「Fujii Kaze alone at home tour2022」

昭和女子大学 人見記念講堂 22.7.28

 

藤井風

https://fujiikaze.com/

 

 
何倍だかわからん、すごい倍率をくぐり抜けて、藤井風さんの「Alone at home」ツアー、昭和女子大学人見記念講堂の1日目に行ってきました。
 
素晴らしい、の一言に尽きました…。
 
2時間、風さんのお家に招かれて、歌を聞いたり喋ったりカラオケしたりして夜ふかしして過ごした…というようなコンセプトで、でかいスタジアムとは違う、今、彼の作れる中では最もミニマムな、アットホームな空間を作ってたと思います(とはいえ、この規模じゃ入れない人が多すぎちゃうんだけどね…)。
 
1/3は泣いて、1/3は笑って、1/3は踊って。
でも、心の中はずーっと温かいものに包まれてました。
 
彼は歌詞からも普段の言動からもおそらく「神」(あるいは神のような高次の存在)というものを信じている人だと思うのですが、そのこと自体を押し付けることはなく、彼なりに普遍的な表現として伝えてくれていました。
 
誰もが持っている、心のうちの「PERFECTな存在」を大切に、外に愛を求めるのではなくまず自分を自分で愛して内に愛を育てる、そうすれば自然と外にも愛は広がる…と、そんなふうに言葉ではとつとつと語っていたんですが、それ以上に歌でずっとそう言ってくれていたと思います。
Alone at homeのツアータイトルにこめられた想いが2時間ひたすら、ホールに満ち満ちてたと思います。僕らはひとりかもしれんけど、みんなでひとつでもある、という風くんの言葉がほんとに染みました。
 
そして、何よりもその声。
歌詞に共感したとかじゃなくて、声そのものの震え、かすれ、美しさ、力、そんなものがわっと押し寄せてきて泣けました。まだちょっと流行病(ツアー中にCOVID19に感染・発症、療養していた)の影響はあるようで、時折かすれもあったけれど、それを吹き飛ばさんばかりにエネルギッシュに歌ったり、そのかすれであえて情感を生ませたり、「今あるがままの藤井風」の声を聴かせてくれたと思います。
歌ってる姿からは辛さや苦しさは感じなかったんですが、100%でもなさそうな感じ…でも人生いろんなことあるよね、それはしゃあない…と訥々語りつつ、真摯に歌ってくれました。
今回「at home」(風くんち)ツアーだったのがむしろよかった感じもします。
 
中盤のリクエストコーナーでは音楽的素養の深さと同時に、耳の良さ、音感の素晴らしさが冴え渡っていました。
初聴きで乃木坂46の「きっかけ」をカバーできるって信じられん。すごい耳だ。
 
幸せでした、ほんと。
風くんちに招待してくれてありがとう。
「ひとつ」にしてくれてありがとう。
 
また行きたいけれど、ホールクラスはもうチケット取れる気がしません…。来年のスタジアムコンサートはなんとか行きたいのでがんばって申し込みますー!
 
なお、会場は完売、満席のはずでしたがこんなときなのでポツリポツリと空席が…。同じ列も前の列も娘さんが来られなくなったお母様達がおひとりでいらしてました。
うーん。見たい人はいるんだから、リセール期間に間に合わなくてもどうにか当日の譲渡も可能になる仕組みがあればいいのになーと思いました。転売業者との闘いなんでしょうけども。
 
 
 
 
〇セットリスト(記憶&風民さんのツイートから)
<ギタレレ弾き語り>
Best part/Daniel Caesar & H.E.R.
 
<ピアノ弾き語り>
weak/SWV
sunny/bobby hebb
circles/post malone
ガーデン
きらり
優しさ
 
<リクエストコーナー>
きっかけ/乃木坂46
君は天然色/大滝詠一
猫/Dish
フライデーチャイナタウン/泰葉
イチブトゼンブ/B'z
Whatever you are/ONE OK ROCK
What's going on/マーヴィン・ゲイ
カブトムシ/aiko
<現場からのリクエスト>
エイリアンズ/KIRINJI
接吻/オリジナル・ラブ
LaLaLaラブソング/久保田利伸
 
何なんw
ロンリーラプソディ
それでは、
青春病
燃えよ
damn
まつり
 
旅路
 
 
幕が降ろされた状態で、ステージの両端、幕の外に草花がこんもり。2階席の上の方だったので、オペラグラスを使っても何の花か、まではわからず。何かそういうのを使う舞台面なんだろうなーと思って開演を待つ。
そのうち幕が開くと、そこは「藤井くんち」という趣のセット。草花は「わしのガーデン」に植えられたものだったのだ。
 
