生臭い夜​

日本人メイクアップアーティストさんで

東京でテレビCMなど活躍されてたり

とあるファッション学園の講師の経験もあり。


この人が30後半になったとき

思い切ってロンドンに渡英した。


当時私がお付き合いしてたイギリス人彼は

ファッションモデルの卵のポートフォリオ撮影に

関わっていた。


その前はアンティークディーラーで

ロンドンとニューヨークを行き来してたそう。


聞いてる限り

ただ相続した家財を

糊口をしのぐため

売買してただけでプロではないという

経験値をお持ちの方で。


そんな彼が

あまり英語が流暢ではない彼女と知り合い

工夫の頭の持ち主だったので

当時ファッション業界に興味のあった

わたしをアシスタント業務につき合わせる。


付き合ううちに

黒人のヘアスタイルの作り方が

なんだか難解そうなので

夜間居住区にある

ウェストロンドンカレッジに

黒人ヘアスタイリングの短期コースが

あるのを知った私は

勝手に行動して3ヶ月のレッスンを受け始める。


この学校のある地域、

西ロンドンといえども

ハマースミス区域の端っこにあり

ちょっと荒れてるんですよね。



駅を降りて(駅名も忘れた)

5分ほど歩くんですが

初めてjellied eels、

うなぎのゼリーよせの屋台をこの駅前で見かける。



18世紀ごろ

テムズ川からとれる鰻を庶民が安価なタンパク質として食べてたとか言うthe庶民食だそう。


ガイドブックではみたことがあったけど

実物は見かけたことがなかったので

チラリとカウンターをのぞいてみたのだよ

スピタルフィールズライフというブログから

画像お借りしました


↑こんな感じのちっぽけな屋台で 

見ると日本の鰻料理とは全くべつもの過ぎて

グロテスクの一語ですよ。


日本の調理してある鰻しか頭にないので

生っぽいうなぎのぶつ切りをみて

SF映画に出てくる宇宙人に

遭遇した時の反応とでも言いましょうか…

ぞわっとしてのけぞる。



鼻腔にその生臭さを残しながら

大学に着くまでの通りが商店街、

下町のごちゃごちゃ感の中を通り過ぎていく。


で、大学のある通りついたので

商店街を曲がった。 


その十字路の片隅に

やたら今宵、人がでいっぱいの

(しかも有色人種の男性ばかり)の喫茶店。


あれ、

先週きた時はこんなに繁盛してたっけ?

と思いながら曲がる。


その数メートル離れたところに

大学の入り口があるんですけど

その付近の横道に

警察の車がひっそり身を鎮めるように

止まっていたんですよね。


あまり気にもとめず

教室にはいり

二、三晩目のレッスンを受けました。


で、帰る段になったら

初日で仲良くなった女の子のクラスメイトと

駅まで行って帰るつもりにしていた。


彼女は北ロンドンからわざわざ来ていたので

ウェストエンドエリアに

住んでいたわたしとは

途中まで一緒だけど

まあ、そうして帰ることで

問題があったことはなかったし、

寧ろ彼女も生まれ育ちロンドンなので

話してて面白い。

身の安全も確保できる。

便宜上の友達ですよね。


しかし、

この晩はなぜか

講師をやっていた

ジャマイカルーツの黒人の女教師

シャーミンが、


うのふはあたしの帰り道の途中だから

車で送っていってあげる!

というじゃない。


いえいえ、

いいですよ

ご迷惑でしょうに…

と断るんですけど

あまりにしつこく誘うので

生徒が20人ほどいるのに私一人だけが

うちの方向が通り道だから

と言う理由だけで送ってもらうことに。



よくわからないけど

1990年代後半って

日本人は何か東洋随一のハイソな国民、

天然高級民度高しで賢い

と思われてるふしがありまして。



ゴッホの絵を買える会社のある国!

青函トンネルを最先端技術でほっちゃってる国!

とかマジ顔で表現する人もいた。

(今もそんな意識でいてくれるといいけど、

どうなんでしょう?)


日本人と友達になりたいけど

ちょっと何考えてるかわからない…

しかし、

うのふは表情豊かだし

思ったことをどんどん言う。

グローバル的にみたら


The・わかりやすいキャラ!


日本人のネイティブの

友達がいるってだけで自慢なのよ

(シャーミンが褒めてくれたところ

全部日本人としてヤバい個性や…)

ってこのシャーミンとは

結局長い付き合いになったので

後に言ってたのを知ります。




なので彼女としては

初の日本人友達を作るために

しつこく誘う←言い方よ…

(ほら、ハッキリ言い過ぎですね?)

ってことをやってくれたのだと思います。



こ、ことわれねぇ…

と思いつつ

シャーミンが差し出すコーヒーを飲み

今日、

実はマイカーを友達にかしてて

すぐ来るはずだから

ちょっと待っててね?

と言うので学校のレセプションあたりで

おしゃべりしながら待ちます。


10分ほどしたら

校門にコンパクトタイプの

四人のりの黒い車が現れた。



中にはシャーミンの

日中の仕事場仲間、

美容師の黒人男性二人が乗っていた。


彼女は日中ブリクストン(黒人居住区.ナオミ・キャンベルとかデヴィッド・ボウイの出身地)で

美容師さんをやってるそうな。


二人は車から降りてきて

運転手をシャーミンに変わり

一人は助手席に移動

もう一人は私と後部座席に座る。


車から降りてきた時に思ったのは

でっかいな二人とも

よくもコンパクト・カーにつまってたね?


クロヅクメのオシャレな服装から

あー美容師さんって言われなきゃ

ギャングスター・ラッパーのようだよと思う。


これは結果嫌な予感だったと言えます。


車はシャーミンの運転で発進して

夜のロンドン西南戦争がはじまる。



始まりはひっそりと。


黒人男性は

突然同乗者になった私が東洋人で

何を言ったらいいかわからない感じ。


ちょっと緊張感しか流れてこないわけ。


なのであまり友好的な雰囲気もなく、

シャーミンとバックミラーごしで目を合わせながら

おしゃべりの続きを

じっと無言の二人にはさまれてする。


10分ほどだったら
いつも見るノッティングヒル・ゲートの
地下鉄駅を通り過ぎ
ケンジントン・チャーチストリートにでた。

決戦スタートです。


続きます。



本日もおよみいただき

ありがとうございます。


うのふ