J-BlackSummerSummit 二子玉川GEMINI THEATER 190831
 
 
 
 
ジェミニシアターの波打つ天井。美しい。
すでに何度目かの来訪なのに、今回初めて目に留まった。
音の吸収材として設計されたものなのかもしれないが、何とも柔らかいカーブが心地よく目に映る。

ジェミニシアターは照明も美しいし、PAもとても聴きやすく、ハコそのものもこんな風に美しくて、気に入っている。
 
そのお気に入りの箱に「石田洋介」としては久々(近々ではTHE GOT KNEED STONEとともに出演。ひとりではKIWA時代に一度出て以来の二度目)の出演。
しかも、今回は昨年惜しまれつつ閉店したあのHEAVEN青山の「ハマさん」浜田耕作氏のオーガナイゼーションによるという。そりゃ行かねばだ。
 
イベントタイトルは「J-BlackSummerSummit」。
 
Blackとな!
 
ハマさんらしい、情報がカラフルに賑やかにみっしりと詰まったフライヤーによれば「1Jazz、3Souls、1Gospel」だそうだ。そのSoulのひとりとして呼ばれた形。
何しろ「ソウルシンガー」だもの。
 
MCで「凄いメンツで楽屋で震えてた」と笑っていた石田さん、案外本音かもしれないと思った。
 そのくらい、全出演メンバー、素晴らしい音ばかりであった。

ジャズ・ユニット、弾き語り、ソロ、ゴスペルフルバンド。スタイル様々。音楽的に重なるアーティストはひとつもなく、どれもこれも濃厚なのに全く胃もたれしなかったのは、芯にハマさんの言うところの「黒」…ソウルが詰まったアーティストばかりだからかと思う。一見バラバラのようで、どこかに秩序があって美しい。
この何もかもごった煮みたいな感じがハマさんらしいブッキングだとHEAVEN青山を懐かしく思い出しもした。
 
Emmie&BennieのJazzでありつつ、シャンソンのような柔らかな芳醇さも、ビートの強さも備え持つ、豊かな歌とふっくらと逞しいホーンの音。TORAさんの一見冗談にまぶされながら、実は強いファンクな歌。それを爽やかに癒やすJuncaさんの清冽でありながら豊かなソウルフルな声。Aflo橘GospelSingersのパワフルな声の力、バンドサウンドのご機嫌。洗練された、しかし熱の強いステージ!
 
圧巻に次ぐ、圧巻。

石田さんはJuncaさんの次に登場。この配置もハマさんの絶妙さを感じるが、直前の強烈なTORAさんと同じアコースティックギターの弾き語りでどう対峙するのだろうと思っていたら、冒頭から「ソウルシンガー」、声の力で空間をぶん殴るようなステージングだった。石田洋介にしか出せない、空間いっぱいの声。歌の力。真っ向勝負。
黒…かと言われるとちょっと微妙かな、と思っていたのだが、ソウルシンガー、ハッピー・バースデイ、PUZZLEと畳み掛けるようにソウルフルなセットリストであった。
 
どれをとっても濃厚。
濃厚なトリュフチョコレートの詰め合わせを一粒ずつ、珈琲と合わせて食べてるときのような、贅沢さに気持ちがトロリとするような時間だった。
とはいえ、サウンド的にはノリノリの曲が多くて頭からおしまいまで自然と身体が動き、じんわりと汗かきながらだったのだが。立って踊りたかった。

 贅沢で楽しい夜。

ハマさん、素晴らしいブッキングをありがとう!
ここに石田洋介が合いそうだと突っ込んだ、ハマさんの勘に脱帽!

 
Emmie&Bennie

https://twitter.com/emmie_bead

https://www.youtube.com/channel/UCwRzNfjZd4KJQmikbfQS2MA

 

Emmie Vo.
Bennie (海江田紅) Tb.

Nagassy (永瀬晋) G.

Tanny (谷昭利) Dr.

Sassapy (佐々木健太)Pf.

Tommy (Tomまつを)Ba.