小さなガーデン(広いベランダらしい?)の向こうには、一間だけの小さな部屋。
中央に小さなグランドピアノ。奥に窓。夕焼けが見えている。
部屋の端には小さな本棚、冷蔵庫、食器棚、ピアノの向こうにテーブル。
冷蔵庫の中にはお水の入ったポット(レトロな喫茶店で見るような銀のやつ)があった。
風さんは時々、水を飲むんだけど、ガラスのコップに無造作に注ぐからしぶきがこぼれそうだった。
右に屋上にあがる階段があって、その前にドア。
屋上には大きな看板(ほら、よくアメリカ映画にあるようなさ)がかかってて、ニンジンがどーんと書かれた絵の下に「YASAI TABEYO」って書いてあった(強いメッセージ!)。
空には一面、乳白色の雲と夕焼けが混ざりあっていた。
左の壁際にソファ、階段脇には長椅子(ベット代わりかな)。階段の奥にハンガーがあって、いくつか服がかけられている。
ガーデンの脇には郵便ポスト。おや、これはどこかで見たような。
 
幕が開いたときには、風さんは左のソファに腰かけてギタレレを手にしていた。
そして、歌い出す「Best part」。誰かに向かって歌う、というよりも独り言のように、うっとりと。
よく見ると、完全にこれ寝間着だろうな…というピンクと紫のふわふわしたジャージの上下を着ている。最初、ウサギの着ぐるみかと思った。
 
そしてつかつかとピアノに向かうと、またもやカバーを3曲。
「weak」「sunny」「circles」。洋楽に詳しくない私だけれど「sunny」だけは知っていて、おや、素敵…と思う。
どの曲のときだったか忘れたけど、急に「しーぶーやー!しぶやー!」と叫ぶ風さん。
 
「しぶや…???????」
 
…あとでわかったけど、人見記念講堂のある三軒茶屋を渋谷だと思っていたらしい。そうだった、彼は岡山の人だった。おそらくツアー中も各地の名前をここで叫んでたんだろう、反応してあげてたファンの方も多かった。もちろん、きょとんとしてた人も多かった(笑)
 
どうやら、風さん、三軒茶屋に引っ越したばかり、という設定らしい。
ここまでは客席を見ずに歌ったり弾いたりしてた風さんがピアノの前に立ってこちらをくるりと向いて、英語であいさつを始める。
ここで、やっと、風さんの意識が「客」に向く。
 
ようこそ、僕の家へ、みたいなこと。
ここでこうしてようやくみんなにあえた、うれしい。
なんかいろいろ大変だけど、まあ、心配しないで。なんでもないよ、うまくいくよ、大丈夫、そんなようなこと。
「僕の家に遊びに来たみんなをもてなす」そんな感じのふんわりとした挨拶だった。

ここまで実に演劇的なオープニングだった。

その後、これな、わしのガーデン(めちゃくちゃいい発音のGarden!)なんよ、と言いつつ、おいてあったじょうろをぶんぶん振り回してガーデンの草花にいくぶん乱暴に水やりをする。そのコミカルさに笑いが起きる。
 
これ、私はピンと来てなかったんだけど、中川家のギャグなんですって? そうなん?(笑)
 

 

そういえば、コント番組やるくらい、コントが大好きなんだったね。
演劇も好きなのかなぁ。
 
「ここからはわしの曲も聴いてもらおうと思います」と宣言してピアノに向かって「ガーデン」。
ここまで、弾き語る間に客席を見ることがなかったんだけど、ここからはたびたび、客席に首を向けるようになってた。
導入は客を迎える前の「ひとりの時間」であって、ここからは「いっしょに過ごす時間」なんだろうな、と思う。
 
「きらり」「優しさ」。
「優しさ」を聴いているうちに、無性に胸がいっぱいになってポロポロと涙がこぼれてしまった。別に歌詞に深く感情移入したわけでもないし、何かを思い出したわけでもなかった。ひたすらにそのやさしい声と、やさしいピアノと、染み入るような弾き語りのその歌が耳と胸に染みてしまった、そんな感じで自分でも不意を打たれた。
 
