雨にもまけず花を咲かせまっしょい

前回からのつづきです


3回目のミセス・チャールズとのセッションは

雨の日で、

彼女が植えたという

パティオのピンクの薔薇にも

容赦なく降りかかっているのを

半地下の彼女のオフィスに降りていく

階段にある窓から眺める。


『あゝ、

この雨であの薔薇が

全部散ってしまわなければいいな。』

と思う。


オフィスにいつも通りにはいると、

ミセス・チャールズがこう言った。


『この前のあなたの話の中で

ちょっと気になったことがあって…

それを今日掘り下げていってもいいかしら?』


ええ、

何でも聞いてください。


なぜなら

私にとっても貴方にとっても

これは初の試みだから。


前回帰る時にわたしも思ったんです。


私の話ばっかりして

あなたにとって

何か有益なことあるんだろうかと。


ミセス・チャールズは少し微笑んで

有益なこととか…

そんなのではないのよ

色々な経験があなたにはあるから

聞きたいだけなの


と少し申し訳なさそうな素ぶりを見せる。




うのふ:

で、気になったことって何でしょう?


ミセス:

先週、

今の生活のことを聞いたのだけど、


あなた、

その中でV&A カフェで働いてるけど

同僚の男の子のこと

嫌がってたよね?


うのふ:

そうですね、

嫌です。

働く上ではいい人だとは思うんですけど。


デートがどうのこうのとか

迫られるのは迷惑なんです。


私は彼もいますし、

相手もそれを知ってるのに、

誘うのは変だと思う。



ミセス:

で、

いまお付き合いしてる方とは

関係は良好なのよね?


うのふ:

たぶん…?

十ヶ月くらいなので何とも言えませんが。

でも、

やはり言語的に追いつけないなと

私が負け犬(looser)な

気持ちになることは多いです。



ミセス:

でもそれは、

母語がお互い違うのも

相手は知ったうえでのお付き合いでしょ?


それはあなたの負けではないよ。


彼が何かそういう

あなたを落第者みたいにいうのかしら?


うのふ:

まあ、きちんとアクセントにも

気をつけて話せとかはいいます。


それがイギリスで生きていくには

一番効果的な方法だからと。


彼は以前アメリカまで

取引に行ってたことがあるそうで。


アメリカにはこんな金言があるとか

つい数日前、

私が言葉に詰まって黙っていたら

言ったんです。


喋らないやつは

ノーワン(誰でもない)だ


でも、

日本では

雄弁は銀なり

沈黙は金なり

という教えがあるんですよね?



たしかに言葉につまるってことは

まだまだ

私の英語での議論能力の不足です。


単語がわかる、

ある程度意思表示の

一文一文はつくれても、

相手を理解させる文脈の組み立ては

英語と日本語では違うし

まだマスターできてない。


そのうえアクセントまで

気をつけるというのは

私はバカだから

瞬時にできないです。



ミセス:


あのね、

もっと自信を持ったらいいと思う。


なんであなたはそんなに

自分のことを卑下するんだろう?


私、いま、あなたのこと

すごいと思う。


私が18歳に戻って

2年日本にいたら

あなたほど日本語で気持ちを

表現できてたのかな?

って疑問に思うもの。


言語的な複雑さはあるから

公平な物の見方ではないけれど・・・


彼女の顔は悲しそうだった。

でも

私はその表情にあまり意味が見出せず

少し困った。

雨はまだまだ降り続いていた…





汗汗汗汗汗汗汗汗汗汗



3回目のミセス・チャールズとの面談内容は

2回に分けてお届けします。




本日もお読みいただきありがとうございました



うのふ