薔薇とサムライ2〜海賊女王の帰還

2022.11.12 新橋演舞場 劇団☆新感線

 

 
劇団☆新感線

 

 

薔薇とサムライ2〜海賊女王の帰還

 

 

古田新太
天海祐希
石田ニコル
神尾楓珠
高田聖子
粟根まこと
森奈みはる
早乙女友貴
西垣匠
生瀬勝久
 ほか
 
脚本・中島かずき
演出・いのうえよしのり
振付・川崎悦子
作詞・森雪之丞
音楽・岡崎司
 
 
あらすじ(公式サイトより)
17世紀初め。
女海賊アンヌ・デ・アルワイダ(天海祐希)が天下の大泥棒石川五右衛門(古田新太)の協力を得てコルドニア王国の混乱を収め、国王となってから10数年が過ぎようとしていた。
 
南の島、デルソル島。
科学者ケッペル・レンテス(粟根まこと)がとある研究に勤しんでいると、島を欧州の兵が襲撃。島民を奴隷として捕まえていく。が、そこに現れた五右衛門のおかげで兵士達を撃退する。
彼らがコルドニア王国の兵士だと気づく五右衛門。平和主義だったアンヌがなぜ? 訝しんだ五右衛門は彼女の真意を確かめるため、ケッペルと共にコルドニアに向かう。
 
その頃、コルドニアには新たな危機が訪れようとしていた。
 
周辺諸国の征圧を狙うソルバニアノッソ王国の女王マリア・グランデ(高田聖子)が、隣国ボスコーニュ公国を併合しようとしていた。
その調印式に招待されたアンヌは、才覚を見込んで供にしているイクシタニア王国の王女ロザリオ・イクシタニア(石田二コル)とともに、ソルバニアノッソの宮殿に赴く。
調印式の祝賀会には、ボスコーニュ公国の国王シャルル一世の弟、ラウル・ド・ボスコーニュ(神尾楓珠)がいた。シャルル一世が海難事故で生死不明の今、彼がボスコーニュの代表だった。将軍の寝返りにあい、国民を守るためには不利な条件の併合を受け入れるしかなかったのだ。
その席で、自分に従うようアンヌを脅すマリア。彼女の狙いはイクシタニアとコルドニアだ。だがアンヌは、コルドニアとその友人たちの自由が脅かされれば立ち向かうと宣言する。
 
アンヌと行き違いにコルドニアに着いた五右衛門は、そこでボルマン・ロードス宰相(生瀬勝久)と出会う。今でこそ一国の宰相となっているボルマンだったが、かつては五右衛門と同業だった。たぐいまれなる料理の腕で貴族に取り入り油断させ、その家の宝を根こそぎ奪う。“舌の魔術師”と呼ばれる泥棒だったのだ。ボルマンの野望に気づく五右衛門だったが、彼の策にはまり、身動きを封じられてしまう。
 
外にマリア、内にボルマン。二つの脅威に挟まれるアンヌと五右衛門。
親友エリザベッタ(森奈みはる)とその息子ベルナルド(西垣匠)やマリアの息子マクシミリアン・ド・ラブズブール(早乙女友貴)も巻き込み、事態は風雲急を告げる。
そしてコルドニアに魔の手が迫る中、アンヌにも予想外の事態が!
果たしてアンヌは己の誇りにかけて、国と民を護れるか――!?
 
 
2年ぶりになっちゃうのかな、久しぶりの劇団☆新感線は音もの、RXでした。
懐かしい五右衛門ロック「薔薇とサムライ~GoemonRock OverDrive~」の第2弾。最初の「薔薇とサムライ」が2010年なんだそうで(えぇぇ…)、12年ぶりの五右衛門とアンヌのタッグです。新感線の42周年興行。42周年!!?早いなあ…。
古田さんとゆりちゃん自体はIHIアラウンドシアターこけら落としの「髑髏城の七人 極」でごっつり共演してますので3年ぶりというところでしょうか。
 
「薔薇とサムライ」は前作も見てます。赤坂ACTシアターでしたよね。
ゆりちゃんの凛々しい海賊姿、古田さんのふてぶてしい五右衛門との愛と友情の狭間のような信頼関係。浦井健治さんのシャルルがとにかくおバカさんの天使で大人気でしたね。国王の落としだね、王女であるアンヌが自分の出自を知って「ノブレス・オブリージュ」に目覚めて国を建て直す物語…というと、壮大な叙事詩のようですが、まあ、新感線なので(笑)少女漫画と少年漫画の折衷のような、キラキラした美と華やかな立ち回りとご都合主義であろうがなんだろうが正義が勝つ!物語と。難しいことはおいといて、楽しいこと何でもやっちゃおうぜな、そんな目まぐるしい世界を堪能したものでした。好きすぎて、ゲキシネマも新宿まで見に行きましたよ。舞台挨拶つきでした。
 