その後、コップに水を注いでゴクゴクと飲みながらバシャン!とこぼしてしまった(これが演出なのか偶然なのかは見てる限りわからなかった)。
「こぼしたから着替える!」と宣言して、ハンガーの前へ。
寝間着から赤いジャージに着替えるんだけど、上はまあ普通なのに、なぜかボトムを脱ぐときにグーッと溜めてからバッ!と一気に降ろして脱いだボトムをソファにぶん投げる(笑)
みんなにパンツ見られるの嫌なのかと思ったらそういうことでもないらしかった。
とにかくヘンテコな生着替えだった(笑)
 
で、着替えて何をするんかな?と思ったら、ピンポーンとドアホンが鳴り、「誰か来たぁ!」。
Amazonぽい業者さんが、鍵盤とマイク(レトロな形のマイクだった)を運んできたのだった。
包み紙も持って帰ってくれた業者さん。
あと確か、ザコシメガネも入ってて、ちょっとかけてみてた(笑)
 
ここからは、リクエストコーナーへ。
ガーデンの隅にあったポストは、ロビーにあったみんなからのリクエストカードを入れるポストだったのだ。このツアーでは開演前にリクエストを募り、即興で歌うというコーナーが毎回ある。
後ろから重そうな袋を引きずってきて、ボスン、と鍵盤の脇に置くとゴロン、とうつ伏せになり、袋の中から無造作にカードを引いていく。
 
この、うつ伏せになって鍵盤引きつつ、探りつつ、ぼやきつつ(笑)歌う姿。いつものYouTube配信の姿、つまりは風くんちの風景の再現。
 
何が出てくるかワシも知らんのじゃけど、まあ、歌います、と引いた1枚目がなんと乃木坂46の「きっかけ」。男の人からのリクエストだったみたい。
えー、なにこれ全然わからん!知らん!もー!とびゃーびゃー言いながら、スマホをポチポチポチポチ、You Tubeの動画を見つけたらしくフンフン聴いてるんだけど、途中でなんか語りが入ったらしくて「なんで公式なのにサビの邪魔するん!?」とブーブーで、めちゃくちゃこっちは可笑しくて声を立てられないのでお腹痛くなりながらクスクス笑ってた。
そのうち、ふんふん、と雰囲気を掴めた感じがあって、サビの周辺だけをサラリと。初見の初聴きでなんでカバーできちゃうんだか、呆れちゃうすごさだった。
面白かったのは、乃木坂46の「46」をわざとなのか、フォーリィシックス、っていかにも、な発音で話してたこと。
 
どんどん、カードを弾いては、どんどん歌っていく。歌ったことのあるもの、ないものいろいろ。
 
客層の中心は20-30代なのだけれど、10代と思しき方や私の世代(50代、特に親子連れ多し)以上の方まで、幅広い客層だった。男性は少なめではあるけど存在感あり。なので、リクエストカードも10くらい読んだうちの1/3くらいは男性だったし、アイドルからポップスから洋楽、邦楽、バラエティに富んだリクエストが寄せられていた。
 
個人的に嬉しかったのは「君は天然色」と「What's going on」。
大滝詠一はまったく世代ではなかろうし、初めて歌うって言ってたと思う。原曲の弾んだ感じをあえて抑えたようなゆったりした鍵盤。でも初めてとは思えないくらい遊びの多いアレンジで、聴き惚れてた。
15分くらいって言われてるから、知らんやつ弾きたくない(時間かかっちゃうから)と言いつつ、一曲だけ今日はごめん無理ってやめてたかな…?それ以外はうわーとかかんとか言いつつもこなしてたのがとっても律儀。
「イチブトゼンブ」はそれこそ「イチブ」(笑)だったけど、稲葉さんぽく歌ってた。B'zも守備範囲かー!
 
で、ここからがスペシャルタイム。
もうちょっとだけ、二階席のみんなのために…とニ階席の人からは挙手して直接リクエストできる時間を、3曲。それも、二階の前の方のみんなもごめんと謝って後方席のみ。後方席、歓喜(笑)
これだけで10分くらい使ってた気がする。途中で「一階席の人には謎の時間になってる気がする」とちょっと謝ってた。
遠くてよく見えないだろうから、という風さんのサービス精神に感服する。
 
「リクエストある人ー」と言われてものすごく元気にハイハイハイハイ!って誰よりも早く手を挙げてたお姉さまが近くにいたんだけど、風くんの「後ろの方のピュアな瞳の人から聴いて」というスタッフへの指示があって、スタッフさんが後ろに行っちゃったらちぇーっ!てなってて可愛かった。
私はなんとなーく、若い人からリクエスト受けてほしいなーという気持ちもあり、控えめに。
たとえ自分のリクエストが通らなくても、確実に自分のいるところを風さんが見てくれて、みんなが振る手に応えてくれてるってだけでも幸せになれるもんだ。ファンなんてそんなもんだ。
人の気持ちがよくわかってる、何よりも本当にみんなを幸せにしたい人なのだな、と思う。
 
