2013年9月 水底平家~みなそこへいけ~・再演-出演者たちの思い出と、今- | 雲南市創作市民演劇

雲南市創作市民演劇

主催/雲南市演劇によるまちづくりプロジェクト実行委員会

2013年9月

水底平家~みなそこへいけ・再演

 

 

まずは、脚本演出・亀尾佳宏さんの当時のインタビューから。

 

 

-再演に向けて、亀尾先生の中で気持ちの変化はありますか?

まず、お芝居が出来る場所があるという事自体そうある事ではありませんので、そういった場を与えてもらったというのは嬉しいですよね。
前回の初演が終わってから、チェリヴァホールさんから再演してはどうかというお話があって、周りの人からももう1回という声が聞けて。再演決定となった時には、また皆とお芝居を作ることが出来るという嬉しさがありました。
嬉しさということではもうひとつ。
今回、再演をするにあたって特に公募をしたわけではないので、前回居た人が抜けるという点でどうしてもパワーダウンする可能性がありました。そんな中で、公募してないのに「出たい!」という声があちこちから出てきて、手を上げてくれたというのが嬉しかったですね。
またその人たちが今までいたメンバーと距離をとるのではなく、昔からずっと一緒にやっている仲間のように稽古をやってくれている。輪が広がっているというのが嬉しかったですし、楽しく感じているところですね。
そういった意味でも、再演やらせてもらって本当に良かったなと思います。
もし再演が無かったら前回観たお客さんが「良かった」「面白かった」で終わってしまったのが、そのお客さんが舞台参加者になる機会を作ることも出来たわけですから。

-『水底平家』自体の変化もありますか?

今回一部キャストが変わるわけですが、初演の平敦盛・熊谷直実・滝口時算を演じたメンバーが参加できないという話を聞いて正直どうしようかなと思いましたね。
前回のメンバーも、いろいろ考えた結果一番良いと思ったメンバーを選んだ訳ですから。
ですが、いろんな人にいろんな役をやってもらって、今回も一番良いと思えるメンバーにすることが出来ました。
これだけ主要キャストが入れ替わるというのは私にとっても楽しみですし、前回観たお客さんにとってもまた違った目で観てもらえるのではないかなと。
人が変わることで前回より質が落ちるということはあってはならないことだと思っていましたが、こうして新しくそれらの役をするメンバーが決まって稽古を重ね、絶対面白いものになるなと感じるようになりました。

それとですね、異伝ヤマタノオロチの時にも感じたことですが、半年の間に皆がそれぞれにパワーアップしています。初演から再演までの間にご飯食べに行ったり、違うお芝居を一緒にやったりして皆が凄く仲良くなって。一体感が生まれているんです。そこに今回新たに加わった人たちもいて、初演とはまた違った雰囲気が出ているなと思います。単に同じものを繰り返すのではなくて、前回と違う人が参加したことでお芝居全体が新鮮なものになったなと感じています。

あと、実はまだここから新しい人物を加える暴挙に出ようかと思っています(笑)
書き足りなかったなと感じているところもありますので。
(編注:インタビューは2013年8月下旬。その後に「平知章」役が生まれています)

-今回の水底平家、キャストが一部変更に。

これは悩みましたね。まず、なにより熊谷(次郎直実)をどうするかに悩みました。
初演で演じた藤原寛貴くんが今回いなくて、それで変わりを誰にするかを考えた時に、今まで参加してくださっているメンバーで「この人は合う!」という人がなかなか思い浮かばなかった。それでいろんな人にやってもらったわけですが。
最終的に熊谷直実は今回が初舞台の森山らきあさんに決まりましたが、最初らきあさんもメインキャストに、とかは全然考えていなくて。音楽で活動なさっている方という事で忙しくてなかなか稽古にも来れないのではないかと思っていたところもありました。
ですが、らきあさんという人は凄く真面目で誠実。稽古に良く来てくれるし、みるたびに良くなっていく。その誠実さがそのままお芝居に出ている。その感じが、私の考えていた熊谷直実にあっていて、らきあさん自身も自分のものにしていく様子が感じられたんですよね。
らきあさんが音楽の世界でずっとやってこられたからなのか、上手いとか下手とかを通り越してすごくお芝居に惹きつけられるんですよ。これだけ見ている人を惹きつけるというのは凄いですよね。今回の見所の一つじゃないかなと思います。

