今野敏、誉田哲也、福田和代、貫井徳郎 『警官の貌』 (双葉文庫) 679円
[作品紹介]
警視庁捜査三課のベテラン刑事・萩尾秀一はなぜ真犯人は
警視庁捜査三課のベテラン刑事・萩尾秀一はなぜ真犯人は
別にいると思ったのか… 浅草署留置係の小西逸男が最
後の最後に見た光景とは…警視庁通訳捜査官の城正臣
と保安課の上月が切り込む犯罪の全貌とは… そして、残
酷な犯人への怒りを自制する所轄刑事課の、吉川圭一。個
人の尊厳と社会の秩序のために、世間は何を求めたのか
警察小説の第一線を走る著者達による、 新鮮な驚きに満ち
た珠玉の短編集。待望の文庫化。
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ミステリーの一つのジャンルとして確立された“警察小説”
の第一人者を集めた短編集。 逢坂剛の“百舌シリーズ”や、
大沢在昌の“新宿鮫シリーズ”、今やこのジャンルの旗手と
4人を集めています。今野敏「常習犯」では、窃盗専門の捜
査三課を。誉田哲也「三十九番」では、署内の留置係。福田
和代「シザース」では、通訳捜査官を。 と、通常の警察小説
での殺人担当・捜査一課以外が舞台。
中でも、貫井徳郎「見ざる、書かざる、言わざる ハーシュソサエ
ティ」は秀逸というか、強烈な作品です 舞台は近未来。そ
こでは 人一人殺せば死刑が確定する。 裁判員制度の蹉跌
から厳罰化が進んだ社会です。ファッションデザイナーの野
明慎也は、 両目を刺され、 舌と両手の指 すべてを切断され
た姿で発見される。 しかし、憎むべき犯人は、殺人を犯して
いないため、厳罰に処すことはできない…。
まさに究極のジレンマです。 実際、こんな目にあったら…死
ぬより辛いことかもしれません。犯人を憎んでも憎みきれな
いでしょう。 翻って、現在は裁判員が下した判断を、裁判官
が覆した判決が目につきます。一般市民の被害者側に寄り
i添った感情移入が、プロの法律従事者の判例主義によって
捻じ曲げられる。 これじゃぁ、誰も裁判員になんかなりたくな
いよね。ちゃんと、市民感覚を取り入れて欲しいものです。