私のすぐ後ろの男性がピュア認定(笑)されて、その方のリクエストがKIRINJIの「エイリアンズ」。これには周囲から、そう来たかよく選んだ!みたいな、嘆息と拍手が起きていた。
風さんも、ちょっと、おお、と感嘆するような反応のあと、やさしく美しく歌ってくれてた。
お兄さん、ナイスリクエスト!
 
続いては反対側後方の女の子から「接吻」。聴いてみたい、と言われて、ちょこっと拗ねた口調で「これは歌ってみた動画も上げてるんよ?」と言いながらも歌ってくれた。
風さんはオリジナル・ラブ、絶対好きよな、と思ってるので、自分の歌より少し粘り気味に歌う声を聴きながら幸せになる。
いやー、これを生で聴けるときが来るなんてーー! 
これで終わりと思いきや、真ん中あたりの子からも、と指示があって、これは男の子で「LaLaLaラブソング」。強めの鍵盤がカッコよかったな。
 
ほんとに楽しいリクエストコーナーだった。
風さんのそもそもの音楽的素養、知識、耳の良さが一気に感じられた時間。ほんとに彼の部屋でねーあれ歌ってよ、えー知らんのにー、なんて笑い合いながら聴いてるようなそんな空気が心地よかった。
にしても、絶対に持ち時間超えてたと思うんだが、大丈夫だったかな。
 
このへんで、とリクエストコーナーを終えたあとはふたたび弾き語りに。
「何なんw」「ロンリーラプソディ」「それでは、」「青春病」。
 
「ロンリーラプソディ」では「みんなで息をしよう」と途中の息をするところで「大きく吸って~」「吐いて~」と風インストラクターのブレスコントロール。そうして、みんなで「ひとつに」なる。心地よかった。
「青春病」が好きなので聴けて嬉しかったな。
「何なんw」のアグレッシブなピアノもカッコよかった!
 
 
再びドアホンがなって、誰じゃ~って出てみると、ダッチさんこと山田健人監督とザベスさんことエリザベス宮地さん。「旅路」のMVの監督&撮影を担当してくれたおふたり(知ってて当たり前~な感じで現れて去っていったので、わからん人はわからんかったかもしれん)。
引っ越し祝いに来たよ~お土産~ってダッチさんが差し出したのは「東京ばな奈」(笑)
「一周回って新鮮」とかなんとか言ってたけど、風さん、ぴんと来てない風でもあった。
 
どこのタイミングからだったか忘れちゃったけど、屋上の看板は風さんの演奏時にはスクリーンに変わっていて(なんで曖昧かというと二階後方はこの看板、下半分しか見えなかったため、あまり注意してなかった…)、「燃えよ」はダッチさんが「俺のスマホで撮るから」と言い出してほんとにダッチさんのスマホをリモートで接続して画面を映し出してた(切り替えるときに待ち受け画面が一瞬映って面白かった)。イマドキだなー。
そしてたまに、そんなダッチさんを離れたところで撮影するザベスさん…をさらに撮影する記録カメラ、みたいな入れ子の映像になって面白かった。
 
たまにダッチさんのスマホを見て笑いながらの「燃えよ」。楽しかった。
 
ふたりが帰ったところで、再び「汗をかいたので着替える」お着替えタイム。再び、ボトム一気脱ぎからの放り投げ(笑)
選んだのは淡いグリーンのラフなスーツ。「うん、かっこええ」と自画自賛して「カラオケターイム!」。
 
気づけば、窓の外は暗闇に。ステージの真ん中に立つ風さん。
みんなに「立ってええよー」と促しての「damn」。ライトばんばん、色が変わって派手派手に。
急にキター!のでびっくりしつつ、遠慮なくみんなで立ち上がってダンス!楽しい!
バンドがないのでここ2曲は音源だったから、余計に「風くんちでカラオケ」な感じ。
 
歌い終わったらとととっと階段を上がって屋上に。隅に置いてあったスタンドマイクを自分で立てての「まつり」。
2階席はこのときとっても風さんが近くて嬉しかったなー(一階席の後ろのほうって見えたのかなー?)
みんなで一緒に風さんに合わせて踊る。盆踊りみたいだった。
 