別の意味で悩んだのが敦盛役です。
難しい役なんですよね。最初に帝と絡むシーンはありますが、短い中で楽しいシーンや真面目なシーンもある。初演で藤原絵梨香さんはそんな難しい役を好演してくれましたが、どうやっても彼女と同じような演技が出来る人はいないと思ったんです。
決定した駒原さんは新規参加メンバーという事もあっていろいろ未知数なところはありましたが、彼女の雰囲気なら初演とはまったく違った敦盛になるだろうと思って決めました。

それから前回初舞台となった岩谷さんが今回時算を演じることになって。
岩谷さんは非常に舞台の事をしっかりと把握していて、時算のセリフも再演稽古の最初の頃から台本なしで読めるくらい熱心に練習もしていました。
その熱意が熱意で終わらず、稽古のたびに気持ちの伝わる良いお芝居になっていったので決めました。
本人はあがり症だと言っていたので、それが克服できるかどうかも楽しみです(笑)

-亀尾先生が『水底平家』に込めている思いというのは?

元々高校演劇として作ったのが始まりですが、やるたびに思うのは平家物語という物語がまったく色あせない、現代にも通じるエンターテイメントでもあるしすごく大事なものを伝えてくれているのだと感じています。
ですので、水底平家もその時代を通して今の人たちにメッセージが届く作品だなと思っています。古典作品からもらった作品としての美しさなどを音楽や照明、肉体で表現をしていくという面白さを、演劇を通して伝えられるというのもありますね。

以前もお話ししたように高校演劇では60分という枠がありますから結構削った部分がありましたが、市民劇ということで入れたかったシーンを入れさせてもらっています。考えてみたら、平家物語を60分におさめるって凄いことですよね。
ただ、一般に演劇で2時間を超えるものにすると観ている人にしんどい思いをさせてしまうと思いますから、平家物語のどのシーンを取り入れようかという作業ではつらいものもありました。
さきほど言ったように、初演で書き足りなかった部分もある訳なので、それもどうするのか考えているところです。

今回の水底平家では初演も再演も出演させてもらいます。
異伝ヤマタノオロチを初演・再演と観た時に、ああやっぱり出たかったなと思ったんですよ(笑)
当時そんな余裕は無くて、自分が出ることによって足を引っ張ることになるなと思ってやめたわけですが。
演出って、本番が始まってしまうと何も出来ません。贅沢な話かもしれませんが、やっぱり稽古も本番も、皆と一緒になって楽しみたいという気持ちがありました。終わった後も、舞台立っている人と一緒に感慨深い思いをしてみたいと。
皆を困らせることになるのではと思ってはいますが、それでも舞台に立つのはやっぱり楽しいです。

 

---

続きまして、2020年5月にお答えいただきました出演者の皆様のオンラインインタビューです!

 

平知章役:藤岡千夏さん

当時のニックネーム:ちなっちゃん

 

~藤岡千夏さん参加作品一覧~

水底平家(2013)再演

 

-市民劇に関わるきっかけをお教えください!
理由はたくさんありますが、きっかけとしておおきくあったのは、高校生の時演劇部に所属しており、当時の顧問の先生が亀尾先生で、いつか参加したいと思っていたので。

