ストリートファインダー​と呼ばれた女

交通機関が発達しているロンドンは

私が留学していた1990年代後半と

祖父が航海士として訪れていた戦前、

1950年代から1970年代までと

あんまり変わっていないようで


世界最古の地下鉄は

サービスも旧式で

遅延とか暴動とか運行中止なんてザラ

疲れたらドアなしの

ダブルデッカーバスにとびのりゃいいんだから

歩けるとこまで動いた方が

よっぽどいいんだよと、祖父。


とにかくどこに何があるか把握すること。

何かが起きたら自分の足と頭で

行って帰れるようになりなさい

と言われた。

(大正四年生まれの指導はスパルタ)


従って

時間のある時はなるべく歩いて

都心は過ごすようにする。


これの効果は

三年後発揮するのですが

まずカナダで太った10キロ分は

すっかりなくなり

日本人というのは

身体にGPS内臓もしてるのか?

もうストリートファインダー

(当時売ってたロンドンの小さな地図帳)

とかいらないじゃん。

何だったらキャブドライバーの試験受けてみろ

とロンドン生まれ育ちの友だちらに言われる。

(まあ、スマホがでたし、

今はいらないスキルっすね?)


ある日の学校帰りに

ケンジントンガーデンズを突っ切って

サウスケンジントンの

ヴィクトリア&アルバート博物館に

アルバイトに出掛ける。


ケンジントンガーデンズのドッグランで

浮浪者が大声をあげて楽しそうに

転げまわっているので

い、犬用だよね?

浮浪者に見える犬なのかな?と思うが

見て見ぬふりをして通り過ぎる。



もう少しで

ケンジントンハイストリート側の

出口に近づく頃、

騎馬警官がいたので


うのふ:

あ!

すいません、サー!


警察官:

はい、マーム

なんでしょう?



うのふ:

さっき北門から入ってきたんですが

門近くのドッグランで

人間が転がり楽しそうに暴れてましたよ



警察官:

そうですか…

それでは失敬いたしまして

私が見てまいりましょう。




馬の方向を変えて

ポクポクノロノロ歩いていく。


暴れん坊将軍走りをしないんだなあ

そんな悠長に歩いてたら

あの人間犬は逃げちゃうんじゃないかなあ

でもここ確かダイアナ妃の庭の

一部だもんなあ

走ったらダメですとか言いそうだもんなぁ

庭からロンドンアイが見えたら嫌よ!

絶対建設反対って言ってるくらいだもんなあ

とどうでもいいことを

ぶつぶつ考えながらバイト先に向かう。




時の流れとは恐ろしい

6ヶ月前に

初めて見た時は

騎馬警察カッコいいと思ったもんだが

あれは別に

自転車とかのほうが効率がいいのではないか

と東洋人のおせっかい頭は思う。



また別の日、

ケンジントンハイストリートから2つ通り奥に

当時の彼が住んでおり彼を訪ねる。


同じ通りの斜向かいがフレディ・マーキュリーの

持ち物だった物件。


Google mapsから


当時は

フレディは既になくなっており

メアリー・オースティンさんが

相続して住まわれていたけど、

あの辺りの家に住んでる人は

結構いい車にのっているんです。


彼はオンボロ・国産スポーツカーの

オープンカーでしたが…




で二軒隣の

うちの車が盗まれたことがあって

TOYOTAなんですって。



彼氏:

ご近所さんの日本車が盗まれたけど

今頃はロシアに

車は渡ってしまったに違いないから

奥さん探偵を雇ったそうだよ


うのふ:

警察は?


彼氏:

そんなサービスはやってくれないよ


うのふ:

ねえ、

コナンドイルとかアガサクリスティは

イギリスの警察がいなかったら

あんな探偵小説書いてなかったんじゃ…


彼氏:

なかなかの

ブリティッシュ・ブラックユーモアを言う

日本人だね、

そのうちロシアにさらわれるよ

ダーリン?



こんな風に茶化してしまう

あちらの警察事情でしたが

ある日とんでもない

イギリス警察の底力を見せつけられるのです。


それはまた続きます。



本日もおよみいただき

ありがとうございます



うのふ