コウモリ女が1番めんどう​

先週の土曜日

まだ暗いなか

運転して職場のパン屋へ向かう。


カーラジオのナビゲーターが

夜明けを少しずつ

切りひらくような声で問いかける。




世界一速く飛べる鳥は何でしょう?

ハヤブサかな,,,

速そうじゃない?

名前からして。



眠い頭で考えるには

ちょうどいいくらいの問題を

明るすぎないトーンで軽やかに話す男性。

落ち着いた声がまろやかに頭の芯に広がり

気分が落ち着いて良い。



ナビゲーター:

答えはオヒキコウモリでした。



わたし:

コウモリは鳥やないんちゃうか?

イソップさんの話では

確か鳥族と獣族から

仲間外れにされとったぞ。

鳥族,,,鳥貴族みたいに呼んでさ、

鳥類だろ。

居酒屋好きなのがここでも出るんだ。



ナビゲーター:

時速160キロで飛ぶそうですよ。

身体がまず高速で飛ぶために適した

エアロダイナミックボディ。

翼は長く幅は狭いということが

功を奏しているそう。

しかしですね、

コウモリは

二本足で立つことはできないそうです。


身体の両脇から

足が出てるからというのが理由。





わたし:

やっぱりヤツは鳥じゃないぞ、

ナビゲーターさん。

足がそんなことになってるのは

哺乳類の証じゃないのか。



その問題と答えに反応して

頭がフルスロットルしたことで

昇る太陽と共に目が覚め始める。




ああ、

今日も今日とて

めんどくさい思考回路の女として生きていく,,,


とため息をつきながら

暗闇の駐車場から車を降りて

職場に向かう。





前日、店長が

明日は早く来る?

と笑顔で聞いて来たことを思い出す。



早く起きられたらね。



と答えたわけだが、

低血圧にも関わらず

私は早起きは得意だ。

気力で何とかしてしまう体質なのである。


早起きできないということはないのだが

なぜそう答えたかというと

土日休みの夫を起こして

早朝パートに出向くのは

お気に入りの仕事であるのだが

気掛かりだったりもする。



この日も4時半には起きていたけど

結局6時に朝食を準備して

なるだけあたたかいうちに夫に食べさせる

というのをしたいから

出勤ギリギリまでうちにいなきゃいけない

と思い込んでいる節がある。



だって嫌じゃん、

おかずにラップをかけて

レンジでチーンして

味噌汁はコンロにあるから

温めるんだよ?

と片麻痺の夫に言うの。



大体夫は

休みの日でも早起きなので

5時半には起きてくるのだけど

せかして朝食を食べさせることもしたくない。


彼は私の奴隷ではないのだ。

むしろ私の方が奴隷役になってもいい。


...役だけどな?


そういうプレイを楽しむのも

これまた夫婦ならではだと思う。



まあ、

そんな夫婦事情について

上司の歳若い店長に

説明する意味もありそうにない。


哀れと思われるのがオチだ。

余計な気遣いをさせてどうする。



自分の仕事をスムーズにするため

早めに出勤するということは

健常者カップルにしかできない

贅沢品ということ

それを彼は気づいていないのだなあ

と思いながら自分が白い嘘をついて流す。


それでいいと思う。



この日は窯担当で

週末の製造量は

単純に平日の2倍なので

わざわざ店長がそう聴くところは

ある意味素人窯職人の私の負担を

減らそうとしてくれてる

と解釈しているから

余計になんか

正直に言いづらいというのもある。



健常者と障がい者。


けものがどちらで

とりがどちらなのかはわからない。



ただ私はどちらにも入れない

コウモリ女なのかもしれない

と時たま思うことがある。



あ、二本足で立てるから違うか?

いや、失語者の夫に

ぶら下がっているのもあるしなぁ

とかごちゃごちゃ考える。




我ながらめんどくさい女ですな。





本日も最後までお付き合いいただき

ありがとうございます



うのふ