あと、演劇部時代の友達が参加していたことも理由のひとつですね。大学1年生で夏休み中に偶然帰ってきて、ちょうど稽古期間中だった時は運命かなと思いました。
 
-関わった作品の思い出の中で、心に残っているエピソードなどがあればお教えください
自分が参加したのは水底平家の2013年再演でした。そのときに初演ではいなかった、平知盛の息子「知章」という役ができて自分が演じさせてもらえる事になったことがまずひとつ。本番まであと少しというところで決まったので、アワアワしながら必死に台詞を覚えました。他の人の足をひっぱらないように、必死でしたね。かっこいい殺陣もついて、一日々の稽古が無駄にできないくらいすごく大切で、自分でかけた重圧に潰れそうになりながらやってたように思います。
そして、沢山の人にアドバイスをもらいました。役作りの参考になることとか、登場人物同士の関係性とか、殺陣の練習に付き合ってもらったりとか、他にもたくさんたくさん…ほんとに周りの人に感謝してます。

この作品ではオープニングの旗回しが印象として残っています。舞台上が照明で赤く染まった中を三味線の音ともに飛び出し、平家の赤旗をたなびかせながら全身を使って振り回す。初演でこのシーンを初めて客席から見たとき、なんてカッコいいんだ!!!と感動したことを今でも思い出します。まさか再演で自分がやると思ってませんでした(笑)
やってみると意外と難しいこの旗振り(回し?)。友達に何度も聞いて、教えてもらって、見てもらうと「違う!」と言われ、また教えてもらって、、、。しかもあの旗、折れやすいんですよ。過去に何本も折れて、その度に小道具さんが直してとしていたので、旗の稽古の時は「折らないでね?」と念をおされました。(折りませんでした。多分。)

「みんなで一緒につくる」その感覚がつよくでる市民劇で自分が一番楽しいと感じるのは、世界を作り上げるアンサンブルだと思います。
勿論、役者をやるからには主役やヒロイン格の役どころを狙いたいもの。悪役だって、おいしい。
それぞれ参加者が目指すものは違うかもしれませんが、自分にとっては舞台上でみんなとその場にいることが一番楽しく、幸せなのです。
アンサンブルは全員でひとつの世界観を共有し、その一部となり、大きな流れや感動を生み出します。水底平家では、全員が平家であり、源氏であり、船であり、海であり、世界です。みんなでやるから楽しいのです。みんなでこの世界を作るからすごいのです。アンサンブルが全てではないかもしれませんが、当時の自分にはこの作品に参加した際に感じた充足感や向上心が今も忘れられず演劇から離れられない理由のひとつになっていると言えます。あくまで個人の感想です。

ちなみにどの市民劇の作品も大好きなので、印象に残っているものの中で強いて言うならば、この作品なのです。自分が参加してますし。本当はどの作品も全部観てますし、好きです。どの作品もすきなところ全部言えます。参加できるものならしてます。というか演劇がしたいです。早く安心してできるようになってほしいです。
 

-今後の市民劇に期待する事とは? 

演劇に興味がある人に向けたワークショップ、参加者による短編公演です。

そして、これからも雲南市を愛し、愛される市民劇をつづけていただけたら嬉しいです。

 

 

 

武士役:雛乃さん

当時のニックネーム:ひなのちゃん

 

(2018水底平家・稽古写真より)

 

~雛乃さん参加作品一覧~
水底平家(2013)再演

水底平家(2018)
 

-市民劇に関わるきっかけをお教えください!
高校時代の先輩が水底平家(初演)に出演していたことで興味を持ちました。

部活と違い大人ばかりだったのでとても刺激的でたのしかったです。
 
-関わった作品の思い出の中で、心に残っているエピソードなどがあればお教えください
水底平家(再演)の本番2週間前くらいに飛び入り参加したことです。

自分のような若輩者をあたたかく迎え入れていただき大変恐縮でした。その節はありがとうございます。
 

-現在取り組んでいる活動や、頑張っていることがあればお教えください
最近は脚本の勉強と称して密かに小説を書いています。

数ヶ月前にとあるサイトに投稿したものがネットにあがっていたことがあり冷や汗をかきました。言葉の勉強がんばります。

-今後の市民劇に期待する事とは?
コロナウイルスの影響でできなかった今年の公演をぜひ演っていただきたいです。

 


---

お二人とも、ありがとうございました!

 

さて、次回は2014年・ふることぶみ~古事記~のお話に移ります!