それからもう12年ですか…。
今回は最近、芝居から遠のきがちなのですが、ガチ新感線オタのお友達から「1枚あるよー」と声をかけてもらってタナボタ観劇が叶いました。ありがとう、友よ!!
久しぶりの新感線、ほんとに楽しかったです。
 
色々セコセコしたことが多い時期だけに、スケール感が大きくて物語に浸りやすくて、難しいこと考えずにスカッとできる、いい舞台でした。
それでいて、全体に「あとに引き継ぐ」という通底した意識も感じる舞台で、それが舞台の上の物語の中でも、またそれと重ね合わされる役者達自身についてでも、どちらにも繋がる意識で、歳を重ねるとはつまり、あとを託せる若い世代を見つけて、力を添えることなのだな…としみじみと。
 
おそらく、アンヌと五右衛門の物語はもう描かれないと思いますが、もしかしたら、引き継いだ若者達の物語の中で見ることはできるかもしれません。
アンヌと五右衛門の新しい旅立ちを爽やかに見送れる、そんな幕切れでした。
 
石田ニコルさんがそのアンヌから引き継ぐ役を真摯に演じて、何よりうまい! 歌も芝居もよかったです。
天海祐希さんは頭から終わりまでスタァそのものでした。カーテンコールで劇場中を抱きしめるポーズを取るんですが、その大きさときたら。
古田さん、聖子さんは安心と信頼の「いつもの感じ」。早乙女友貴さんの軽やかな魅力が印象的でした。
 
新感線のネタモノにありがちな、ネタバレしないと感想が面白くもなんともなくなっちゃうので(笑)このあと節をわけてもろもろのツボを書きますが、ともあれ天海祐希さんのトップ時代のファンの人は見なきゃいけない舞台だと思います!
演舞場の観客がガチで胸をズキューンと撃たれて椅子の上で悶絶するさまは壮観でした。
 
富山、新潟、大阪を経て、新橋演舞場。
12/6が大千穐楽でした。長期間の公演を駆け抜けた、出演者・スタッフの皆様、ほんとうにおつかれさまでした。
そして、劇団☆新感線、42周年。この先も世代交代しつつ、年齢に沿って変わりつつ、それでも新感線イズムを貫いて、楽しい楽しい舞台を作り続けてくださいますように。 おめでとうございました!!
 
 
ということで。
ここからはネタバレを含めつつの感想です。
ディレイビューイングもまだあるので、一応わけますね。

 
はっきり言って、物語は「パターン」なわけですよ。
悪いことをたくらんでるやつがいて、主人公を含む阻もうとする人々がいて、一度は負けが見えて最悪の状況になるんだけど、一発逆転、最後には悪が滅び、正義は勝つ、という。
でもそれが安心感と爽快感にもつながるんですよね。手放しで楽しめる。
ソルバニアノッソの女王、マリア・グランデ(名前のとおりオーストリアのマリア・テレジアがおそらくモチーフ)が周辺の小国を乗っ取ろうと動き出している、というところから始まり、隣国コルドニアの女王であるアンヌは阻もうとするも「獅子身中の虫」に裏をかかれて一時は記憶喪失になり国を喪いかけるんだけど、その周辺小国のそれぞれ「次の世代」…イクシタニアのロザリア、ボスコーニュのラウル、ソルバニアノッソのマクシミリアン…がアンヌと五右衛門の助けを借りて新しい時代を切り拓いていくという流れで、これまでと違うとすればこの「若い世代の目覚め」が主軸になってるところなんだろうと思います。
 
惹句でもポスターでも宣伝でも、ゆりちゃんと古田さんが主役として扱われてるんですが、実質的な主役はロザリア、石田ニコルさんでした。「髑髏城」でいうところの早霧の位置づけですが、早霧よりもっと主体的な主役でした。二幕のほとんどは彼女の物語です。
いのうえさんもインタビューなどでこの作品は世代交代、継承を意識しているということは話されていて、それが最初からだったのかどうかわかりませんが、そのいのうえさんの意思に応えて、若手陣、奮闘していたと思います。
 
石田ニコルさんは歌がとてもうまかった! 個人的に神田沙也加ちゃん(前作に出てたんですよねえ…)が出てきたときと同じ感覚を持ちました。初々しさの中に確実なスター性、華を秘めている。二幕の「エリザベート」の「ミルク」みたいな場面(ええ、そう、全体に今回、「エリザベート」はじめ帝劇ミュージカルっぽいんですよ、いのうえ演出)でもいい強さを見せてくれてました。
 