 

聴きながらなぜ気づかなかったのか。

ボーカルのEmmieさん、なんと、前からTwitterでフォローしていた方だった。

フォローのきっかけはQUEEN。友人のRTから、含蓄のある、愛の深いツイートの数々に惹かれ、さらにTheBeatlesのジョンとポールにも夢中でらして、そのある意味で、オタクな様がとても好きになって、半年くらいか。

ライブに行ってないし、時折ツイートされる歌の動画でもお顔は出してなかったので、あのときステージの上で素晴らしくパンチのある、艶のある歌を歌ってるのがその方だとは気づけなかった。

 

いやはや。

ということで、Emmieさんのツイートを引用。

 

 

 

ホーンのBennieさんは海江田紅さんの、このユニットでの名前。
通常は、SuperRedBandというトロンボーンとフルートをフロントにしたバンドで活躍されてるとのこと。

実はEmmieさんとこうして組むのはこの夜が初めてだそう。そうとは感じられないよい空気だった。

サム・クック「Twisting'the night away」で思い切りJAZZ!なごきげんなサウンドで幕を開けたあとは、スロウなバラードを艶っ気たっぷりに聴かせたり、ブルージーな音だったり、スッキリとロックンロールだったり、実にバラエティ豊かに9曲。

QUEENのカバー「Dreamer's Ball」はブルース、そして、ニューオーリーンズ風にアレンジしてもらったとのこと。ギターフレーズが印象的な、ブルーなけぶたさに満ちたアレンジ。
終わったあとの「きっとブライアンはこうしたかったはず。やってあげた!」というEmmieさんの自信たっぷりな茶目っ気ある一言と笑顔が素敵であった!

カバーが並ぶ中で織り込まれたオリジナルが三曲とも素晴らしく、MCで話していたように「洋楽の名曲の中に並んで溶け込むような」曲ばかりであった。

 
Emmieさんのパワフルな歌と笑顔と軽妙なMC。 

 
Bennieさんの溌剌としたホーンと軽快な脚の動き!

 
Nagassyこと永瀬さんのギター、特に「Dreamer's ball」が素敵でしたねぇ。
なんで今回、バンドメンバーまで全員英語の渾名かというと、エミー、ベニーなので、男性陣も全員、最後が同じイ音になるように揃えたのだそうだ。
ささっぴーこと佐々木さんは不服だそうだ(笑)

 
 

実に大人の歌だった。

 
ラストの「MustangSally」(ウィルソン・ピケット!)では、みんなでRide Sally,Ride!
楽しく賑やかに盛り上がり、次のSoulsへ。

 

 
3Souls
 
TORA
 
強烈な存在感と歌。
ボ・ディドリーな「地元民」(ある喫茶店に30年通い詰めた主人公の常連扱いに関する一喜一憂…ツェッペリンの「ROCK AND ROLL」のフレーズが入ってきた時は笑ってしまった…)のコールアンドレスポンスでいきなり掴まれる。

続いての「セメダインの匂い」もファンキーだった。可笑しみに溢れながらもどこか郷愁をそそられる歌詞。匂いが引き起こす記憶と光景の豊かさ。

「じわじわ」は最高…。
ずいぶんそのシチュエーションに笑わされてしまったけれど、青春の酸っぱさに満ちた良い歌詞だったし、声がもう。TORAさんの高音に心の奥を掻きむしられるようでよかったのだ。
それでいて、今年の夏の奄美大島の思い出からというラブソングはぐっと切ない。
 
「一曲が短いんで15分くらいで終わらせます」とか「ギター弾けないんで」とか(石田さんが後で「TORAさんの弾き語り初めて見たんじゃないか」と言ってたくらいなので珍しいのかしら)、いちいち私達を笑わせるんだけど、笑わせたあと強烈な音でパンチしてくる。

自由だ。

ファンキーで、パッショネイトで、何より自由だ。

呆気に取られた。いい意味で。

ラストの「呼ばれました」ではコールアンドレスポンスがあって…この日はどの組でもコールアンドレスポンス続きだった…コールアンドレスポンスってレベルでなくほとんど一緒に歌っていた気がする。実に楽しかった。
 
 
 
