったら
次に来たのは米。

ちょっと冷静になっておくれよと
売ってる側より消費者側の行動に
不信感を覚えた。


今更だけど
コンビニで主任をやってたおばちゃんが
バックヤードで米を隠して
翌週から小出しにして値段をあげていたのも
ある意味冷静な判断だったのかもしれないと
同じ歳くらいになったわたしは思う。

わたしはあれから結婚して
田んぼを保有する夫の実家からもらう米で
生活している。

その義実家がいうには
ちょうど刈り入れの時期だから
あと二週待てば新米が取れるからね

だから今ある分で
とりあえずは過ごすことが優先で
そんなに焦ってはいけないのかなとおもったりする
8月最終週でした。


本日もお読みいただきありがとうございました

うのふ