一方で、若手男優陣は舞台経験の少なさがそのまんま舞台に出ちゃった印象。
ラウル役の神尾楓珠さん、ベルナルド役の西垣匠さんとも、舞台慣れしてないとなりがちな、感情が昂ったら叫べ、的なワンパターンの芝居が多く、言葉が伝わりにくい台詞回しで残念。ん??何??ってところがたびたびありました。
大きく叫べば伝わるってものじゃないんやで~。その辺はいのうえさんもわかったうえであの演出のままなんだと思うんですが、ただ、あれだけ叫んで演舞場まで声をつぶさずに来てるのはえらい!と思った。次の舞台では力が抜けるといいな、と思います。マイクあるんだから、ギャーギャー言わんでも大丈夫よ。
 
マクシミリアン(イメージとしてはルドルフですね)の早乙女友貴さんは、早乙女太一さんの弟さんなんですね。道理でうまかったなあ…舞台映えする動きと台詞回し。華やかさと軽やかさ、新感線には必要なコメディセンスがあって、今後にも期待です。
 
生瀬さんはわっかりやすい悪役で楽しそうでしたねえ。まさかここにきて、生瀬さんの歌が聴けると思ってませんでした(笑)
演舞場で足をちょっと傷めちゃったらしくて、花道ぴょこぴょこしてました、もう治ったかなあ…その場面、アドリブで足が~みたいなことを古田さんとやりとりしてる様子にベテランの余裕を感じました。
衣装も点数は少ないんですがめちゃくちゃ凝ってて、「料理人」出身の宰相ということでドーナツやらカトラリーやらが衣装にいっぱい。鬘もシェフ帽の形でしたし、「美女と野獣」のルミエールのようなイメージなのかな、と思いました。
 
粟根さんは前作ではみはるちゃん演じるエリザベッタの旦那の宰相役だったんですが、物語の上では彼は亡くなっていて(生瀬さん演じるボルマンを宰相に置くためですね)、今回は研究者ケッペルに。でも最後はエリザベッタとケッペルがうまくいっちゃう雰囲気なのはかずきさんのあて書きならではの遊び心ですね。元は宮廷で家庭教師をしていた、とか、物語のキーになる「ブルブルの実」と「危険な塩(パライソブランカ)」の研究をしていた、とか、最後に物語を動かすためのすべてのカギを握ってる重要な人物なんですけど、なんていうか、かずきさんの「ここに置いておけばまとまるでしょ」的な大雑把な置き方がいかにも新感線。だって、冒頭から「ブルブルの実」が大事なの、バレバレだしさあ~(笑)
にしても、白髪がお似合いになっていて、立ち回りはないし、粟根さんもお歳を召しましたなあ…それでも素敵なんですけど。
 
高田聖子さんは、いつもどおり。安定のドロンジョ様。でももう位置が「お母さん」なんですよねえ。お衣装がとにかくゴージャス!紫を基本にして数着、着てらしたけど、どれも妖しくて素敵でした。
一幕のどこだったかな…なんか、ロザリア達を襲わせたところだったかな、息子のマクシミリアン(…に化けた五右衛門)が扮した忍者(ムッシュ・ド・ニンジャ、でしたっけ?)がファミマの入店音とともに渡してきたコンビニの袋の中身を食べちゃったらしくて花道を去るときにおなかいっぱーい、ってお腹をくるくるさすりながら歩いてきたのに大爆笑。そういう細かい遊びがたくさんある、余裕の舞台姿でした。
 
今回、音モノ、特に「歌もの、ミュージカル」の感覚が強かったんですが、それは、語り部、狂言回しとして、吟遊旅団役で冠徹弥さん、教祖イコマノリユキさん、山本カナ子さんのトリオが随所随所で物語を歌っていた影響が大きいなーと思います。
字幕も多用してましたね。多少、前作についての知識がないと面白くないところがあったから、冒頭にかなり長く(ゆりちゃんも旧作の海賊の姿で出てきますし)、前作の説明を歌で補ってて、ここ、いかにも華やかなオープニングで楽しかったです。知ってても蛇足には感じなかった。
 
ちょっとだけ淋しかったのは、村木仁さん、逆木圭一郎さん、右近健一さんあたりの役の出番がかなり少なくて個性爆発感が薄かったこと。若手にシフトして物語を動かすとそうなるよなあ、まあねえ、とは思ったんですが。そんな中でも河野くん、メタルくん、エマちゃんあたりは印象的な出番も多かったですね。人が多すぎたんかなー。
川原さん、武田さんも立ち回りあんまりなかったなあ~~。こんなところにも世代シフト感、すごい感じましたです。
 