 
Junca
 
そんなTORAさんのパンチのあと、クールダウンな感じで、浜さんの配置の妙。
とはいえ、浜さんがSoulと称すくらいなので、爽やかそうでいて実はそうじゃなかった。美しい声でパワフルに、大きく空間を包んでくる歌。
ピアノは広重千種さん。Aflo橘GospelSingersでも鍵盤でご出演。二人の間の空気から、Juncaさんがとても信頼を寄せていることが感じられるステージだった。

途中、忌野清志郎の「約束」をカバー。男性の曲か、と意外な選曲に感じたが、歌を聴いて納得。
よく伸びる、粘り気のある声が素敵だった。

ラストの「私は右へあなたは左へ」という曲がとてもソウルフルで、歌詞も面白く印象的だった。
 
 
 
 

石田さん、交代時に「会ったのは初めてだけど実は前から知ってました」と。
河合英史さんや高岡佳祐さんとバンドをやってらしたのだとか。そりゃ知ってるはずだ(笑)
やっと逢えました…と愛の告白のように告げてのバトンタッチ。

 
 
 
石田洋介
 
ソウルシンガー
すんきでげんき
椰子の実
ハッピー・バースデイ
PUZZLE
 
 

先週来、右脚小指骨折(部屋で家具にぶつけて折ったらしい、気づくのに時間がかかったらしい)な石田洋介氏。

椅子を用意してもらって座りつつ。

それでも最後は立ち上がって煽ってた。ほんとにそんなに痛くてしかたがないということはなさそう。

(去年は左足肉離れでやっぱり一ヶ月くらい座って歌ってたな、と思い出す。あのときは痛みも強かったけれど、今回は痛みはそうでもないらしい、折れてるのに。とまれ、お大事に)


冒頭から「ソウルシンガー」。

パンクでファンクなTORAさん、ソウルフルなJuncaさんと来て、さて石田さん、どう持ってくるだろうと思っていたら、いきなりぶちかまされた。強い言葉とでかい声とで空間を薙ぎ払って一瞬で自分の世界に持っていってしまった。


音楽と先達への想いがストレート詰まったこの曲は、様々な音楽への愛に満たされたこの夜に最も相応しい選曲だったと思う。痺れる。


そのあとに持ってくるのが漬物の歌、というギャップもまた、今の石田洋介の振れ幅そのものでもあるのだが、この日は最初から最後までスローなアレンジでの「すんきでげんき」で、ここまでのスローアレンジでは初めて聴いた気がする。フレッシュだった。



三曲目は歌い出しで思わず客席で身じろぎしてしまった。

念願の「椰子の実」!


「童謡唱歌、石田洋介に絶対合う説」をずっと唱えている私、この曲はいつか石田さんに歌ってほしかったのだ(確かめたら二年前から何度かつぶやいていた)。

思ったとおり、とてもよかった。

島崎藤村の言葉がとても美しい曲だが、その美しさが石田さんの明瞭で伸びやかな声に乗ってストレートに伝わってきた。

一方で、メロディそのままで歌わずにあえて揺らして歌う、そのリズムが寄せたり返したりする波打ち際の煌めきのようで美しかった。


途中、とつとつと語ったところによれば、この夏にハマさんコーディネートで回った南九州ツアー、まさに、夏の海に沈む夕陽の美しい望洋閣で歌ったのだそうだ。ああ、そんなに似つかわしいシチュエーション、なかなかない…現場で聴きたかった。

この夜はハマさんの企画だったので盛り込んだのだろうけれど、ここで聴けてよかった。歌ってくれてありがとう。夏も終わるけれど、もう少し、残暑の間くらいは歌ってほしい。


ジャパニーズトラディショナルソングを歌いますよ、と笑っていたけれど、童謡や唱歌はシンプルな分、ギュッと人の心の原風景が詰まっている名曲が多いと思うのだ。


「ふるさと」と同じ中田喜直の「雪の降る町を」や、これは日本の曲ではないけれど名訳がついている「埴生の宿」(HomeSweetHome)もきっと合うと思う。いつか石田さんの気が向くときが来たらいい。


 