気づけば、始まったときには乳白色の夕焼けだった空が、いつのまにか「マジックアワー」になっていて、そして、最後には完全に夜になっていて、ああ、そうか、午後の遅い時間に風くんちに遊びに行って、急にダッチさんとザベスさん来てわいわいして、最後はこうして一緒にカラオケして過ごして、じゃあね、って別れるまでの「風くんちで遊ぶ一日」なんだな、このツアーな、って気づく。

後半はちょっとMCも多くて、順番はもう記憶の海の中だけど、とつとつと思いを語ってくれてた。
特に最後の挨拶はしみじみ、と、本当はこの二日間がツアーファイナル、だったこと。そうならなかったこと(キャンセルしてしまった会場があったこと)へのくやしさをにじませながら。
「流行病からの復活スペシャル!」とおどけつつ、不規則な生活が続いてたなあ、と正直に振り返り「じゃけ、免疫が落ちとったのかもしれん」(ベジタリアンだから、きっと食事は節制してたろうにねえ)。
療養期間はきちんと規則的な生活を心がけた、今もそれを続けてる。
「お天道様と一緒に起きて沈んだ頃に一緒に寝て、人間らしく生きて、みんなにも心も身体も健康でおってほしいなと思います」
 
愛は外に求めてももきりがない。
自分の内側を自分の愛で満たして。自分を愛してあげることでそれが周りに広がっていく。
「PERFECTな存在」がわしの中にはおるし、みんなの中にもきっといる。必ずいると信じてる。
わしはそれに助けられてきたし、みんなにもそれを信じてほしい。
「毎日少しずつでもいい人間でおられたらそれで充分だと思う」。
 
「わしらはひとりだけど、みんなでひとつだと思ってる」
そういう思いで歌ってくれていたんだな、と思うととても温かい気持ちになった。
 
コロナのことを「今日はほんまはセミファイナルやったのに、コロニャンのおかげで…」(コロニャン、にクスクスする客席)「人生、何が起こるかわかりませんな…それでも旅路は続きます。立ってても座っても、みんなは好きにしてくれてええよ。僕は座らせてもらいます」とちょっとおどけてピアノの前に腰かけて最後は「旅路」。
 
それまでのふんわりと笑いの中にあった客席がすーっと鎮まったのを感じた。
ピアノの音、穏やかな声が染み入る。
 
アンコールはなかった。すっきりとお別れの時間。
 
「野菜、食べましょ」と人参の絵に戻った屋上の看板をおどけて見てたのは、帰るときだったかな?
そして、一度ドアから出ていきかけてからくるりと戻ってきた。
「なんだ?」と思ったらダッチさんの持ってきた「東京ばな奈」を忘れていってたのだった。
ぎゅっと胸元で抱きしめて、ばいばい。
しっかり持って帰る姿がチャーミングだった。
 
 
 
リクエストタイムでマーヴィン・ゲイの「What's going on?」(なんとリクエストした方が気を利かせてあらかじめ裏に歌詞を貼ってある、というやさしさ!)が選ばれたんですけど、風さん、歌ったことないって言いながらもさらーっと歌ってた。素敵だった。
声を出すのが許されるならブラザー!シスター!と応えたかったな。 
そして、この歌って実は「何なんw」(どうなってんだよ?)なんだよね。通じるものがある。
 
冒頭の英語でのMCで「Don't worry,Everything's gonna be alright.Relax,relax...」って言ってたのを聴いて、「おっ、ボブ・マーリー!『ThreeLittleBirds』!」と嬉しくなった私。
実はリクエストしてみたいと思っていたボブ・マーリーをこの一言で聴けた気持ちでもありました(「NoWoman,NoCry」を歌ってみてほしかったのでした)。
 
などと言いつつ、自分のリクエストはTheBeatlesの「Here comes the sun」。
ジョージ・ハリスンの美しい名曲。
 
「Here comes the sun/I say It's alright.」
 
ことさらにあの風さんの一言が耳についたことといい、このリクエストといい、私、大丈夫って言ってほしかったんだなーと今になると思うし、この夜の風さんの歌は終始そう言ってくれてたと思います。
だからずっとずっと、胸があたたかかったんだな、と。
 
一週間経ってなお、思い出せばあのやさしい時間が胸をあたたかくしてくれます。
単に歌がうまい、声がいい、曲がいい、というのを超えて、柔らかくあたたかい空間を作り出してくれる「藤井風」という人そのものに惹かれたライブでした。