これは2008年の夏、生まれて初めての「人間ドック」を受診した記録である。

 人間ドック数日前から俺は緊張していた。初めてのドックだし、体の悪い箇所がだいぶ前からあるんだけど、「知らぬが仏」という言葉があるように、見て見ぬフリをしていた。だから、正直ドックの結果が怖いなと。胃カメラだって初体験だし・・。


 前日は午後9時から絶食・絶飲だし、緊張して眠れそうにもないから、かなり早目の午後9時に寝た。しかし案の定眠れない…。ただでさえ寝つきの悪い俺…やけに時計の秒針を刻む音が時限爆弾のように聞こえる。
 気分転換に小便でもするか…と思ったが、余計に目が覚めると思ったのでそのまま寝る。 俺の部屋には(この当時)クーラーがないので、いつも寝苦しい夜を過ごしているんだけど、今夜は余計に熱帯夜な感じだ…と思っていたら、何とか寝付ける事が出来た。


 「前日寝つけるか」という第1関門突破、次の日、目が覚める。ひととおり「しおり」に目を通していたし、保険証やお金の準備も万全。受付時間も午前8時30分~9時30分だからと思い、少し余裕をもって支度の準備をする。だけど緊張のせいか、やたらとお腹が痛くなって何度かトイレにかけこむ。その後歯磨きをして、いざ出陣!…の前に病院まで1時間以上かかるので再度トイレに行ってから出掛ける。結果が吉と出るか凶とでるか…ドッグへGO!


 ところが車を運転してものの5分、なんとなくまた腹痛になりかける。家であれだけ出したんだからもう出ないだろうと思って、そのまま運転するんだけど、暫くして緊急事態発生。かなりトイレに行きたくなる。「くそったれぇぇぇ!」と車内で叫ぶ…いや、叫びたいけどお腹に響くんだよ。
 今いるところはまだ森林だらけの道、さすがに33歳にして野グソは恥ずかしい…。しかし今から1時間以上もトイレを我慢するのはキツイ。ドラクエネタで言えば、ルーラを唱えて家に戻りたいのだが現実にはそれは不可能、今から家に戻ってもいいけど、このまま15分程車を進ませれば、運動場の公衆トイレがある。そこまで頑張ろうと思い、そのまま車を走らせる。




 そこでふと「そういえば公衆トイレというのはトイレットペーパーがないケースがよくあるよな。確か車の中にトイレで流せるポケットティッシュ(以下:水ポケ)があったようなと思い、運転しながら手提げバックの中に手を伸ばす…。すると、「な、ない!!水ポケがない!!。そういえば昨日、普通のポケットティッシュはバックに入れたが、水洗でも使えるヤツは車にあったハズだと思って部屋に置いたんだったと気づく。

 なんてこったい、こんな非常事態の時に・・。と脳裏に思ったが、そんな余裕などない、あわてて車内のいろんな場所を探すこと数分、開封済みの水ポケを発見!!、しかしそのティッシュは5枚ぐらいしか残っていなかったが、「ないよりかはマシ」ということで一安心。暫く車を走らせ、そして公衆トイレに到着。すると車のMD収納BOXに未開封の水ポケを発見!!。
こ、これはまさしく秘宝を発見したかのような感じだ。


・・・が!それが良かったのか悪かったのか。なんと俺が水ポケを発見する間にトイレ(大)が2つとも満員になってしまったのだ。
「この世に神(紙)は存在するのか!!」と嘆く!叩く!怒る!…。いや怒ると余計に痛くなる。仕方なしに車内でどちらかが出るのを静かに待つ。

 しかし10分待っても一考に出てこない。しかしこれ以上我慢するとドックにも響く。なにしろ直腸検査に支障がでる。
「えええぃぃぃぃぃぃ!!こうなったらぁぁぁぁ!!」


 俺、女性のトイレに駆け込む。決め手は「たまに女性トイレが満杯だからと男性トイレに入るオバちゃんもいる」からだ。とりあえず2つある女性トイレは両方ともドアが開いているので、誰もいないのを確認。いざ!出陣!。何とか事なき無事終了……いや、終了したのはいいが今度は外に出るタイミングもこれまた重要である。


 男子トイレから女性が出てもそんなに言われないが、女性トイレから男が出ると何言われるかわからない…それどころか盗撮されてる!って思われたら最低である。トイレに近づく足音や車の音がしないか、最前の注意を払って聞き澄ます。
…まるでシティハンター冴羽リョウさんばりの聴力を発揮(笑)。


 なんとか、脱出成功。 一時はどうなるかと思った。念の為に言っておきますが、本当にゴメンなさい。魔が差した訳でもなく、どうしても我慢出来なかったんです!!!。許して下さい。


そそくさと車を走らせる。 「もうこれ以上は大便は出ないだろう」というくらい出したので、清々しい気持ちになって車を走らせる。「朝日が眩しいぜ!!と思うことで、やっと心に余裕が出始める。朝日が気持ちいい。車で快適に飛ばすとさらに清々しい気分である。鹿児島市内の信号待ちは長い。その為、念のためと思ってドックのしおりを最初から読む。そこで俺は愕然とする


「受付は午前8時30分~午前9時まで」



えええええーーー!!9時30分までじゃなかったの!!!

前日もしおりに目を通していたが、受付時間の箇所よりも、持ってくる物の部分しか見ていなかった。どうしてこうなんだ!!と。俺は「自分はケアレスミスをする」ということを承知している。だからこそ、何度もしおりは見ていた。もかかわらず、こういったケアレスミスをしてしまう。暫くは自分で自分が情けなくて腹立しかった。


 車を一気に飛ばすが渋滞してるし、万が一、事故ったら身も蓋もない。 仕方なしに病院に電話をして「遅れる」ということを伝える。窓口の親切な対応にやすらぐ。結果的には約2分遅刻で到着。受付を済ます。受付嬢の女性は制服の似合う綺麗な人だなって思ったけど、なにぶんドッグで来ているから、ヨコシマな考えは良くない。でも綺麗だったな(笑)。
 

 季節は夏だけど、病院内は患者が多く、外来患者が待合室に沢山いた。ドッグは優先的に診察されるんだけど、そういった患者を考慮してか「ドッグでおこしの○○さん」と言って呼ばれる。採血をし、その後体温測定をするちいつの間にか37.3度あった。多分、さっきまで腹が立っていたからであろう。そして人生初の胃カメラをする。これがホントシンドイよな・・と。軽い麻酔を打たれると段々と気分が朦朧となる。「どうでもいいや」みたいな楽な気分になったところで胃カメラを飲む。


 結局の所、何もなかったが、生まれて2度目の胃カメラはやはりイヤだ。麻酔うってるとはいえ、不覚にも涙出てしまった。でも胃には何も異常がないとのことで嬉しかったな。
 直腸は尻から指入れられたけど、あれだけ糞したから凄く申し訳ないです。ゴメンなさい。だって仕方ないんだもん。


 俺が一番気にしている前立腺の異常を示す数値のやつは平常だったし、エコーで膀胱とか見たけど、とりあえず良かったみたい。 でも正式な泌尿外科での診察ではないので結局の所、まだ不安なんだよな~どうしよう…。とりあえず、ドック審査よりも、ドックに行くまでの事柄が大変だった一日でした。