短い持ち時間だけれど、タフなナンバーが並んだこの夜。

ラストは強いギターアレンジが印象的だった「ハッピー・バースデイ」、そして「PUZZLE」。


小指骨折話で笑いもまぶしつつ、しかし比較的寡黙に歌に集中していた30分という印象。

強い声と強いギターの音。

聴き応えありすぎて充足。

 

ラストの「PUZZLE」はいつものように客席のコーラスパートを分けたわけだが、出演者も多いし、客席にも歌を歌う方が多かったようでなかなかいい感じだった。

その折にあった、印象的な出来事。

最近になって「PUZZLE」がほんとは3拍2拍の構成(専門用語でなんていうの…あのテンポでもジャングルビート? そもそも気づくのが遅いのだが・笑)で、ん・ぱ、と裏で叩くのが実はしっくりこないんだな、と気づき(遅いのだが)。

そんなことをここ何回かのライブで考えていたのだが、この夜、隣に座った女性達が、自然とリズムを3・2で取って手拍子していたので思わずふわー!とびっくりする。
ちょと後で縁があって知ったことだが、歌を実際に歌ってる方々だったらしい。

初めて聴いたときからずっと「PUZZLE」はソウルだなーゴスペルだなーと思っていたことがある意味で身体でしっかり感じられた瞬間。

 Aflo橘GSみたいなゴスペルグループにゴスペルアレンジでカバーしてもらえないだろうか…改めてこの曲を強いコーラスでゴスペルで聴いてみたくなったのであった。
 
 
 
骨折をものともせず、立ち上がって客席を煽るソウルシンガー!

 
1Gospel
 
Afro橘GospelSingers

Kudou”D”
Naomi
Tany
Batoco
Bikkuri
Kaori
MASATO+Rimiko

法西隆弘 G.
Tom Ba.
広重千草 Pf.
KISHI-YAN Dr.
SAKURA Sax.

ゴスペルはきちんと聴いたことはほとんどない、ましてや生というのはおそらく初体験。
新鮮な、そして、楽しいステージだった。
キャリア20年!だそうだ。若い頃はキラキラしてた、今は油分が喪われて…なんて終始、冗談たっぷりな、リードのKudou”D”さんの愉快なMCとともにテンポよく。総勢8人のパワフルな声!

とにかくご機嫌!
強いショーアップが心地よく、長丁場でほんのり気怠かったラストにもう一度、強いパワーをもらったという心地。

ハーモニーの美しさ。
伸びる声の力強さ。
 
聴いているとこちらもムズムズしてきて、大きな声で歌いたくなる!
そんなサウンドだった。

楽しくてのりすぎてスマホを床に落としてしまって(笑)最後の方、写真がないのはお許しあれ。

 
MASATOさんソロの「HOLD ON」。
Kudou”D”さんとはまた違う太めのボーカル。ふたりでガッツリ声を重ねるところ、カッコよかった。
コールアンドレスポンスも楽しかった。

 
TanyさんとNaomiさんのリードボーカル。
この日はおふたりがリードを取る曲が多かった。
Tanyさん、こんな細いのに声がたくましくて印象的。Naomiさんの朗らかな声も。

 

スタンダードなゴスペルナンバーのほか、オリジナルも交え、たっぷり。
フルバンドの厚みのあるバックサウンドに、圧倒的な声量と熱量のハーモニー。
人の肉体の生み出すパワーを全身で浴びる贅沢を堪能のステージであった。

ちなみに。
後で石田さんに聴いて知ったのだが、Rimikoさんがこれも今はなき元町アースリーパラダイスでカウンターに立っていたことがあるそうで(つまり、私もお逢いしたことはあるらしい)。
ここで繋がるとは。人の縁とは不思議なものだ…。


振り返るだに楽しい夜でした。

昨年の8月31日はHEAVEN青山で、SuperSession。石田さんの歌と鈴木賢司さんのギターに酔いしれていた。その前年は8月半ばに「詩を唄うということ」という企画で玉木洋平さん、村越エースケくんに出逢っていた。 
毎夏、ハマさんには新しい音に出逢わせてもらってるってことだ。

HEAVENがなくなって淋しい思いをしているけれど、こうして違う形でハマさんを通して音楽に出逢えて嬉しい。これからもよい企画、期待しています。また、どこかで。