古田さんも、五右衛門はまあ、もともとそんなに動かないキャラですけど、ほんと動かなかった(笑) 今回、物語上でもよーくよーーーーく考えたらいなくてもいいんじゃないかと言うくらい、五右衛門は何もしてないんですけど(マクシミリアンの忍術のくだりで必要だったくらい???)、もうちょっと、もうちょびーっと、かっこいいとこ見せてほしかったです!(古田さんは楽でよかったかもだけど)
 
あと!
前作ファン歓喜!!だったのが、シャルルでして。
配役に入ってなくて超残念だったんですが、そんな前作ファンの気持ちをいのうえさん、ばっちり汲んでくれました。何度かスクリーンに登場。アンヌには喋る前にばっさりカットされてましたけど(笑)
ちょいちょいシャルルの飼い鷲の「アンヌ」が登場して、シャルルが生きていること、つまりまたこの世界観に登場する可能性があることを示唆してくれました。ラウルとシャルル、兄弟がそろってるとこも見たいなあ。
 
そして、ゆりちゃんのアンヌ。
頭がいいんだか、よくないんだか、微妙なんだよなあ…理想を貫きたいのはわかるけど、ボルマンはさっさと罷免しておくべきだったのでは。宰相という肩書がなかったら、なんもできませんでしたよ、あの人。
たとえば、国内の体制改革が実は済んでいて、議会制に移行済で人事権を議会にゆだねてる、その議会を牛耳られてる、とかなら罷免しようもないんですが、そうじゃないですからねえ…ちょっとその辺に疑問は残りつつ。
まあ、とにかくいのうえさんのファンサービスがすごくて。
女王アンヌの美しさ、海賊アンヌの凛々しさだけでもお腹いっぱいなのに、二部の頭に記憶喪失になったアンヌが「怪盗ジャンヌ」になって、義賊として各国の貴族・商人から盗みまくる場面があるんですが、そのジャンヌの姿が「銀髪・ストレート・黒い衣装」と、とっ、トートじゃないですかあああああ!!!! そのときの曲が「闇が広がる」チックな絶妙な岡崎さんのアレンジで、しかも傘の宙乗り・早変わりで…いやもう倒れるかと思いましたよね。
さらにいのうえさんてば、マリアの宝石箱を狙う場面で、短髪黒髪・なでつけ・タキシードのジャンヌを登場させ、ダンスを踊らせるという…!!
宝塚トップ時代を知らない人にはびっくりだったと思いますし、知ってる人には絶叫もののシーンでした。ああ、またゆりちゃんのタキシードが見られるなんて…(感涙)
私の周辺、ゆりちゃんファンって感じじゃない人まで椅子の上でのけぞってましたからね。衝撃だったんだと思います。
 
ラストシーンでは、若いロザリアとラウル、マクシミリアンに三国を任せて、アンヌは五右衛門とともに再び海に出ます。そのラストシーンの爽快さ、重責から離れて自由になったアンヌの輝く笑顔もまた最高でした…!
眼福をありがとう、いのうえさん…!!!
 
音楽もよかったな~生演奏の贅沢!
バンドメンバーは後方の紗幕の裏側にいらして、その紗幕にいろいろ映像や字幕が映ってる関係で姿はほとんど見えませんでしたが、絶妙なタイミングのPAさんのSEと言い、音楽と言い、新感線は耳の刺激が強い、楽しいステージです。
カーテンコールで岡崎さんの姿を拝めてハッピーでした。スレスレのラインをすり抜ける絶妙なパロディぶり、今回も最高でした。
 
久しぶりの演舞場には、改めて良さを再認識。
最近の新しい劇場って見かけ倒しなものが多くて、音や視野にがっかりすることが多いんですが、演舞場に関して言うと、三階袖席は最悪ですけど(本舞台の1/3が欠けます)、それ以外は見やすいし、音もいいんですよね…座席もリッチだし、床も絨毯ふかふかだし。
何より花道ですよねえ。今回、花外の後方でしたが、花道で役者陣がなんかやってるのも見えたり、走り抜ける風が伝わってきたり、臨場感たっぷりでした。
できればまた演舞場で「いのうえ歌舞伎」を見たいです。そして、歌舞伎役者とのタッグもまたぜひ!
 
1回しか見なかったうえに一か月くらい経っちゃったんで細かいとこはぜんぶ忘れちゃいましたが、以上、久しぶりの新感線、雑感でした。