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幻惑されて
⭐
貴方を好きになったのは
あの晩
月が
綺麗だったから
貴方が私を引き止めたのも
きっと
あの夜
空に輝く
十六夜の月が
手間取る私に重なり見えたから
蝉時雨
夏の訪れ
私達の恋の始まり
ひと夏の恋とは
よくいったもので
そんな気はさらさらなかったのに
ツクツクボウシが鳴いていた
晩夏の頃には
2人別々の道を歩き始めていた
ありがとう
って
どういう意味ですか?
貴方の目を見て尋ねる
狡い貴方は
何も言わない
頷いたかのように
少し顎を引いて
私を見つめる
そんな目で見られたら
もう
何も返せないじゃない……
泣かないって
決めていた
帰りの地下鉄
窓に写る
小さな肩
大きな肩は
もう
隣には居ない
貴方のお気に入りの
黄色いTシャツ・・・・
もう
見ることもない
黄色いTシャツ
地下鉄を降りて
家までの道を歩く
秋刀魚の焦げる匂いがした
秋の訪れは
すぐ
そこまできていた
fin.